虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

まわりの子が学習もスポーツもしつけもよくできるので焦ります 1

2011-11-08 15:45:45 | 教育論 読者の方からのQ&A

前回の続きなのですが、テーマを少し変えてお話します。

大人だけの勉強会で親御さんたちが、とにかく「焦り」を口にしておられました。

 

工作のワークショップに集まっていた子どもたちは、どの子も想像力があって、創造的で、

集中力のある考えることが好きな子どもたちです。

 

それなのに、どうして親御さんたちが、わが子と周囲のお友だちを比べて

「焦り」を感じるのか、不思議に感じるかもしれません。

 

お話を伺うと、幼稚園の年少さん時点ですでに、

周囲の子らは、文字に計算に英語にスポーツに習い事にプリントにお受験に……と

誰もかれもがあらん限りの力を注いでいる状況なのだそうです。

 

確かに「わが子を除く大多数」が、「ものすごくがっばっている」という状況で、心穏やか

過ごすことは難しいですよね。

 

子どもが幼ければ幼いほど、親は近視眼的になりがちです。

 

でも、小さいうちが肝心とか、3歳までに決まるとか、6歳までが勝負とか、9歳までに……と

いった脅し文句は、

現実には、大きくなったうちの子らと同年代の子らを見渡しても、

 

「3歳までに決まる……といった商業的な謳い文句に踊らされなかった…なかった!です……人の子は、

自然にしっかりと成長している」

 

「6歳までが勝負とか、9歳までに……とあれこれ子どもにやらせすぎなかった……なかった!です……親の子が、後伸びしている」

 

という例の方が

圧倒的に多いのです。

 

なぜって、「9歳までに……」なんて脳に刷り込んで育った子が、

高校生になって奮起して、「今からでもがんばろう!」なんてとても思えないですから。

 

でも、本当は、本気の馬力を出して勉強に励めるのは、中学生、高校生で、

抽象的な思考力がみるみる伸びるのも、

これくらいの時期からなんですよ。

 

いざ、中学生、高校生になったとき、

勉強とか、自分が得意なこととか、自分の将来につながりそうなことに

本気で力を注ぎ込むことができるためには、

幼児や小学生の時期から、自分を生きていること、

自分の幸せを作りだす力があること、自分の幸福を感受する力があること、

自分で生み出した葛藤を何度も乗り越えたという自信を持っていることが大切なのではないでしょうか。

 

前回までの記事で「内言」の発達について書きましたよね。

自分の心のなかでつぶやく声とか、自分が自分と交わす対話の質って、

外からは見えないけれど、

お金でいうと、銀行に預けている貯金のようなものだと思います。

イメージする力、つまり想像力も同様です。

 

だとすると、幼児期や小学生の時期に外から見えて比べられる能力というのは、

財布や貯金箱に入れて、普段出し入れしている小銭に過ぎないのです。

 

近視眼的に見ていると、

しょっちゅう高い買い物をし、高価な持ち物を身に付けている人の方が

お金持ちに見えます。

でも、それはそう見えるというだけで、そこで、いくら買い物をしたか、どんな高い物を

身に付けているかで、他人を格付けしたところで、

質素に見える側の人が銀行に多額の貯金をしていて、

散財している人が貯金がゼロだった場合には、

数年後のどちらお金持ちに見えるかという判断は変わってきますよね。

 

変な例ですが、

幼い頃に、外にアウトプットして見える子どもの能力を比べるというのは、

あくまでも財布と貯金箱に入っている金額だけを比べているようなものなのです。

 

子ども本当の貯金は、いかに内なる言語を育てて、それを練って

しっかり自分の考えを追っていけるか、

想像力を膨らませて、自分の遭遇する問題を解決することができるか、

辛い体験から自分の課題を見つけられるか、失敗を次の突破力に変えられるか

といった内面の力にかかっているのです。

 

 

 

 

 

 

 


問い方で、思考力が変化する  (名古屋の工作ワークショップ と 勉強会)6

2011-11-08 13:14:52 | 工作 ワークショップ

子どもが葛藤を抱えているとき、

大人は子どもが自分たちで解決していく力を尊重しつつ、

次のようなサポートができます。

 

 

◆ 危険のない形で、感情を十分表現させる。子どもの気持ちを受け止める。

 

◆ 新しい別の視点から今起こっている出来事を眺めるヒントを与える。

 

◆ 創造的な解決法をしめす。

 

◆ 子どもが葛藤に陥っている本当の理由を見抜いて、

心から満足できる体験が味わえるようにする。 

 

◆ 子どもが葛藤の末 手にいれようとしている新しい理想的な自分像に気づいておく。

 

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葛藤があるところには、たいてい成長の可能性があります。

 

暗い廊下に隠れてしまった☆ちゃんの行動も、

☆ちゃんが今の状態よりもより成長した自分になりたいという

向上心が潜んでいます。

 

これまではお友だちといっしょの場所でも

☆ちゃんはママとふたりで仲良く遊んでいれば満足だったのです。

 

でも、そうじゃなくなった。

それだけじゃ、イライラする。ママじゃなくて、お友だちと仲良くなりたいって欲望が目覚めてきたのです。

でも、どう振舞ったらいいか

わからないし、何だか怖い。拒否されそうだし、実際、強く拒否されもするから、

先に自分が乱暴に振舞っておく。

でも、それでは少しもお友だちと仲良くなれない。

 

そんな悪循環から抜け出すすべもなくて、

暗い場所に隠れてしまったのでしょう。

 

そうした時に、近くにいた大人が

☆ちゃんと同じ視点で、今起こっている揉め事を鎮めることばかりに

気持ちを集中させて、

「~言いなさい」とか、「仲良くしなさい」とか、「優しくしなさい」と指示して、

納めてしまったのでは、

その出来事が成長には結びつかないかもしれません。

 

今回の工作の集まりは「虹色サークル」という虹色教室通信の読者の方々が作っているサークルなので、

こうした子どもの揉め事にも、親御さんたちは余裕を持って、

見守っておられました。

それで、

◆ 危険のない形で、感情を十分表現させる。子どもの気持ちを受け止める。

 

◆ 新しい別の視点から今起こっている出来事を眺めるヒントを与える。

 

◆ 創造的な解決法をしめす。

という3つは、自然と親御さんたちの間から、子どもを主にした形のアイデアが出て、

「問題が起こった時やイライラを抱えてしまった時、

知恵を絞って、工夫すると、こんな楽しい結果が得られるんだ」と子どもが気づけるような

サポートをしておられました。

たとえば、☆ちゃんのお家に入れてもらえなくて

悔しがっていた子には、戸の隙間を利用して、忍者の密文をやりとりする

新しい遊びを提案していました。

 

ただ、

◆ 子どもが葛藤に陥っている本当の理由を見抜いて、

心から満足できる体験が味わえるようにする。 

 

◆ 子どもが葛藤の末、手にいれようとしている新しい理想的な自分像に気づいておく。

という2つについては、

「やれやれ、揉めてたのがおさまったわ~」とホッとした時点で、次につなげる視点は

持っておられないようでした。

 

そこで、工作後の大人だけの勉強会では、

雑談を交えて、子どもを成長させる環境やサポートについて

親御さんたちの話しこむことになりました。

 

 

 

 

 

 

 


問い方で、思考力が変化する  (名古屋の工作ワークショップ と 勉強会) 5

2011-11-08 08:17:55 | 初めてお越しの方

子どもの思考力を育む問い方、

やっぱりよくわからなかったという方がいらっしゃるかもしれません。

確かに、「問いといっても

必ずしも言葉で問いかけるのではなく、

無言の手助けがそのまま

子どもへの問いである場合もあります」というあたり、

何が言いたいのやら……と。

 

前回、☆ちゃんがその場にいる緊張から暗い廊下に身をひそめてしまった話を

しましたよね。

そうした時のサポートの仕方というか、大人の心のあり様のようなものが、

自分で考える子になるか、自分で考えようとせずに、すぐに他人に頼ったり、すぐにあきらめたり、

すぐにキレたり、大人の指示に従いすぎたりする子になるかを

分ける分岐点となるように感じています。

 

どういうことかというと、

人が頭を使うのは、必要があるときで、

必要があるときというのは、解決したい問題を抱えているときですよね。

動物を箱に閉じ込めたら、一生懸命知恵を絞って出ようとしますよね。

でものんびり餌を食べているときに、いくら「頭を使え」と命令したところで、

考えようとはしないでしょう。

 

子どもにしても同じで、子どもは自分で「あれが欲しい」とか、「お友だちと遊びたい」とか、

「あんなことができるようになりたい」といった欲望を感じて、

すぐにかなえられないとジレンマに陥ります。

葛藤を抱えて、泣いたり、わめいたり、自分の殻に閉じこもったりします。

 

そのひとつひとつの欲望は、ある意味、子どもにとって非常に大事な

成長の起爆剤です。

 

子どもが自分で作りだす

自分の発達をうながすための創造物であり、道具といえるのです。

 

ですから、

大人が葛藤が起こらないように、揉め事がないように

先に手をまわしてしまうとか、

葛藤が起こるやいなや、解決法を提示して

大人が解決してしまうということは、

ママ友の関係維持にはいいことかもしれませんが、

その分、子どもの成長を遅らせてしまうのではないでしょうか。

 

といっても、子どもたちが揉めるがままに放っておいたのでは、

暴力に訴えるようになったり、

友だちと遊ぶのを怖がるようになったり

しかねません。

 

それなら、どのようにサポートすればいいのでしょう?

 

レッスンが近づいたので、次回に続きます。