ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

日本語教師として・・(3)

2020-09-21 17:43:11 | 日本語

先日「ニュー・システムによる日本語」を紹介しましたが、

これを開発した海老原峰子氏は数学者でもあります。

つまり、ロジカルな思考回路をもっている人だと思われます。

だからこそ、このメソッドはシンプルで論理的でなおかつ実用的に作られています。

でも、世の中のすべての人にロジカルな方法がいいとは限らない、

ということが、一人の生徒の発言でわかりました。

「それって数学みたいだね。でも、僕は数学が苦手なので、よく理解できないんだ」

言語の獲得方法というのは、人によってずいぶん違うものだと教えているとよくわかります。

JLPTでは5級(初級)のWさんの日本語は実に流暢で、日常会話は難なくこなせます。イントネーションも日本人と変わらない。それなのにJLPT4級のテストは不合格でした。

JLPTだけでは日本語能力を判定できない、ということがわかります。

(でも企業で要求されるのはJLPT2級合格です)

言語獲得のポイントはリスニング力ではないか、と私は思っています。

相手が何を言っているのか理解できないと答えられませんから。

簡単なことですが、案外見過ごされがちです。皆、必死になって、どう言おうか、どう表現しようか、文法はこれでいいだろうか、と考えますが、その前に、

相手の言っていることをちゃんと理解できるかどうか、がとても大事。

とにかく日本語に慣れ親しんでほしいと、口をすっぱくして言いますが、なかなか難しいようです。

特に日本語の日常会話は表現方法が多様で、「みんなの日本語」のようなテキストで勉強した人にはついていけないようです。

それに、日本語と英語では脳の働き方も違うらしい。

フィリピンのセブ島の英語学校に2回短期留学したことがあります。

一度目は2週間、二度目は1か月。

最初に入った英語学校は韓国人の経営する学校で、日本人の生徒は少なく、ほとんどが韓国や台湾から来た人たちでした。

従って生徒同士で話すときも英語のみ。

たった2週間でしたが、日本語からすっかり離れて英語だけで暮らしていると、いつのまにか英語で考えるようになります。英語脳になってきたのを感じました。

一方、1か月を過ごした英語学校の方は、日本人が経営する学校で生徒はほとんどが日本人。授業の合間に生徒同士で会話するときは、当然日本語になります。

1か月いたけれど、私の英語は大して上達しなかった。

英語学校では日本語を使ってはいけない、と痛感しました。

そして、必要に迫られるという事はとても大事だと実感しました。

部屋のエアコンの調子が悪くてフロントに掛け合わなくてはいけなかったとき、私の頭はフル稼働で英語をひねり出したのでした。

どうしても伝えたいことがあること、何とかしてコミュニケーションを取ろうとすること、それが言語獲得の近道かもしれません。

メソッドも大事ですが、言語環境はもっと大事。

NOVAに通っていたとき、日本人の英語の先生がこう言っていました。

「朝起きるとラジオをつけて英語のニュースを聞きます。昼間も、できるだけ日本語が耳にはいらないよう工夫して暮らしています」

英語の先生ですらそうなんだ、と感心しました。

言語を獲得し、それを維持するにはそれなりの努力が必要だということを教えられました。

日本にいる外国人は、日本語の環境の中にいるのですから、これ以上言語獲得に適した場所はないわけです。

でも、皆こう言います。

「だって、日本人は外人とみると英語で話しかけてくるんだもの・・」

しかも、職業が英語の先生だったりすると、ついつい英語に頼ってしまいがちです。

私の生徒たちは様々な国から来ているので、母国語も様々ですが、皆とても流暢に英語を話します。なので、やはりどうしても英語が混ざりこみます。

私の日本語レッスンでは、英語、日本語、それぞれの母国語が飛び交い、スペイン語ではこう、ドイツ語ではこういうのよ、と教えてもらったりして、とても楽しいです。

本当は英語を使わないで、日本語だけで教える方がいいのでしょう。でも、英語ができると便利なのは確かです。

これから日本語教師の資格を取ろうと考えている方、ぜひ歳だからとあきらめずに挑戦してみてください。

いくつになっても、遅すぎることはありません。

日本にいながら世界じゅうの人たちと接してそれぞれの文化を学べる、こんなにいい仕事はありません。

何より楽しいんです!

(まだ間に合うにゃ)

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