【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ブレイクする

2011-11-01 19:00:12 | Weblog

 何が壊れたらいいのかな?

【ただいま読書中】『先史時代の沖縄』安里嗣淳 著、 第一書房、2011年、3500円(税別)
ISBN:978-4-8042-0781-0 C3320
 沖縄は、約160島の列島ですが、見方を変えると「広大な海洋」とも言えます。文化的には「北琉球圏」(九州の南から沖縄島・久米島あたりまで)と「南琉球圏」(宮古島から台湾近くまで)が先史時代に形成されました。これは当時の文化伝播が有視界航行によっていたことによる、と著者は述べています。
 日本列島に人が住み始めたのは3~4万年前と言われています。沖縄にも旧石器時代に人が住んでいたかどうかは、まだ証拠がろくに見つかっていません。沖縄のほとんどの島々で新石器時代の遺跡が見つかっていることから、6500年くらい前から人がいたことは確実です。石器と土器を使用する集団が移住してきたのでしょう。ただし、この「新石器時代」は、日本の平安時代まで続きました。「弥生時代」との交流はなかったようなのです(当然、古墳もありません)。ついでですが、古代の指導者たちがグスク(城)を作り、それらが統合されて大型グスクが構えられるようになったのが14世紀頃、その勢力争いから15世紀前半にひとつにまとまったのが琉球王国です。同じ時期に海洋貿易も盛んになっています。(薩摩の侵略は1609年でした)
 遺跡で重要なのは「水」です。「仕事場」としてのラグーン、生活用水として重要な真水、これを重視して人は住んでいました。はじめは海岸沿い、それからだんだん内陸へと居住圏は拡がっていったようです。縄文海進や海退が居住地(遺跡)の位置にどのくらい影響を与えたのか、ちょっと興味が湧いてきます。一時期話題になった沖縄の「海底遺跡」がかつて地表に存在していた時期は何千年前なんだろう、と思いましてね。
 前期旧石器捏造事件が沖縄にも影響しています。当時「考古学的にきちんと分析されていない」と「前期旧石器」に対して批判論文を発表した学者は「異端」「少数派」に追いやられまともな活動ができない状態になっていました。その一人小田静夫は「日本」の旧石器研究を断念し、黒潮圏と沖縄の調査研究に転じました。著者は小田氏に委託して沖縄県史の「港川人と旧石器時代の沖縄」を編集してもらっていますが、そこでは「日本最古の石器文化は約3~4万年前」となっています。(で、こんどの「事件」で小田氏は研究者として“復権”したそうです……というか、「50万年前の石器文化」って、まだミトコンドリア・イブはアフリカを出ていませんよね)
 そうそう、本書の最後には「海底遺跡説」批判がしっかり書かれていました。私自身はあれが人工物だったら楽しいな、とは思いますが、やはりここで優先されるべきはロマンではなくて科学だろう、と思いますし、そういった目で見たらあれは自然の造型、とする方が正解ではないか、と思っていますので肯きながら読みました。ロマン優先で「日本に50万年前に石器文化が」と言ったのと同じ轍を踏んでもいけませんしね。

 ところで、先史時代どころか、有史時代の沖縄についても、日本では広く知られていましたっけ?




コメントを投稿