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MY研究所

(えむわいけんきゅうじょ) ピアノの先生の日常と、音楽教室や音楽についてのお話。

実は大人向け

2009年05月07日 | 音楽

フランス近代の音楽が好きです。

あまり、ズシーン・どがーん とくること無く
軽やかで、色彩豊か
聴きやすいので、子どもさんにも人気。
        
生徒さんに人気のフランス近代の曲は
やはりドビュッシーの作品が多いです。
中級くらいから弾ける作品が多いことも理由の一つでしょうね。
人気の筆頭は「ベルガマスク組曲」の「月の光」。

これ、もちろん私も昔弾きましたが、
曲のタイトルと音楽とが ぴったりだなあ、
イメージしやすい曲だなあ
と うっとりして弾いていたものでした。

ですから
ドビュッシーが「ベルガマスク組曲」をまとめたばかりの頃
月の光」は、もともと
感傷的な対話」というタイトルだったと知って
すごく、びっくりしたものです。

うーん、そう思って聴けば、そんな音楽でもありますよね。
夜、昔恋人同士だった二人が向かい合って
もう昔には戻れないけれど…と語り合うような。

分かった上で、あらためて弾くと
また演奏が変わっていって、おもしろそうです。


もっとも
子ども時代、そのタイトルだったら
きっと訳がわからなかっただろう、とも思いました。

「お子様」にはわからない世界、ですよね?


続・カスタネット考

2009年03月03日 | 音楽
カスタネットを日本語で何というか。

カスタネットについて、まず音楽辞典を引いてみます。

【castanet(英語)】
栗の実の形の木片をえぐり、2枚貝状に仕立てた楽器。
語源はスペイン語の castana(栗の実)。
中世からスペインで多用され、
16世紀頃ヨーロッパに広まった、とあります。
スペイン語では、castaneta。

ここまでは、ウィキペディアにも載っていますが
知りたいのは、歴史じゃなくて日本名ですから
今度は、西和辞典を引いてみます。

【casraneta(西和辞典)】
楽器のカスタネット
指つづみ(要するに指パッチンです)
カスタネットの音 及び、栗のパチパチ爆ぜる音
指の関節をポキポキ鳴らす音
…こちらは、形よりむしろ 音に関係している感じですね。

とはいえ、ここでも日本名は載っていない。

発想を変えてみます。
現代は「カスタネット」が普及していますから
日本名が必要ない。

ならば、昭和初期の英和辞典ならどうだ。

【1933年発刊の英和辞典】
カスタネット。四竹の類

出た。四竹(よつだけ)
琉球舞踊で使われている、あれですか?

【四竹(江戸時代の言語辞典)】(←駄目押し)
4枚の竹の板を両手に2枚ずつ持って打ち合わせる楽器。
承応元年、長崎から一平次という者がもたらした。

結論
手のひらで打ち合わせるカスタネットは「(西洋)四竹」
柄の長いタイプのカスタネットは「鳴子」
で よかろうと思われますが
いかがでしょうか。

オーバード

2009年02月18日 | 音楽

昨日紹介した「ピーターラビット ピアノの本」
3巻の最後に
オーバード(Aubade)という曲が載っています。
解説には、朝の気分・雰囲気を表した曲だと書かれていますが
生徒さん、
「先生、これ何語ですか?」
「オーバードなんて聞いたことないですよね?」
「『オーバード』って朝っていう意味ですか?」
ええと…

一週間お待ちください。
来週までにきっちり調べてまいります。
        
で、調べてみました。

ウィキペディアで検索してみると
【aubade】(仏)
夜明けに分かれる恋人達の歌(またはそれを歌った詩)

シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」で
追放の身となったロミオとジュリエットが
こっそり愛を誓い合い、夜明けに別れる場面がありますね。
別れたくないジュリエットが、朝の鳥の声に
あれは雲雀ではないわ。ナイチンゲールの声よ
まだ夜明けではない、とロミオに呼びかける詩
あれがaubadeだということです。

日本ならさしずめ
 平安時代の「後朝(きぬぎぬ)の歌」でしょうか。

音楽のオーバードだと、朝の雰囲気の曲ということで
プーランクやラヴェルの作品が上げられていました。
(ラヴェルの『道化師の朝の歌』など)

念には念を入れて図書館へ。
仏日辞典を何冊か比較して調べてみます。
すると、ほぼ共通して
「朝の歌、朝の曲」
ある人に敬意を表すため、家の戸口や窓下で
夜明け又は午前中に行う演奏
と、ありました。
セレナーデみたいですが、時間帯が違いますね。

そもそも「aubeオーブ」に「夜明け、黎明、曙光
という意味がありました。
(そういえば、そんな名前の化粧品がありましたね)

なーるほど。

ピーターラビット ピアノの本

2009年02月17日 | 音楽
大人で初めてピアノを習う生徒さんに
しばしば使うテキストで
「ピーターラビット ピアノの本」(北村智恵著/全音楽譜)
という曲集があります。

その名の通り、
『ピーターラビットのおはなし』の名場面のイラストが
一曲一曲に載っており
それにあわせて北村智恵さんが作曲した小曲や、
イギリスの民謡を編曲したものが入っています。
        
イラストが、子どもっぽ過ぎないで
 大人が持っていても、恥ずかしく感じないこと
曲も、絵本の世界をイメージしているので
 やさしくても、きれいな作品が多く
(知っている曲とはいえ、もういい大人なのに
『ちょうちょ』とか『チューリップ』は
 やはり抵抗がある、ということですね)
 表情・音色を考えて弾けるという点で
使った大人の生徒さんには、好評です。

全3巻のシリーズなのですが、
この本でレッスンを始められた生徒さんが
もうすぐ3巻終了となりまして
「えー、これで終わりですか?続きがあったらいいのに…」
とおっしゃられました。

続き…もしあったら、いいでしょうね。
そもそも、この本を購入したきっかけが
『イラストの美しさに惹かれて』でしたし
他の導入書ではなかなか無い、楽しい曲が多いです。

もっとも
『角音符』(弦楽器の様に倍音を使う奏法となる)が出てくるわ
「オーバード」というタイトルに
生徒さんから『これ、どういう意味でしょう?』と
つっこまれるわで
使用前に、研究が必要な本でもありました。

一応、簡単な解説は載っていますが
うちの生徒さんは更に突っ込んで質問してきますから。
(レッスンで、わからない事は、どんどん質問してください。
 私も知らない事柄や、度忘れしていた場合は調べてきます。
 と宣言しているので)
        

3月27日(金)京都コンサートホールで
この「ピーターラビット ピアノの本」の曲による
朗読とピアノによるコンサートが催されるそうです。
一般3000円/小学生以下2000円/当日券3500円。
興味のある方は、楽譜を用意して
聴きにいってみられては

ペダルに悩む。

2009年01月26日 | 音楽

これまで敬遠していたメンデルスゾーンに
今年は改めてチャレンジしてみよう。

1月から ちょこちょこ作品を弾き始めているのですが

えーと、やっぱり わかりにくい…。

「厳格なる変奏曲」みたいな作品は、
『こう弾くべきであろう』と方向性がわかりやすく
テクニック的には楽な「無言歌集」の方が、
むしろ バランスが難しいといいますか。

なんだろう。
お寿司で例えるなら
シンプルだけど、素材の良さ(新鮮や質)を
活かせば活かすほどに おいしくなる
『マグロの握り』が「バッハ」だとしたら

「メンデルスゾーン」って、『卵焼き』な感じ。

…けなしているわけではありませんよ、決して。
私は卵焼きが大好きです。

どちらも、調理の腕が悪ければ
不味くなってしまう事は同じなのですが
これ以下は不味い、これ以上ならおいしい、
という線引きが、卵焼きって微妙ではないですか?

ともかくも、響きのバランスが難しい。
音が多くて、連打が多くて、オクターブ奏が多い。
これだけ、音がありながら
  ハーモニーはあっさりしている印象。

――なのに、バランスが悪いと
濁って響いてしまうのですよねえ・・

ペダル記号の無いところも、
ペダルが必要だろうと思われる部分が多く
じゃあ、どこまでペダルが必要か?
もう、悩む 悩む。

で、私にしては珍しく
初めからCD聴き比べ中です。

メンデルスゾーンって、
「器用で頭のいい人」のイメージですが
結構、細かい点については大雑把だったのでは…
などと思いはじめています。


ま その1(休符)

2008年12月09日 | 音楽

バスティンの「ピアノパーティー」シリーズは
ABCDの4段階からなる導入テキストですが
プレリーディング(五線を使わない)段階A・B巻では
『休符』というものが 全く出てきません。
その代わり、音符の長さは正確に守るように教えるので
必要な長さだけ弾いて、音を止めた後には
自然 次に弾くまでの『間』が 出現します。

この『間』が 休符の占める場所

テキストでは五線譜導入のC巻から 休符が現れますが
休符が出た時に 初めて間を意識するのではなく
それまでの体験の中で、音符を正確な長さで演奏すると
「ここに 静かな時間ができる」という事を
実感してもらうようにしています。

ここを 初めからしっかり感じておくと
後々 五線譜の楽譜に入って、休符が出てきても
音の最後まで聴いて、『間』も聴けるようになるのですね。
        
ピアノの生徒さんって、打鍵する瞬間は よく意識しているのに
その後のびている音、その音が消える瞬間は
意外と聴いていないものなので、ここは かなりこだわります。

初めの一歩から。五線に入る前に。
美しい響きと、静かな『間』を聴ける子に。

ねこふんじゃった いろいろ

2008年12月08日 | 音楽

おそらく ほとんどの人が 楽譜を見たことがなく
他人の弾く様子を見て 弾き方を覚え、演奏する
ねこふんじゃった」。
地方によって、バリエーションがあるらしいのですが
ついでに言うなら、国によって タイトルも違う

のみのワルツ(ドイツ・ベルギー・オーストリア)
カツレツ/カツレツ・ワルツ(フランス/スイス)
箸(イギリス・アメリカ)
チョコレート(スペイン)
ねこのマーチ(ブルガリア)
公爵夫人(デンマーク)

ある日 図書館で見つけてしまいました。

「ねこふんじゃった ~ピアノで遊ぶ絵本」(永田栄一著)

へえ、絵本?と思って手に取ってみると
最初に『ねこふんじゃった』の楽譜があり
次のページから
いろんなネコの イラストと共に
『ねこ ねこ ダンス』『かくれんぼねこ』
『ねこの目ラプソディー』『ねこの手かりて』
『ねこのパーティー』『よっぱらいねこのポルカ』…etc.
などの 10曲のバリエーションと、
♯♭2個までの 長調・短調への移調バージョン
が 載っていました。

楽譜を読める人が これを読んで弾き方を覚え、
『後は 楽譜なんて見ないで 遊びましょう』
という本ですね(笑)。

初版を確認すると 1987年でした。
今でも 購入できるのかな?と思って調べてみましたが
さすがに20年以上も前の 本ですから
手に入れたかったら、古本屋さんで探すしかなさそうです。

「ロココの花束」レポート

2008年12月03日 | 音楽
宮廷舞踏のイベント、「舞曲の花束 2」

後半2部が「ロココの花束」と題しまして
全てモーツァルトの作品による音楽と舞踏です。
        
オペラ『ドン・ジョバンニ』より メヌエット
ディヴェルティメント第17番より メヌエット
ドイツ舞曲(KV.600-3)
バレエ『レ・プティ・リアン』より パスピエ/ガヴォット
コントルダンス(KV.609-1)
            
『メヌエット』
バロックに比べて、洗練された優雅さがあります。
バロックのメヌエットが、2小節6拍を1単位として
1・2・3・4・5・6の うち
1   3・4・5  の4ヶ所でステップを進めるのに対し
ロココのメヌエットは
1・2・3・4・5・6 のうち
1     4・5   と、ステップが減ります。
(2・3)の静止している「溜め」の部分に
独特の優雅さが感じられます。狂言と能みたい。

『ドイツ舞曲』
どうやら後期の『アルマンド』らしく
初期の バスダンスだった頃の荘重さはどこへやら
テンポ速めで、ガヴォットのような跳躍がよく入ります。
しかも、ポイントは『手をずっと繋いだまま踊る』こと。
手をどんどん組み替え、身体を入れ替え
「なべ なべ底抜け」みたいな動きが出てきたりします。
あまり男女が接近できなかった時代、
このダンスなら堂々と近づけるので、人気が出た模様。

この講座で、バロックダンスを習っている友人に、
「この当時の“レースごっちゃり”の衣装で
 あんなに 腕を交差させたりしていたら
 衣装の袖とかが からむんじゃないの?」と尋ねたら
『そこがイイ』って事で、人気だったらしいよ、と。
なるほどね…
後の「ワルツ」へつながるダンスだというお話でした。

『コントルダンス』
ステップ自体は、素直に拍に合わせて動く感じです。
8人で『2人ずつ・4人ずつ・8人で輪になって』と
フォーメーションを次々に変えながら踊っていました。
傍でみていると、万華鏡のようです。

踊る方も楽しいけれど、見ている側を楽しませる要素が強い
というのが、古典舞踏の特徴のようです。
貴族の教養だったからかもしれませんね。

バロックの花束」レポート

2008年12月02日 | 音楽
          
先月、見てきました宮廷舞踏のイベント
「舞曲の花束 2」のレポートです。

2部構成となっていまして
第1部が「バロックの花束」。
バッハ・ヘンデル・ラモー・リュリ など
バロック時代の作曲家による音楽と舞踏です。

主に J・S・バッハとヘンデル。
『アンナ・マグダレーナの音楽帳』から
メヌエット・ミュゼット
『フランス組曲第1番』クーラント
『フランス組曲第5番』ガヴォット
ヘンデル
『クラヴサン曲集第2巻』より メヌエット・サラバンド

パッサカーユ/パスピエ/ラ・フォリア については
あまり一般的ではないので割愛。
        
どの曲も、基本2人ずつ(男女ペア)のダンスです。
もっとも、この日の公演では
メンバーの都合上、女性のペアで踊っていましたが…
この時代の舞踏会は、
『身分の高い人から順に 1組ずつ踊る』という習慣で、
踊っている二人を、周囲の人が眺めている状態になります。
(そりゃあ、皆 必死になって練習するわけです)

どのダンスも
まず正面(王様がいる方向ですね)に向かっておじぎ
次に パートナーに向かっておじぎ
それから 踊り始めます。

基本となるステップは決まっていますが
ホールを二人じめ(?)して使えるわけですから
近づいたり離れたり、円を描く様に動いたり
ホールに線対称や 点対称の図形を描くように
フォーメーションを変えつつ踊る、という形になります。

ステップは 全体に小さくて軽やかな印象。
人前で、男女がくっつくのは よろしくない
という事情もあり、パートナーは どんなに近づいても
軽く手を伸ばして 手をつなぐくらいです。

        
以前書いた「バロックダンスについて」の補足としては
『クーラント』
1拍目と3拍目に拍を感じる舞曲で、ステップもそこで踏むが
今回のような ゆっくり目のクーラントの場合、
2拍目でも ステップを踏む。

『ミュゼット』
基本、ブーレのステップで踊る(パ・ド・ブレ)。
フレーズの勢いがあるところに跳躍が入る。
例えば
ミュゼット(BWV Anh.126)中間部分なら
レミ レミ ー の
赤字部分で跳躍しながら進みます。

『アルマンド』
今回踊られませんでしたが、
バッハのフランス組曲の アルマンドは
やはり器楽曲のための作品なので、踊れないとのこと。
時代が下ると、荘重というより軽快な音楽として発展します。

全体的には、軽やかでスピーディーという感じでした。

        
明日は、後半「ロココの花束」について。


バーナム ピアノテクニック

2008年11月22日 | 音楽
      
『バーナム ピアノテクニック』(全音)という
アメリカの作曲家エドナ・メイ・バーナムさんが作った
テクニックの本があります。
      
私の手元にあるのは
ミニブック・導入書・1~4巻・全調の練習 の 計7冊。
この本の監修をされた、中村菊子さんの講座に参加したり
ミュージックデータも 全部購入して
一時 よく使っていたのですが
レッスンに バスティンの「ピアノパーティー」を
使い始めてから、ほとんど使わなくなりました。

「パーティー」シリーズは 最初、五線譜を使わないので
いきなり五線が出てくる本と 一緒には使えませんし
3冊セットで使うように組み立てられているテキストに、
もう1冊増やそうという発想が出なかったのです。

ところが ここ数年、急にまた よく使うようになりました。
            
バスティンのシリーズにも、テクニックの本があるのですが
こちらは完全に、『テキスト対応』のテクニックなので
テキストの曲を弾くためには十分だけど
それ以外の曲を弾くためには、かみ合わない事がある
と 感じることが多くなったのです。

幸い バスティンの本も、基本は大譜表の楽譜ですから
五線譜に入ってしまえば、並行して使えます。
また、理解の早い生徒さんであれば 
テキストで五線譜に進む前に、バーナムで先取りして
五線の読み方を教えてしまうこともできます。

「バーナム」の特徴は、
初めから大譜表を使っていること
イメージをつかみやすいタイトルと絵がついていること
進み方に無理が無いこと
テクニックのバリエーションが 豊富であること
表現が、演奏する側に 自由に任されていること

特に、魅力的なのは「演奏の表現の自由さ」。

私は この本を生徒さんに弾いてもらう時
『音楽的に、魅力的に聴かせるためにはどう弾けばいいか』
考えてもらいます。
スタッカートもいろいろ、レガートな歌い方もいろいろ。
同じ様な動きでも、ハーモニーが違えば 変えてみる。

見た目のシンプルさにだまされず、
『古典派やロマン派の曲の一部を切り取ったモノ』と思って
音楽的に弾くことに こだわりたい。
そんな本です。