飛鳥への旅

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万葉アルバム(奈良):宇陀野、阿紀神社

2009年10月08日 | 万葉アルバム(奈良)

阿騎の野に宿る旅人うちなびき
寐(い)も寝らめやも古(いにしへ)おもふに
   =巻1-46 柿本人麻呂=


阿騎野に今宵宿る旅人たちは、くつろいで寝つくことなどできないだろう。昔のことを思うにつけて。という意味。

 持統天皇6年(692年)の晩秋から初冬ころの作。軽皇子(かるのみこ)は草壁皇子(くさかべのみこ)の皇子で、後の文武天皇。この時10歳。作者は、かつて軽皇子の父君である草壁皇子の狩りのお供をして安騎野に来た時のことを回想し、草壁皇子に対する追憶と憂愁とを歌った一連の巻1-45~49の中のひとつ。

「安騎野」は、現在の奈良県宇陀郡大宇陀町付近の野。この一帯には広く水銀鉱床が分布し、古来、吉野と同じく神仙境として意識されていた。この地を選んでしばしば遊猟が行われたのも、その地の神秘に触れることで、生命力の再生をはかる狙いがあったとされる。

 阿紀神社あたりが、万葉の阿騎野の宿営地点と推定されている。
阿紀神社はこの阿騎野の一隅に鎮座している。社伝による創建は古く、稲作の神、秋毘売神(あきひめのかみ)が宇陀の荒野を開拓して鎮座したのが始まりという。
また、神武天皇東征の際に、熊野から宇陀へ入った天皇が、ここに祖神の天照大神を祭って態勢を整え、大和の統治に向かったとも伝えている。
江戸時代前期に能舞台が建設され、能が上演されるようになったといわれているが、今はその面影はわずかに古びた能舞台に残すのみで神社は木立の中に静かにたたずんでいる。



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