【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

人類はどこに向かっているのか?

2018-09-22 07:04:14 | Weblog

 「不動の大地」と言いますが、地球は自転しているから動いています。その速度は赤道付近が一番速くて時速1674km。地球は太陽の周りを公転していますが、その速度は時速10万8千km(秒速30km)。太陽系自体は銀河の中を移動していますが、その速度は時速86万4千km。
 これらを全部足し合わせると、私たちはとんでもない速度で移動しつづけていることになります。もっとも光速は秒速30万kmだし宇宙は広大だから、“誤差の範囲内"とも言えるのですが。

【ただいま読書中】『銀河Ⅱ』祖父江義明・有本信雄・家正則 編、日本評論社、2007年(18年2版)、2800円(税別)

 2006年から「最新の研究成果を伝えよう」と「シリーズ現代の天文学」が始まりました。本書はそのシリーズの第5巻『銀河Ⅱ』として出版されましたが、それ以後も天文学の進歩は止まらず、現時点での「最新の知見」を紹介するために第2版が出版されました。
 『星界の報告』(1610年)でガリレオ・ガリレイは「天の川に望遠鏡を向けると、無数の星が見えた」と報告しました。紀元前5世紀にデモクリトスが述べた推論が、望遠鏡によって確認されたのです。カントは思考の世界で「天の川はある中心の回りに回転する恒星の集団(島宇宙)で、その外側にはまた別の島宇宙がある」と着想します。その後詳しい光学観測によって銀河の形・大きさ・星の分布や運動についてわかってきます。そこに電波観測が新しい知見をもたらします。
 「銀河の中心」については「巨大ブラックホールがある」とよくSFで描かれますが、実際に数千万kmのブラックホールや、数百光年の大きさの中心核円盤や宇宙ジェットなどで、“沸騰"しているそうです。「pc(パーセク=3.26光年)」や「kpc」の単位が平然と使われているのですが、なんだかでかすぎてイメージが全然浮かびません。こういった姿は赤外線・X線・ガンマ線などで“見る"ことでわかってきたそうです。となると、将来ニュートリノや重力波が観測に使えるようになったら、さらに別の姿が見えるようになるのかもしれません。
 それぞれの星の固有の運動速度や方向を決定することで、銀河がどのように形成されたのかの論争がおこなわれています。なんでも「急激な収縮」と「ゆっくりした収縮」の二つの説が争っているのだそうです。地球から一歩も出ずにどうしてそこまでわかるのか(わかったと思えるのか)、私には不思議でなりません。人間の知性の働きは、謎です。
 恒星は生命が尽きるとその内部で生成した重金属を宇宙に放出します。銀河は進歩していますが、その過程を重金属の分布によって知ることが可能です。これを「銀河の化学的進化」と呼ぶそうです。そして、一つ一つの銀河に天文学者は「運動」と「化学組成」でそれぞれの「タグ」をつけて分類しています。生物学の分類と同じような発想です。
 こうしてみると、私たちの太陽系が銀河の中心からずいぶん外れたところに位置していたのは、観測のためには幸いでした。もし中心に近かったら視野が相当妨害されていたでしょうから。僻地には僻地の利点があるようです。




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