『ウラオモテ人生録』(色川武大著)によると、良いことと、悪いことは、バランスが取れます。
プロのばくち打ちだった著者は、運を味方に付け、勝負に勝つため、私生活を厳しく戒めていた。ばくちに大勝ちしても、浮かれない。むしろ私生活で自分をわざとおとしめる。貧乏になればなるほど、ばくちに勝てる。そんな感じです。
悪いことがあると、次はいいことがある。その逆もしかり。悪いことの程度が大きいと、いいことの程度も大きい。悪いことの程度が小さいが長く続くときは、小さないいことが長く続いたり、あるいは一気に大きないいことに遭遇したりする。
これを、「ヤジロベエ理論」と勝手に呼んでいます。ヤジロベエの両手の長さと、両手の重りで、バランスが取れる、ということです。株の世界では「谷深ければ山高し」という格言があるそうです。「贈る言葉」にも、「人は悲しみが多いほど人には優しくできるのだから」という歌詞がありますよね。
おいしい牛肉は、コレステロールという悪い面がある。ジョギングは気持ちいいけど、捻挫のリスクがある。ビールはおいしいけど、アル中になるかもしれない。エスカレーターは便利だけど、運動不足を招く。
地方の学生にとって、東京の大学は刺激が多いけど、父母の庇護の元から離れなければならない。父母の庇護がないのはツラいが、自立のきっかけになる。
火力発電による電気は便利だけど、CO2を排出する。水力発電による電気は便利だけど、ダム工事の犠牲者や渓谷美の破壊がある。原発による電気は便利だけど、放射能のリスクがある。
文明の発達は生活を便利にしてくれるけど、人間は堕落する。
『ウラオモテ人生録』には、翌日のマージャンでツキを呼ぶため、あえて寒風のなか路上に寝床を求めた、という記述がありました。印象的でした。
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