自閉症の子の言葉とコミュニケーション能力を引き出す関わり方 1
の続きです。
この日、4歳の●くんが久しぶりにレッスンに来てくれていました。
●くんのお家は新しい家族を迎えたばかりです。
生まれてまもない赤ちゃんのお世話で、まだ晩に何度も起きなければならない状態なのだそうです。
そのため●くんのお母さんは、●くんの相手を十分してあげられないことを気にしておられました。
しばらく教室をお休みしていた間、
「●くんがあまり発達していないように思える。目を合わせることが少なく、会話する力が育っていない」
といった悩みを口にされました。
実際には、●くんは数ヶ月前に会った時より
ずいぶん成長しているように思われました。また、これから先、いっしょに関わっていく中で
大きく伸びていく可能性も感じました。
というのも、言葉の数こそ以前と変わらないようでも、
●くんの行動には、わたしや他のお母さんに甘えて寄りかかって、絵本を読んでもらいたがったり、
お友だちが遊んでいる様子を覗きこんで、後から自分も真似したがったり
する姿が、たびたび見られるようになったのです。
これまでの●くんは、わたしやお友だちが手にしているおもちゃに興味を持って、
衝動的に奪い取ろうとしたり、自分の欲しいものを手にするために人を道具のように使うことはありましたが、
人に対しては、警戒することはあっても
関心を持つことはありませんでした。
常に人より物に興味があった●くんが、
物と同時に人にも強く引きつけられていることがよくわかりました。
おかげで、これまではなかなか生じなかった
会話を学ぶきっかけとなるような関わり合いの場面をたくさん作ることができました。
ただ、そうした場面が生じる度に、●くんのお母さんの言動が心に引っ掛かりもしました。
●くんのお母さんは、●くんが何か要求するような素振りをすると、
「こうしてほしいのかな」「ああしたいのかな」「これがほしいのかな」と、どんどん先回りして
●くんの要求を満たそうと奔走しているるのです。
わたしと●くんが関わっている間にも、
●くんの動きひとつで、「こんなことがしてほしいのでは?」と察して、
動こうとするお母さんの姿がありました。
そのため、●くんは機能の面では、言葉を発するのに不自由しているように見えないのに、
何でも、1語文で済ませて、
遊んでいました。
教室にいっしょにいた☆ちゃんのお母さんも同じように
☆ちゃんの言葉ひとつで、何を望んでいるのか察して、望みをかなえてあげようとしていたので、
●くんのお母さんと☆ちゃんのお母さんに、
「ひとこと発する度に、何を言おうとしているのか察して、動いてあげていたら、
言葉を使う場面も理由もなくなってしまいます。
●くんも☆ちゃんも、言葉で伝える必要を少しも感じていないように見えますよ」と
お伝えしました。
途中ですが、次回に続きます。