我が背子が 捧げて持てる ほほがしは
あたかも似るか 青き蓋(きぬがさ)
=巻19-4204 僧恵行=
あなたが捧げて持っておられるほおの木の葉は、まことにそっくりですね、青いきぬがさに。という意味。
蓋(きぬがさ)は高貴な人の後ろからさしかける傘を意味する。
天平勝宝二年(750)四月、越中守大伴家持と宴に同席した際の作。「我が背子」は家持を指すとみられる。家持がホホガシワの葉を盃にして持ったのが、衣笠を貴人に差しかける様を連想させ詠った。
僧恵行は、左注によればこの時「講師を務めていた。当時の「講師」は、おもに東大寺関係の僧侶で、華厳経など特定の経典の講義のため任命された僧官のことをいう。
「ほほがし」は朴(ほお)の古名。モクレン科モクレン属の落葉高木の「朴(ほお)の木」で、山に生え、大きいものでは20メートルを超える。5~6月頃に大きな白い花を咲かせる。
昔から、この葉を食べ物を包むのに使ってきており、万葉集では花ではなく、「ほほがしは」として葉を詠んでいる。枝のてっぺんに、丸く密につく大きな葉を傘に例えたのだという。
この万葉歌碑は千葉県袖ヶ浦市の袖ヶ浦公園万葉植物園に建っているものである。
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