わたしが、2、3歳の子たちがよく考え、考えたことをていねいに表現し、自分が関わりだしたことに最後まで責任を持って関わるようになるために大切だと考える3つ目のことは、レッジョ・エミリアの幼児教育実践の内容や方法や環境に関わる特徴と重なる部分が大きいです。
「子どもにとって意味のある」ことから「子どもの学び」を創る
という視点です。
「子どもの関心」から出発して、子どもの学びを意識的に作り出すようにするのです。
レッジョ・エミリア教育についてマラグッツィは「子どもの内面世界をもっと知ろうとすることが保育」という立場で次のように語っています。
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子どもとともにあるということは3分の1は確実なことであり、3分の2は不確実なことや、はじめて出会うものであるという状態で働くことであると、私たちは理解しています。
3分の1の確かなことがらは、私たちの(子どもに対する)理解を創りだし、さらに理解を深めたいという試みを促します。
……幼児の学校が、準備の行き届いたものでなくてはならず、小学校との連続性を提供しなくてはならなくなったら、その時すでに私たち教師は、(広いところから)狭いところへ子どもを押し込める(のが保育の終点目標であるという)いまわしいモデルの虜になっているのです。
……幼児の学校は子どもに応答しなくてはならないとだけ言えばそれで十分です。
(学びの物語の保育実践 大宮勇雄 ひとなる書房)
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レッジョ・エミリアの教師たちは、子どもの抽象的概念を扱う能力について予断となるような限界を設けていないため、現実生活の中でさまざまな謎や不思議に対して果敢にチャレンジし、抽象的な概念も自ら扱おうとする子どもの姿をたくさん記録しておられます。
前回の記事で、東大パパさんへのコメントでわたしが、
「模倣を超えていると思われる創造性を見せる子どもたちは教室にもたくさんいます。
そうした子はたいてい知的なものを吸収できる環境にありながら、
知的なインプットをあまり受けておらず、自由に自分のやり方で何かをする時間と、
他の人とお互いのアイデア響かせ合うことができるような環境に育っているな、と感じています。」
と書いた内容にも通じるのですが、最初から予断となるような限界を設けておらず、教え込まれるのでなく、応答は質の高いものが保障されている場では、子どもは大人が思っている何十倍、何百倍という賢さと個性に応じた広くて深い好奇心に駆り立てらます。
2、3歳の子に……というタイトルから少しはずれるかもしれませんが、子どもの興味からスタートし、予断となる限界を設けず、「3分の1は確実さと、3分の2は不確実さ」で子どもに接するようにすることで、子どもの内面から生じてくるアイデアとエネルギーの豊かさを感じさせてくれる子の活動を紹介します。
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虹色教室で恐竜に興味を持った★くんの年長さん~小1の時に自分で思いついた遊びにしても、周囲の大人が誰も想像もしなかったようなものでした。
「レッスンではこういうことを教る、こういう活動をする」という決まりが固定されていたら、★くんのこうした興味の広がりを見ることができなかったかもしれません。
年長さんの★くんが、恐竜の分布図を作ってきてくれました。
骨の絵も描いてきてくれました。
恐竜に夢中の★くんは、カナダに発掘に行きたいので、カナダだけのくわしい地図が欲しいそうです。
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小学1年生の★くんのレッスンで、スチロールカッター(発泡スチロールを溶かして切る道具)を見せたところ、「それを使って恐竜の地図が作りたい!」と言いました。
★くんは恐竜マニアです。
白亜紀の地図を慣れた様子で描いています。
スチロールカッターを使うのを初めてですが、器用な★くんは、細かい凸凹も丁寧に切り抜いていきます。
そこで、★くんがすごくいいアイデアを思いつきました。
目をキラキラさせて、「そうだ!これを水に浮かべて、大陸が移動していくのやってみたら?」と言うのです。
それはいいアイデアです。さっそくトレイに水を入れて浮かべてみました。
★くん、次なるアイデアを思いついた様子です。
「台風もしたいから、ストローちょうだい」と言うと、ストローで水面を吹いて、台風が移動する様子を実演していました。
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恐竜が大好きな小学1年生の★くんのレッスン。
冬休みの間に壮大な恐竜の生きていた時代の地形の変化を絵に描いてきてくれました。
教室用にアメリカで買ってきた恐竜の頭蓋骨の見本を見せると、さすが★くん、骨を見ただけで恐竜の名前を言っていくだけでなく、自分で作った地図のどの時代のどの地区に生息していた恐竜か説明していってくれました。