現代能「安倍晴明」

2014-10-28 02:43:43 | 古典芸能
我が青春時代の宝塚トップスターのカリンチョさんと、今年人間国宝に認定された梅若玄祥さん(おめでとうごさいます!)の共演の能作品を観てきました。

最初の演目は、カリンチョさんが出ない「橋弁慶」という作品で、いわゆる牛若丸と弁慶の有名な橋の上の戦を題材にした内容でした。

まさか本物の子役君が出てくるとは思ってなかったので驚きましたが、その子役君の初々しさがとても印象的で、個人的にはほのぼのとした気持ちで観させてもらいました。

牛若丸と弁慶の小太刀と長刀の戦のシーンが見所になっているんですが、相手が子供だから本当にほのぼのとしていて笑みがこぼれまくりでした。子役君が台詞の出だしを忘れてか、または分からなくてか、まさかのプロンプターさんが出だしを合図されていたのも微笑ましかった。

これは完全に偶然に決まった演目だとは思うけど、この牛若丸と弁慶のやりとりが、かつてカリンチョさんが宝塚現役時代に「この恋は雲の涯まで」で演じられた(牛若丸が成長した後の)源義経の替玉と弁慶のシーンを思いだしました。あれは替玉と弁慶の戦のシーンではなかったけども、あの替玉は子役チックだったからなんとなしに雰囲気が似ていた。懐かしい記憶。あ、そういえば、バウ作品でユキちゃんとトドちゃんで牛若丸と弁慶ものがあったはず…。ま、どうでもいい…m(__)m


休憩の後に上演された、カリンチョさんが登場する「安倍晴明」では、カリンチョさんは晴明の生みの親で、白狐の化身を演じられていて、一種の「鶴の恩返し」的な展開なんですが…、

さすが、カリンチョさん!!!

やはり日舞の名取さんだけあって、所作や声の出し方がお上手でした。歩き方や腰の据え方も素晴らしくて、所作が美しかった。

能面を被らない、でも、能面を被ったかのように始終無表情で、しかも瞬きもせず役に集中されていてとても素晴らしかったです。

偉そうなことを書くと、カリンチョさんが宝塚を卒業されてから最近までは一切舞台を拝見していなかったのですが、カリンチョさんの宝塚現役時代は歌だけでなく演技力もとても素晴らしかった。自分の見せ方やアピールの仕方も心得ているし、お芝居の勘も冴えているから、どんな役も説得力がありました。

カリンチョさんは北島マヤと姫川亜弓のどちらの要素も持っているのでホント化ける化ける。当時は男役としては珍しく素がめちゃくちゃ女性的な方で、喋り方も男役らしくなかったんですが、男役の仮面を被ったら完全に男になりきってしまう方だったので、そのギャップが好きでした。ファンの間ではその女性的な部分が苦手な方もいたと思いますが、私は好きでした。ギャツビーはマジのマジ最高傑作です!!!(笑)

は、さておき、今回のカリンチョさんの役は安倍晴明の母親役で、白狐の化身。愛する我が子に自分の正体がバレて隠れ去る役柄を、それはそれは本当に能役者さんのように演じられていて、所作が本当に綺麗で見惚れてしまいました(笑)

同じ元タカラジェンヌで、息子役として登場された初姫さんには申し訳ないですが、雲泥の差でしたねm(__)m

所作だけでなく見せ方が本当にお上手でした。

玄祥さんと一緒に舞うシーンがあるんですが、玄祥さんとは、全く見劣りすることなく互角に見えました。それくらい貫禄もあって、お二人の舞いは本当に素晴らしかったです。

カリンチョさん贔屓だから特別にヨイショしているわけではないので悪しからず…。

この「安倍晴明」のストーリーは、晴明の末裔が旅先の宿探しの折りに、先祖晴明の生い立ちの夢を見るという流れで、夢を見たことで、生みの母親を大切にせなアカンことを学ぶんです。ストーリー展開としては霊能者とは関係ない結末ではあるんですが、カリンチョさんの役は一応結果的には重要な役割を担っているわけです。

ストーリーの中ではちゃんと、安倍晴明の霊媒師としての活躍のシーンもあります。玄祥さん演じる悪魔(?)の化身・蜘蛛の精と戦うシーンはそれはそれは見応えがありました。

私が初めて玄祥さんの舞台を観た、とんちゃんが客演で玄祥さんと息子さんの勘十郎さんが共演した「蜘蛛伝」に通じる見せ場があって、私は未見の歌舞伎の「土蜘蛛」とも同じらしいのですが、蜘蛛の糸を模写した演出が最高に素晴らしかったです。

あの演出、現代劇で使用したら、単純に子供騙しの演出になってしまうと思うんですよね。でも、歌舞伎とか能のように型が重要視される古典ものにおいては、あの蜘蛛の糸の演出は、手から蜘蛛の糸が花火のように綺麗な弧を描く様も一つの型になっているので、私には白い花火が舞っているようにしか見えず、本当にアッパレ!でした。あの演出大好き!

それから、「橋弁慶」では能面は使用されてなかったのですが、「安倍晴明」では素顔と能面を使った演出が効果的でした。

晴明とその末裔の二役。カリンチョさんが演じた人間・葛葉姫と本性の狐の二役。あと、ここでも子役君が活躍するんですが、葛葉姫が恋に落ちる玄祥さん演じる安倍益機(晴明の父親)が助けた狐を子役君が素顔と狐面で表現してます。演じ分けるのに効果的でした。子役君に関しては、人間の心を持った狐を表現するのに役立ってましたね。

ぶっちゃけ、いつも偉そうなことを書いてますが、私は能や歌舞伎は、ほとんど初心者です。

前もってあらすじを読んでないと何を言っているのか分からない古語台詞。なんせ、わたくし、国語力ゼロ。すなわち古語理解力ゼロだから、歌舞伎鑑賞の時もそうですが、絶対あらすじを前もって読みます。じゃないと理解できない。有難いことにあらすじは結末までちゃんと書いているので、ある程度ストーリーを理解したら、当てはめて観るだけでいい。あとは感性の問題。

で、いつも感じたままを書いているだけなんですが、今回の能を観させてもらって、所作を含めた型の重要性を非常に感じました。

古典芸能の所作は、モダンダンスに通じるものあって、キレッキレッのダンスってかっこいいじゃないですか?バレーのように滑らか流れるダンスと違って、ちょっとロボットダンス的なキレのあるダンスって格好良くないですか?

同じことが能や歌舞伎にも通じるものがあって、振り向く動作にキレがあるとめちゃかっこいい!緩急な動作にメリハリがあるとめちゃ綺麗に見える。特に子役君たちと大人たちが演じるのを観るだけでも違いが明白。あのキレのある動きはやはり熟練の技だと思う。

それから、能や狂言は歌舞伎と違って舞台装置はほとんどないに等しいから、想像力がすごく大事になる。

今回の「橋弁慶」は、能楽堂のフォルムが想像力の助けになって、袖道?花道?が五条橋に見えた。牛若丸と弁慶が橋の上で戦う有名なシーンが脳裏に浮かぶ。上手く演出されていると思った。

能なんて基本無表情だから所作で感情を見抜かないと、本当に想像力がなかったら面白味のない退屈な演劇になってしまう。心の表現は鳴物も助けてくれるけど、基本、感性と想像力が大事だと思う。

特に今回は、何もない舞台装置からイメージを膨らませる作業が非常に面白く感じました。実は、今日は寝不足だったから途中で寝てしまうと思ったけど、全く眠たくならなかった。ま、あんな間近で、カリンチョさんや玄祥さんを見たら眠れないわな(笑)脳ミソは麻痺して記憶が消えると思っていたけど、寝不足の割にはよく働いていたと思う(笑)

今日は、我が青春時代のトップさんと玄祥さんの共演作品の鑑賞。

私の人生においては、ほとんど能鑑賞とは縁がなかったのに、とんちゃんの客演作品をきっかけに、「道成寺」、祐飛さんの「天守物語」、そして今回のカリンチョさんとの「安倍晴明」と、不思議なことに玄祥さんの作品や能を観る機会が増えました。あ、美輪さんのコンサートでもお見かけしました(笑)なんせ共演が、私にはピンポイントな方たちだから観ないわけにはいかない。

こんなこと書いて申し訳ないですが、玄祥さんって何者なんですか???m(__)m

しかも、ガラカメの「紅天女」も新作能として上演されているではないですか!?めちゃくちゃ観たい!!!次は広島か…、う~ん、悩む…。

今日のまとめ:ホント、玄祥さんも私には不思議な方である。

そうそう、今日の客席に、某劇団の演出家さんとおぼしき方が来られてました。その方かどうか確信がないので名前は伏せます。似てるんだよね…。

追記:訪問して下さった方、ありがとうございますm(_ _)mやっと、“清”から“晴”に修正できました!記事が過去になればなるほど遡って修正し直すのが面倒くさかったんですよ(笑)