亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

イタリア財政問題と金市場

2018年10月02日 23時35分53秒 | 金市場
先週末にまとめられたイタリアの2019~21年の財政方針を巡り、欧州連合(EU)とイタリア政府の間で財政規律を巡り非難合戦が繰り広げられ、週明け以降の市場でもイタリア国債の下げが止まらない。10年債の利回りは先週の金曜日以降、急騰しており、本日のアジアの時間帯に一時3.443%まで見ている。先週27日水曜日の引けは、2.829%だったので、わずか3営業日で0.6%超(614ベーシス)もの上昇となっている。

欧州連合(EU)の財政規律委員会やイタリアのトリア経済・財政相が2019年度の財政赤字をGDPの2%に抑えるという方針を掲げていたが、2.4%案を与党が押し切って成立させたことが端緒となった。イタリアは累積の財政赤字の残高がGDP比130%を超え、削減が急務となっている。前政権は削減に取り組んでいたが、コンテ現政権は大衆迎合的な拡大路線に走る傾向が強く、市場では警戒が続いてきた。

そもそも、2.4% の水準は、前政権の公約の3倍の規模に当たることによる。欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は、EU(欧州連合)の財政規律や当初の公約から「明白に」逸脱していると非難。一方、大衆の支持を集めて議席を伸ばした「五つ星運動」や「同盟」による連立政権側は、公約の最低所得保障や貧困層の救済策を優先させようとし、それらを盛り込んだ予算案を組むことになった。単年度の財政赤字をGDP比3%以内に抑えるという、ユーロ圏の原則をクリアしているではないかとしている。

それでも累積赤字の大きさを問題視するEU側は、譲らない。折しも10月末に主要格付機関がイタリア債の格付けの見直しの予定となっており、格付の引き下げも視野に入る。そもそも、ECBは、今月から国債などの資産購入額を、これまでの半額の月150億ユーロ(約2兆円)に引き下げたところでもある。当初の月800億ドルから、ここまで3回引き下げて来て、このまま12月末に終了という予定になっている。国債の買取りが減っていることも、イタリア債の下げを早め利回り急騰につながっているということか。

英国の離脱問題の方がEUにとって懸案事項ではあるが、イタリアを特別扱いにするわけにはいかず、こちらもまたリスクの火種ということに。ここまでのところはユーロ売りの材料にされ金の下押し要因となっているのだが、格下げが現実のものとなると国債を保有する銀行株が売られ混乱が広がる可能性がある。つまり金市場のサポート要因という側面もあるわけだ。


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