8月20日のNY市場の金価格は4営業日続伸した。
ドル安と米長期金利の低下が続く中で 水準を切り上げた。米連邦準備理事会(FRB)による9月利上げが確実視される中で、NY時間外のロンドン時間から買い優勢の流れが続き、この時点で2550ドルを超え前日に付けた取引時間中の高値を更新。
NY早朝には2560台乗せとなり、以降はさすがに売り買い交錯状態のもみ合い相場に移行。それでも一時2570.40ドルまで付け、これが20日の高値となるとともに過去最高値に。
終盤はややまとまった売りで20ドルほど上げ幅を削り通常取引は終了した。前日比9.30ドル高の2552.10ドルで終了した。終値ベースでも3営業連続で最高値更新ということに。
特定のイベントに刺激された上昇でなく、今後の金融環境(FRBの利下げ転換)や米政治リスクや国際情勢など先行きの不透明要因の多さを手掛かりとしたマクロ型の金上昇が続いている。
新興国中央銀行による継続的な買いという基盤の上に乗る相場は、それゆえ先高観が強く(売り意欲の乏しさ)相場の底堅さにつながっている。
ただし、価格水準の上昇とともに内部要因も変化している。
20日に発表された中国の税関データでは、7月の金輸入量は前月比24%減の44.6トンとなっていた。ここ2年余りで最低の数字となる。
6月は5月の139.0トンに対し58.9トンと58%減となっていた。2カ月連続で急減速している。1月には233.5トンまで膨らみ年初の金価格押し上げの大きな背景となっていた。
記録的な価格上昇に加え、伝えられているように持続的な景気減速が響き、個人の金購入の意欲は衰えている。中国需要の減速は、すでに先月末に発表されたワールド・ゴールド・カウンシルの4~6月期需要統計からも明らかになっていた。宝飾需要が前年同期比35%減の86.3トンとなっていた。
一方で、先行き不透明な中で価値の保全を求める投資家の需要から、金地金や金貨という投資需要は62%増の80.0トンとなっていた。
ただし、その投資需要も7月輸入量の減少と8月に入り伝えられる中国指標からは、減少しているとみられる。つまり中国の一般個人のゴールド熱は冷めているといえる。
そこに入れ替わるように入ってきているのがCTAと呼ばれる短期投機筋やETFを通した欧米機関投資家の資金だが、おそらく今後は値動きが大きくなる可能性がありそうだ(ボラティリティの上昇)。
なお、本日のNY時間には米労働省が雇用統計の年次改定を公表する(年次改定速報値)。
何が注目なのかというと、米雇用者数は今年3月までの1年間の伸びが、当初の推定よりはるかに弱い可能性があること。24年3月までに生み出された雇用がこれまでの公表分より60~100万人減少すると予想するところもあり(ゴールドマン・サックス・グループ)。仮にそうならばFRBが想定している以上に米労働市場は冷えていることになる。
結果により本日のNY金の値動きが大きくなりそうだ。すでにその想定で動き始めているのが、今週に入って以降の値動きとも言えそうだ。