足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No.897  ~ カンタンの求愛 ~

2010年09月26日 | 昆虫






日 2010917 快晴 28

  所 清川村 宮ケ瀬ダム


彼岸の入りも間近だと言うのに、今年は暑い。それでもススキ
は忘れずに穂を輝かせている。

 「カンタンのカップルが結婚しているよ」

一緒に林道を歩いている女性のグループに声を掛けた。

 「だって、昆虫はおしりとおしりを付き合わせるのではない
ですか」

と返ってきた。

 立ったススキの穂に2匹のカンタン。下向きだが前にいて鳴き
もしないのに翅を立てているのが雄、後ろから立てた翅の付け根
に頭を入れているのが雌だ。腹が大きく膨らみ、産卵管があるの
でそれが解る。雌は、長いアンテナを振っているのをみると、何
かを感じているらしい。その秘密は、雄の翅の付け根に誘惑腺が
あり、雌を引き付ける匂い物質を出しているのだ。しかし、この
カップルの交尾は既に終わっていた。

 雌の複端を見ると細い柄のついた白い球状のものがついている。
これは、雌が誘惑腺に引き付けられている間に、雄は精子の入っ
た精球を雌の腹端に付けていたのだ。

 


  No.896  ~ アザミ平を通る道 ~

2010年09月20日 | 自然現象



日  2010914 晴時々曇 22

所  山梨県 山中湖村


 初めてアザミ平を通ったのは、もう20年も前のことであろうか。そこは
草も少なく、樹木も見当たらず、富士砂が黒く広がり、苔と細かな植物が
生え、幾つかの背の低いフジアザミが花をつけていたのが印象的であった。
道端のマツムシソウの群落も頭に残っている。

 籠坂峠にある村営公園墓地からの道は、真っ黒なざらついた砂地で、雨が
降る度に水の流れで削り取られ、道の中央部分が深く
V字谷となり、歩き難
かったのを憶えている。

 その後何度か訪れたが、10年振り?に歩いて見ると、道はⅤ字ではなく大
きく掘り下げられ、巻き道をしなければ歩けない程の変わりようであった。
一週間前の
500mm近い豪雨がその原因であったのだろう。

 アザミ平はと言うと、草本や樹木が入り込み、フジアザミもマツムシソウ
も姿はなく、過ぎた年月と自然の移り変わりの様を実感じた。

 ところで、入口の公園墓地は未使用の区画があり、その内の5区画には、
立派なフジアザミの株が育ち沢山の花を咲かせていた。

 良く管理されている区画にはフジアザミが、放置されている区画にはヤマ
ハンノキ等樹木が入り込んでいた。

 


 No.895  ~ シオカラトンボの不思議 ~

2010年09月20日 | 昆虫




日  201095 快晴 34

所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)


「どうして雄のトンボばかりで、雌はいないのかしら」

 池の水面を何匹ものシオカラトンボが飛び回っているが、どれも
これも全てが雄ばかりなのである。雄達は池の水面を広く飛び回り、
相手を追い駆けたり,ぶつかり合ったりして、「バサッ」と乾いた
羽音を残す。

 雄のトンボ達も飛び続けては疲れるのであろう。2~3匹が草の
葉や茎に止まると、申し合わせた様に休み、池の水面はひと時の静
けさに戻る事がある。

 たまたま雌が池に産卵のため飛んでくると、静けさは破られ大騒
ぎとなる。雄達は一斉に雌を目がけて飛翔し、幸運にも雌と連結出
来れば、交尾し産卵へと進む。

 それでは雌はどこにいたのだろう。水辺を離れ、木陰や草原で小
さな虫を捕食し、卵を充実させていたのである。

 トンボの幼虫はヤゴで、ヤゴは水中で育つ。それ故、雌は産卵の
時だけ水辺にやって来るのだ。雌は、産卵が終わると、雄を逃れる
ように真上に飛び姿を消す。

 


    No.894   ~ 不運なセスジスズメ幼虫 ~

2010年09月09日 | 昆虫




     観 日  2010829 晴 33℃ 

     観 所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)


       「暑いのに、イモムシが可愛そうだわ」 

         Rさんが突然立ち止まった。

      今日も、朝から肌を刺すような日光がギラギラと輝き、朝の10時だ
     というのにセンター玄関前の路面からはかげろうが立っている。イモ
     ムシを見ると、体側に黄色と赤の七個の目玉模様を持つセスジスズメ
     の幼虫であった。

      「私が、日陰に持って行きましょう」

     と指で摘まんだ瞬間 「これは!」と思わず声を上げてしまった。そ
     れは、イモムシの体から異常な程の熱さを感じたからである。

      普通、イモムシの体に触れると冷たく感じる。彼らは自分で体温を
     作るしくみを持ち合わせず、外気に依存しているからだ。このイモム
     シの血液は沸騰しそうな程の温度に晒されたのであろう。

      温度計を取り出し、イモムシに添うように置いて見ると48℃を指し
     た。路面に手を置くと、焼けどをしそうな熱さだ。

      イモムシの体は、張りがあるものの動きはなかった。今しがた死ん
     だものだろう。蛹化の場所を求めて歩き出した場所が悪く不運だった
     のである。

 


   No。893  ~ ナガバヤブマオにフクラスズメ幼虫 ~

2010年09月09日 | 植物




   観 日   2010829 晴 33

   観 所   厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

    近頃センターの野外施設では、ナガバヤブマオが急速に勢力を
   広げ、場所によっては独領の傾向も見られ、ミニ観に訪れる人の
   話題にあがる様になった。

    以前は、同じイラクサ科のカラムシとヤブマオの小群落が見ら
   れ、この
2種が話題に上り、比較したり観察した記憶があるが、今
   はその陰に埋もれた形だ。

    ナガバヤブマオが急に目立つのはここだけでなく、近くは奥半
   谷林道、遠くは丹沢湖畔の使われない林道を歩いた時それを実感
   した。

    イラクサ科のカラムシを食草としている昆虫はいるが、中でも
   フクラスズメ(蛾)の幼虫が、年によっては大発生し、食草をす
   べて食べ尽くし、食草を求めて路面をさ迷う毛虫の大群に出会う
   事がある。自然がバランスを保つための掟なのであろう。だが、 
   ナガバヤブマオでは、それを見たことが無かった。

    ところが、センターの野外施設でナガバヤブマオの葉を食べる
   フクラスズメの5令幼虫に初めて出会った。この他にも何匹かい
   たのでこれからどう推移するのか、この2種の植物と幼虫を見つ
   めてみたい。