三月の下旬の陽気と予報士の言ふに騙され寒さ身に染む
裸木の梢ゆれ舞ひ楠の葉の身悶ゆる朝春の遠かり
時として蛍か星かまな裏に現れ消ゆる齢となりぬ
(齢=よはひ)
元来は虚弱に生れし吾なれどいつしか風邪もひかずになりぬ
(生れ=あれ)
野茨の赤き実愛づる女ありて照柿色といふも床しき
(女=ひと、照柿=てりがき)
折々に縁と頼み十巻の国語辞典を繙き来して
(縁=よすが)
*
―波平さんの見沼の「霜の朝」の写真に寄せて詠める
淡雪のとけし見沼の地を白く雪と見まがふ霜覆ひける
身も凍むる朝に独り自転車をこぎ行く影の霜に映りて
明けぬれば裸木の群れの影長く白き大地の霜に覆はる
*
―写真家植田正治の初めての回顧展を娘と観て詠める
鳥取に根ざしねざして突き抜けぬ都写美で出会ふ植田正治は
(都写美=東京都写真美術館)
<情景の光景>といふ連作の題こそ衝かむ植田のアートを
裸木の梢ゆれ舞ひ楠の葉の身悶ゆる朝春の遠かり
時として蛍か星かまな裏に現れ消ゆる齢となりぬ
(齢=よはひ)
元来は虚弱に生れし吾なれどいつしか風邪もひかずになりぬ
(生れ=あれ)
野茨の赤き実愛づる女ありて照柿色といふも床しき
(女=ひと、照柿=てりがき)
折々に縁と頼み十巻の国語辞典を繙き来して
(縁=よすが)
*
―波平さんの見沼の「霜の朝」の写真に寄せて詠める
淡雪のとけし見沼の地を白く雪と見まがふ霜覆ひける
身も凍むる朝に独り自転車をこぎ行く影の霜に映りて
明けぬれば裸木の群れの影長く白き大地の霜に覆はる
*
―写真家植田正治の初めての回顧展を娘と観て詠める
鳥取に根ざしねざして突き抜けぬ都写美で出会ふ植田正治は
(都写美=東京都写真美術館)
<情景の光景>といふ連作の題こそ衝かむ植田のアートを