亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金 印象としては強い1900ドルの攻防 

2021年05月27日 20時28分08秒 | 金市場

さて前日のNY時間外で1月8日以来の1900ドル台に乗せたNY金。26日は、ちょうどこのブログを更新した前後に1913.30ドルの高値を付けていた。その後は売り買い交錯する中で終盤に向けて静かに水準を切り下げた。昨夜ここに「一般的には売り戻されることになる。押し戻された1900ドル割れの水準が、どの程度に収まるか。あるいは、さほど気にせず1900ドル台を維持する可能性もある」とした。結局、通常取引こそ1901.20ドルと1900ドルを維持したものの、その後の時間外ではストンと10ドルほど落ちて(この日の安値)1890.70ドルを付けることに。その後は1890ドル台半ばを中心に推移し終了となっていた。つまり、一般的に想定されるパターン、売り戻されることになった。

1900ドル突破に至った背景について再確認すると、やはり3月下旬にかけて上昇が目立っていた米長期金利が、ここにきて落ち着き、低下傾向すら示していることがおおきい。基準金利となる10年債利回りのこのところの動きは、5月12日に1.7%を付けたあとは低下し、25日は1.559%となっていた。米連邦準備理事会(FRB)高官が声をそろえるように(in chorus)、インフレ高騰は一時的と発言。市場でもそうした捉え方が浸透しつつあるということか。

25日もシカゴ地区連銀のエバンス総裁は「一部の著名エコノミストが警鐘を鳴らすような望ましくない高水準に達する公算は小さい」としていた。著名エコノミストとは誰のことか?こう書いて思い当たる読者も多いだろうが、クリントン民主党政権時代に財務長官を務めたハーバード大学のサマーズ教授ではないかと思う。同教授はこのところFRBの現行の政策スタンスが好ましくないインフレを招くと警告を発した経緯がある。とはいえ新型コロナワクチンの普及が進み(25日時点で18歳以上の半数に当たる1億2900万人が必要な回数の接種を完了)、経済の正常化が加速しているのは事実で過熱に至る可能性は否めない。決め打ちが危険な投資環境と言える。

26日は米シンクタンクのブルッキングス研究所のイベントでクォールズFRB副議長が講演。やはり物価上昇の加速について一時的とし「1970年代のような爆発的なインフレは想定しておらず、雇用が回復する間は金融政策を全力で維持する」とした。例に掲げた時代が興味深い。

1970年代とは「ニクソンショック」に象徴される時代だ。金とドルの交換を停止して以降のドル安が物価上昇を招き、そこにオイルショックが重なりインフレが加速した。事例としてはやや極端ではあるものの、意図したのは「行き過ぎた警戒」は無用ということなのだろう。

この日クォールズ副議長は、「今後数カ月の間、経済成長や雇用、物価上昇が期待より強ければ、資産購入のペースを調整する計画の議論を始めることが重要になる」とも述べている。昨日追加公開したYouTubeにて「地ならし」としたのだが、先週公表された4月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にて、資産購入の縮小を検討する旨が初めて表明された。この日の副議長の発言も検討について議論を進めることを思わせた。時間外にNY金が1900ドルを割れたのは、この発言に反応したとされた。

昨日書いた「1900ドル割れの水準が、どの程度に収まるか」。現在日本時間27日の20時11分だが、NY金は1896.20ドルで、前日の終値(清算値)から5.00ドル安となっている。本日は週次の失業保険新規申請件数が注目点だが、明日の個人消費支出物価指数の結果が、NY金のドライバーとなりそうだ。1900ドルラインの攻防だが、印象としては強いと思う。

さて昨日は24日夕刻収録のYouTubeを追加公開しており、以下をクリックください。

週明け音声バージョンのポッドキャスト、ソロのショート・トークを更新予定です。そっちは移動中など“ながら聞き”でも何でも都合のいい時に。。。。YouTubeはなしのポッドキャスト独自バージョン

 

 

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