【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

光の形と闇の形

2015-08-21 07:19:32 | Weblog

 光にも闇にも「形」はありません。そこに存在するだけです。ただ、闇の中に一筋の光、は存在できますが、光の中に一筋の闇、は存在しないようです。一体何が違うのでしょう?

【ただいま読書中】『陰陽師 付喪神ノ巻』夢枕獏 著、 1997年、文藝春秋、1238円(税別)

 シリーズ第3巻です。前2巻とは違って、本巻の作品はほとんどが「オール読み物」に発表されています。文藝春秋が本気になった、ということでしょうか。
 相変わらず
》「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。
であちこちに出かけては平安の妖異と出会い続ける安倍晴明と源博雅の名コンビですが、本巻ではついに、当時の文化的ビッグイベント「村上天皇の歌合わせ」がまともに取り上げられます。ただしその後日談ですが。しかもこの話ではお決まりのフレーズである
》「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。
が物語の発端ではなくて、物語の締めとして効果的に使われていることが印象的です。私はこの歌合わせには興味があるので、楽しく読めました。コミックの方の歌合わせのシーンも、豪華で壮大なイメージが重ね合わされていてとても魅力的なんですけどね。
 後書きを読むと、著者は本シリーズを“原作”としてコミック化した岡野玲子さんを非常に意識しているようです。なにしろ「原作」からみごとに別の世界を築き上げていますからねえ。あれはあれでまたとんでもなく魅力的な本なのです。「陰陽師」の小説とコミック、どちらが好きか、ともし自問したら、私は答えに窮してしまいそうです。この問いに、源博雅だったら真面目に悩んで絶句しそうですが、安倍晴明だったら「どちらでも良いではないか」とか「どちらも呪だ」とかさらりと言ってしまいそうです。
 そうそう、「池」が「汝」になっていたりの誤字や文章の通りが悪いところがありました。文庫本では直っているかな?



コメントを投稿