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プラスチック危機を解決する大きな一歩

2023年11月04日 | 自然・農業・環境問題

1000を超える科学論文に引用された「日本人科学者たちの発見

ガーディアン(英国)2023.10.29()

プラスチック廃棄物による環境汚染問題が深刻化するなか、それを解決する鍵として注目されている細菌がある。20年以上も前に日本人科学者たちによって発見され、2016年の論文で発表されたこの細菌は、なんとプラスチックを食べるという。

いま、世界で大躍進を遂げている微生物×プラスチックの分野に、英紙「ガーディアン」が迫る。

プラスチックを食べる微生物たち

早すぎた大発見

2001年、ある日本人科学者たちのグループが、リサイクル工場で驚くべき発見をした。ゴミの山の中で、ペットボトルやおもちゃなどのゴミを嬉々として分解している細菌を見つけたのだ。

その細菌は、ゴミを分解する際にプラスチックに含まれる炭素をエネルギーとして取り込むことで成長・移動し、プラスチックを大量消費する細菌へと分裂していた。

手から口へと運ばれ、そこから胃に至るという、人間が理解しているような形ではないが、たしかにプラスチックを食べていたのだ。

その科学者グループのリーダーを務めていたのが、京都工芸繊維大学の小田耕平教授だった。もともと彼のチームが探していたのは、ポリエステルのような合成繊維を柔らかくする微生物だった。

ポリエステルは、大半の飲料用ペットボトルに使用されているものと同じ種類のプラスチックから作られている。小田は微生物学者であり、どのような科学的問題に直面しても、すでに微生物が解決策を持っているはずだと信じている。

「自然のこの部分をもっと注意深く観察してみてください。非常に優れたアイデアを持っている場合が多いです」と小田は言う。

小田とそのチームがリサイクル工場で発見した細菌は、それまで誰も見たことがないものだった。プラスチックを完全に分解し、基本的な栄養素に加工しているように見えたのだ。プラスチック汚染の深刻さを痛感している現代から見れば、この発見に秘められた可能性は明白だろう。

だが、2001年当時──「マイクロプラスチック」という言葉が使われはじめる3年も前──それは「大きな興味を引くトピックではないと見なされました」と小田は言う。彼のチームがまとめたこの細菌に関する初期段階の論文は、発表されずに終わった。

プラスチック危機を解決する大きな一歩

小田たちの発見から数年のうちに、プラスチック汚染は見過ごせない問題となった。

この20年の間に、人類は25億トンのプラスチックゴミを生み出した。1年間で排出する量は約38000万トンにも及び、2060年までには、その量はさらに3倍になると見込まれている。太平洋のど真んなかには、英国本土の7倍の大きさもあるプラスチックゴミの島(太平洋ゴミベルト)が浮かんでいる。

海洋に現れた生態系「プラスチック圏」の謎に迫る

プラスチックゴミは世界中の海岸を埋め尽くし、埋め立て地を溢れ返らせている。ミクロレベルでは、果物や野菜のなかにも、根を通じて入り込んだマイクロプラスチックやナノプラスチックの粒子が検出されている。

さらに、人間のほぼすべての臓器からマイクロプラスチックが検出されており、母乳を介して母から子にもたらされることさえある。

プラスチックを分解・リサイクルする現在の方法は、嘆かわしいほど不充分だ。リサイクルする際、たいていはプラスチックを砕いたり擦り潰したりする段階を経るが、その過程でプラスチックを構成する繊維が擦り切れたり折れたりするため、品質が低下する。

ガラスやアルミの容器は何度でも溶かして再生できる一方で、滑らかなプラスチック製の水筒などは、リサイクルのたびに劣化していく。リサイクルされたペットボトルからは、まだら模様のバッグが作られ、次に繊維系の断熱材になり、さらに道路資材となるが、その後は2度とリサイクルされない。しかも、それが最良のシナリオなのだ。

現実には、リサイクル工場に持ち込まれるプラスチックはほんの9%だ。私たちが見出した唯一の永続的なプラスチック処理方法は焼却であり、毎年7000万トン近いプラスチックが焼却されている。

だが焼却すれば、プラスチックに含まれる炭素に加え、混入しているかもしれない有害な化学物質が大気中に放出され、環境に悪影響をもたらす。 

小田と、当時学生だった平賀和三は、その細菌の発見後も連絡を取り合い、実験を続けた。2016年、ついに権威ある学術誌「サイエンス」に研究成果が発表されると、プラスチック危機の解決策を切望する世界に知れ渡り、大評判となった。

小田らは、リサイクル工場で見つけた細菌を発見地の堺市にちなんで「イデオネラ・サカイエンシス」と命名した。彼らは論文のなかで、この細菌が出す特殊な酵素について、衣類や包装に使われている典型的なプラスチックであるポリエチレンテレフタレート(PET)を分解できると説明している。

この論文はメディアでも広く報道され、現時点で1000以上の科学論文に引用されており、全論文の上位0.1%に入っている。

改めて注目される「微生物の可能性」

だが、本当に望まれているのは、1種類のプラスチックを食べる1種類の細菌という発見を超える研究成果だ。

この半世紀の間に、微生物学は革新を遂げた。米国微生物学会の元会長で、オバマ大統領政権で科学アドバイザーを務めたジョー・ハンデルスマンはそれを、おそらくダーウィンの進化論の発見以来、最も重要な生物学的進歩だと語る。

私たちはいまや、微生物が人間の世界と密接に結びついた広大な世界を人知れず構築していることを知っている。その多様性と驚異的な力を、人類はまだ理解しはじめたばかりだ。

多くの科学者が小田の見解に賛同している。つまり、私たちが取り組んでいる一見難解な数々の問題に対して、微生物はとっくに解決策を見つけはじめているのかもしれない。私たちに必要なのは、それに目を向けることだけなのだ。

(続きは以下より)

毎日250キロのゴミをリサイクルする「プラスチックを食べる細菌」の未来 | 環境に猛スピードで適応する微生物たち | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)


地球をを壊す「防衛費」より、地球を守る「科学」にたくさんの予算をつけてほしいものです。
食糧も肥料も微生物に変わる時代なのです。

園のようす。