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10分に1人 子ども死亡 WHO報告 ガザ即時停戦を

2023年11月12日 | 事件

「しんぶん赤旗」20231112

 【ワシントン=島田峰隆】国連安全保障理事会は10日、公開会合を開き、イスラエルが攻撃を強めるパレスチナ・ガザ地区の医療状況について議論しました。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、病院や救急車への攻撃が続くなか「10分に1人の割合で子どもが死んでいる。ガザの医療は崩壊寸前だ」と述べました。(関連5面)

 テドロス氏は安保理への報告で、10月7日の戦闘開始以来、イスラエル軍がガザの医療施設や車両に250件以上の攻撃を行い、病院の半数は全く機能していない状態だと指摘。医薬品不足で麻酔なしの手術が行われたり、がん、糖尿病、高血圧の治療や妊娠・出産の対応もできなくなったりしています。テドロス氏は「どこであろうと誰であろうとガザは安全ではない」と強調しました。

 テドロス氏は「ガザの民間人は、戦闘に責任がないにもかかわらず私たちの想像が及ばないほど苦しんでいる」と語り、病院や民間人の保護を定めた国際人道法の順守と停戦を要求しました。パレスチナのイスラム組織ハマスに対しては人質の解放を求めました。

 パレスチナ赤新月社のマルワン・ジラニ事務局長は報告で「血だらけの子どもたちの泣き声に耳を傾けてほしい。彼らが一体何をしたというのか。世界はなぜ彼らの命にこれほど無関心なのか」と各国に訴えました。

 ジラニ氏によると、アルクッズ病院には1万4000人が避難していますが、燃料不足で主要な発電機が2日前に停止しました。ジラニ氏は「集中治療室の患者や保育器の赤ちゃんが全員亡くなる危険がある」とイスラエルによる攻撃や封鎖を批判しました。

 ジラニ氏は安保理と国際社会に対し▽効果的な即時停戦を実施し、燃料など人道支援物資を搬入する▽国際人道法を順守し、ガザ全土で医療従事者や民間人を保護する―ことを要求しました。

 

ガザ学校空爆50人死亡か

20231112日【国際】

 【エルサレム=時事】ガザ市で10日、学校が空爆され、AFP通信は病院当局者の話として50人が死亡したと伝えました。大勢の住民や負傷者が避難先としている市最大規模のシファ病院を含む複数の病院も、イスラエル軍に包囲され、攻撃を受けたといいます。イスラエル軍報道官は、シファ病院が被弾したのは「テロ組織がガザから発射した飛翔(ひしょう)体が誤って落ちたためだ」と説明しました。

 イスラエル外務省は10日、ハマスの奇襲などによる死者について、これまでの1400人以上から約1200人に修正しました。ガザ保健当局の集計では、ガザでの犠牲者は子ども4500人以上を含む1万1078人に達しています。

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は10日、ガザの戦闘開始以降で死亡したスタッフが101人に達したと明らかにしました。


声を上げてほしい!
「子供を殺すな!」
「病院を打つな!」
「学校を打つな!」
と。
平和国家・戦争放棄国ニッポン。

降りすぎ、25cmはある。
まだ12日である。
根雪になるのは25日ごろ。
20日ごろをめどに片づけていたが、大いに狂ってしまった。
雪はまだ消えるかもしれないが、仕事がはかどらない。




ホームへルパー国賠裁判

2023年11月11日 | 生活

ホームへルパー国賠裁判を支援する会

私たちは長年働いてきたホームヘルパー3人組です。ホームヘルパーは待機時間、移動時間などは給料に反映されないため、これまで働いてきた20年間の移動や待機時間などを計算すると、労働時間の5分の1にあたる約4年間はただ働きに相当します。

2019年11月、私たちは介護保険の制度的欠陥ゆえに介護労働の現場では労働基準法が遵守されないことが常態化しているにもかかわらず、国は適切な規制権限の行使を怠ったとして、東京地裁に本件国家賠償請求訴訟を提起しました。現在、東京高裁で争っているところです。本件訴訟は、大手各新聞をはじめ週刊誌、介護関係業界誌など多くの媒体に取り上げられ、注目を集めています。

私たちは単に、自分たちの待遇改善を訴えているだけではなく、このままではヘルパーという仕事が消滅してしまい、そのことによって介護を受けられなくなる「介護難民」が膨大に生まれてしまうことを懸念しているからです。「若者が選ぶ価値のある職業にしなければヘルパーは消滅する」、つまりこの裁判は訪問介護の持続性を問うものです。

在宅介護の登録型ヘルパーは、社会的介護の主な担い手であるにも関わらず、正当な評価はされず不当な労働条件のまま放置されてきました。サービス提供分しか賃金が支払われない「出来高払い」制度、サービス提供時間と区別して移動、待機、キャンセル、記録などの必ず発生する時間が別建てで介護報酬の対象とされず、タダ働きとなっています。「生活援助」に関する不当に低い報酬額の設定。そして、国は、「すべてが包括して介護報酬に含まれている」としながら一度たりともホームヘルパーの労働実態について調査をしてきませんでした。最低賃金以上の賃金にするために財源確保をした痕跡もなく、労働基準法違反の状態に通達を出すだけで、改善のための具体的対応をとることは全くありませんでした。

3年ごとの介護報酬改定を経て、介護保険制度は、家事・生活援助を切り捨て身体介護も含めて1時間に満たないサービスを増やし、「効率化、生産性」の名のもとに労働を細切れ化することで、介護労働者のみならずサービス利用者及び家族の人権侵害を続けてきました。その結果が、求人倍率15倍、有資格者の離職が後を立たない人手不足の現状です。事業所の倒産・閉所、廃業が止まらず、業界団体までも、公定価格の引き上げを含む介護報酬の大幅な賃上げなくして介護崩壊を招きかねないことを総力で要請するまでになっています。

超高齢化社会で介護労働者やサービス利用者の人権が守られる介護を実現するには、「ケア」を公共財とし、優先課題として国費を投入するとともに、ケアに携わる労働者を保護することが必要不可欠です。国が「労働者保護」について責任を負わないという結論になる、地裁判決を見直し、高等裁判所が公正かつ慎重な審議に基づいて判決を出すことを求めます。

著名はこちらから。

HP https://helper-saiban.net/

 

【特集】介護の社会化を問いなおす―ジェンダー・ケア・シングルの視点から

介護保険制度下のケア労働の実態

―ホームヘルパー国家賠償訴訟原告・伊藤みどり氏インタビュー

 2022 9 23 日,ホームヘルパー国家賠償訴訟の原告のお一人である伊藤みどり氏に,本特集を企画した北明美がインタビューを行った。インタビューにあたっては,伊藤氏ほか2 名の原告がこれまで発表されてきた以下の資料等を参照した。

 ・ホームヘルパー国家賠償訴訟ホームページ,https://helper-saiban.net/

 ・ フォーラム労働・社会政策・ジェンダー編『連続講演会 ケア労働とジェンダー 1 回「ケア労働とジェンダー 機会均等論を超えて」講師 伊藤みどり,コメンテーター 伊田久美子』(2021 6 11日)報告集

 ・「特集 ホームヘルパ―国賠訴訟」『賃金と社会保障』No.17492020 3 月上旬号)

 ・「 ホームヘルパー訴訟,約 1 年ぶりの法廷で原告意見陳述」『週刊金曜日』No.139120229 2 日号)

 ホームヘルパー国家賠償訴訟とは,2019 11 月に,ホームヘルパー(登録型訪問介護員)として働いている藤原路加氏・伊藤みどり氏・佐藤昌子氏が,国(厚生労働省)に対して経済的および精神的損害の賠償を求め,東京地裁に提訴した訴訟である。介護保険制度とその「準市場」システムのもとで,ホームヘルパーは労働基準法さえ遵守されえない劣悪な労働条件のもとにおかれているが,それに対し国は適切に規制権限を行使してこなかったと原告は主張している。     

ホームヘルパー683 人にアンケート

ヘルパーの善意に国は甘えるな~~!

20 分の介護に移動が往復1 時間

★自転車を漕ぐのが仕事でない

★処遇改善加算はヘルパーに届かない

★移動手当はほぼゼロ

★猛暑、大雨、大雪等に危険手当を

★若い人に勧められる待遇に

★制度のしわ寄せはごめんだ

★年金下がり続け、移動も大変な上に無給

これでは、利用者さんの思いに応えられない!

 

ただ今、ヘルパー裁判やってます‼

訪問介護は「登録ヘルパー」とも言われるように非正規が8割。報酬は出来高払い制です。

訪問介護のサービスは「身体介護」「生活援助」などがありますが、担い手不足と「生活援助」の切り捨てで、訪問介護は破綻寸前に追い込まれています。

「もう黙ってられない!」とホームヘルパー3名が2019 11 月東京地裁に国家賠償請求訴訟を提起しました。

●ホームヘルパーの賃金は安すぎ!

正規雇用のヘルパーでも平均月収は約17 万円。登録ヘルパーにいたっては約8 万円弱。これでは生活していけません!

●勤務時間の4 割は移動時間、待機時間、キャンセル時間。しかもその時間は「無給」!

拘束時間で考えると〝最低賃金〟割れしています。

●介護事業者の支払い能力を超えている。

国は事業者に「訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて」という通知を出しました。しかし、訪問介護を中心に事業者の倒産は増加の一途。事業者は、今の介護報酬でそれを払えません!

●責任は〝国〟にある

現行の介護保険制度では労働基準法を守れない理不尽な仕組みであることを、国は知りながら放置しています。

未払い賃金と慰謝料を合わせて、原告1 300 万円の損害賠償を国に求めています。

国会でも問題視!

参議院では、私たちが実施した「ヘルパー実態アンケート報告書」を手にして、議員さんが丁寧に質問してくださり、その様子はネットで中継されました。

「朝日新聞」「東京新聞」ほか大手メディアで掲載。

「現代用語の基礎知識」では、「とりわけ待機時間も移動時間もコストに換算されない登録ヘルパーの労働条件は劣悪で、これでは最低労働条件にももとる人権侵害だと、19 年藤原るからによるホームヘルパー訴訟が、国を相手取って行われた」と、2021 年の最新版に掲載。

ホームヘルパー国賠訴訟とは?

穏やかで平和な暮らしに向けてヘルパーの仕事は〝命と暮らし〟を支えること

誰もが安心してケアを受けられる介護保障を「ケアを社会の柱に」

 

58 大原社会問題研究所雑誌 №7712023.1

― 伊藤さんは2011 年から非常勤の登録型訪問介護員(ホームヘルパー)のお仕事をされていますが,すでに1970 年代から労働組合で活動し,また1995 年には「女性ユニオン東京」の初代委員長に就任,2007 年にも「働く女性の全国センター」(ACW2)を設立するなど,女性の労働相談にも長く取り組んでこられました。当然,労使交渉や労働裁判等の経験も豊富です。けれども今回の裁判では,伊藤さんたち3 名の共同原告は,あえて勤め先の事業所ではなく,国に対して損害賠償を求めていますね。

伊藤 たいていの人は,ホームヘルパーも雇用される労働者なのだから,事業所と交渉したり,労働基準法や最低賃金法違反を労働基準監督署に訴えたりすべきだと考えます。ですが,私たちは,ホームヘルパーの権利侵害は,労使関係の枠を越える,介護保険制度そのものがもたらしている問題と考えるのです。日本の介護保険制度は,労働基準法も最低賃金法も守れないような仕組みになっています。実は,国(厚生労働省)も,そのことをわかっていながらその是正を怠ってきました。国が必要な規制権限を行使しようとしなかったことで,私たちホームヘルパーは,賃金不払いによる多額の経済的損害をうけ,また介護労働者としての尊厳を傷つけられる働き方を余儀なくされる精神的損害をうけたと考えています。

― 介護保険制度,とくに介護報酬の仕組みの問題を指摘されていますね。

伊藤 人手不足だと賃金が上がるはずですが,介護労働者の場合は,介護報酬,すなわち国が定める介護サービスの公定価格が,まずあって,それが政策的に引き下げられてきました。しかも,介護保険制度が始まる前の「措置制度」の時代と異なり,この介護報酬においては,必要な人件費を独立の項目として算入するという仕組みになっていません。そのため,上限となる介護報酬の低さが,低賃金に直結するだけでなく,不払い労働部分を発生させ,実質的に最低賃金を下回る違法状態を生み出しています。

 たとえば訪問介護では,利用者宅から利用者宅への移動や,利用者宅から事業所への移動が必要で,それは法律上も賃金を支払うべき労働時間ですが,まったくの無給であるか,支払われても低額の手当か必要な移動時間を過少に想定した金額であるために,最低賃金を下回ってしまう場合がほとんどです。ホームヘルパーは,こうした状況のもとで,たとえば20 分と決められた身体介護をするために利用者宅まで自転車で往復40 分かかるというような仕事の仕方をさせられているのです。国の方針によって,1 回の訪問介護時間はどんどん細切れにされ,その分,訪問回数も増やさなければならなくなっていますので,こうした移動時間もますます大きな割合になっています。

地方では利用者の家まで自分の車で長時間の移動をすることがよくあるのですが,修理費等は自分持ち,ガソリン代もきちんと支給されないといったケースも珍しくありません。

 移動時間のほかに,次の利用者宅の訪問介護を開始するまでの「待機」時間の問題もあります。

これも細切れになっており,使用者の指揮命令下から離れているといえるような,まとまった自由時間ではありません。また,「待機」といっても,多くの場合,事業所への業務連絡や介護記録の作成などにあてられる労働時間になっています。にもかかわらず,これらもまた,しばしば違法な不払い労働になっています。

 要するに,ホームヘルパーに対する賃金は,事業所が受け取る介護報酬のなかから支払われるのですが,その介護報酬は,定められた直接的な介護時間に対する価格であって,訪問介護の仕事にともなう必然的な「移動」や「待機」,また業務そのものである介護記録作成や業務連絡等の労働に対する賃金部分は想定されていないため,その分を事業所が赤字覚悟で負担するか,不払い労働にしてしまうという事態が必然的に起こっているのです。

 加えて,それどころか,突発的な事態に対応するために契約上の時間より長く介護することになったような場合は,「待機」のはずだった時間が介護時間になってしまったのに,その分についての賃金は支払われず,不払いのサービス残業になる場合さえあります。

 また,訪問介護では,急な施設入所や入院,体調不良,また,認知症でヘルパーの訪問予定を忘れて外出してしまうなど,利用者からのキャンセルが日常茶飯事です。だからといって,そこに即座に,別の訪問介護や他の業務を入れることができるとは限りません。そういった場合,労働者は本来平均賃金の60%の休業手当を受ける権利があるのですが,当日やその場のキャンセルのみこの手当を支払うか,それすらもまったく支払わない事業所が大半です。訪問実績に対する出来高払いであるため,キャンセルされれば,その分の介護報酬が事業所に入らなくなる一方で,やむを得ない事情によるキャンセルに対し,そのつど利用者からキャンセル料をとるような契約はできないからです。こうした制度の矛盾のしわ寄せもまた,ヘルパーの収入の低さや不安定さの大きな原因となっています。

 国(厚生労働省)は,事業所に対して,労働基準法や最低賃金法の遵守を求め,何度もそのための通達を出していますが,その一方で,必要な賃金や手当はすべて介護報酬に含まれていることになっているという一点張りです。しかし,具体的にどのように算定されているのか,私たちが何度尋ねても一切答えず,答えるための調査もしていません。

 長年にわたって介護報酬が引き下げられている状況のもとでは,「移動」「待機」「記録業務」などの附帯時間を含めた賃金や休業手当を,労働基準法どおりに支払ったら,小規模の介護事業所はどんどん倒産していくだろうことをホームヘルパーたちは知っています。そうすれば,自分たちの職場がなくなってしまうだけでなく,大規模な事業所が引き受けたがらない遠距離の訪問や対応のリスク・負担が大きい,事情のある利用者の受け皿がなくなってしまいかねません。そのことが常に念頭に浮かぶのです。

― 介護報酬については,国もなり手不足を背景に,介護労働者の賃金引き上げを名目とする,いろいろな加算を設定してきていると聞いているのですが。

伊藤 そもそも加算は,ほとんどいつも介護報酬「本体」の引き下げとセットで行われるため,効果が相殺されてしまいます。また,加算の配分方法は,事業所に任せられている部分が大きいため,私たちのような登録型のホームヘルパーは対象外にされることが多いのです。

 しかも加算は,最初だけは国の全額負担でなされても,そのうち,介護報酬体系に組み込まれて,その事業所の介護サービスの公定価格の引き上げに転嫁されていきます。そうすれば,加算をとった事業所と契約する利用者は,他より高い利用料を払うことになります。もっと利用時間や回数を増やすことが必要な状態なのに,負担増を恐れてそうできなくなる利用者のことを心配するような事業者ほど,加算をとらない選択をするようになるのです。加算申請のための事務手続きも煩雑で,小規模事業所ではそのための時間や人を確保できないということもあります。

 人件費をきちんと項目として確保しないまま単に介護報酬を引き上げて,それに比例して介護保険料や利用料を引き上げ,それによって国の負担を常に4 分の1 程度にとどめるというやり方ではなく,私たちは,労働基準法・最低賃金法を守れるよう,人件費を積み上げ計算し,それをもとにして,国の負担で,介護報酬とは別に,事業所に人件費を補助する方式を望んでいます。

― 訪問介護においてもコロナ禍での苦労が大きかったと聞いています。

伊藤 介護や支援が必要な方々の自宅を回るホームヘルパーは,エッセンシャルワークだと言われるようになりましたが,介護事業所はワクチン接種の優先対象なのに,訪問介護のホームヘルパーは最近まで対象外とされていました。この間,私たちは,すべての利用者宅でドアをノックする前にアルコール消毒をして,利用者が濃厚接触者だと判明しても,介護を拒否することなく,完全防護でケアに入ります。自宅に帰れば自分の着ているものもマスクもエプロンも全部玄関で着替えて……という状況でした。

 「ホームヘルパーがコロナを自宅に持ってくる」と言われて,訪問件数が減ったとか,濃厚接触者のケアに入ったヘルパーがたとえ陰性でも他の利用者宅には入れなくなってしまってヘルパーの収入が減り,人手不足もさらにひどくなるといったことも起きていたそうです。

― 今回の裁判では精神的損害の賠償も国に求めていますね。

伊藤 私が2011 年にヘルパーになったときは,生活援助はだいたい2 時間から1 時間だったのですが,厚労省の介護報酬改定に基づく条例によって数年後には30 分から1 時間未満が原則になり,今では一般に20 分から45 分が基準サービスとされています。身体介護も同様に,当初は1 回の訪問で2 時間から1 時間かけていたのが,今では30 分から1 時間未満が基準になり,20 分未満という時間区分さえあります。1 件あたりのサービス時間を減らしてヘルパーが1 日に何件も回るようにしたほうが経営効率がよい,つまりお年寄りの話を聞いている時間があったら次のお宅にサービスに行けというのが国の介護報酬改定の方針になったからです。

 こういった政策で,サービス時間が短時間の細切れにされているため,要介護5 のようなかたでも,たとえば朝30 分,昼30 分,夕方60 分という狭い枠のなかで,「食事介助」も「排泄介助」も「口腔ケア」も「買い物」も「調理」も「洗濯」もすべてやらなければならない事態になっています。

 最も人権侵害でやるせないと感じるのは,ヘルパーが来るまでおむつの中は長時間濡れたまま,さらに認知症が進むと気持ち悪くておむつをはがしてしまうので,シーツもベッドも糞便にまみれ,ご本人は裸で待っているといった事態も起きていることです。テープ式おむつの上にパッドを2 枚当てて,その上からリハビリパンツを履いてもらうといったやり方をすれば,カンジダ菌や尿路感染などにもつながるのですが,それを心配しながらもそうせざるを得ない場合もあります。

サービスの短時間化が引き起こすこの状況を目のあたりにして,私たちヘルパー自身も,精神的に非常に傷ついています。高齢者の命の尊厳が奪われていると同時に,ホームヘルパーの専門職としての仕事の尊厳も奪われているからです。

 介護福祉士の養成テキストには,高齢者の尊厳を守りQOL の向上に努め,エンパワーメント・アプローチを行うこと等,あるべきケアについて書かれているのですが,現行の介護保険制度のもとでは,そうした介護はすでに不可能になりつつあります。こんな細切れ時間のなかで,そのつど本人の同意をとっていたら,時間内には「食事介助」もできないし,「排泄介助」もできません。

とくに認知症のかたは,ヘルパーが短時間で終わらせようとせかせか動いたり,高齢者をせかしたりすれば,強い不安を感じて怒りを爆発させるなど,状態が悪化することもあります。

 本来,介護労働者はじっくり対話し,耳を傾け,観察するなかで,利用者のニーズと潜在的パワーをひき出す働きかけをするのですが,そのような専門性を発揮する機会が介護保険制度のもとで進められたサービスの短時間化や「生活援助」軽視の政策によって奪われていっています。このことは,介護保険制度がはじまる以前からホームヘルパーをしていたベテランの介護士が,現状に失望して辞めていく大きな理由になっています。こうした人たちは,「身体介護」だけでなく「生活援助」の重要性をよく理解していて,掃除や洗濯をしているときに利用者が無言のうちに発する危険信号に気づき,非常に早い段階で自ら対処したり,他職種と連携して改善につなげたりといった,ケアワークやソーシャルワークをしてきました。ですが,今はそのスキルを発揮しようにもできない状態におかれ,介護労働者としての尊厳を奪われたと感じているのです。

― いろいろな仕事や職場の現場を知っておられる伊藤さんにとって,ホームヘルパーとはどのようなお仕事ですか。

伊藤 私は,工場労働をはじめ,いろいろな仕事をやってきました。生きるためにやらざるを得ないと考えてきたのですが,ホームヘルパーの勉強をし,実際に介護の仕事に携わった時に,本当に面白い,やりがいのある仕事に出会ったと心から感じました。認知症のかたが徘徊したり,暴言を吐いたりといった行為も,こちらのケアの仕方によっておさまっていきます。ヘルパーに対する信頼の感情が生まれた時,それまで拒絶的だった高齢者の表情がふわっと一変します。こちらのケアを受け入れてくれたと感じられる瞬間があるのです。介護の仕事ではこうしたことを目のあたりに体験します。「人間って,すごいな」と感じますし,だからこそ続けられるんですね。ケア関係には人間の英知が凝縮しているといってもいいと思います。

 ですので,それを「汚い」とか「5K」とか「大変な仕事」としかみないのは,あまりにも人間に対する理解が足りないのであって,こうしたことを皆が学んでいたら,介護の仕事を一段低くみるというようなことは起きないのではないかと思うのです。一人ひとりの人間の生命を支え,尊厳を維持する介護という仕事の価値と評価をあげていくことが必要です。

― いま裁判はどういった状況なのでしょうか。

伊藤 裁判では,原告側の意見陳述も,証人尋問の申請も却下されただけでなく,裁判官はまともに反論・立証しない国の姿勢をただそうともしませんでした。そこで2021 9 月に裁判官全員について忌避の申立てをしたのですが,これも却下されています。2022 8 月に審理が再開したものの,人事異動で交代した裁判官もまた,原告側が意見陳述した直後に弁論終結を宣言したため,法廷は抗議の声に包まれました。判決は2022 11 1 日に予定されています。

 こうした経緯から判決にあまり期待はできないと覚悟していますが,仮に敗訴であっても高裁に進むつもりでいます。注文のある時だけ労働者を呼び出して働かせ,収入の最低保障もなく経費は労働者持ちというイギリスの「ゼロ時間契約」は,日本ではまだ合法化されていませんが,実際には介護保険制度のもとで登録型のホームヘルパーは限りなくそれに近い働き方をさせられています。高裁でも引きつづきこの問題を明らかにしていきたいと考えています。

― ありがとうございました。

(聞き手・まとめ 北 明美) 

【補遺 伊藤みどり氏より】

 2022 11 1 日,ホームヘルパー国賠訴訟の判決がありました。結果は予想した通り棄却となりました。

 しかし現在,介護保険制度史上最悪の改悪が進められていることもあり,裁判を通してようやく介護保険の仕組みの理不尽さが理解されるようになってきました。多くのマスコミが紙面を割いてこの不当判決の記事を書いてくれました。

 判決の棄却理由は,原告が訴えている未払い賃金の問題は,各事業所を労働基準監督署に訴えるべきものであり,労働基準法違反を規制する権限を行使しなかったのは国の責任だと主張する原告の訴えについては,不行使が著しく不合理と言えるような証拠がないというものでした。

 ですが国が労基法を守るように通達を出しても現場でそうならないのは,介護保険制度そのものが労基法通りの賃金支払いができる仕組みになっていないからです。国は労基法が守られていないことを知りながら仕組みを変えようとしない。規制権限の不行使そのものです。

 最近,施設の人員基準の31 では,労基法を守れずシフトも日勤が組めない状況になっていると聞きました。私たちが裁判を起こすのはいわば負ける裁判にチャレンジすることでもありましたが,国が決めた制度や仕組みに問題があることが知られるようになり,結果としては裁判を起こして良かったです。

 原告は控訴することにしました。


人として、尊厳のある「生活」を営まれるよう希望いたします。
介護する人も、介護される人も。

初雪・初積雪。

エゾリス

今年も初雪、初冠雪が同じ日になってしまいました。


介護職員の不足 待遇の改善を進めねば

2023年11月10日 | 生活

「東京新聞」社説 2023.11.10

 介護事業所で働く職員の不足が深刻化している。他業種に比べて賃金の低さも要因の一つ。人材確保に向けて待遇改善が急務だ。

 介護労働安定センターの2022年度調査によると、高齢者らに介護保険サービスを提供する全国の介護事業所の7割近くが人手不足を感じている。

 特に自宅での生活を支える訪問介護を担うホームヘルパーの不足が深刻で、人材不足による事業収支悪化などを理由に、社会福祉協議会が運営する訪問介護事業所は過去5年間に約13%減少した。

 職員不足に人材の高齢化も加わり、介護事業者は綱渡りの経営を強いられているのが実態だ。

 サービス提供の低下は、必要な介護が受けられない「介護難民」を増やし、地域で生活したいとの希望を支えられなくなる。

 高齢者数がピークとなる40年に必要な職員数は約280万人で約70万人の確保がさらに必要となると推計される。にもかかわらず、介護職の平均賃金は22年で月額約29万円で全産業平均より約7万円低い。しかも今春闘の主要企業の平均賃上げ率36%に対し、介護業界団体によると介護職員の賃上げ率は14%にとどまる

 介護人材確保のための賃上げが喫緊の課題だ。他業種との賃金格差をこれ以上放置できない。

 介護保険の費用は40歳以上の保険料と利用者負担、国や地方の公費などで賄われている。

 厚生労働省の審議会で介護保険の見直しが検討されている。介護職員の待遇改善も重要な検討課題で同省は、所得のある65歳以上の保険料を引き上げ、増収分などを待遇改善や低所得者の保険料軽減に充てたい考えで、24年度予算編成過程で具体策を詰めるという。

 少子高齢化に伴い介護費用の増加は必至だが、現役世代の負担は限界に近づく。支払い能力のある高齢者に負担を求めるとしても、負担増が生活に悪影響を及ぼさないか注視する必要もある。

 さらに、少子化対策の財源を確保するために、医療・介護も歳出削減が求められており、介護職員の待遇改善のための財源確保は容易ではない。

 誰もが安心して高齢期を送るには、社会で負担を分かち合い、必要な介護サービスを安定的に提供できる体制を構築することが必要だ。議論を避けず、腰を据えて取り組むよう求めたい。

⁂     ⁂     ⁂

「異次元の少子化対策」の国民負担増は最初から仕組まれていた…医療保険料に上乗せ徴収

日刊ゲンダイデジタル 2023/11/10 

 やはり予想通りの展開になってきた。

 こども家庭庁が9日、少子化対策の財源確保のために創設する「新たな支援金制度」をめぐり有識者会合を開き、公的医療保険料(健康保険料)に上乗せして徴収する案を示したのだ。高齢者や企業も含めた幅広い層に公平な負担を求める観点から、医療保険を活用して徴収する案が適当ということらしい。集めた支援金は児童手当の拡充や「こども誰でも通園制度」の財源に充てる考えも提示した。年末までに具体的な徴収額も含めた制度の詳細を詰め、来年の通常国会での法案提出を目指すという。

「異次元の少子化対策」をブチ上げた岸田首相肝いりの「こども未来戦略方針」では、来年度からの3年間で年3.5兆円規模の追加予算確保を目指している。現状、増税はせず、社会保障費の歳出改革や既存予算の活用を進めた上で、足りない分を支援金制度で賄うとしていた。

 だが、既存予算の“余り金”は防衛費増額に充てられることになっているし、社会保障費の歳出改革は、社会保障サービスの低下につながりかねない。結局は、国民全体に幅広い負担増になるということだ。「増税せず」と言うが、負担増は事実上の増税みたいなものだ。

これでは「異次元の少子化推進」

 SNSでは<異次元の少子化推進になっているように思えます><結局、増税ですか?>などと批判が渦巻く。ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「年初に岸田首相が『異次元の少子化対策』と言い出した時から、社会保障費の負担増は仕組まれていた」と言い、こう続ける。

「1月の通常国会の施政方針演説に、こども・子育て政策充実の具体化として『各種の社会保険との関係で考えてまいります』という表現が、さらっと盛り込まれていたのです。社会保険、つまり、医療、介護、年金のしくみを使って、少子化対策の財源を確保するということを暗示していたわけです。本気で歳出削減するなら、今ある制度の中でチマチマ増減額するのではなく、社会保障のしくみ全体を抜本的に改革しなければどうにもなりません」

 国民全体の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合を指す「国民負担率」の今年度見通しは46.8%。江戸時代の「五公五民」並みなのに、さらに“収奪”しようとは。悪魔のような政権だ。


まさしく「悪魔」。
「自公に殺される」前に倒さねば!

悪天候。
今日一日、強い風に雨が飛ばされています。
明日からは雪になり、風も強い状態のようです。
中国の黒龍江省の吹雪の様子が配信されていましたので不安です。
タイヤ交換今日予約していてよかったです。
無事終わりました。


G7外相共同声明 停戦求めず  イスラエルの「自衛権」明記

2023年11月09日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2023119

ハマスのみ非難

 東京で開かれた主要7カ国(G7)外相会合は8日、2日間の日程を終え、共同声明を発表しました。声明はイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区侵攻をめぐり、イスラム武装勢力ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃を厳しく非難。人質の即時解放を求めるとともに、イスラエルの「自衛権を強調」すると明記しました。「自衛権」を盾に、圧倒的な軍事力で報復し、民間人の無差別殺傷を行っている同国の行動を正当化するものです。

 声明は、イスラエル・パレスチナ双方の犠牲者に哀悼を示すとともに、ガザ地区内での深刻な人道的危機に対処するために、戦闘の「人道的中断」や「人道回廊」の設置を支持しました。一方、ガザ侵攻そのものの停戦は求めていません。

 また、声明は国際人道法や国際法に基づく民間人の保護を強調していますが、空爆やミサイル攻撃などで多くの民間人を殺傷し、病院や難民キャンプなどを攻撃しているイスラエルの行為については一切触れていません。

 ロシアによるウクライナ侵略をめぐっては、G7は民間人や学校や病院などへの攻撃を「国際法違反」だと厳しく非難してきました。そうであれば、イスラエルの行為も国際法違反となります。イスラエルとロシアの対応をめぐるG7の「二重基準」ぶりが鮮明になりました。

 ガザ地区の中長期的な解決については、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が共存する「2国家解決」が公正で永続的な平和への唯一の道だという認識などで一致したとしています。


予想を上回る「暴挙」だ!
直ちに皆殺しをやめよ!
子どもを殺すな!


雨宮処凛がゆく! 「koroすな! ガザ地区停戦緊急行動」に1600人。

2023年11月09日 | 社会・経済
 
 
 

 10分に一人、子どもの命が奪われている一一。

 そう聞いた時、目の前が暗くなった。

 過去の話ではない。今この瞬間の、パレスチナ自治区ガザ地区での話だ。

 この原稿を書いている時点で、ガザ地区の死者は9488人。うち3900人が子どもだという。難民キャンプや救急車までもが攻撃され、日々、死者・負傷者、そして行方不明者が増え続けるのを世界は止められないでいる。

 正直言って、ニュースを見るのもSNSを開くのも怖い。あまりにも悲惨な映像に胸が押しつぶされそうになるからだ。

 そんな状況に声を上げようと、11月4日、「殺すな! ガザ地区停戦緊急行動」が開催された。呼びかけ人は鎌田慧氏、落合恵子氏、上野千鶴子氏、神田香織氏、佐高信氏、田中優子氏、永田浩三氏、そして私。少し前、鎌田さんよりお声がけ頂き、前のめりにふたつ返事でOKした。

 当日午後2時、イスラエル大使館がある麹町駅に着くと、すでにものすごい数の人、人、人。歩道を埋め尽くすほどの人の列が何百メートルにもわたって続いている。

 集まった人々が掲げるのは、「パレスチナ虐殺を許すな」「人を殺すな 土地を奪うな」「日本政府は静観をやめろ」「今すぐ停戦」「STOP GENOCIDE」「STOP KILLING」「ガザ攻撃を許さない」などのプラカード。

参加者が掲げるメッセージ

プラカード

 呼びかけ人からは鎌田慧さん、佐高信さん、神田香織さん、そして私がスピーチしたが、印象に残っているのは、今年8月までパレスチナに滞在していたという新土さん(27歳)の言葉だ。

 「今この瞬間も、死にそうになっている友達からメッセージが届いている」という新土さんは、パレスチナで見たことを話してくれた。分離壁の近くで、イスラエルの軍人ではなく、市民がパレスチナ人の子どもに発砲する光景。爆撃が子どもたちの命を奪う瞬間。そんな状況で、「NO HOPE! NO HOPE!」と叫ぶ青年。

 新土さんは、パレスチナの少女がくれたというひまわりの種を掲げながら、言った。

 「パレスチナの中で私から何かを奪った人は一人もいませんでした。みんなが何かを、大切な小さなものを手渡してくれました。だけど今、日本、そしてあらゆる西洋諸国は、ガザやパレスチナの人たちから、本当に最後に残された希望も奪っています。私たちは、どちらの側に立つんでしょうか」

 「遠い場所にいる大変な人」ではなく、新土さんにとって「家族と同じくらい大切な」人を思い浮かべながらのスピーチに、思わず涙ぐむ人もいた。

スピーチする新土さん

 その次にマイクを握った「武器取引反対ネットワーク」の杉原こうじさんは、岸田首相が国会で、山添拓議員の質問に答え、難民キャンプへの爆撃すら国際人道法違反だと認めなかったことに触れた。

 「日本はこうした戦争犯罪を裁く国際刑事裁判所にもっとも多くの金を出している国なんです。そういう国でありながら、これほどの大虐殺、ジェノサイドに対して国際法違反だということも言えない。そんな政府を私たちは抱えている」

 しかも11月3日、上川外務大臣はイスラエルを訪問して外相と会談したものの、この虐殺を正面から批判することもなかったのだからなんのために行ったのか。2日には、官邸前で「上川大臣はイスラエルに攻撃中止を迫れ!」と題された「ダイ・イン」も行われている。

 そうして杉原さんの口から、安倍政権以降進められてきた、日本とイスラエルの経済的・軍事的な協力についてが語られる。

 例えば今年3月、幕張メッセでは武器見本市が開催されたのだが、前回は3社しかなかったイスラエルの軍事企業は今回、なんと14社にまで増えていたという。その動きと提携する日本企業の名前も語られた。

 そんなスピーチの合間を縫って、呼びかけ人たちでイスラエル大使館に要請書を渡しに行くこととなった。が、大使館前には警察がずらりと並び、メディアの同行が「一人」しか認められないという異様な状況。しかも、要請書を敷地に置いていくことしか許されないというので、神田香織さんがその場で読み上げ。要請書では、即刻の停戦を強く求めたのだった。

 この日、イスラエル大使館前に集まったのは1600人。

 これを読む人の中には、パレスチナから遠く離れた日本で声を上げてなんになるの? と思う人もいるかもしれない。が、イラク戦争直前、現地で戦争反対を訴えるためにイラクに行った際、イラクの人々に言われた言葉を私は今も覚えている。

 「日本でも反戦デモをやっているとニュースで見た、ありがとう」と。

 もう20年前のことだ。9・11テロが起きてアフガン空爆が始まり、次はイラクかというあの時期、日本でも多くの反戦デモが開催され、私も参加していた。それを、イラクに住む人々が見ていたということ。あの時初めて、私は「デモには意味がある」と根拠を持って思ったのだ。これからは、「なんの意味があるの?」と言われても、胸を張ってこのことを伝えようと。

 今、世界中でガザ地区への虐殺に抗議の声が上がっている。それを現地にいる人たちに届けるくらいしかできることがないのは歯がゆいけれど、今は20年前よりはネットやSNSが発達している。私たちは、この虐殺を決して許していないことを今、あらゆる手段で発信し続けるしかないのだと思う。

呼びかけ人の鎌田慧さん、神田香織さん、佐高信さん、私。イスラエル大使館に要請書を私に行くものの渡せず。要請書を読み終えたあと。


「ころすな」禁句だそうでアピールチャンスを2回逃しましたので変更しました。
a!  「 現在日時をセット」ボタンを押してしまいました。
新たな記事投稿ではありません。
ごめんなさい。

園のようす。
イチョウの樹。実をつけていない樹は葉っぱを落としていますが実をつけた樹はまだ頑張っています。


古賀茂明 「大量虐殺」と呼ばないマスコミ ジャニー氏の行為を「レイプ」と報じないのと同じ愚行だ

2023年11月07日 | 事件

政官財の罪と罰  古賀茂明

AERAdot2023/11/07

 

 ハマスのイスラエル攻撃への報復(イスラエルによれば自衛権の行使)により、ガザ地区を中心にパレスチナ人の大量虐殺が進んでいる。このイスラエルの攻撃について、マスコミは、報復攻撃、テロ掃討、軍事攻撃、軍事作戦、空爆、地上攻撃、地上作戦など、刻々とさまざまな言葉を使って伝えている。しかし、こうした言葉では、ガザで起きていることの本質を正しく伝えることはできない。

 なぜなら、イスラエルの行為は彼らがどのように言い訳しても、ジェノサイド条約第2条に定める「ジェノサイド」に当たるからだ。

 念のため同条約の第1条と第2条を引用しておこう。

第1条

 締約国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを、防止し処罰することを約束する。

第2条

 この条約では、集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた次の行為のいずれをも意味する。

(a)集団構成員を殺すこと。

(b)集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること。

(c)全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。

(d)集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。

(e)集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。

 これを読むと、ジェノサイドの定義は普通の人が想像するよりも広いことに気づく。

 国民的、人種的、民族的または宗教的集団を全部または一部破壊することを目的に行われる集団構成員の殺害はもちろん、肉体的・精神的な危害、さらには肉体的破壊をもたらす生活条件を課すことまで含まれる。イスラエルがやっていることはことごとくこの定義に当てはまる。

 イスラエルは、パレスチナ人をことさら狙っているのではなく、ハマスというテロリストの攻撃からイスラエルの国家・国民を守るための自衛権を行使している戦闘でたまたまパレスチナの民間人が巻き添えになっているだけだと言い訳している。

 しかし、彼らは、民間の建物の下のトンネル内にいるハマス戦闘員を攻撃するのに、空爆や地上からの砲弾による攻撃を行えば、大量のパレスチナの民間人、なかんずく女性や子供たちが殺害されることを理解した上で軍事侵攻を行っている。しかも、彼らの攻撃の後には、すべてが破壊された土地が残るのみで、そこにあった生活インフラは完全になくなり、パレスチナ人が住むことができなくなることもわかっている。

 さらに、パレスチナ人をガザ地区から逃げられないようにしてこうした行為を行っているのだから、なんと言い訳しようとも、パレスチナ人の大量殺戮を、百歩譲って積極的ではないとしても、意図して行っていることは否定できない。

したがって、イスラエルの行為は「ジェノサイド」と言うべきなのだ。

 ハマスのイスラエル民間人に対する攻撃はテロ行為であり、もちろん、国際法違反だが、だからと言って、その報復のためにジェノサイドが正当化されることにはならない。

 マスコミは「停戦」「休戦」という言葉を使っているが、「ジェノサイド停止」という言葉を使った方が、より物事の本質と緊急性が理解されるだろう。

 日本は残念ながらジェノサイド条約を批准していない。だから、ジェノサイドを止めてその犯罪者を処罰する義務を負っていないという議論を見たことがあるが、これは間違いだ。なぜなら、日本は国際刑事裁判所に関するローマ規程に加盟しており、その中で、ジェノサイドは犯罪として定義され、処罰すべしと書かれているからだ。

 したがって、日本は、ジェノサイド条約に加盟していなくても、少なくとも道義的には、ジェノサイドを見て見ぬ振りをするわけにはいかないはずだ。

 ところが、日本は、このジェノサイドを止めようとする世界の動きに対して、完全に反対の動きをしている。国連安保理に提出された即時停戦を求める決議案に米英などとともに反対しただけでなく、国連総会では、人道的休戦を求める決議に対して棄権した。この決議案には、121カ国という圧倒的多数が賛成し、反対したのは米国などわずか14カ国だけで、棄権も44カ国にとどまった。米国の同盟国は米国に追随して反対ないし棄権したと思っている人が多いかもしれないが、NATO加盟国のフランス、ベルギー、スペインなどは賛成している。米国の言いなりなどにはならず、独立した判断を示したのである。

 一方の日本は、「総合的判断」というだけで、明確な理由も示さず棄権した。もちろん、世界中が、日本は人権には無関心だと見抜いているし、米国の属国であるということもわかっているから、特に驚いてはいないはずだ。だから日本をことさらに批判する国はない。それをいいことに、日本は単に米国の顔色をうかがいながら行動しているのだ。

 さらに問題なのは、岸田文雄首相に、今回の判断をするにあたって、悩んでいる様子が見えないことだ。なぜ、悩まないのかというと、おそらく、「日本の国民はバカだから、イスラエルとパレスチナの問題など理解できない。とりあえず、アメリカに寄り添う判断を見せていれば特に強い批判の声は出ないだろう」と考えたからではないだろうか。

 確かに、この戦争を見ていて、驚いたことがある。それは、多くの日本人が、パレスチナとイスラエルの歴史を全く知らないように見えたことだ。

 私が中高生だったころ(1970年ごろ)、何で習ったのかは定かではないが、私も私の友人たちも、パレスチナ問題といえば、いつもイスラエルがパレスチナ人に酷いことをしているというイメージで捉えていた。

 当時は、ベトナム戦争が若者の関心の中心になっていたが、そこでは米国が悪者だった。その米国が応援するイスラエルがパレスチナを攻撃しているとなれば、当然悪いのはイスラエルで正義はパレスチナにありということになる。

 しかし、私たちはそれだけではなく、第1次世界大戦の時に、フランスと裏で結託したイギリスにパレスチナ独立という甘い言葉で騙されたパレスチナ人の悲劇や、同じく建国の約束を得ていたイスラエルが、一方的に独立を宣言し、国連の決議などを無視して強引にパレスチナに植民=占領行為を行っていったという経緯も概要だけかもしれないが、理解していたように記憶している。ただし、多くの人はいつの間にか忘れてしまったようだ。

 そうした背景があるので、私が今回のハマスの攻撃を知った時、ハマスはこんな酷いことをするのかと驚いたのはもちろんだが、それと同時に、ここまで追い込んだのは、イスラエルと米国だという考えが条件反射的に頭の中に湧き起こった。

 ハマスの攻撃は許されないにしても、イスラエル「政府」が行っていることは、それ以上に非人道的で許されないことだということを瞬間的に理解できる日本人がどの程度いたのか。いなかったとしたら、それは教育の問題なのだろうか。

 さらに、私にはもう一つ疑問に思うことがある。

 それは、今回の事件が10月7日に突然始まったのではなく、何十年も続いたイスラエルによるパレスチナに対する国際法違反の度重なる虐殺の黒い歴史の中で起きた事件なのだということを、なぜ最初にマスコミが大きく伝えなかったのかということだ。

 やはり、日本政府が米国に無条件に従うことが慣例となってしまったこの10年で、米国に反対する言論を展開することを日本のマスコミが躊躇するようになったのだろうか。

 TBSなどは比較的早く、こうしたニュアンスを伝え始めたが、それでも、ジェノサイドを止めろという強い言葉は出て来ない。それは、危機感がないからであり、多くの場合は、戦争からは何も生まれないとか弱者ばかりが悲惨な目に遭っているとか、憎悪の連鎖を断ち切らなければというようなありきたりのコメントとともに、最後は、「しっかり注視していかなければなりませんね」というようなまとめで終わってしまう。

 ハマスを非難するのはもちろんなんの問題もないが、それ以上に今は、イスラエルが行っているジェノサイドを思い切り非難し、その行動を無条件に止めるべきだということをもっと強調すべきだと思う。

 話は少し脱線するが、こうしたことを考えていた時に思い浮かんだのが、ジャニーズ問題との類似性だ。

ジャニー喜多川の犯罪行為が明確に批判され始めても、その凶悪性を本当には認識できていないため、「性加害」という言葉でマイルドにしか伝えられなかったマスコミの「鈍感さ」。

 今日のイスラエルの行動をジェノサイドという最大の危機であるということが理解できず、イスラエルの「報復攻撃」とか「地上戦」という言葉に置き換えて、強く非難することなく、結果的に傍観しているのと同じことになっているのもまた、マスコミの「鈍感さ」のなせる業なのかなと思ってしまうのである。

 私たち国民も、停戦を早くという言葉は口にしても、「ジェノサイドを止めて!」という緊急性を持った言葉で声を上げるにはまだ至っていないようだ。

 これまで何十年も放置されてきたパレスチナの人々に対して無関心であった私たちは、そのことを謝罪するとともに、今こそ、イスラエル政府のジェノサイドを止めろという声を上げる責任があるのではないだろうか。

 そうした声が大きくならないために、岸田首相はなんの心配も迷いもなく、米国追随外交を呑気に続けられるのだということを私たちは反省しなければならない。

 今ここで、このジェノサイドを止められなければ、それに事実上加担した国の国民の一人として、私たちは、これから先長きにわたって、後ろめたさと悲しみを持って生きなければならなくなるだろう。

 なお、イスラエル「政府」の行為がジェノサイドだとしても、それをユダヤ人一般に対する非難や攻撃に繋げることがないように細心の注意が必要である。このことも大きな声で叫ばなければならない。


「ガザに核」発言も飛び出した。

 「とんでもない話だ。相手を根絶やしにするため、本当に使うかもしれないという怖さがある」。80カ国以上で被爆体験を証言するなどしてきた田中稔子さん(85)=広島市東区=は憤った。

 広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(79)は「発言の根底に、どこかの局面でイスラエルが核兵器を使おうと考えていることがうかがえる」と懸念し、「国際社会が核兵器反対と停戦の声を強く上げる必要がある。被爆国である日本の政府なら積極的に動けるはずだ」と外交努力を求めた。

 イスラエルは核保有を公式には認めていないが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の2022年1月時点の推計では、90発を保有しているとされる。

 


ガザへの無差別攻撃 なぜ不問

2023年11月06日 | 社会・経済

米欧日に怒り アラブで拡大

「しんぶん赤旗」2023116

「民間人虐殺が自衛か」

 【カイロ=秋山豊】アラブの人たちには、イスラエルとともに、米国、英国、ドイツ、日本などに対する強い怒りが広がっています。これらの国は、パレスチナのガザ地区を無差別に攻撃するイスラエルを批判しないばかりか、同国に「自衛権がある」として即時停戦さえ求めていないからです。

 SNSでは、米国のコーヒーチェーン大手スターバックスや米国に本社があるコカ・コーラなどの不買も呼びかけられ、数えきれない怒りの文章が投稿されています。

 「イスラエル軍の犯罪を支持する者は損失を被れ」「安売りし始めた企業もあるが、誰が買うか」

 米ファストフード大手マクドナルドのイスラエル法人は、イスラエル軍に食事を大量に無償提供して強い怒りを買っています。

来店客ゼロ

 3日午前10時半、エジプト首都カイロ近郊の同店に客は全くいませんでした。この日は金曜日。エジプトの休日で、普段ならレジの前に列が出来ています。

 従業員の女性(26)は「お客さんは来ないし、配達の注文も減った。不買運動を支持してやめた従業員もいる。ガザの子どもがどんなに苦しんでいるかみてほしい。私も退職を考えている」と言いました。

 同店の近くに住むマイ・ムハンマドさん(30)=建築家=は「欧米はイスラエルに自衛権があると言う。民間人の虐殺や病院への空爆が自衛に関係あるのか」「私にとって欧米製品の購入は、パレスチナ人を殺す弾丸への資金提供と同じだ」と話します。

 ヨルダン首都アンマン在住のオサマ・ハムザさん(34)=会社員=は「飲食店や化粧品、タバコなどの不買運動を行っている。イスラエルと、それを支持する国は、民主国家だと言いながら争いの論理しか持っていない」と怒ります。

「恥を知れ」

 国連総会は人道的休戦を求める決議を121の賛成で採択していますが、その採決で棄権した日本政府への怒りも渦巻いています。

 カイロに暮らすラマダン・アブデルラハマンさん(41)は「私は日本製のテレビを持っている。しかしガザでの虐殺に目をつぶり、人道を尊重しない国の物はもう買えない。日本政府は恥を知れ。ガザの人びとに謝れ」と言いました。

 ガザ在住の政治アナリスト、アイマン・ラファティさんは「日本政府は、数千トンの爆弾を落としているイスラエルに加担したとみなされている。日本政府が停戦に背を向ける態度を改め、虐殺に反対しない限り、怒りはおさまらない」と言います。

 ラファティさんは「人権と国際法、国際人道法を擁護する日本国民のみなさん、あなた方の政府の態度をただしてほしい。日本政府が米国に追従するのを止めてほしい」と訴えました。

⁂     ⁂     ⁂

即時停戦 ガザに平和を

銀座デモ

 イスラエルによるガザ地区攻撃で民間人の犠牲者が広がる中、攻撃の中止と即時停戦を求めるデモが5日夜、東京・銀座で行われました。主催は、総がかり行動実行委員会などが参加する「パレスチナに平和を!緊急行動」。1600人の参加者(主催者発表)は「ガザに平和を!」などと書かれたプラカードを掲げ、「ストップ・ジェノサイド(虐殺やめろ)!」と訴え、沿道の人がコールを唱和してこたえました。

 埼玉県鴻巣市の西尾綾子さん(54)は「SNSで流れてくる映像を見て、居ても立ってもいられず参加しました。この争いを止められないのであれば私たちの文明の意味がない」と語りました。

 東京都武蔵野市の鈴木リサさん(26)=仮名=は、SNSで情報を共有して友人と参加。「現地から発せられる痛みの声に対して、私たちには応答する責任がある。大手メディアがガザの現状を十分に報道していないと感じるが、デモ参加を通じて(イスラエルとの会談でハマスの攻撃を一方的に非難した)上川外相の態度が日本の全てではないと示したい」と話しました。

 神奈川県大和市の片寄一成さん(64)は、イスラエルによる一方的な虐殺を止めるためには国際的な世論が必要だと強調。「ハマスによるテロ行為が一つのきっかけだとしても、それ以前からイスラエルの強引な姿勢があり、今では一方的な虐殺になっている。日本国内からも即時停戦を求める声をあげていきたい」と語りました。


尊い命を守れ!
日本政府はアメリカから「独立」し、即時停戦に動け!

園のようす。
オカワカメ(雲南百薬)


葉や茎を食べます。
わかめにそっくりですが、味は違います。
「百薬」と言われるよう栄養価の高い作物です。

 


安いニッポンを飛び出す若者たち

2023年11月05日 | 生活

最低時給2000円!9割の親世代が驚愕「これが令和のワーホリなのか!」

YAHOOニュース11/5()

by東洋経済オンライン

最低時給2000円のオーストラリアに、安いニッポンから飛び出す若者が増えている

カフェの皿洗いのアルバイトで月収40万円?  カップルでワーホリ?  現地で大学進学?  エンジニアとして就職?  結婚して永住?  昭和生まれの親世代からすると、令和の時代のワーキングホリデー(ワーホリ)は、驚くべきことになっています。オーストラリア・シドニーで多くの若者たちに取材を重ねて『安いニッポンからワーホリ!』を上梓した上阪徹氏が、令和のワーホリのリアルを解説します。

■オーストラリアの最低賃金は日本の2倍! 

 ワーキングホリデー(ワーホリ)と聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべるだろうか。

 ワーホリは、国と国とが契約を結び、お互いの国の若者たちが一定期間、現地で過ごすことができ、かつ働くことができるという制度。私のような昭和世代では、「お金持ちの子息が社会に出るまでにモラトリアム的に海外に行くときに使う制度」というイメージを持つ人が少なくないのでは、と思う。当時は制度がスタートしたばかりでもあり、利用者もそれほど多くはなかった。

 しかし、いまやまったくそれは変わっていたのだ。「令和のワーホリ」は、いろいろな点でスケールが違っていたのである。

 202321日、NHKの『クローズアップ現代』で「“安いニッポンから海外出稼ぎへ”~稼げる国を目指す若者たち~」というタイトルで放映された番組があった。

 紹介されたのは、オーストラリアにワーホリでやってきて、日本人の若者たちが稼ぐ衝撃の金額だった。

●農場での実働6時間のブルーベリー摘みアルバイトで、月収50万円。夕方からはビーチでサーフィン。

●カフェでのアルバイト収入は週給10万円。月収にすると、アルバイトの収入だけで40万円以上に。

●残業なしの介護アシスタントで月収80万円。日本を離れてわずか9カ月で貯金は270万円。

 オーストラリアの最低賃金は時給21.38豪ドル、日本円で約2000(番組放送時。現在は23.23豪ドルとさらにアップ)。これが最低賃金(時給)なのだ。日本の約2倍。だから、カフェのアルバイトでも月収が40万円、50万円にもなるという。

■安いニッポンよりも貯金ができる

 オーストラリア、カナダ、ニュージーランド……。コロナ禍が明けた今、日本を飛び出し、海外に目を向ける若者たちが増えている。実はNHKの番組放映の前年夏から、若者たちの間ではSNSで話題になっていたのだ。

 というのも、実際に「稼いでいた」若者たちがSNSを使って、自分たちの稼ぎをレポートしていたからである。中には給与明細をアップしている若者もいた。

 それにネットメディアが飛びつき、さらに民放の人気番組やニュース番組が飛びつき、とうとうNHKまでもが取り上げることになったわけだ。

 ワーホリが若者にとって「稼げる場」になっていたのは理由がある。日本の“安さ”である。この30年間、世界の国々では経済成長に伴って、働く人々の賃金が上がっていった。アメリカやイギリスでは、約1.5倍に。ドイツやフランスでも約1.3倍になっている。

 ところが、日本の実質賃金の伸び率は0.1%。30年間、ほとんど増えていないのである。OECD諸国の中でも、日本の賃金水準は今や下から5番目の水準になってしまっている。そこに加えて、ここ数年は急激に円安が進んだ。円の価値が下がり、相対的に海外で稼ぐことが大きな魅力になったのだ。

 もちろん、海外は賃金水準と同じように物価水準も高いのも事実。オーストラリアも物価は高い。だが、家賃や食費などをうまくやりくりすれば、“安いニッポン”にいるよりも、はるかに貯金ができる。

 実際、1年間で200万円以上貯めた、300万円貯めた、といったワーホリの若者たちもいる。それほどまでに“賃金が高い”ことは魅力なのだ。

 ただ、実際のところはどうなのか。今の若者たちの「本当のリアル」を知りたく、国内で、またオンラインで、さらにはオーストラリア・シドニーで、関係するさまざまな人たちに取材を試みた。

■世界中から英語を学びにやってくる

 南半球にあるオーストラリアの気候は、日本とちょうど真反対になる。20236月、ムシムシとした梅雨空の日本から向かったシドニーで待っていたのは、ひんやりカラッとした快晴の青空だった。

 シドニーは人口約500万人を数えるオーストラリア随一の大都市。国際空港から車で40分ほど走り、降り立ったのは、タウンホールと呼ばれるエリア。大企業や金融街、ホテル、デパートなどが集まっているシドニー中心街だ。

 美しい街だと聞いていたが、想像以上だった。たしかに英国調の街並みとモダンな高層ビルは見事なバランスだ。しかも、ちょっと足を延ばせばハイドパークと呼ばれる大きな公園があり、緑がとても豊か。シドニーといえば、写真によく登場する海沿いのオペラハウスも、歩いて十数分で行ける。

 そして行き交う人々を見ていると、オーストラリアという国が本当に移民の国だということがわかる。人種のるつぼという言葉は過言ではない。東南アジア、インド、中国、韓国、中東、アフリカ、中南米……。まさに、本当にいろいろな国の人たちが、ここに集っている印象だ。

 加えて、経済がしっかり成長している国のなせるわざか、また若者が多いエリアだったからか、なんとも明るく開放的な雰囲気を感じた。誰も下を向いて歩いている人はいない。また、到着したばかりの「ガイジン」をジロジロ見るようなこともない。

 日本ではまだ多くの人がマスクをしていたタイミングだったが、誰もマスクをしていないことも印象的だった。

 ビジネス、ローカル、買い物客、観光客など、人でひしめくエリアに来たのは、理由がある。この街に、数多くの語学学校があるからだ。母国語が英語であるオーストラリアには、世界中から英語を学びに人々がやってくる。

 日本人も同様である。近年、日本から若者がワーホリでオーストラリアにやってくる理由として、英語を学びたいから、というケースは少なくない。そして多くの若者たちは、このエリアにある語学教室から滞在をスタートさせるのである。

■オーストラリアのワーホリの仕組み

(省略)

■人生は自分で切り拓いていける

 シドニーで、またオンラインで、多くの若者にインタビューした。たしかに稼ぐことができるが、実は「あくまで結果的にそうだっただけ」という若者たちも少なくなかった。

 彼らが求めていたのは、実はお金ではなかった。閉塞する日本を離れ、新天地に身を置くことで、新しい人生、日本では得られない人生を拓こうとしていたのだ。そして実際に、かけがえのない体験を得て、人生を大きく変えていった若者も少なくなかった。

 ワーホリを終え、現地の専門学校に入る。大学に進学する。就職する。起業する。永住権を獲得した人たちもいた。彼ら彼女らが得たのは、「人生は自分で切り拓いていける」という事実だった。

 海外での「稼ぎの大きさ」への驚きから始まった取材の旅の結論は、これである。

 「若者たちよ、今こそ海外へ出よう」

 筆者は国内外でさまざまな取材をしてきたが、こんなにワクワクする取材は久しぶりだった。ワーホリでいかに自分の人生が変わったか、こんな世界があって驚いた、自分が本当にやりたいことが見つかった、と嬉々として語ってくれた若者たちの表情の素晴らしさ。

 もっと多くの若者が海外に行けばいいのに、と真剣に思った。働くもよし、仲間を作るもよし、旅行するもよし。ワーホリなら、それほど費用をかけずに、本当にいろんなことができるのだ。そして改めて世界の広さを、人生の面白さを、その可能性を思った。

 稼げるから、ではない。日本で普通に暮らしていたのではなかなか起こることのない、大きな「マインドチェンジ」が起こせる可能性が高いからだ。人生観を変えられる、生きる価値観を変えられるからだ。

 じっとしていても、何も変わらない。日本を嘆いていたところで、誰も人生を変えてはくれない。だったら、思い切って、飛び出してみることだ。

 どこでも生きる力が身に付けば、もう未来にビクビクすることはなくなる。それを世界は教えてくれる。自分次第で、未来は明るいものにできる、ということも。人生を楽しまないで、どうするか……。

 海外に出た若者たちからは、そんなメッセージを受け取った。


この手の記事は何度も紹介してきた。
YouTubeでニッポン凄いを見てる場合ではないのだ。
残念ながら、今の日本は遅れまくっている。

初霜・初氷
今季初めての氷点下となった。


頑張っています。

ぶどう雪囲い前にネズミ対策。


プラスチック危機を解決する大きな一歩

2023年11月04日 | 自然・農業・環境問題

1000を超える科学論文に引用された「日本人科学者たちの発見

ガーディアン(英国)2023.10.29()

プラスチック廃棄物による環境汚染問題が深刻化するなか、それを解決する鍵として注目されている細菌がある。20年以上も前に日本人科学者たちによって発見され、2016年の論文で発表されたこの細菌は、なんとプラスチックを食べるという。

いま、世界で大躍進を遂げている微生物×プラスチックの分野に、英紙「ガーディアン」が迫る。

プラスチックを食べる微生物たち

早すぎた大発見

2001年、ある日本人科学者たちのグループが、リサイクル工場で驚くべき発見をした。ゴミの山の中で、ペットボトルやおもちゃなどのゴミを嬉々として分解している細菌を見つけたのだ。

その細菌は、ゴミを分解する際にプラスチックに含まれる炭素をエネルギーとして取り込むことで成長・移動し、プラスチックを大量消費する細菌へと分裂していた。

手から口へと運ばれ、そこから胃に至るという、人間が理解しているような形ではないが、たしかにプラスチックを食べていたのだ。

その科学者グループのリーダーを務めていたのが、京都工芸繊維大学の小田耕平教授だった。もともと彼のチームが探していたのは、ポリエステルのような合成繊維を柔らかくする微生物だった。

ポリエステルは、大半の飲料用ペットボトルに使用されているものと同じ種類のプラスチックから作られている。小田は微生物学者であり、どのような科学的問題に直面しても、すでに微生物が解決策を持っているはずだと信じている。

「自然のこの部分をもっと注意深く観察してみてください。非常に優れたアイデアを持っている場合が多いです」と小田は言う。

小田とそのチームがリサイクル工場で発見した細菌は、それまで誰も見たことがないものだった。プラスチックを完全に分解し、基本的な栄養素に加工しているように見えたのだ。プラスチック汚染の深刻さを痛感している現代から見れば、この発見に秘められた可能性は明白だろう。

だが、2001年当時──「マイクロプラスチック」という言葉が使われはじめる3年も前──それは「大きな興味を引くトピックではないと見なされました」と小田は言う。彼のチームがまとめたこの細菌に関する初期段階の論文は、発表されずに終わった。

プラスチック危機を解決する大きな一歩

小田たちの発見から数年のうちに、プラスチック汚染は見過ごせない問題となった。

この20年の間に、人類は25億トンのプラスチックゴミを生み出した。1年間で排出する量は約38000万トンにも及び、2060年までには、その量はさらに3倍になると見込まれている。太平洋のど真んなかには、英国本土の7倍の大きさもあるプラスチックゴミの島(太平洋ゴミベルト)が浮かんでいる。

海洋に現れた生態系「プラスチック圏」の謎に迫る

プラスチックゴミは世界中の海岸を埋め尽くし、埋め立て地を溢れ返らせている。ミクロレベルでは、果物や野菜のなかにも、根を通じて入り込んだマイクロプラスチックやナノプラスチックの粒子が検出されている。

さらに、人間のほぼすべての臓器からマイクロプラスチックが検出されており、母乳を介して母から子にもたらされることさえある。

プラスチックを分解・リサイクルする現在の方法は、嘆かわしいほど不充分だ。リサイクルする際、たいていはプラスチックを砕いたり擦り潰したりする段階を経るが、その過程でプラスチックを構成する繊維が擦り切れたり折れたりするため、品質が低下する。

ガラスやアルミの容器は何度でも溶かして再生できる一方で、滑らかなプラスチック製の水筒などは、リサイクルのたびに劣化していく。リサイクルされたペットボトルからは、まだら模様のバッグが作られ、次に繊維系の断熱材になり、さらに道路資材となるが、その後は2度とリサイクルされない。しかも、それが最良のシナリオなのだ。

現実には、リサイクル工場に持ち込まれるプラスチックはほんの9%だ。私たちが見出した唯一の永続的なプラスチック処理方法は焼却であり、毎年7000万トン近いプラスチックが焼却されている。

だが焼却すれば、プラスチックに含まれる炭素に加え、混入しているかもしれない有害な化学物質が大気中に放出され、環境に悪影響をもたらす。 

小田と、当時学生だった平賀和三は、その細菌の発見後も連絡を取り合い、実験を続けた。2016年、ついに権威ある学術誌「サイエンス」に研究成果が発表されると、プラスチック危機の解決策を切望する世界に知れ渡り、大評判となった。

小田らは、リサイクル工場で見つけた細菌を発見地の堺市にちなんで「イデオネラ・サカイエンシス」と命名した。彼らは論文のなかで、この細菌が出す特殊な酵素について、衣類や包装に使われている典型的なプラスチックであるポリエチレンテレフタレート(PET)を分解できると説明している。

この論文はメディアでも広く報道され、現時点で1000以上の科学論文に引用されており、全論文の上位0.1%に入っている。

改めて注目される「微生物の可能性」

だが、本当に望まれているのは、1種類のプラスチックを食べる1種類の細菌という発見を超える研究成果だ。

この半世紀の間に、微生物学は革新を遂げた。米国微生物学会の元会長で、オバマ大統領政権で科学アドバイザーを務めたジョー・ハンデルスマンはそれを、おそらくダーウィンの進化論の発見以来、最も重要な生物学的進歩だと語る。

私たちはいまや、微生物が人間の世界と密接に結びついた広大な世界を人知れず構築していることを知っている。その多様性と驚異的な力を、人類はまだ理解しはじめたばかりだ。

多くの科学者が小田の見解に賛同している。つまり、私たちが取り組んでいる一見難解な数々の問題に対して、微生物はとっくに解決策を見つけはじめているのかもしれない。私たちに必要なのは、それに目を向けることだけなのだ。

(続きは以下より)

毎日250キロのゴミをリサイクルする「プラスチックを食べる細菌」の未来 | 環境に猛スピードで適応する微生物たち | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)


地球をを壊す「防衛費」より、地球を守る「科学」にたくさんの予算をつけてほしいものです。
食糧も肥料も微生物に変わる時代なのです。

園のようす。


憲法公布77年 室蘭工業大学大学院教授(憲法学) 清末愛砂さんに聞く

2023年11月03日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2023113

9条・24条で非暴力社会を

 きょう3日は日本国憲法公布から77年の記念日です。岸田文雄政権が「安保3文書」に基づき違憲の敵基地攻撃能力の保有と大軍拡に踏み出すとともに、自民党総裁任期中の改憲をくり返し明言するもとでの、日本国憲法と政治の現状について識者に聞きました。

 

 憲法前文の「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)の精神のもと「北海道パレスチナ医療奉仕団」の一員としてパレスチナ支援を行ってきました。

「休戦」決議に棄権

 パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルの民間人への攻撃はいかなる理由があっても許されません。同時に、16年も続いているイスラエルによるガザの封鎖は占領下で保護されるべき人々に対する集団的懲罰であり、国際人道法違反です。現在のイスラエルによるガザへの無差別攻撃により、日々多数のパレスチナ人の命が失われています。病院や避難所となっている学校も安全ではありません。封鎖下で水や燃料、医薬品等が枯渇し、重大な人道危機が生じています。

 国連総会の緊急特別会合でガザに関して「人道的休戦」を求める決議に対し、日本は棄権しました。平和的生存権を明記した憲法をもつ日本は、人道危機の解決のために積極的に動くべきです。

 家族がガザ南部の避難所にいるパレスチナ人から「日本が棄権するなんて」と言われました。日本政府は、国際社会から厳しく批判されていることを重く受け止めるべきです。

改憲に説得力なし

 いま起きている紛争を口実に、岸田政権と一部の野党は「日本が攻められたらどうするのか」と危機感をあおっています。彼らは軍事力強化、自衛隊を憲法に明記すべきだと主張していますが、力による支配では人々の安全、生存は守れません

 軍事的優位に立とうとすれば、最終的に相手をたたきのめすしかありませんが、ロシアによるウクライナ侵略が失敗したように、それでは問題は解決しません。失敗例を根拠にした軍拡、改憲に説得力はありません。

 戦争を否定し、軍隊を持たないとうたう9条と、家族関係における個人の尊厳、両性の平等を定めた24条は平和主義の「両輪」です。

 家族や親密な関係の人から、ドメスティックバイオレンス(DV)や差別を受けたとき、強い個人として反論できる人ばかりではありません。そういう人たちの尊厳を守るのが24条2項の「個人の尊厳」です。

 暴力で相手を支配しようとする発想は、戦争の論理と似ています。9条と24条の価値を社会に広げることが、家庭や日常生活の暴力をなくし、戦争を否定する個人を育みます。そういう個人が増えれば、非暴力の社会を実現する力になります。

 憲法は日常生活のさまざまな場面で国民の権利を保障しています。前文は「恒久の平和」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ(る)」などと明記し、これらを具体化したのが9条(戦争放棄)や生活保護制度(25条、生存権)などです。憲法が生きる国づくりを進めるため、一人ひとりが行動することが大事です。(聞き手・目黒健太)

 きよすえ・あいさ 1972年生まれ。室蘭工業大学大学院教授。専門は憲法学、ジェンダー法学。『北海道で考える〈平和〉―歴史的視点から現代と未来を探る』『自衛隊の変貌と平和憲法』『平和とジェンダー正義を求めて』(ともに共編著)など。


日本が率先して「非暴力」の世界へと導く使命を持った国なのですが、憲法を無視し、改憲を狙っています。
世界に「非暴力」を!


「非自民」首長が次々と生まれる理由と「地域主権主義」

2023年11月02日 | 生活

 現代の旗手が語ったLINーNet集会

「東京新聞」2023年11月2日 
 
 「地域主権主義」に根差す政治や行政を目指し、住民や首長、地方議員らでつくる「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LINーNet)が10月25日、東京都杉並区で5回目の集会を開いた。シンポジウムでは、LINーNet世話人で世田谷区の保坂展人区長、杉並区の岸本聡子区長、政治分野のジェンダー平等を目指す「FIFTYS PROJECT(フィフティーズ プロジェクト)」の能條のうじょう桃子代表、政治学者で東京工業大の中島岳志教授の4人が、東京西部で「非自民」のリベラル派首長や議員が相次いで誕生している背景などを語り合った。(山口哲人、原田遼、関口克己)

◆「政党間のギスギスした対立ではなく」

世田谷区の保坂展人区長

世田谷区の保坂展人区長

 保坂展人・世田谷区長 東京の西側では、国政与党が継続して首長を出す構図が崩れて、市民運動をルーツとする首長が増えている。これは永田町からは見えない光景。それらの自治体はコモン(公共財)の考え方を共有し、良い政策を互いに学んで実現させようとしている。国の動きを待つのではなく、自治体から変えている。
 世田谷区と渋谷区が2015年に始めた同性カップル認証制度は、今は9000万人の人口を占める多くの自治体が同様の制度を持っている。政党間のギスギスした対立ではなく、相互扶助の手法を取る仲間が増えるといい。

◆「大きな流れをつくったのが女性や若者だった」

政治学者の中島岳志さん

政治学者の中島岳志さん

 中島岳志・東京工業大教授 東京西部での変化は、世界的な大きな潮流と呼応している。この10年間、世界の中で注目してきた動きがミュニシパリズム(地域主権主義)。ジェンダー、フェミニズムのような運動が起きても、いきなり国政を変えるのは難しい。まずは自分たちが住む自治体の選挙にしっかりとした候補を出して、着実に変えていく動きが起きてきた。新自由主義の下で次々と民営化したものを公共の手に取り戻し、市民参加型で取り組んでいる。
 日本では与野党の既成政党に対する失望が国民の間で広がっている中、昨年6月の杉並区長選での岸本区長誕生と、今年4月の統一地方選は、20年ぐらいたつと「あれが起点だった」と位置づけられるのではないか。「票にならない」といわれてきたジェンダーや環境、気候変動問題が票を動かしたのだから。その大きな流れをつくったのが、これまで政治から遠ざかってきたと見られてきた女性や若者だった。

◆「自分たちの手で代表を増やす」

「FIFTYS PROJECT」の能條桃子さん

「FIFTYS PROJECT」の能條桃子さん

 能條桃子・FIFTYS PROJECT代表 21年に東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言があった時、抗議署名を立ち上げて15万筆を集め、実際に森氏辞任につながった。だが、その年の新語・流行語大賞に「ジェンダー平等」がトップ10に選ばれたことで、「ただの流行で終わってしまう」との危機感を感じた。
 ジェンダー平等に日本の中でさらに取り組む必要があると思い、目を向けたのが地方議会。昨年調べたところ、全国約3万人の地方議員のうち、20代女性は15人、30代女性207人で、合わせても1%未満。一方、60代以上の男性が56%という数字を見た時に、まずは地方議会から変えないといけないと思った。
 昨年夏に「FIFTYS PROJECT」を立ち上げた。若い女性を応援すれば良いのではなく、マイノリティーの代表として意思を持つ人が議員にならないと意味がない。選択的夫婦別姓実現に賛成、推進▽トランスジェンダー差別反対、などの四つの政策に賛同する人たちを集め、今年の統一地方選では29人の候補者が出て、24人が当選した。東京だけではないが、確実に自分たちの手で代表を増やしている。

◆「一番分かっていないのが今、「保守」と言っている人たち」

 中島氏 東京西部で起きている動きを左右の問題にしたくない。岸本区長や保坂区長の行動はリベラルな保守の王道。能力も倫理性も不完全な人間が担う社会は不完全なまま推移せざるを得ない。それならば、特定の理論家の言う通りではなく、歴史の風雪に耐え、多くの庶民が残してきた英知に徐々に手を入れていくのが保守の考え方。漸進的に改革をする。
 だから保守はリベラルでなければならない。自分と異なる見解にまずは耳を傾け、理があると思ったら合意形成をしていくのが保守政治。これを一番分かっていないのが今、「保守」と言っている人たち。今後、左右の対立みたいなものを超えた地平が現れることを期待したい。

◆変えなければならない「宿命的な関係」

杉並区の岸本聡子区長

杉並区の岸本聡子区長

 岸本聡子・杉並区長 ある記事の中で書かれていたが、公園や道路、学校などの公共空間の計画について、「まだ決まっていないから詳細を発表できない」、決定後は「もう決まったことだから変えることができない」となるのが行政。行政と住民の間にはこんな宿命的な関係があるように思う。
 この関係があると、社会的合意形成に、若手や女性を含めたマイノリティーの人たちが関わるのが難しくなる。議会も住民の代表ではなく、町会や商店街などの代表のような人たちだけで占めることになってしまう。この関係性は、地方自治や公共空間をどうつくっていくかという点で、とても重要だ。

◆自治体は「ごみ回収をするぐらいの存在」?

 保坂氏 12年前に区長に初当選した後、区の幹部職員180人を集めた時、「自治体としてやらなければいけない定型的な業務は95%しっかりやってください。ただ100%になると、流れない水のようによどむので、5%は大胆に変えましょう」と申し上げた。すると、幹部職員はホッとし、私の支援者はガッカリした。区長1年目に5%変えても95%が残るが、次の年はまた5%…を12年続けると、かなり変わった。漸進的改革だ。
 能條氏 子どもを持つ前の世代は、自治体をごみ回収をするぐらいの存在と思っている人が多いのではないか。実家を出て、大学に入ったり就職したりすると、どこに住んでも一緒と感じ、自治体の存在が遠くなるのは仕方がない。
(左から)世田谷の保坂展人区長、能條桃子さん、杉並区の岸本聡子区長、政治学者の中島岳志さん

(左から)世田谷の保坂展人区長、能條桃子さん、杉並区の岸本聡子区長、政治学者の中島岳志さん

 私たちの活動は、若い女性議員を増やすことだが、同時に地方議会は意味がある存在だと私たち自身が気づいて、自分たちの代表を議会に送り込んだのなら、私たちは何を伝えたいのかを考える作業をする。こういうことを通じて、地方議会と近づくヒントを探しているという実感はある。

◆「民主主義を耕し、育てるという循環」

 中島氏 民主主義の中でも、選挙に行くだけではなくて、日常の中で、特に基礎自治体と関わり、自分の価値観と異なる他者と出会いながら熟議をして、合意形成をしていく熟議デモクラシーがコモンを作るために重要なポイントになる。
 岸本氏 選挙と選挙の間に、その自治体に住む人が民主主義を耕し、育てるという循環によって、競争や成長の先にある成熟社会の一つの姿を地方自治から見ていきたい。この思いは、会場の皆さんに共通しているだけではなく、欧州で20年間仕事をしてきた私の最大のこだわりでもある。
 参加型民主主義、熟議民主主義の仕組みや実践は数多くある。杉並区で試験的に予算の一部の使い方を住民が決める「参加型予算」もその一つ。住民が納めた税金を使うことに対し、民主性や透明性、説明責任を今以上に高め、議会外の人でも意見を言える仕組みを作りたい。杉並区でも世田谷区でも使っているミニ・パブリックスの手法がある。無作為で選んだ人たちが、対立になりがちな開発のようなテーマで熟議をして決める訓練をしたい。

園のようす。


金融政策再修正 物価抑制には力足りぬ

2023年11月01日 | 生活

「東京新聞」社説 2023年11月1日 

 日銀が金融政策決定会合で大規模金融緩和策の再修正を決めた。物価上昇に拍車をかけ続ける円安の抑制を意識した措置だが、修正の規模は小幅にとどまる。物価高を封じ込めるには、力不足と指摘せざるを得ない。
 会合では、長期金利が1%を一定程度超えても容認することを決定した。7月の会合では、上限としていた0・5%を「めど」に変え、1%まで認める措置を取っており、今年2回目の金融引き締めに踏み切った形となる。
 ただ、引き締めといっても円安を抑える効果があるか否かは不透明だ。
 激しいインフレが続く米国では連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続するとの観測があり、その規模やペースも日銀の政策修正をはるかに上回る。今回程度の修正では日米の金利差は縮まらず、金利の高いドル買いがさらに進むことも想定できる。
 食料品の値上がりや電気・ガス料金、ガソリン代の高止まりは常態化し、家計は細る一方だ。暮らしを守るには、これ以上の円安は許されない。
 日米の金利差縮小に向けた金融政策の修正は「物価の番人」である日銀の責務とも言える。日銀は緩和策の修正を模索し続けることになるだろう。
 日銀は31日公表の「経済・物価情勢の展望」で、2023年度の消費者物価指数の上昇見通しを前年度比2・8%(7月時点2・5%)、24年度も2・8%(同1・9%)に引き上げた。消費現場の実感からはかけ離れた数字だが、日銀が物価問題に危機意識を強めていることは確認できた。
 長期金利の上昇は、企業の設備投資意欲の減退や住宅ローン金利の引き上げにつながる可能性も否定できないが、現在の円安は、こうした負の側面を覆い尽くすほどの水準の物価高となって、私たちの暮らしを痛め続けている。
 国際通貨基金(IMF)は日本の国内総生産(GDP)が23年ドイツに抜かれ4位に落ちるとの見通しを出した。アベノミクスを起点とした緩和策が過度な通貨安を引き起こし、その影響は国の衰退さえ招いたことも指摘したい。
 長期金利上昇は国債の利払い増加にもつながる。アベノミクス以来の国債頼みの膨張予算も金融政策変更の足かせになっていると、政府・与党は胸に刻むべきだ。 

園のようす。
楽しみにしていた山ブドウの収穫であるが、間際の美味しい時にになってほとんど全てが鳥の餌になってしまった。

栗の木だが今年はクリにつく緑の毛の長い毛虫が大発生。若い葉を食べつくす。
おかげで今年は小粒だ。
ところがイチョウの葉は誰も喰わないのか、銀杏は豊作だ。