【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

地球の明暗

2020-09-11 08:06:30 | Weblog

 遠くから見たら、地球の約半分は常に夜です。

【ただいま読書中】『レンブラントと和紙』貴田庄 著、 八坂書房、2005年、2800円(税別)

 17世紀オランダを代表する画家レンブラントは、素描や版画に和紙を用いていました。和紙は誰がどのように運んだのか、レンブラントはどのように和紙と出会いなぜそれを採用したのか、本書はその謎についての本です。
 レンブラントに関する研究で、彼が使用した紙は多種にわたることが知られています。西洋の紙として「ホワイトペーパー」「オートミールペーパー」「その他」、東洋は「和紙」「中国紙」「インディアンペーパー」「その他」、紙以外のものでは「ヴェラム(なめし革)」「絹」。
 一番多く使われているのは「ホワイトペーパー」。レンブラント初期から中期にはドイツ産やスイス産、後期にはフランス産のものが多く使われています。次いで多く使われたのが「和紙」です。特に後期の重要な作品のほとんどは和紙に刷られているのだそうです。
 「紙」といっても原材料は地域や時代によって異なります。西洋では主にボロ布、中国では竹、日本ではコウゾ・ミツマタなどの植物。それぞれに特徴があり、紙を使う人はそれぞれの用途に合わせて紙を使い分けます。
 レンブラントは、1644年以前の作品では和紙を使っていません。45年に製作した作品10点の内1点だけ和紙を使い、46年から集中的に和紙を使い始めます。すると、45年に偶然和紙を入手して試しに使ってみたら良かったので、46年から本格的に和紙を使用し始めた、という“物語”が作れそうです。もちろんそのためには和紙が大量に日本からオランダに輸入されていなければなりませんが、そういった調査(オランダ商館からの積み荷目録の調査)も著者はぬかりなく行っています。
 ただ、著者は、レンブラントが何年何月に和紙を入手したか、とか、その和紙はどの船で運ばれて日本をいつ出発したか、とかを追求したがっていますが、私はそんなことより「和紙がヨーロッパで活躍したこと」の方に注目しています。優れた陶磁器がヨーロッパに持ち込まれたとき、それは最終的にマイセンの磁器やボーン・チャイナを生み出しました。では、優れた芸術家が注目する「和紙」は、人々の関心を惹かなかったのでしょうか? そして「何か」を生み出しはしなかったでしょうか。それとも人々は「版画」は眺めても「版画が刷られている紙」には注目をしなかった? もちろん版画で紙は“主役”ではありませんが、もうちょっと注目を浴びても良いのではないか、とも思えます。なんとももったいない。

 



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