一方通行に自分の考えは告げるけれど、会話をつなげていくことは
難しいという子がいます。
会話がつながりにくいと、友だちと親しくなるきっかけがつかみにくかったり、
いっしょにする遊びが広がりにくかったりします。
そんな時は適度に介入して、相互に交流する時間が持続するように
手助けしています。
たとえば、夏の発達の凹凸がある小学生の子たちのレッスンで
こんな場面がありました。
★くんにレオナルド・ダ・ウ゛ィンチのスウィングブリッジという動く橋を見せて、
「橋が横に動くと……川が渡れなくなってしまうね。
どうして渡れなくするのかな?」と問いかけました。
★くんはたちまちこの動く橋に心を奪われた様子で、面白そうに動かして遊んでいましたが
わたしの質問はピンとこなかったようなので、
「ほらっ、悪い敵が来ても、橋をこうして動かすと渡れないね」とヒントを出しました。
すると、★くんは、小さな渡し舟を動かして、
「舟で渡れるよ、舟で渡れるよ」と高い声で言いました。
「ほんと、舟で渡れるね。そうよね。橋で渡れなくなっても舟で渡れるね」と感心すると、
うれしくてたまらない様子で、「橋がなくても……舟で渡れるよ」と繰り返していました。
★くんは、面白いと感じたことがあると、
同じ言葉を繰り返してしまうようです。
同じ言葉を言い続けていると、同年代の子らは
★くんの言葉に耳をとめず、いつの間にかどこかへ行ってしまっていました。
★くんがか細い声で「ぼくの話も聞いてください、ぼくの話も聞いてください」 と訴える姿もありました。
せっかく★くんが楽しい気持ちで何か言いたいと感じているのですから、
ひとつのチャンスでもあります。
他の子らにスウィングブリッジを見せて、
「ほら、見て。この橋、動くでしょ。
こうやって動いても、川を渡っていけるいい方法を★くんが考えたのよ。わかる?」と声をかけると、
面白そうに橋を触りながら、考えこんでいます。
「★くん、★くん。どんなアイデアか教えてあげて」と言うと、
★くんはとてもうれしそうに説明していました。
そうやってうまく関われたな、と思う場面があった時は、
何度も他のお友だちとの間でもそうした会話が展開し、
慣れるにつれて、会話がより持続するように
手助けしていくようにしています。
次回に続きました。