「ハムレット」

2014-10-06 01:49:21 | 映画
ナショナル・シアター・ライヴを観てきました。

わたくし、ハムレット大嫌い人間なんですが、このニコラス・ハイトナー版を観て、あまりのハムレット大嫌いさで自分流にストーリーを醜悪化していたからだと思うけど、嫌い嫌いといいながら今までいろんな方の「ハムレット」も観てきましたが、あれっ、こんな展開だったけ~???意外と面白いやん!?なんや、ハムレット、自分の器の小ささ分かってるんや!?などと新しい発見があって、ハムレットのイメージがかなり良くなっていたのですが、ラストのレアティーズとの決闘あたりで、やはりハムレット嫌い!と思ってしまった(笑)

私の中では、ハムレットはマザコンのイメージが強くて、自分勝手で無実な人間を巻き込む最低な人間だと思っていたんですが、ハイトナー版のハムレットは己の人間の小ささを分かってるいる人間で、臆病者で、でも愛する父を殺した叔父への復讐心で、関係ない人物を巻き込んでしまうバカな奴ではあるんだけど、以前なら共感出来なかったんですが、今なら共感出来る部分があって、それが新しい発見で良かったです。が、ラストのハムレットでやはり共感出来なくなった。

ハムレットは、私が役者なら絶対演りたくない役2トップの一人で、ちなみにもう一人は「ミス・サイゴン」のクリスなんですが、ハイトナー版に関係なく、やはりハムレットは嫌いという結論に至ってしまいましたね。

途中まではハムレットに共感してたんですが、オフィーリアの父ボローニアスの殺害からのハムレットの心理には全く共感できなかった。やっぱ最低。オフィーリアへの愛の表現も中途半端だし、殺されても自業自得やん!って思ってしまった。ぶっちゃけ同情の余地なし。どっちかというと、オフィーリアの兄レアティーズに共感した。レアティーズの方が共感できる部分が多かった。

このハイトナー版の「ハムレット」は“自業自得”がキーワードになっていたと思うくらい、登場人物皆問題だらけな印象でした。

オフィーリアに対しても腹立つシーンがあって、多分ハムレットからの手紙だと思うけど、その手紙を返すシーンがあって、思わず、ふざけるな!って思ってしまった。これはハムレット目線だとめちゃ最低行為です。

オフィーリアは、お父さんが殺されて狂ってしまうんだけど、同情出来なかった。これも自業自得だと思った。オフィーリアはハムレットによって狂わされたイメージが強かったけど、微妙に違ったのでオフィーリアの印象も変わった。

兄のレアティーズはイメージ通りの人物だったので演じるならこの役だと思った。出番が少ないのが残念だけど。

意外と、この兄妹の父親のボローニアスが悪役じゃなかったのがイメージ外でした。だから余計レアティーズに感情移入した。オフィーリアにも同情の余地があった。

ほんま、ラストのハムレット最低。自分の罪に対する懺悔のなさに腹が立った。ハイトナーの演出だからかもしれないけど、ハムレット、自分のこと美化しずぎじゃない?と思った。レアティーズの父親を殺したんだから謝れよ!友情で片付けるなよ!自分が犯した罪の意識がなくてめちゃ腹が立った。

最後、親友のホレイショにことの真相をありのまま伝えて欲しいと頼んで、ハムレットは息を引き取るわけですが、デンマーク王家の汚名が受け継がれることになるから、ノルウェー王子フォーティンブラスには、家族間で血で血を洗う争いだけはやめて下さいとだけ伝えて欲しい。大小関係なく、憎しみからは憎しみしか生まないから、親兄弟仲間とは協力と調和を重んじて欲しいと思った。

途中までは、自分の中でストーリーを醜悪化してたことに反省したけど、やはりハムレットは嫌い!という結論に達してしまったね。

蜷川さん×藤原君×満島姉弟の「ハムレット」に大変興味深かったけど、大阪公演チケット完売で観れないこと祈ります。

蜷川さんに訊きたい、「ハムレット」を何度も上演したくなるその心理が知りたい。

役者としては、ハムレット役は、二枚目で、狂気や道化を演じたりと、演技力を必要とする役なので演じ甲斐はあるのは分かるけど、役作りではホンマ共感できない。もし、藤原君もハムレットが好きならどこが好きなのか熱く語って欲しい。その内容次第では藤原君のハムレットを観てみたい。

嫌味発言しまくりですが、それくらいハムレットが嫌いなんです。

そうそう、今回のハイトナー版の演出、ハイトナー自身が演出プランで語ってましたが、過去も現在も王室や政治では常にスパイが潜んでいて、壁に耳あり、障子に目あり状態で、常にどこかで誰かが内部情報を盗み聞きしているみたいなことを言っていて、演出においても常にSPのような見張りがいるんですが、ぶっちゃけ演出的には効果はなかったと思いました。別に盗み聞きして密告するシーンがあったわけじゃないので、ぶっちゃけあの見張りは不要だと思いました。

そうそう、この「ハムレット」、前回の「リア王」同様現代アレンジでしたが、それは全く違和感ありませんでした。

現代アレンジだからこそ、ハムレットの疑似精神疾患者ぶりは、リアリティーとハムレットの臆病さを浮き立つ効果があって良かったです。ハムレット、卑怯すぎる。

そうそう、ハムレットの名台詞“生きるべきか死ぬべきか?”、私はずっと“生かすべきか殺すべきか?”の方が良くない???と思ってましたが、この作品を観たら“生きるべきが死ぬべきか”で正しいと思いました。ハムレットは復讐心に燃えていたけど、自分でも自分の人間の小ささや臆病さに気付いていたことが分かっていたんやね。納得した。

オフィーリアを演じられた方が、雰囲気がどことなく満島ひかりさんに似ていた。レアティーズもそうだけど、オフィーリアも出番が少ないのが残念。この満島姉弟が舞台では兄妹役で演じるからめちゃ観たかったけど、やはりハムレット嫌いだからチケット完売になることを祈ってます。もし運が良くも悪くも観ることが出来たら、満足出来る「ハムレット」であることに期待。


今日のまとめ:じゃないけど、今日は台風接近で観るのやめようと思ったのですが、大阪は雨すら降ってなかった。

御嶽山の噴火もそうですが、今回の台風でも自然の恐ろしさを目の当たりにしてます。マジのマジ、原発作るのやめませんか???減らしていこうよ!ってつくづく思った。これって、冗談じゃなく、自然からの警告だと思うよ。

御嶽山の噴火で犠牲になられた方のご冥福を心からお祈りします。