一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

文革の狂気の嵐を『活きる』

2007年03月31日 | 映画
活きる 特別版

ハピネット・ピクチャーズ

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中国旅行から帰って来てからというもの、「中国ショック」からなかなか脱け出せません・・・。

われながら良くも悪くも影響を受けやすい性格なんでしょう。

ふと気が付くと中国のことを考えています。

読む本や、観る映画も中国物ばかり(徐々に紹介しようと思います)。

さて、以前の記事でも触れた中国映画『活きる』を数年ぶりに観ました。

監督は中国を代表するチャン・イーモウ。

文化大革命に翻弄される一家族を描いた物語です。

文革時代を生き抜いた中国の人々は、一様に波乱万丈な人生を歩んでいます。

したがって作品に描かれている家族の物語は特別ではありません。

食うか食われるか、やるかやられるか、「明日は吾が身」の恐怖一色の文革にあって、いかにうまく立ち回り、いかに目立たないようにひっそりと生きるか・・・。

それが庶民の生きる術だったのでしょう。

それでも否応なく不幸の数々が家族を襲います。

不幸のどん底に落ちても何が何でも生き抜くこと。

生ある限り「生き抜く!活き抜く!」、それはもう理屈や綺麗ごとを超越しています。

したたかさ、狡猾さ、人間の醜さを内包した、中国人の強靭な生命力。

それは、易姓革命による王朝交代が著しい、中国の過酷な歴史に育まれた“サバイバル精神”なのかもしれません。

世界的に外敵の侵略に遭うことのなかった、ある意味で「育ちのいい日本人」には見られない精神性でしょう。


さて、あの「文化大革命」というできごとが、今日われわれに伝えていることは何か。

それは、固定化したイデオロギーを盲信して暴走すると、文化や価値ばかりでなく、人の理性やまごころといった人間性さえも容易く崩壊してしまうということではないでしょうか。

固有のイデオロギーの絶対視が、人間をかくも恐しい狂気に満ちた存在にし得るということを、文革を題材にした一連の作品を通して学びました。


しかし、この作品は文革のおぞましさを描いているものの、不思議と不快な印象を与えません。

作品全体にどこかユーモアが漂っているのと、何より、どんな理不尽な絶望的状況にあっても前を向いて生きる家族のあり方に、力と勇気を与えられるからです。

涙もろい私は何度も泣けてきてしまいました・・・。

子どもが絡むと胸が苦しくなります・・・

この作品を観るのは今度で3度目ですが、それでも感動しました。

また、中国旅行の後ということもあってか、数年前に観たときより、深く味わえたような気がします。

この作品を日本の映画に例えるなら、さしずめ中国版「ALWAYS 三丁目の夕日」と言ったところでしょうか。

一方は、夢と希望に満ち溢れた高度経済成長時代。

一方は、不毛な大躍進政策、そして恐怖の文化大革命。

同時代の日本と中国の家族の物語。

状況は対照的ですが、どちらも、人が生きるということの中に含まれる、美しさ、せつなさ、愛おしさが、作品全体を覆っています。

また、両作品とも庶民のひたむきな生き様を描いていますが、『活きる』の方が圧倒的にパワフルで強烈です。

激しい衝撃に打ちのめされます。

現代中国映画の傑作。

みなさんもどうぞご覧になってみてください。


・この作品に対する5段階評価

星5個じゃ足りないくらい・・・


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