千葉の野の 児手柏の ほほまれど
あやに愛しみ 置きて誰が来ぬ
=巻20-4387 大田部足人=
千葉の野の,このてがしわのようにういういしいが,なんとも痛々しくて,そのまま手を触れないで,野山を越えてはるばるやって来たよ。という意味。
この歌は、下総国千葉郡(ちばのこほり。今の千葉県千葉市あたり)の大田部足人(おおたべのたるひと)という人が詠んだ歌。天平勝宝7年(755年)2月、防人として筑紫に派遣された。好きだった女性に手も触れずに旅立ったようだ。
「ほほまれど」は「ふふまれど」の東国訛り。蕾のままであるが、の意。
「千葉の野」は現在の千葉市街をとりまく一帯の総称。
児手柏(コノテガシワ)、鑑賞用として公園や庭などに植えられるヒノキ科の常緑樹。木の高さは10~15m。葉は魚の鱗(うろこ)のように生えていて,このような葉をもつものはほかにヒノキ,クロベ,イブキ等がある。また木の葉は裏表の区別がなく,次の年には葉は緑色から褐色に変わる,さらに次の年には剥がれ落ちる。花は雄花が葉の先端につき,褐色。雌花は緑色で枝と葉の間くらいにつく。
中国北部,西部が原産で日本には江戸時代に持ち込まれたという説もあり、万葉の頃には、この樹木はなく別のものであったかもしれず、ブナ科のナラという人もいる。
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