成瀬たかこブログ

まちづくりや日々のあれこれ、不定期発信しています。

同数なのに「賛成多数」? (2)その問題点

2016-09-22 | 日記

 15日の文教厚生委員会での採決。委員長が間違いを認めてやり直したんだし、委員がもともと示そうとしていた「賛成」ができたんだし、何が問題なの?と思われる方もありましょう。何が問題なのかをわたしなりに整理しておきます。

1.委員長が実際とは違う採決結果を宣言、は問題あり!

 委員会の委員長は、その会議の進行役です。スムーズに進行できるよう、丸読みすれば大丈夫なように、議会事務局が用意した読み原稿があります。しかし「質疑はありませんか。」と読んだあとには質疑を申し出る者がいないか、「賛成の委員の起立を求めます。」と読んだあとには起立している委員は何人いるか、委員長自身の目と耳でもれなく確かめてから次の読み原稿に進まなくてはいけません。今回の委員長は採決の時、読み原稿だけを見ていて、自身の目で起立している委員の数を全く確かめることなく「賛成多数です」ときっぱりと言ってしまいました。
 この委員会のこの議案の場合、委員の党派であらかじめ賛否の予測ができたので、事務局の原稿には想定されている「賛成多数」と書いてありました。しかし実際の起立の委員を目視確認することなく読み原稿に書いてあるものを事実と違うのに気づかずそのまま読み上げるというのは、委員長の仕事のし方としてありえないことです。

2.1回目と2回目で委員が賛否を変えた、は大問題!
                                                                                                                                                                                                                                                                                  「東浦町議会会議規則第81条 議員は、自己の表決の訂正を求めることができない。」
 記事に登場する委員の賛否の変更は、この81条の「自己の表決の訂正」に当たります。
 議会の存在目的はその町の意思決定をする「議決」であり、「議決」は問題に対する議員ごとの賛成・反対の意思表明の集約ですから、議員(今回は委員会でのことなので、「委員」としています)の最も重要な役割は、議案の一つ一つに賛成・反対の答えを示すことです。曇りなく賛否の意思が決められるように、委員会では回数・時間の制限をかけることなく委員の納得のいくまで質疑ができるルールになっています。
 このことからもわかるように、議員の賛成・反対の意思表示は一つ一つが大変重みがあります。「さっきの採決、ああ言ったけどやっぱり変えるわ」でいいですか?もしそんなことが許されるなら、議決の結果は不安定なものとなり、混乱を招き引いては議会の権威を失うことになってしまいます。このため、いかなる理由があってもたとえそれが錯誤に基づくものであっても、会議規則にあるとおり、訂正は許されません。記事中の「ほかの議案審議のことを考えていて採決に気づかない」などということがあっては…。
 しかし、この委員の「表決の訂正」行為は、2回目の採決という絶好のチャンスを与えることとなった、委員長の採決確認すっとばしが引き起こした事態なのです。委員長自らが委員の賛否の変更をあえて促すなんてことは、委員長の行いとして絶対にあってはならないことです。

3.審議中の議案とは別の議案の採決を行う、は問題!

 そうは言っても、現実問題として委員長が賛否の状況を「見間違え」たり(「見ていなかった」はあり得ない)、委員の賛否の態度表明が曖昧で判別が困難な状況も絶対に無いとは言い切れません。その場合の対応として、①出席委員が異議申し立てをし委員長が応じる、②委員長が起立者(=賛成者)の認定が困難であったと宣言、のどちらかの手順を経て、採決のやり直しは可能です。ただし、この①②についても、委員長が次の議題に移ると宣告する前でなくては成立しません。
 今回の採決やり直しのタイミングはどうだったのか、事務局に保管されている音声記録を何度も聞き直し確認してみました。問題となっている「認定第1号 一般会計決算の認定について」は「原案通り認定と決定しました。次に認定第2号を議題とします。補足事項があれば説明願います。」と委員長が認定第1号については終わったことを宣言し、議題は次の認定第2号に。担当課長からの補足説明も終わり、これからまさに質疑に入ろうというタイミングで突然の長い沈黙(マイクに拾われていないが何人かが小声で話している気配あり)のあと、委員長が発したのは「申し訳ございません。再度採決を行います。本案を原案通り認定することに賛成の委員の起立を求めます。」…え?「再度」とは言っているものの、この場面での「本案」はすでに「認定2号」ですよ。委員長は何をもって「本案」と言っているのでしょうか?もうむちゃくちゃです。
 このような状況で行われた、認定第1号に対する2度目の採決。これが成立するなんて、ありえないことです。

 

 新聞では、「委員長が同数を『賛成多数』と誤って議事を進行、やり直していたことが分かった。二十日、西尾委員長は不手際があったとして各会派に謝罪した。」とあります。この謝罪は、20日午前に予定されていた議会運営委員会の開始直前、議会運営委員と傍聴者(いずれも東浦町議会議員)に向けて行われたものです。謝罪のことばも、事の重大さをこの人は本当にわかっているのだろうか?と傍聴者として聞いていてわたしは首をかしげたくなるようなものでした。
 住民にとって大事な「町の意思決定」を担っている議会の、まさに表決の現場で起こっていること。
 「わたしの税金で雇っている議会、議員がこの状態で納得できるか?信じて任せられるか?」
 住民は怒っていいと思います。