【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

最大多数の最大幸福

2022-06-14 14:23:46 | Weblog

 一番手っ取り早いのは、全国民を麻薬漬けにすること。

【ただいま読書中】『逝年』石田衣良 著、 集英社文庫、2011年、429円(税別)

 「娼夫クラブ」というきわどい場所を舞台にしての「闘病純愛もの」として私は前作の『娼年』を読みました。巻末で警察の摘発を受けてクラブは閉鎖、オーナーは逮捕されてしまいましたが、本作では、ちょっと前には何も知らなかった大学生のリョウがクラブの立て直しという難題に挑戦することになります。
 当然娼夫と客(女性)とのセックスは濃密に描写され続けますが、著者は社会的なテーマ(性同一性障害、「普通」とは何か、など)を盛り込むだけではなくて、副次的なテーマとして「女性の加齢による肉体的変化を、いかにポジティブに描写するか」もじっくりと書き込んでいます。そして、全体としてみたら、前作の「闘病純愛」をきちんと成就させ、さらにまるで「教養小説」のようにリョウの人格的社会的成長も描く、という「フルコースをひとつのお弁当箱に盛り込んだ」ような作品に仕上げています。で、そこではセックスが実にスパイシーな香りを漂わせているんですよね。
 「普通」に埋没することで安心を得たい人には、向かない作品です。でも、「普通」ってなんでしたっけ?

 



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