まる1日タルコフスキー

2012-09-10 18:51:40 | 映画
昨日観てきました。本当は広島に滞在する予定だったのですが、このタルコフスキーのために結局日帰りで土曜日に広島に行ってきました。ただお寺さんと墓参りしただけだった…。

ということで、昨日は「ノスタルジー」「サクリファイス」「ストーカー」を観てきました。

ラースファンなら絶対観ておかなくてはいけないと言われているタルコフスキー。いつもなら個別で感想を書くところなんですが、今回の作品群はぶっちゃけ書きにくい。というのもどれもあまり内容的に変わらないし、実は、意識が時々飛んだ(笑)なので、トータルで書かせていただきます。

ラースが師事するだけあってかなり哲学的な作品群でしたね。ただラースと違うのは、タルコフスキーの方が説明的。ラースはほとんどない。タルコフスキーの場合は、まず言葉ありき。に対してラースは、まず映像ありき…って感じかな…?

やはり、めちゃくちゃラースに影響を与えているのもよく分かる。特に「サクリファイス」。多少なりとも「ノスタルジー」もそうだけど、ラースの「奇跡の海」と「アンチクライスト」はこの二つの影響が大きいのでは…?と思った。キーワードやキーアイテムがたくさん登場してた。例えば、自己犠牲、三人の賢者(「アンチクライスト」は乞食だったっけ?)、魔女など。

ラースと違って、タルコフスキーの作品群はまさに旧ソ連の社会主義国家時代に生まれたものだから、宗教的な哲学作品は自国製作は難しいと思うんだよね。明らかに「ノスタルジー」「サクリファイス」はソ連では検閲で引っ掛かるであろう内容だから、製作がイタリアやフランスであるのも納得。で、自国で上映しても大丈夫なように、夢オチならぬ精神病オチにしたのもなんか納得してしまった。宗教色が強いから、精神病者の戯言と解釈されれば、社会主義の検閲も大丈夫だと思う。でも、よく思い出したら、旧ソ連時代に「カラマーゾフの兄弟」の映画があったな…。あまり宗教や思想は検閲に関係なかったのかな…?

でも、今となってはその精神病がめちゃ神に近づく一番の近道だったりするし。ぶっちゃけ、今スピリチュアルブームの時代にこのタルコフスキーの作品を観ると私にはリアリティーがありすぎて恐い。

ひょっとしたら、タルコフスキー自身もラース同様、うつ病だったのかもしれないね。「サクリファイス」なんてまさにタルコフスキーの予言的中!って感じの内容だったし。

この「サクリファイス」をご覧になられた方なら誰もが驚かれたと思いますが、まさに東北の震災を予言するかのような内容でしたもんね。特に一本松。その一本松もなんと日本の松の設定なんですよ。シチュエーションも海のそばだし。映画は戦争ですが、周辺の荒廃具合なんて津波被害と被る。リアル過ぎる。いくら精神病オチ(妄想オチ)でも、やはり、うつ病は神との交信の部分もあるように思えてならない。


三作品ともタルコフスキー哲学があって、最後まで見ないとその哲学は分からない仕組みになっていて、どれもラストが印象的。

「ノスタルジー」に関しては、まるで三島由紀夫の自決を模写したようなシーンがあり、「サクリファイス」はまさに「奇跡の海」の主人公ベスの男版の展開。「ストーカー」に関しては、やはり自国製作だけあってかなり宗教色はオブラートに包まれてましたが、ゾーン=神の領域だと私は解釈してます。

ラスト(に限らず)にタルコフスキー哲学が台詞でちゃんと伝えていて、どれも納得してしまいました。と偉そうに書いていて、実はその内容を忘れているんですけどね…。

その中で覚えていること(うろ覚え)。正確な言葉は忘れましたが、“健全な人間(五体満足)が世界を邪悪にする”みたいな内容。戦争を起こす人間、に限らないけどまさに健康な人間が世の中を悪に導いているよね…と思った。

“大事なことは幸せになることではない”。もちろん、幸せになることに越したことはないけど、幸せになろうと努力したり願うことが一番大事だということ。平和を願う気持ちを持ち続けることと同じように、希望を捨てないことが大事ってことです。願いや希望は全てが全て叶うわけではないけど、全然叶わないわけでもない。全部が全部ではないけど奇跡だって起こる。

「ノスタルジー」はタルコフスキーのお母さんに、「サクリファイス」は息子さんに捧げられてるんですが、私が思うにタルコフスキーの両親は根っからのキリスト教徒(ロシア正教)だと思った。小さい頃から神様は存在するんだよと教えられてきたんだと思う。だから息子にも伝えたかったのでは…?興味深かったのが、「サクリファイス」の最後のテロップの息子に捧げると書いてる中に“確信して”だったか、“確信をもって”だったか忘れましたが、“確信”という言葉が書いていたこと。私が感じたその確信とはまさに“神様は存在する”だと思いました。この確信に関しては息子さんにしか分からない暗号だと思うので、個人的に確かめたい気持ちはある。

ちなみに、「ノスタルジー」のラストシーンが超印象的。あれは寿命を全うした者の行く場所と解釈。自殺者は来れない。とても宗教色を感じる描写だった。

タルコフスキーの特集は神戸でも京都でもあるみたいなので、大阪で観れそうにない作品はそちらで制覇したいと思います。大阪では後一作品観る予定にしているので(一番観たい作品)、それに関しては個別で書きたいと思います。


今日のまとめ:タルコフスキー特集、これもお導きだったね。しかも、スカイビルの広場で昨日までオクトーバーフェストやってたんですよ。全然知らなかった。しかも最終日。実は映画見終えた後、ドイツビール一杯飲んで帰りました(笑)やっぱ本場のビールはウメ~や!一杯だけなのに結構ほろ酔い加減になった。昨日はね、ミュンヘンのパウラナー醸造所のドゥンケルビール、通称黒ビールを頂きました。黒ビールってほど黒くないんだけどね。黒ビールは黒ビールの名前でちゃんとあります。