【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

無礼千万

2019-07-14 07:32:06 | Weblog

 時節柄、選挙の電話がかかってくるのはしかたないのですが、昨日のは最初から候補者の録音音声で、一方的に自己紹介をしてこれから短時間だから自分の主張を聞け、という要求でした(口調は丁寧でしたけれどね)。
 無礼千万だと私は感じます。こんな失礼なことを平気でできる人に権力を握らせたら、増上慢も極まれりになりそうなので、少なくとも私はこの人には投票しないことにしました。
 たぶん、最近の日本では、私が何を失礼と感じたのか、は理解されなくなっているのでしょうね。だからこんな電話が平気でできるようになったんだろうなあ。

【ただいま読書中】『トマト缶の黒い真実』ジャン・バティスト・マレ 著、 田中裕子 訳、 太田出版、2018年、1900円(税別)

 中国最大(世界で第2位)のトマト加工工場の描写から本書は始まります。新疆ウイグル地区のトマト畑から収穫された年間180万トンのトマトから25万トンの3倍濃縮トマトを製造し、ケチャップやトマトソースの原料として世界中に輸出しています。産業のグローバル化と同様、ハインツのトマトケチャップの“組み立て"も地球の各地で行われているのです。品種改良された「加工用のトマト」は楕円形で水分がとても少なく固いものになっています。生食用のトマトとは「別のトマト」です。
 フォードの工場がT型フォードを大量生産し始める数年前、ハインツの工場はすでに電化されベルトコンベアを使っての大量生産が行われていました。ハインツは資本主義の先駆者だったのです。そして中国では、人民解放軍の兵団が経営する複合企業が「トマト戦争」を戦いました。この両者が協力することで、両者は「トマト世界での勝者」になります。
 ドラム缶に詰められた中国産の濃縮トマトは、イタリアに荷揚げされるとちょっと水分や塩を加えられ「イタリア産」として再出荷されます。EUの法律には、原材料の生産地を書く義務はないのです。イタリア産のトマトを加工している業者は、大憤慨です。さらに大手スーパーは味よりも値段を重視して、中国と同じ値段の「イタリア産」濃縮トマトの納入を求めます。
 イタリアには(というか世界のあちこちに)アグロマフィアが活動しています。かつて違法活動で資金を蓄えた4大マフィアが、合法の世界で資金洗浄するために目をつけたのが“クリーン"な「イタリアの食品(特にオリーブオイルと濃縮トマト)」だったのです。
 中国の企業は自分たちがイタリアに輸出した濃縮トマトがほとんどラベルを貼り替えるだけで値段がアップされてアフリカに再輸出されていることに気づきます。だったら自分たちが直接アフリカに輸出したら儲けはもっと増えます。ということで直接輸出が始まります。そのトマト缶はいくつかのランクに分けられていますが、そのランク分けの基準は「缶の中に濃縮トマトが何%入っているか」です。最低ランクは「トマト31%、添加物(澱粉、大豆食物繊維、人参パウダーなど)69%」。ただしラベルにはそういったことは一切記載されていません。「原材料:トマト、塩」だけです。著者はガボン共和国の業者が新しく輸入に参入したいのだ、という話を携えて国際食品見本市に出かけ、中国の企業から様々な手口を聞き出していますが、これってどこが「違法ではない」のかな?
 強欲資本主義は、様々なものを破壊しますが、缶詰のトマトという実にシンプルに見えるものでさえ“汚染"されているとは、ちょっとしたショックでした。
 ところで、この話は「トマト限定」ではないですよね? 他の加工食品は、大丈夫なのかな?




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