亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ハト派に傾いたパウエル発言、買い攻勢強めるファンド

2024年08月26日 18時45分31秒 | 金市場

先週末8月23日のNY金は3営業日ぶりに反発した。注目のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀年次経済シンポジウム)でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容は、9月連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを確定的なものとするハト派的内容となった。

これを好感したNY金は一時2550ドル超に上昇。通常取引は前日比29.60ドル高の2546.30ドルで終了した。週足では4週続伸ではあるものの、前週末比8.50ドル、0.33%高にとどまった。

 

パウエル議長の発言を受け、ドルは主要通貨に対しさらに弱含みドル指数(DXY)は一時100.602まで見て100.718で終了。23年7月21日以来1年1カ月ぶりの安値水準に。米10年債利回りは、米雇用統計の結果が景気後退を意識させ8月2日に付けた終値ベース直近の低水準の3.793%に接近する3.804%で終了。

米債利回りは全般的に低下したが、特徴的なのは金融政策の方向性を捉えて動くことで知られる2年債の利回りが、4%を割れ、やはり8月2日の水準に近付いたこと。年内残る2回のFOMCでも連続利下げが行われることを織り込んだ動きと言える。

 

23日のNY金に関しては、パウエル発言を受け2530ドル近辺から20ドルほど急伸し2550ドルを超え一時2554.50ドルまで付け、これがこの日の高値となった。ただし、今月上旬来の2500ドル台乗せが、短期筋のファンドによる積極買いで達成されたことから、2550ドル超では利益確定の売りが控え上値が重い印象。

実際に先週末に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した、8月21日時点でのCTAと呼ばれる目先筋のファンドの買い建ては、前週比重量換算で53トン増の736トンと、新型コロナパンデミックが始まった20年3月3日以来の高水準に達している。21日までの2週間では約160トンの増加となる。これだけ短期で買い付くと、さすがに上値は重くなる。

 

広く伝えられたようにパウエル議長は、雇用への下振れリスクが高まったとし、インフレがFRBの目標である2%に向かいつつある中、政策を調整する「時期が来た、Time has come」と述べた。インフレより雇用重視のスタンスをさらに進め「労働市場環境の一段の冷え込みは望みも歓迎もしない」と述べ、労働市場の減速は「明白だ」と付け加えた。さらに「労働市場を支えるためにできるすべてのことをする」とまで断言した。

インフレについては「2%回帰に向け持続可能な軌道に乗っているという確信が強まった」とした。

 

発言内容から市場の注目は、必然的に9月6日発表の8月雇用統計に向けられることになる。減速がさらに進んでいるようであれば、9月の利下げ幅が通常の0.25%から0.5%に拡大する可能性がある。

さすがにパウエル議長は、そこまでの言及は避けたが、話の内容からはこの流れは予見できるもの。

 

今週は、金融政策を見通す上でこれまで最注目指標であった個人消費(PCE)価格指数(デフレーター)の発表が30日(金)に予定されているが、いまや雇用統計に最重要指標は移行している。注目指標も環境の変化とともに移り変わる。

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