「侍タイムスリッパー」の終盤にこんな台詞があります。
「今日がその日ではない」
これは映画「トップガン・マーベリック」の台詞
「これからは無人機の時代だ。
君たちパイロットは絶滅する」
「そうかもしれません。
でも、今日じゃない」
を引用したものだと言われています。
時代劇は将来廃るかもしれない、でも今日がその日ではない、
と高坂新左衛門は言います。
そして最後に、風見恭一郎に彼女を誘えよと促されて、再び、
「今日がその日ではない」と言って立ち去ります。
これ、私はずっと「今日はその日ではない」だと思っていましたが、字幕付きで観たら、
「今日がその日ではない」
となっています。
この「が」と「は」はどう違うのか?
外国人に日本語を教える時、私はこう説明します。
「が」と「は」の違いは、
言いたいことが、前にあるか後ろにあるかの違いです。
「今日がその日ではない」という文章は、「が」の前の「今日」が言いたいことです。
つまり、時代劇はいつか廃るけど、それは「今日」ではない。
「が」は格助詞で主語を表します。
私が行く。あいつが犯人だ。これがその証拠だ。
「私」「あいつ」「これ」が言いたいことです。
一方、
「今日はその日ではない」は、「は」の後の「その日ではない」が言いたいことです。
「は」はとりたて助詞といって、英語でいうと「as for」や「about」に相当する、トピックを表す助詞です。
寿司は嫌いだ。あいつは敵だ。これはシロだ。
「嫌いだ」「敵だ」「シロだ」が言いたいことですね。
なので、私はこの台詞を「今日はその日ではない」だと思っていたのですが、監督は「今日じゃない」を強調したかったのでしょう。
では例題です。
①「これは鴨ではない」と ②「これが鴨ではない」はどう違うか?
①は、この鳥は鴨じゃないよ。
②は、これが鴨南蛮なわけないだろッ。
あ、ちょっと違うか・・
ぜひ皆さんも、日本語の「が」と「は」に注意してみてください。