27日発表の米経済指標は、FRBによる高金利政策の長期化と粘着型のインフレが合わさって、経済成長を押し下げていることを示唆した。
1~3月期の米実質国内総生産(GDP)確報値は、前期比年率1.4%増と改定値(1.3%増)から小幅に上方修正されたものの、個人消費が年率1.5%と改定値の2.0%から下方修正された。このところ米企業決算でも見通しに際し、個人消費の減速を想定するところが増えている。
一方、5月の耐久財受注は前月比0.1%増となったが、民間設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)受注は0.6%減だった。
労働市場の方では、6月22日終了週の新規失業保険申請件数は前週比6000件減の23万3000件となった。ただ、15日終了週の継続受給件数は1万8000件増の183万9000件と、2021年11月下旬以来の高水準となった。失業者が職を見つけるまでの期間が長期化している兆候が示された。
これを受け27日のNY金は3営業日ぶりに反発した。通常取引は23.40ドル高の2336.60ドルで終了。
展開としては2300~2350ドルのレンジ相場が続いており、下値ではこれまで通り買いが控え発表される好材料に反応し反発をみせる。一方、レンジを明確に上回るには、手掛かり材料待ちの状況にある。
この点で最大の注目材料は、本日発表される5月の米個人消費支出(PCE)物価指数(デフレーター)となる。
昨年末にかけて順調に鈍化した米インフレは、今年の1~3月期に月次ベースで上昇が加速しインフレ再燃を思わせ、FRB関係者を慌てさせた。それ以降FRB高官の間で利下げ慎重論が急速に広がった。インフレだけでなく労働市場や経済そのものも予想以上に堅調に推移したこともある。
しかし、4月以降のデータは陰りを感じさせるものが続き、今日に至っている。
米雇用統計は雇用増などでサプライズと言えるような結果が飛び出すが、もともと遅行指標とされるだけに、市場では足元の状況をより的確に示すとされる週次の失業保険新規申請件数の注目度が高い。
こうした流れの中で、本日発表のPCEデフレーターの中でもFRBがインフレ指標として注目するコア指数に注目が集まる。先行して今月半ばに発表された5月の生産者物価指数(PPI)などから、前年同月比2.6%上昇の予想で前月の2.8%から伸びが鈍化し、2021年3月以来の低水準になると見込まれている。
予想に沿った結果であれば、NY金はレンジを上抜けすると思われる。