虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症の子の会話やコミュニケーションの質を向上させる工夫 3

2013-10-23 14:44:42 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

箱をビリビリと引き裂いた後で、●くんはゴミ収集車に見立てていた後部が開く車のおもちゃに

紙を詰め始めました。

「●くんは、わたしと☆くんのしているごっこ遊びを見ているし、それを模倣することもできる。

おまけに、他の素材を利用して、自分で必要なものを作りだすこともできるんだな」

と感じて、うれしくなりました。

 

それと同時に、そうした能力を持っている●くんが、

これまでとても限られた遊びとは言えないような遊びしか

しようとしてこなかったことが気になりました。

☆くんが、お友だちの遊びを自分の中に取り込めなかった理由は何なんだろう、と

気にかかりました。

 

その時、●くんのお母さんが、

「奈緒美先生は、●が外に出ようとしていた時に、

電車のおもちゃと車のおもちゃ、どっちがいいの?と誘う言葉をかけていたのですが、

遊んでる最中には、●が今しようとしていることをアウトプットするまで、あれこれさせようと

誘う言葉をかけたらいけないっておっしゃっていました。

誘う言葉をかけたらダメなのか、いいのか、どちらかわからなくて……」と困惑した様子で

おっしゃいました。

確かにこの日、わたしは●くんのお母さんが●くんに声をかける度に、

ダメ出しをして、少しの間、何も言わないようにお願いしていました。

 

真剣にわたしの説明を理解しようと努めていた●くんのお母さんは、

わたしが、「子どもを誘ったり、動かしたりする言葉はかけないでください」と言いながら、

誘ったり、動かしたりする言葉を使っているようでもあるし、

何がよくて、何が悪いのか、こんがらがってしまったようなのです。

 

自分の言動が●くんのお母さんを困らせているのを見て、

「誘ったり、動かしたりする言葉」という表現は不適切で、

わたしが伝えたかったのは、

「誘ったり、動かしたりする雰囲気」や

「●くんが誘われたり、動かされたりしているように受け取るような態度」だったんじゃないか、

と感じました。

 

というのも、わたしが●くんのお母さんにダメ出ししていたのは、

●くんのお母さんが、●くんの言う言葉に

真面目に穏やかに応答しようと努めれば努めるほど、

●くんの言葉や態度に緊張が高まり、

極度の葛藤状態に陥っていくのを何度も目にしたからでした。

 

次回に続きます。