虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

絵本やおもちゃの誘いから逃げる自閉症スペクトラムの子との遊び方

2011-10-19 17:20:58 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

次のような質問をいただきました。

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色々な子に合わせた内容に楽しみにしています。特にうちの子は自閉症なので、有難く読ませていただいてます。以前の記事で言葉の遅れの子で絵本やおもちゃの誘いから逃げる子のコツの続きを楽しみに待っています。
療育では、「一人遊びさせないで、友達とは同じ空間いらられればOK」とコツまでは習得できません。

なので、物で遊ぶのが一人でも他人とでも難しいし体を使うのも長く持ちません。何気においてあるチラシの文字を読んでと言ったり、お店が興味あるので新しいものを見ると「どこで買ったの?」という質問は最近出てきました。
二階にも大きめなおもちゃがあるのですが、行きません。

ごろごろ布団やテレビと何かをするのがなく誘いも難しいです。なおみ先生。ぜひ、一人での遊びや人とのやりとり、記事の続きをお願いします。

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自閉症スペクトラムの子との遊び方は、ひとりひとり非常に異なるので、

「こういう方法がいい」と書きにくいものです。

直接、子どもさんと会って、それも何度も会ってゆっくりゆっくり親しくなる関係を作っていかなくては、

「この子にはこういった遊び方をするといいです」とは伝えられないのですが、

とりあえず、大雑把に遊びを楽しくなりたたせていくコツのようなものを紹介しますね。

たとえば、絵本を読んであげるのでしたら、

「絵本はこのように読んであげるもの」という従来のイメージを捨てることが大事だと思います。

言葉にするのが難しいのですが、

自閉症スペクトラムの子と仲良くなるには、

まずこちらのやり方も知識も全て捨て去ってゼロの状態で、

自閉症スペクトラムの子の遊び方、楽しみ方、興味、呼吸の仕方、動き方、目の動かし方、

リズムなどからこちらが学ぶ姿勢、

察する姿勢、それらの全てを受け入れつつ、それに遅れて従っていく姿勢が大事だと感じています。

 

こちらは普通の人間、あとらは自閉症の子という

差別的な最初から優劣をつけたような状態で付き合いはじめても、

いつまでたってもお互いに共鳴しあうことはないように思います。

 

まず、子どもの側のやり方から学ぶことがどうして大事なのかというと、

こちらが学べば、次にはふたりの興味が響き合う中間の活動が生まれて、

次にはあちらがこちらから学ぼうとしはじめるからです。

自閉症スペクトラムの子は、

自分からは、相手から学ぶことの大切さに気づきにくいし、学び方のコツがわかっていません。

こちらが積極的にあちらから学ぼうとすると、いっしょに何かする楽しさや大切さに気づき、

学び方についてもわかってきます。

 

たとえば、身体を揺らして歌うような声を出すのが好きな子でしたら、

絵本は童謡が載っているものにして、

手遊びしながら読んであげるといいかもしれません。

読みかけたところで、どんどんページをめくって

閉じてしまうのなら、

「読みかけたところでどんどんページをめくって閉じる」ということを

絵本読みに取り入れて遊びます。

そのあたりで、もう面倒になって閉じてしまいたくなる

その子の気持ちを代弁して、こちらもそのように本を読んで見せると、

笑いだして、「もっとやって!」という期待が生まれてくるかもしれません。

そうして期待が生まれてくると、

「次は~どの本にしようかな。○○」とタイトルを読みあげるときに

楽しむようになるかもしれません。

 

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コメントをいただいた方のお子さんは、お店に興味があるということなので、

できれば、その子の好みそうなスーパーマーケットとかハンバーガーショップなどを

リアルに再現したリカちゃんのドールハウスなどを購入すると

遊びの幅が広がるかもしれません。

できるだけ本物そっくりに作ってあるものなら、

それほど想像力がなくても、

ショッピングカートに果物を入れたり、レジで並んだりして遊ぶ

ごっこが楽しめるかもしれません。

 

また子どもと遊んであげようと思い過ぎず、

スーパーのちらしのなかから、その子の好きな食材を切り抜く作業を

子どもの近くで静かに続けて、

大人のしていることに関心を抱くという体験をさせることもできます。

そのとき、最初から呼びかけて遊びに誘うのではなく

ちらっと目でこちらを捉える程度でよしとして、

時間をかけて好奇心を育てていくことが大事です。

 

自閉症スペクトラムの子が大人の誘いに乗らない場合、

知らず知らずのうちに大人が

子どものペースを壊して接近しすぎていることが多いように思います。

その子が自分のペースで人との距離を縮めていけるように

大人は魅力的な提案を続けながらも

静かに待っていることが大事だと思っています。


娘とおしゃべり (シンプルリストを作りました)

2011-10-19 14:43:20 | 番外(自分 家族 幼少期のことなど)

JR野田阪神駅の近くで、2階は画廊で1階は本屋と古本屋になっているという

ちょっと珍しいお店を見つけました。

画廊とつながっている本屋らしく

棚には海外のインテリアや美術や建築に関する本が

並んでいました。

そこでいかにも娘が好みそうな1冊を目にとめたわたしは、

娘を誘ってその店に行ってきました。

 

意外にも、娘は、「これは絶対、娘が気に入りそう!」と目当てにしていた

『フランスのガールズライフスタイル』の本ではなく、

『ロンドンのガールズライフスタイル』の本を選んで購入していました。

 

帰りしなに、娘がこんなことを言っていました。

「お母さんが見つけてくれたフランスの本は、わたしがこれまでこうでありたいって

形そのもので、理想として目指してきたものよ。

私の趣味をそっくりなぞったみたいだったし、でも、

これはすっかりわたしの中に浸透している、すっかり了解しているって

感じもしてね。

ロンドンの本の方は、わたしの中からは決して生まれてこないような

新しい種類の刺激がいっぱいあったの。

インテリアもファッションも、強烈で奇抜なおしゃれさがあって、

最近、自分のテーマにもなっている『個性』ってものを探求する見本にもなりそうで……

それで、ちょっとわたしの趣味とは違う感じのロンドンのガールズスタイルの本にしたのよ」

 

娘の名前は、わたしが子どもの頃からずっと憧れていたイギリスのファンタジー作家に

ちなんで名づけました。といっても日本ではごくありふれた名前なのですが、

娘がバイト先や学校でフランス人の方に会うと、「あなたの名前はフランス人の名前ですね」と

親しみを込めて話しかけられることがよくあるそうです。

おそらく、イギリスでもフランスでも(ついでに最近の日本でも)一般的な名前なんでしょうね。

 

そうした名前のせいでも、わたしがヨーロッパにかぶれているからでもないのですが、

娘はフランス語の響きや、フランスのインテリアや雑貨のデザインなどに

成長するにつれて強く惹かれるようになりました。

娘は、「自分だけのオリジナルを大切にして、

自分自身に誇りを持ち、生活を自分の美的な感性で彩って楽しもうとする」という子で、

そうした生活スタイルを作っていくことに余念がない子です。

最近、気づいたのですが、そうした生き方や考え方そのものも

フランス人のそれに近いようです。

わたしとは異質の感性を育みながら成長していくわが子たちを傍らで眺めながら、

強いジェネレーションギャップと好奇心を感じています。

 

帰宅後、娘に勧められてドミニック・ローホーの『シンプルリスト』という本に目を通しました。

この本では、自分が好きなことや思いで、夢などのリストを作ることを勧めてして、

そうすることで、

内面を奥深く見つめるようになり、一度はあきらめた夢を見つけられたり、

眠っていた創造力が呼び起こされたりするとしています。

 

リストは心を磨く道具であり、暮らしをコントロールし、時間を節

約し、ど忘れや勘違いや

ストレスを防いでくれるのだそうです。

この本の魅力は、「本当の自分に出会うためのリスト」「毎日をシンプルに生きるためのリスト」

「幸せが再生産されるためのリスト」「五感を磨くためのリスト」「自分と人生をもっと好きになるためのリスト」

「悩みから解放されるためのリスト」……など人生をいきいきと歩んでいくために必要なさまざまな切り口から、

自分を揺るがすようなリストの例をたくさん挙げてくれている点です。

 

娘はすでにほとんどのリストに明確な答えを出しているということだったので、

わたしも「自分と人生をもっと好きになるリスト」のなかから、

 

『成功体験のリストが成功を呼ぶ』

というタイトルを選び、そこで紹介されていた「自分の証」リストを

ノートに書き込んで、ひとつひとつに答えを書いていく作業に取り組んでみました。

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<「自分の証」リスト>

★自分のすぐれた点や自分のなかで価値があると思うところ

★ほかの人とは違う自分の精神的特徴

★自分の長所

★誇らしく思う50のこと

★これまで学んだ専門や積んだ経験

★ほかの人に提供できるもの

★自分を必要としてくれる人々

★自分がなにかをもたらすことができた人々

★自分を好いてくれる人々、その人たちに好かれている理由

★自分はどういう人物か

★自分がただ「存在する」ためにできること(自然のなかをひとりで歩くこと、

ガーデニング、夕日を見ること、パンをこねることなど)

★これからしたいこと(期限と方法)

★もう二度と言わないこと

★もう二度としないこと

              ( 『シンプルリスト』  ドミニック・ローホー  講談社より)

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↑この本には、「自分の証リスト」の他にも何十種類も目的別にたくさんの

自分への質問が用意されています。

 

わたしは、自分のアンテナに引っかかったことを適当にやりはじめるタイプで、

自分の暮らしについても、他人からどう見えるかということも考えることはほとんどないのですが、

こういうリストに取り組んでみると、頭がすっきりする心地がしました。

 

娘は自分が何が好きで何をしたくて、どのような能力を持っていて、どこに向かおうとしているのか、

いつも正確に把握しながら、研ぎ澄まされた感性で事に取り組もうとする子です。

この本に挙げられていたリストも、これまで何度も自分なりに考えてきたことで、

この本を利用するとしたら、そうした自分なりのリストを具体的に次の目標や体験につなげていくには

どうすればいいのか、自分のリストの改善点はどこかというろころに

あったそうです。(わたしは、リストそのものが目新しく、自分がいかに自分の生活をぞんざいに

扱ってきたかに気づかされました)

 

「自分の証リスト」に取り組むうちに、

こうしたおびただしい数のリストに深い自分なりの解答を出し続けることができるほど

わが子がひとりの個人として成長いること、

わたしが知らないところで、人と関わり、挫折や成功を体験し、

好きなものに心を動かされたり、自分の内面を見つめたりしてきた事実に

驚きを覚えました。

そうですよね。わたしの「子ども」でなく、ひとりの「人」なんですよね。

 

娘は自分を律することや、自分のライフスタイルを創造していくこと、内面を見つめること、

成功について模索すること、

「自分が誰で、何を好み、何を苦手とし、これからどのように歩んで行こうとしているか」を

見極めていく術に、わたしよりずっと長けているのです。

こうしたことのできるできないは、生きてきた年月と関係ないものなんでしょうね。

 

子どもが大きくなってくると、教えることより教わることや学ぶことが増えてきます。

 

 

 

 


4~6歳 真剣に集中するとき 目的を持って取り組むとき

2011-10-19 13:19:53 | 幼児教育の基本

年少さんの★くん、☆くん。

「自分のしていることに本気で関わって、真剣に集中する」

という時期の真っ最中。

書き順通り文字を書くためのお手本カード(100円グッズ)を見ながら

何枚か字を書いた後で、「これは、できん」「これ難しい」とよけていた

「え」と「よ」のカード。

後から、それだけ取り出して、

難しい部分に全神経を集中して

書く練習をしたところ、ふたりで相談しながら

真剣に取り組んでいました。

「ここが、うまくいかない」と、「え」の字の

途中から曲がる部分について話し合っています。

 

そこで、わたしがお手本。

「すべりだいをスーっとすべってね、すべった先からまた

すべりだいをのぼっていくのよね。

途中まで。

このすべった後で、同じとこの少し横を上にいくところが難しいね」

ふたりとも何度もそこを書いてみます。

でも、すべりだいをすべった後で、脱走したような字になったり、

上まで登り過ぎて、「ひ」みたいになったり……。

書いた後で、自分の字とお手本のどこがどう違うか、

一生懸命、見比べています。

こういう時期って、字を覚えていたらいいわけでも、

たくさん書けたらいいわけでもなく、

 

★真剣に集中すること

★微細な違いに気づく力がつくこと

★目的を持って努力できること

 

などが、自分で自発的に始めた活動を通して

徐々に身についていくことが大事なのだと思っています。

この時期の子は、小さな作業にも全力投球します。

 

 

↑自分で考えた『抽選マシーン』作りをしました。

 

「サンタさんの帽子が作りたい」とふたり。

平面が立体の円すい形に変わることが

不思議で面白く感じたようです。