【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

公私と生死と/『奇想の20世紀』

2009-07-31 06:54:16 | Weblog
 「自由」と「平等」を両立させることは難しい、は以前書きました。
 ところで、「公私」と「生死」と「平等と自由」はそれぞれ対応しているように思います。「私」は死ぬし、プライベートでは自由でありたいと思います。しかし「公」は死なないし平等を是とします。
 ということは、「自由と平等」とは「死すべき自由な私人が集まっていかに個人の寿命を越えた公(パブリック)を形成するか、のスローガン」なのかな。

【ただいま読書中】
奇想の20世紀』荒俣宏 著、 NHK出版、2000年、2200円(税別)

 本を開く前に「惜しいなあ」と私は呟きます。定価が2000円(税別)だったらキリが良かったのに、と。
 19世紀末には「未来予測」が大ブームでした。たとえば万国博は、「未来の予測」を具体的にヴィジュアル化するものでした。そしてそこで予測された「未来」は20世紀の間に次々実現されていきます。
 19世紀の「未来予測家」として有名なのはジュール・ヴェルヌやH・G・ウェルズですが、著者はロビダという風刺作家に注目しています。そこではきわめて具体的に「ハイテク」によって薔薇色となった「未来の日常生活」が描かれますが、同時に、細菌兵器や毒ガスなどの新兵器によって戦われる世界大戦も描かれています。リアルに暗い未来も予測されました。1910年のハレー彗星です。この接近で地球は彗星の尾に接触することが予想され、観測で彗星の尾にシアンが存在することから「地球最後の日」が予測されたのです。
 万博では産業」「流通」が重要なキーワードでしたが、1900年パリ万博では「エンターテインメント」が加わりました。20世紀はエンターテインメントの世紀になる、という予言だったのです。その他にも本書にはたくさんのキーワードが登場します。「スポーツ」「特許」「速度」「観光」「集中」「開発」「収益性」「ショッピング」「セクシー」「機械化された労働力」「若さ」「健康」「美食」「ファッション」、そして最後が「公共と個」。真ん中にある特別付録(70ページの総天然色図像の集まり)も、過去の人の未来への思いがぎっしり詰まっていて、魅力的です。欧米の20世紀が、いかに「未来志向」だったかを、著者は独特の切り口と語り口で語ります。まるで私たちが生きていたのとはまるきり違う世界のように。

 そして今、私たちはどんな「未来像」を持てるのでしょう。そもそも最近「未来予測」は流行っていましたっけ?



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