先週末8月23日のNY金は3営業日ぶりに反発した。注目のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀年次経済シンポジウム)でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容は、9月連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを確定的なものとするハト派的内容となった。
これを好感したNY金は一時2550ドル超に上昇。通常取引は前日比29.60ドル高の2546.30ドルで終了した。週足では4週続伸ではあるものの、前週末比8.50ドル、0.33%高にとどまった。
パウエル議長の発言を受け、ドルは主要通貨に対しさらに弱含みドル指数(DXY)は一時100.602まで見て100.718で終了。23年7月21日以来1年1カ月ぶりの安値水準に。米10年債利回りは、米雇用統計の結果が景気後退を意識させ8月2日に付けた終値ベース直近の低水準の3.793%に接近する3.804%で終了。
米債利回りは全般的に低下したが、特徴的なのは金融政策の方向性を捉えて動くことで知られる2年債の利回りが、4%を割れ、やはり8月2日の水準に近付いたこと。年内残る2回のFOMCでも連続利下げが行われることを織り込んだ動きと言える。
23日のNY金に関しては、パウエル発言を受け2530ドル近辺から20ドルほど急伸し2550ドルを超え一時2554.50ドルまで付け、これがこの日の高値となった。ただし、今月上旬来の2500ドル台乗せが、短期筋のファンドによる積極買いで達成されたことから、2550ドル超では利益確定の売りが控え上値が重い印象。
実際に先週末に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した、8月21日時点でのCTAと呼ばれる目先筋のファンドの買い建ては、前週比重量換算で53トン増の736トンと、新型コロナパンデミックが始まった20年3月3日以来の高水準に達している。21日までの2週間では約160トンの増加となる。これだけ短期で買い付くと、さすがに上値は重くなる。
広く伝えられたようにパウエル議長は、雇用への下振れリスクが高まったとし、インフレがFRBの目標である2%に向かいつつある中、政策を調整する「時期が来た、Time has come」と述べた。インフレより雇用重視のスタンスをさらに進め「労働市場環境の一段の冷え込みは望みも歓迎もしない」と述べ、労働市場の減速は「明白だ」と付け加えた。さらに「労働市場を支えるためにできるすべてのことをする」とまで断言した。
インフレについては「2%回帰に向け持続可能な軌道に乗っているという確信が強まった」とした。
発言内容から市場の注目は、必然的に9月6日発表の8月雇用統計に向けられることになる。減速がさらに進んでいるようであれば、9月の利下げ幅が通常の0.25%から0.5%に拡大する可能性がある。
さすがにパウエル議長は、そこまでの言及は避けたが、話の内容からはこの流れは予見できるもの。
今週は、金融政策を見通す上でこれまで最注目指標であった個人消費(PCE)価格指数(デフレーター)の発表が30日(金)に予定されているが、いまや雇用統計に最重要指標は移行している。注目指標も環境の変化とともに移り変わる。