昨日から驚きと悲しみ、悔しさで満たされている。
お笑いコンビ、キング・オブ・コメディの高橋健一が逮捕されたのだ。
容疑は、高校に侵入し校舎内から女子高生の制服などを盗んだというもの。20年ほど前から犯行を行い、600点もの盗品が自宅にあったと言われている。
高橋の逮捕は、私にかつてないほどの衝撃を与えた。まったく心の整理が出来ていない。
だからこそ、今そのことについて書きたいと思う。
キング・オブ・コメディ(以下、キンコメ)は、今野と高橋からなるお笑いコンビで、日本最大のコント大会であるキング・オブ・コントの優勝者である。
にもかかわらず、地味なコンビで、すごく売れているかというとそうでもなかった。知る人ぞ知るコンビだった。
キンコメの今野の方は役者として売れ始めていて、芝居の評価も高かった。だから、最近ではメディアでの露出も増えていた。
一方、高橋はメディアへの露出は少ないが、しかし、お笑いの隠れた実力者として一部に熱狂的なファンが存在していた。私もそのひとりだった。
高橋は、エピソードトークも大喜利も得意で、番組やイベントを俯瞰で理解し、求められた役割を的確にこなせるオールラウンドプレイヤーだった。
しかし、決して前には出ようとせず、常に裏の引き立て役に徹してきた。
そんな引っ込み気質の高橋が前面に出ていたのが、「ニコニコキングオブコメディ」(以下、ニコキン)というネット番組だった。
この番組は、キンコメがだらだらとトークをするバラエティ番組ではあるのだが、その緩さとクセになる面白さから熱狂的なファンがいた。
僕は留学中もずっとこの番組を欠かさず見ていた。そして、今でも見ている。
「ニコキン」は、高橋の魅力がいかんなく発揮された番組だった。
高橋が好きな駄菓子、高橋が好きな貝の話、高橋が大ファンのももクロの話、高橋がやっているバイトの話・・・。どれもめちゃくちゃ面白かった。
今考えてみると、高橋には収集癖があった。
小学生の時に遊んでいたものを丁寧に取っておいていて、それを番組でも紹介していた。今でも貝殻を収集していた。
他にも収集していたんだね、こっそりと。
「ニコキン」でとても面白かった回と言えば、とある中学校のあるクラスが高橋に手紙を書いてきたエピソードを話した回である。
高橋の家庭環境は必ずしも恵まれたものではなかった。小さいころに母親が自殺してしまったり、父親が莫大な借金をつくっていたり(それを今でも返済していたり)、とにかく色々と大変だった。
とある中学校のあるクラスの道徳の授業で、その話がされて、それでもお笑い芸人として頑張っている高橋に対して、中学生たちが手紙を書いてきた、というのである。
それが爆笑なのである。
高橋は、それまでの辛かったことをすべて笑いに変えてきた。
その笑いはなんだかひどくあっけらかんとしていて、だからこそ、深刻に捉える中学生たちのテンションと、今の高橋のテンションのずれが、めちゃくちゃ面白かったのである。
高橋は実家で父親とふたり暮らしだった。
ひどい父親のエピソードはいつでも大笑いできるものだったし、実家にまつわるエピソードも大好きだった。
なぜ一人暮らししないのだろう、とおそらく多くのファンが疑問に思ってきた。
なぜわざわざお父さんの面倒をそこまで見るのだろう、と。
家には引っ越しを難しくさせるモノがあったのかもしれない。
高橋はかつて痴漢の冤罪事件にもあっていた。それも今ではネタになっていた。
そういうことも含めて、高橋は本当に面白かったのである。
高橋はファンにとって本当に近しい存在だった。身近にいるお兄さんだった。悲しい過去も色々あったけれど、それも知ったうえでそれを全部面白いエピソードにしてくれていた。
だから、高橋が生み出す笑いは、ものすごく心をホッとさせるようなもので、すごく安心感のあるものだった。
その分、今回の逮捕は、まるでどっきり番組やコントでも見ているような気持になるのでる。
高橋は抑制的だった。いつでも高橋自身を押し殺しているようなところがあった。
自分を常に卑下するところがあって、それにとても好感が持てた。
だからこそ、「ニコキン」で時々垣間見える彼の素の部分がとても面白かった。
他にも隠していたんだね、本当の自分の一部を。
今、僕たちは高橋の全体像を知りかけている。
容疑が事実だとしたら、もしそうだとしたら、こうなる。
ネタ合わせしたり、釣りに行ったり、潮干狩りに行ったり、ももクロのライブに行ったりした後、
お笑いのライブに出たり、番組に出たり、バイトに行ったり、家でご飯を作ったりした後、
彼は実家のあの軽トラックで、何度もエピソードトークに出てきたあの車で、高校に忍び込んで衣服を窃盗していたのか。
嘘みたいだ。まるで嘘みたいな話だ。あんなに一生懸命働いていたじゃないか。あんなに一生懸命潮干狩りしていたじゃないか。
食い意地が張っている、というエピソードで沢山笑わせてくれた高橋。
「意地汚いことと窃盗は違います」って言ってたじゃないか(エレ片のコント太郎)。
「パンツを盗んだことはありません」って言ってたじゃないか(バナナムーンGOLD)。
犯行し終えた時、どういう気持ちだったのだろう。
絶対にダメだと思ったからこそ、依存症になってしまったのだろうか。
20年もの間、そんな自分をどうやって扱ってきたのだろうか。
どうしてその話を「ニコキン」でしてくれなかったのだろうか。
どうして、笑いに変えてくれなかったのだろうか。
高橋はただいつものように俯きがちに謝るだけだろう。
違う、そんな高橋が見たいんじゃない。沢山の悲しいことを笑えるエピソードに変えてほしいんだよ。ほら、いつもみたいに。
お笑いコンビ、キング・オブ・コメディの高橋健一が逮捕されたのだ。
容疑は、高校に侵入し校舎内から女子高生の制服などを盗んだというもの。20年ほど前から犯行を行い、600点もの盗品が自宅にあったと言われている。
高橋の逮捕は、私にかつてないほどの衝撃を与えた。まったく心の整理が出来ていない。
だからこそ、今そのことについて書きたいと思う。
キング・オブ・コメディ(以下、キンコメ)は、今野と高橋からなるお笑いコンビで、日本最大のコント大会であるキング・オブ・コントの優勝者である。
にもかかわらず、地味なコンビで、すごく売れているかというとそうでもなかった。知る人ぞ知るコンビだった。
キンコメの今野の方は役者として売れ始めていて、芝居の評価も高かった。だから、最近ではメディアでの露出も増えていた。
一方、高橋はメディアへの露出は少ないが、しかし、お笑いの隠れた実力者として一部に熱狂的なファンが存在していた。私もそのひとりだった。
高橋は、エピソードトークも大喜利も得意で、番組やイベントを俯瞰で理解し、求められた役割を的確にこなせるオールラウンドプレイヤーだった。
しかし、決して前には出ようとせず、常に裏の引き立て役に徹してきた。
そんな引っ込み気質の高橋が前面に出ていたのが、「ニコニコキングオブコメディ」(以下、ニコキン)というネット番組だった。
この番組は、キンコメがだらだらとトークをするバラエティ番組ではあるのだが、その緩さとクセになる面白さから熱狂的なファンがいた。
僕は留学中もずっとこの番組を欠かさず見ていた。そして、今でも見ている。
「ニコキン」は、高橋の魅力がいかんなく発揮された番組だった。
高橋が好きな駄菓子、高橋が好きな貝の話、高橋が大ファンのももクロの話、高橋がやっているバイトの話・・・。どれもめちゃくちゃ面白かった。
今考えてみると、高橋には収集癖があった。
小学生の時に遊んでいたものを丁寧に取っておいていて、それを番組でも紹介していた。今でも貝殻を収集していた。
他にも収集していたんだね、こっそりと。
「ニコキン」でとても面白かった回と言えば、とある中学校のあるクラスが高橋に手紙を書いてきたエピソードを話した回である。
高橋の家庭環境は必ずしも恵まれたものではなかった。小さいころに母親が自殺してしまったり、父親が莫大な借金をつくっていたり(それを今でも返済していたり)、とにかく色々と大変だった。
とある中学校のあるクラスの道徳の授業で、その話がされて、それでもお笑い芸人として頑張っている高橋に対して、中学生たちが手紙を書いてきた、というのである。
それが爆笑なのである。
高橋は、それまでの辛かったことをすべて笑いに変えてきた。
その笑いはなんだかひどくあっけらかんとしていて、だからこそ、深刻に捉える中学生たちのテンションと、今の高橋のテンションのずれが、めちゃくちゃ面白かったのである。
高橋は実家で父親とふたり暮らしだった。
ひどい父親のエピソードはいつでも大笑いできるものだったし、実家にまつわるエピソードも大好きだった。
なぜ一人暮らししないのだろう、とおそらく多くのファンが疑問に思ってきた。
なぜわざわざお父さんの面倒をそこまで見るのだろう、と。
家には引っ越しを難しくさせるモノがあったのかもしれない。
高橋はかつて痴漢の冤罪事件にもあっていた。それも今ではネタになっていた。
そういうことも含めて、高橋は本当に面白かったのである。
高橋はファンにとって本当に近しい存在だった。身近にいるお兄さんだった。悲しい過去も色々あったけれど、それも知ったうえでそれを全部面白いエピソードにしてくれていた。
だから、高橋が生み出す笑いは、ものすごく心をホッとさせるようなもので、すごく安心感のあるものだった。
その分、今回の逮捕は、まるでどっきり番組やコントでも見ているような気持になるのでる。
高橋は抑制的だった。いつでも高橋自身を押し殺しているようなところがあった。
自分を常に卑下するところがあって、それにとても好感が持てた。
だからこそ、「ニコキン」で時々垣間見える彼の素の部分がとても面白かった。
他にも隠していたんだね、本当の自分の一部を。
今、僕たちは高橋の全体像を知りかけている。
容疑が事実だとしたら、もしそうだとしたら、こうなる。
ネタ合わせしたり、釣りに行ったり、潮干狩りに行ったり、ももクロのライブに行ったりした後、
お笑いのライブに出たり、番組に出たり、バイトに行ったり、家でご飯を作ったりした後、
彼は実家のあの軽トラックで、何度もエピソードトークに出てきたあの車で、高校に忍び込んで衣服を窃盗していたのか。
嘘みたいだ。まるで嘘みたいな話だ。あんなに一生懸命働いていたじゃないか。あんなに一生懸命潮干狩りしていたじゃないか。
食い意地が張っている、というエピソードで沢山笑わせてくれた高橋。
「意地汚いことと窃盗は違います」って言ってたじゃないか(エレ片のコント太郎)。
「パンツを盗んだことはありません」って言ってたじゃないか(バナナムーンGOLD)。
犯行し終えた時、どういう気持ちだったのだろう。
絶対にダメだと思ったからこそ、依存症になってしまったのだろうか。
20年もの間、そんな自分をどうやって扱ってきたのだろうか。
どうしてその話を「ニコキン」でしてくれなかったのだろうか。
どうして、笑いに変えてくれなかったのだろうか。
高橋はただいつものように俯きがちに謝るだけだろう。
違う、そんな高橋が見たいんじゃない。沢山の悲しいことを笑えるエピソードに変えてほしいんだよ。ほら、いつもみたいに。