【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

美しい日本語/『武器よさらば(上)』

2009-01-29 18:43:35 | Weblog
 私は美しい日本語にあこがれを持っていますが、その代表(の一人)が泉鏡花です。あくまで「あこがれ(の代表)」で、全然真似はできませんが。ところが最近、夏目漱石を見直しています。この人の文章、「美しい」とか「端正」という表現は私には言えませんが、そうですね、一番ふさわしく感じるのは「好ましい」です。気取らずしかし野卑に落ちず、私にとって「好ましい文章・文体」。若い頃には全然違った評価をしていたんですけれどね。
 ところで皆さんには「これが文章のお手本(あこがれ)」としている“先人”はありますか?

【ただいま読書中】
武器よさらば(上)』ヘミングウェイ 著、 金原瑞人 訳、 光文社古典新訳文庫、2007年、533円(税別)

 第一次世界大戦。イタリア軍に志願したアメリカ人フレデリック・ヘンリーはオーストリアとの戦線にいました。任務は負傷兵の運搬。身分は中尉。ヘンリーは救急ボランティアのミス・キャサリン・バークリと出会います。二人は愛し合っているふりの“ゲーム”を始めます。
 ヘンリーは迫撃砲弾を膝に喰らって負傷。ミラノのアメリカ軍病院に後送されて手術を受けます。そこにキャサリンが配属され、二人はこんどは本当の恋に落ちます。しかし、回復休暇のあと前線に戻れとの命令が届いた時、キャサリンの妊娠がわかります。二人は夜の町をさ迷い、駅前で別れます。

 とてもみずみずしく、スピーディーに場面展開を繰り返す文体です。でも“息”の長い文章となるところもあります。著者(あるいは語り手)が言いたいことがこんがらがっていて途中でほぐすことができず、そのままとにかくいけるところまで一気に喋ってしまう、といった感じの文章です。また、会話だけで終わる章がいくつもあります。きっと本作が発表された当時には、それは斬新なスタイルだったことでしょう。
 さらにここに描かれている雰囲気が妙に明るいのが特徴です。クレージーな野戦病院を舞台とした『マッシュ』を私は思い出していました。あそこまでブラックではありませんが、『武器よさらば』は、戦場での青春コメディなのかな。



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