亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

全米トップの公的年金の損失計上  

2022年07月21日 20時16分29秒 | トピック

昨日は興味深いニュースがあった。米国最大の公的年金基金で知っている人も多いと思うがCalpers(カルパース)で知られるカルフォルニア州職員退職年金基金が、前年度(21年7月~22年6月)の運用実績を公表し、それがマイナス6.1%だった。

 

この年金は資産規模約4400億ドル(約60兆円)で全米トップの公的年金だが、損失は珍しく、リーマン・ショック直後の09年以来、約13年ぶりとのこと。おそらく上半期は相応の運用実績を残したものの、下半期、つまり今年に入って以降の6月末までにプラスを吐き出しマイナスに転じたものと思われる。 株式に4割、債券に6割を配分する伝統的な戦略を取ってきた。本来であれば補完し合うはずで、過去は効果があった組み合わせだが、上場株式と債券が一緒になって下げてしまい、分散効果が得られず損失に至ったということに。

これはまさに、今年の上半期に起きたことで、したがってカルパースにとって下半期に当たる22年上半期のパフォーマンス悪化が痛手になったということになる。 なぜこのニュースに反応したかというと、先月下旬にウォール・ストリート・ジャーナルが、この2~3年急速にレバレッジ運用に乗り出しているという特集を組んでいるのを目にしていたことによる。

 

レバレッジ運用とは何かというと、借金で資金調達をして運用に回すということ。資金調達のための債券発行(起債)が急増しているということを取り上げ、保守的で安全志向の年金の運用も変貌しつつあるという内容から始まり、かなり長文のリポートを掲載していた。運用資金調達の起債が、21年だけで129億1000万ドル(約1兆8000億円)あり、その前の5年間の合計額を上回ったというものだった。ほんの4年前まで、大手の公的年金でレバレッジ運用など考えられなかったとしていた。 そしてその中に、カルパースもついに、この7月から(つまり新年度入りから)レバレッジ運用に乗り出すことを取り上げていた。90年の歴史で初の試みとのこと。

もちろん大半の年金基金は、このようなヘッジファンドまがいのことはやっていない。カルパース自体が比較的先駆的な運用をすることで有名なところで、2000年代初めからオルタナティブ運用ということでヘッジファンドやプライベート・エクイティ(PE)やTimber Fund(森林投資)はたまたワイナリー所有などということをやっている。FRBの金融政策などと無関係に木は育つし、ブドウも実るというわけだ。もちろん金ETFも入る。

 

そもそも金のETFはカルパースの理事長をやっていたジェームズ・バートン氏をワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)がヘッドハントしてCEOに据え、その下でNYオフィスでハンドルして3年ほどかけてやっと上場にこぎつけた経緯がある。株式以外の初のETFだった。

この辺りの経緯は本題と離れるので置いておいて、話を戻すと、カルパースは前年の11月末までに次年度の運用方針を決めることで知られるが、その際のボードミーティングで今月に着手したレバレッジ運用を決めたとみられる。 思えばその時期ナスダックは過去最高値を記録していた頃でもある。方針決定から半年以上たって着手するシステムは、長期運用者にとっては資産保全という点で有効なのだと今回、思った次第。早めに着手していたら、もっと損失が膨らんでいたか、評価損を抱えていたとみられる。

それにしても年金基金もレバレッジを利かせるとは。ちなみにCalpersは1967年まで債券のみの運用しか認められていなかった。

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