里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

「#竹中平蔵つまみ出せ」Twitterデモに大きな反響 「日本を破壊する男」への批判と非難

2020年11月30日 | 社会・経済
 

東京オリンピックにも介入している竹中平蔵パソナグループ会長(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「#竹中平蔵つまみ出せ」がTwitterでトレンド入り

パソナグループ会長の竹中平蔵氏への批判と非難がTwitterで連日続いている。

「#竹中平蔵つまみ出せ」というTwitterにおけるタグはトレンド入りし、11月29日16時時点でも拡散の勢いは止まるところを知らない。

(画像が入らないので翼 飯三さんはTwitterを使っています 「そう。だから #竹中平蔵つまみ出せ #竹中平蔵は政治に関わるな #竹中平蔵に殺される #竹中平蔵ろくでもない #竹中平蔵を太陽系から排除しよう」 / Twitter

竹中平蔵氏は「レントシーカー」だから警戒すべき

私も派遣労働、非正規労働が増えた、いわゆる「就職氷河期世代」の一員として、竹中氏を長年批判してきたひとりである。

竹中氏への批判は様々な視点からおこなってきたが、私が最も注意している点は彼が典型的な「レントシーカー」だからだ。

レントシーカーのレントとは、いわゆる「超過利潤」という意味である。

超過利潤とは、一般的に通常では起きない出来事、イベント、政策介入などを原因として、想定よりも多く発生する利潤を指す。

近年、超過利潤の発生原因は、意図した目的での政策介入によるものが増えてきている。

そして、その超過利潤を政策に介入して得るため、様々な工作活動をする人をレントシーカー、あるいはロビイストという

日本だけでなく、以前ほどの経済成長が見込めなくなった国や地域では、レントシーカーたちが蠢(うごめ)き始めている。

レントシーカーは、世界各国で活動しており、本来であれば、利潤が上がらないし、公共性を考えれば利潤を上げるべきでない領域に需要があるように見せかける工作活動をおこない、超過利潤を自分たちで取得していく。

海外であれば、水道民営化がレントシーカーの被害領域として有名だ。

レントシーカーたちは、水道を民営化して自分たちが運営した方が社会や市民に有益だと主張し、政策介入する。

その市民サービスの運営権を業務委託などで取得するが、当然、超過利潤を上げることが目的化するので、安上がりのサービスになり、事業自体を劣化させていく。

現在、海外で水道民営化は見直しがされ、その際にレントシーカーたちがおこなった詐欺的な手法に批判や非難が集中している。

竹中氏は民間出身の大臣として、郵政民営化などの政策介入で有名だが、レントシーカーとしての役割を一貫して果たしてきた人物だといえる。

例えば、日本のレントシーカーは人材派遣会社を経営している。

日本の労働市場に介入し、本来は正社員でよいはずの労働者に対し、派遣労働のメリットを中心に語りながら、正社員から派遣労働、非正規へ急激に置き換えてきた。

この流れから日本でも次々に人材派遣会社が立ち上がり、企業や自治体などに労働者を派遣しつつ、その超過利潤を取得するビジネスが発達する。

竹中氏は「正社員は解雇しにくいため企業経営、経済成長の足かせになっている」と主張し、雇用の安定性を崩壊させつつ、人材派遣事業の広範な導入を求めてきた人物である。

これは事実であり、客観的に批判の余地がない部分だ。

ご存知の通り、このレントシーカーの介入によって、派遣労働、非正規労働は急速に増加し、いわゆるワーキングプアも増大した。

働いても貧しく、貯蓄も十分に形成できないばかりか、派遣労働者であれば、その少ない労働対価から人材派遣会社に利益が奪い取られる。

新型コロナ禍でも主に生活困窮に至ったり、死にたいほど辛い思いをしている労働者は、派遣労働、非正規労働に従事している人たちだ。

懸命に働いても社会情勢に応じて、簡単にリストラや雇い止めの対象になっている。

当然、人材派遣会社は雇用を守る方向には動かない。適度に困窮させて、別の人材派遣先を紹介するだけだ。

また、最近はこれら雇用の安定性の崩壊によって生じたワーキングプア、生活困窮者の増大にもレントシーカーは目を光らせている。

自分たちが政策介入、世論形成をして作り上げた被害者を利用しながら、それも再度、超過利潤を上げる対象に仕立て上げる。

例えば、人材派遣会社はいま福祉行政、自治体からの業務委託を受けて、生活困窮者支援事業や就労支援事業にも参入している。

竹中氏が牽引するパソナグループも行政への介入が著しく、そこから超過利潤を上げる経営モデルを採用している。

パソナグループが派遣労働者を使いながら、生活困窮者の支援業務をおこない、派遣労働や非正規雇用などへの職業紹介もおこなう。

実はワーキングプアや生活困窮者がいてくれた方が行政から支援業務を受託できて超過利潤を取得できるのである。

彼らはレントシーカーという批判だけでなく、貧困ビジネスという批判も受けるべき事業形態であろう。

行政ではレントシーカーたちの政策提言を受けて、公務員や専門職員は減らされてきて、非正規公務員、派遣公務員、官製ワーキングプアに置き換えられてきた

その中で、増大する生活困窮者に対応しようとしても、外部委託をしなければ自分たちで支援できるほどの余力がないし、外注の方が安上がりで自治体運営も助かる仕組みになっている。非常に巧みな手法である。

そういう社会情勢のなかで「#竹中平蔵つまみ出せ」という世論の高まりは、希望のひとつであり、ポストコロナ社会を見据える上では重要なテーマであるだろう。

レントシーカーの典型的で象徴的な人物と市民社会がどう対峙、対抗していくのか、は今後の日本の行方を左右すると言っても過言ではない。

引き続き、竹中氏に限らず、レントシーカーたちの言動、動向に注目いただきたい。


 月末ということで、何かと雑用の多い日だった。明日からもう12月だし、何かとせわしない。今夜は積もりそう。


「ありのままに生きられる世界、待ってられないよ」。アスリートへの差別、いじめを描くナイキの動画が胸を打つ

2020年11月29日 | 野菜・花・植物
BREAK THE SILENCE
ハフポスト 2020年11月29日 

3人のサッカー少女が直面する困難は、実在のアスリートの証言をもとに描かれているという。

ナイキジャパン提供
ナイキジャパンが新しく公開した動画の一場面

いじめや差別に悩む10代のアスリートたちが、スポーツを通じてつながり、困難の中でも前を向いて自身の力を発揮させるーー。そんな物語を描いたナイキのPRが11月27日、YouTubeで公開された。

「最高のメッセージ」「泣いた」などと反響が広がっている。ありのままの自分を受け入れられないことに悩む、実在のアスリートの証言をもとに作られているという。

「わたしって、ナニモノ?」

ナイキジャパンが新しく公開した2分間の動画には、サッカーをする3人の女子生徒たちが登場する。

ときどき考えるんだ

わたしって、ナニモノ?

できることなんてあるの?

わたし、期待外れなのかな

普通じゃないのかな

このままでいいのかな

ある生徒は、スマホで『現代の在日問題を考察する』と題する連載コラムを眺める。

別の生徒は、テニスの大坂なおみ選手の動画に対する「彼女はアメリカ人?日本人?」と書かれたコメント欄を見つめる。

ぜんぶ無視できたらいいのに。

 

「同調」を求められる現実

うつむきながら、朝鮮民族の民族衣装を着て街を歩く。他の生徒たちに、束ねた髪をいじられる。集団に囲まれてカバンを引っ張られ、プリントが散らばる...

少女たちが日々直面する、差別やいじめの光景が続く。

わたし、浮いてる?

もっと馴染んだほうがいいのかな?

ここにいちゃダメなの?

みんなに好かれなきゃ

我慢しなきゃ

気にしないフリ、しなきゃ。

うつむき、膝を抱えて小さくなる少女たちの姿が描かれる。

今までずっとそうだった。それが当たり前だって、思ってた。

「同調」を求められ、自分らしさが認められない現実に悩む3人。

だが動画の終盤では、それが一変する。

でも、そんなことないかも

ないね

ないでしょ

ありえないって

それぞれにサッカーの練習や体力づくりに励んでいた3人は、サッカーを通じて出会う。同じチームで生き生きとプレーし、笑顔で集まる様子が映し出される。

いつか誰もが

ありのままに生きられる世界になるって?

でも、そんなの待ってられないよ

“動かしつづける。自分を。未来を。You Cant Stop Us” 

 

「バリアを打ち破る」狙い

ナイキジャパンによると、動画のタイトルは『動かしつづける。自分を。未来を。』。「前向きな変化を促すスポーツの力を賞賛し、日本の全てのアスリートたちが直面するバリアを打ち破ること」を目的としている。

差別やいじめを受ける3人の10代の少女が、サッカーを通じてつながる。自信や楽しさを手に入れながら、悩みを一緒に乗り越えていくという内容だ。

プロサッカー選手の永里優季選手、プロテニス選手の大坂なおみ選手も特別出演している。

大坂選手は、黒人差別への抗議を繰り返し発信するなど、「声を上げるアスリート」として知られる

Matthew Stockman via Getty Images
黒人への暴力で犠牲になったトレイボン・マーティンさんの名前が刻まれたマスクを全米オープンで着用し、人種差別に抗議する大坂なおみ選手

感動する声、SNSで広まる

動画は11月29日午前11時時点で、再生回数が660万回を超えている。

 「感動した」「最高すぎる」「すばらしいメッセージ」

SNSではナイキのメッセージに対する反響が広がっている。

タレントの古坂大魔王さん「これ作った人…てか、NIKE…朝から泣かすよ。だから、NIKEの靴やら服やらカッコいいんだね。こんなの作れちゃうんだもの。そりゃかっこいいわ!」とツイート。

性的マイノリティへの差別問題をめぐって発信を続けているプロサッカー選手の下山田志帆さんは、Twitterに<「いつか誰もが ありのままに生きられる 世界になるって?」「そんなの待ってられないよ」 本当にそう思う。待つ必要なんてないよ。自分が自分たちが、やろう。>と書き込んだ。

ナイキジャパンは、「あらゆるレベルの女子アスリートがスポーツ、体を動かすことや遊びを通じて自らの実力を発揮できるよう激励や支援を続けます」としている。


わたしもナイキを応援します。これからの「企業」はこうでなくては!


ブラックフライデー、やりません。IKEAもボイコット。その理由は?

2020年11月28日 | 野菜・花・植物

日本でも行われる「ブラックフライデー」セール。海外では、逆にこの大セールを「ボイコット」する企業の動きもある。

ハフポスト 2020.11.27 生田綾

 11月27日は、「ブラックフライデー」だ。アメリカの感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日に開催される大セールで、1年で最も店が繁盛する日と言われる。

 日本でもブラックフライデーを導入する企業も増えているが、海外では、逆にこの大セールを「ボイコット」する企業の動きもある。

ブラックフライデーとは?

 ブラックフライデーは、年末商戦の皮切りとなる日で、2019年のオンラインでの売上高は合計74億ドル(約7697億円)。2018年よりも約20%増加した。

 2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で小売業者が打撃を受けたため、多くの企業がブラックフライデーを回復のチャンスと見ている。

ブラックフライデーが物議をかもす理由

 しかし、今ではしばしば1週間以上続く「ブラックフライデー」セールは、物議を醸している。

なぜなのか?

一つが、過剰な消費を促すことへの懸念だ。

 専門家は、買い物客を狂乱に巻き込み、必要のないものに貴重なお金を散財するよう誘惑するブランドを批判している。新型コロナのパンデミックは、アメリカに住む多くの人をこれまで以上に危険な財政状態に陥らせた。

また、大量消費・大量廃棄による環境破壊に反対する声も強い。

 衣料メーカーが生み出す大量の廃棄物は深刻な問題で、ファッション業界は世界の温室効果ガスの8%を排出していると推定されている。

新型コロナの感染拡大はこの問題をさらに浮き彫りにした。

 ロックダウン中に衣料品の需要が低下したため、大手ファッションブランドは大量の在庫を抱えることになった。さらに、海外のサプライヤー工場に数十億ドルを支払うことを拒否し、現地の労働者に危機的な状況をもたらした。

ブラックフライデーを「ボイコット」する企業たち

ブラックフライデーに参加しない企業も増えてきている。

 アメリカのスニーカーブランド「Allbirds(オールバーズ)」は、ブラックフライデーに値下げをするのではなく、逆に「価格を上げる」というキャンペーンを行っている。

 すべての商品を1ドル値上げし、集まった余分のお金は、スウェーデンの気候活動家グレタ・トゥーンベリさんが設立した気候変動運動「フライデー・フォー・フューチャー」に全額寄付するという。

 Allbirdsの広報担当者は、ハフポストUS版の取材に対し、「わずかな値上げによって、ファッション業界が直面しているより大きな環境問題についての会話が活発になることを願っています」と答えた。

 バッグメーカーの「FREITAG(フライターグ)」は、ブラックフライデーの日は、オンラインストアを終日閉鎖する。

 サイトにアクセスする人は、代わりにFREITAGのバッグ交換プラットホーム「S.W.A.P.」にリダイレクトされる。不要になった使用済みバッグを他の人と交換するよう促すのだという。

IKEAは初の「買取キャンペーン」を実施

 ブラックフライデーを「ボイコット」するのは、多くの場合、中小企業だ。しかし、いくつかの大企業もこの動きに賛同している。

 アウトドア小売業者の「REI」は、6年連続でブラックフライデー当日は休業し、1万3000人の従業員に有給休暇を与え、家族と一緒に自然の中で過ごすことを奨励している。

 スウェーデンの家具ブランド「IKEA(イケア)」は、「今年のブラックフライデー、私たちは少し環境に優しいことをします」と宣言。

 世界27ヶ国で不要になった家具を買い取るキャンペーンを実施する。アメリカは対象ではないが、日本では11月26日から12月6日まで「サステナブルウィーク」と称した買い取りが行われる。

家具買い取りのキャンペーンを実施するのは、創業以来初めてという。


 仕事を終え、メールをチェックしていると「ブラックフライデー」便乗の広告があふれている。今日はサタデ―なのに、何だろうかと調べてみた。ハロウィンに続く「ブラックフライデー」ということらしい。


コロナ禍の世界 飢餓の拡大を止めたい

2020年11月27日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2020年11月23日 

 新型コロナウイルスが、世界的に再流行している。社会のシステムが混乱しているうえ、気候変動の影響もあって、世界で多くの人が飢餓寸前の状態だという。国際社会が協力して救援したい。

 パンデミックは、感染症の世界的な流行を意味する言葉だが、今、世界では「飢餓パンデミック」も懸念されている。

 もともと世界では、慢性的な食料不足に苦しむ人が七億人近くに及ぶ。これは、今年のノーベル平和賞に選ばれた世界食糧計画(WFP)による推計だ。

 飢餓は、貧困や気候変動、男女差別などがさまざまに絡み合って発生するが、六割は混乱した紛争地域に住む人々の間に起きる。

 気候変動も状況を深刻にさせている。日本でも目立つ豪雨や大型の台風は、農作物や家畜の育ちに影響を与える。途上国では、社会保障制度が不十分なため、自然災害で住居や収入を失えば、たちまち生活苦に陥ってしまう。

 そういった状況に、コロナ禍が追い打ちをかけている。人々の動きが減り、経済が停滞することで職を失い、収入が途絶える。それが直接食卓に響くのだ。

 WFPの推計によれば、飢餓に直面している人たちの中で緊急援助を必要とする人が、今年約二億七千万人にまで急増した。これは昨年に比べ八割増だという。

 世界銀行も十月に公表した報告書で、減少傾向にあった貧困がコロナ禍で拡大していると警告した。二〇二一年までに最大一億五千万人が極度の貧困に陥るという。貧困と飢餓の悪循環が心配だ。

 将来的な食料不安も指摘されている。世界の人口は五〇年に百億人に迫ると予想され、食料増産が緊急の課題となっている。

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、三〇年までに飢餓を終わらせ、持続可能な農業の推進をうたっているが、コロナの収束が見通せない中、目標達成は容易ではないだろう。

 そんな中、日本政府は来年、東京栄養サミットを開く。持続可能な食料生産システムの構築などを、世界各国の栄養関係者とともに議論する意欲的な試みだ。

 ただ日本は食料の六割近くを輸入しながら、年間六百万トンを超す食料をごみとして捨てる「食品ロス」大国でもある。まずは日常の生活を見直す必要がある。

 また国際機関に寄付をするなど、「飢餓ゼロ」実現への取り組みを、個人としても応援したい。


 国内においても食料から見放される人々が後を絶たない。go to eatより、炊き出し応援が必要なのではないか? せめて民間がしているのを邪魔はしないでほしいものだ。


外国人実習生の「人権侵害」

2020年11月26日 | 社会・経済

 スターバックスやファミマの社会的責任とは?

今野晴貴 | NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

 YAHOOニュース(個人) 11/26(木) 

 

 現在、私が代表をしているNPO法人POSSEや連携する総合サポートユニオンでは、カンボジア技能実習生へのパスポート・在留カード取り上げ、「強制帰国」の問題に取り組んでいる。受け入れ企業は、日清製粉グループ子会社の「トオカツフーズ株式会社」、管理団体は「全国中小事業協同組合」、送り出し機関である「株式会社ジェイ・シー・アイ」である。

 この事件の背景は根深く、4年前に強制帰国させられたカンボジア在住の技能実習生たちは、「泣き寝入り」していた。今回、彼らは通訳を通じて「オンライン」で、4年越しに受け入れ企業・管理団体・送り出し機関へ団体交渉を申し入れを実現している。その結果、管理団体と送り出し機関は本人の意に反してパスポートと在留カードを取り上げ強制帰国をさせたことを認めたのである。

 これまでも、労基法違反を告発した外国人などが「強制帰国」させられてしまった事例は多いのだが、帰国後は泣き寝入りするしかない事例がほとんどであった。今回の告発は、日本の「隠された外国人問題」を暴く画期的なものだといえる。

(参考:外国人・実習生に対する「強制帰国」の実態 暴力行為や拉致も横行)

 ところが、管理団体が人権侵害について認めたにもかかわらず、現在も当の受け入れ企業であるトオカツフーズ株式会社は、今回の件に「関与していない」という主張を繰り返し、責任回避を続けている。

 自身が雇用契約を結ぶ技能実習生が自社所有の工場や寮から連行され強制帰国させられているにもかかわらず、「関与していない」ということは常識的に考えられない。管理団体や送り出し機関の人間は、トオカツフーズ に許可を得なければそもそもそれらの敷地に入れないだろう。また、管理団体や送り出し機関が受け入れ企業と協議や確認をせずに独断で「強制帰国」を決定することがあり得るはずもない。

 さらに、問題が指摘されているトオカツフーズは、「スターバックス」、「ファミリーマート」など大手企業の取引先でもある。「強制帰国」させられた技能実習生たちは、スターバックスのサンドイッチやファミリーマートのお弁当を製造していたのである。

 実は、国際的には、人権侵害企業の「取引先」に対しても、社会的責任が追及されることが常識化している。ところが、支援団体の申し入れに対し、ファミリーマートからは「トオカツフーズが取引先だということは事実だが、取引先の雇用に関することは具体的に関われない」と回答があり、スターバックスに至っては、未だなんら回答がないという。

 CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)を声高に謳っている両社だが、これでは国際的見て、SDGsに反する「遅れた企業」とみなされてもしかたがないだろう。

 今回は、国際的な潮流を概観しつつ、世界から「人身売買」と批判される外国人技能実習生の労働問題への「スターバックス」や「ファミリーマート」の責任と対応について考えていきたい。

「ビジネスと人権原則」とは何か?

 まず、企業の社会的責任の国際的な基準について見ていこう。企業活動におけるSDGsの重要な指標として、「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、「ビジネスと人権原則」)が2011年に国連人権理事会で採択されている。この原則は、次の3点から成っている。

(1)人権及び基本的自由を尊重、保護及び実現するという国家の既存の義務

(2)特定の機能を果たす特定の社会組織として、適用されるべきすべての法令を遵守し人権を尊重するよう求められる、企業の役割

(3)権利及び義務が侵されるときに、それ相応の適切で実効的な救済をする必要性

 (2)の規定では、企業が、世界人権宣言、国際人権規約、ILO中核的労働基準などの国際人権基準を尊重する責任を負うことを明記している。これまでの国際的な人権基準は主に国家に対してその責任があることを示していたが、その対象はすでに「企業」に拡張されているのである。

 人権に関して企業の責任を問う背景には、グローバリゼーションが進展する中で、国家の枠組みを超えて生産活動を行うグローバル企業が増え、個別の国家だけでは労働者の人権侵害に対応できないという実情がある。

 そして、この原則がでとりわけ重要なのは、この原則が、直接雇用する労働者の人権だけでなく、取引先企業の労働者の人権にもコミットするように求めている点だ。「ビジネスと人権原則」13では、次のように明記している。

自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処する。

たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める。

 このように、サプライチェーンの中で起きた人権侵害については、下請に委託をしている企業も責任を負うと言うことが、もはや国際的には「常識」なのである。

サプライチェーンが問題となる背景とは?

 この人権に対する新しい常識は、これまで多くの大企業が下請企業の「人権侵害」によって利益を上げている事実が何度も告発されることで形作られてきた。大手企業はがいくら「SDGs」や「人権遵守」を表明しても、そこに製品を供給する企業が児童労働や労働法違反を繰り返しているのは、明らかな矛盾だったからである。

 日本の外国人技能実習生の問題もこれと同じで、実習先の下請企業の劣悪さに焦点があたることが多い。先月も労働基準監督署が調査した実習先の7割以上の事業所で法律違反が確認されたとの報道があったが、これは、単に実習先の企業が悪いという問題ではない。なぜなら、実習先企業の多くは中小企業であり、これら企業は大企業を含めたサプライチェーンに組み込まれているからだ。

 つまり、技能実習生への人権侵害は、大企業が利益を獲得するために構築したサプライチェーンの中で発生しているのだ。したがって、技能実習生への人権侵害をなくすためには、技能実習生を直接に雇用する企業だけでなく、その企業と取引をし利益をあげている大企業の責任も問われなければならないのである。

「ビジネスと人権原則」基づく国際的な人権運動

 この「ビジネスと人権原則」に基づく運動が活発に展開されている産業のひとつはアパレル産業だ。このきっかけとなったのは、2013年4月にバングラディシュでおきた「ラナ・プラザ」という複合ビルの崩壊事故である。

 「ラナ・プラザ」には、複数の縫製工場が入っており多くの労働者が働き、海外のブランド企業向けの製品を製造していた。同事故では死亡者が1100人以上、負傷者は2500人以上にも上ったため、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれている。

 この悲劇は、たまたま起きたのではなかった。「ラナ・プラザ」は、以前から老朽化しており、崩壊の数日前には労働者からビルの柱のひび割れなどを指摘されていた。しかし、それでも会社側は、危険を承知で労働者を働かせていたのである。この他にも、「ラナ・プラザ」では低賃金に長時間労働、労働組合への干渉など日常的な労働者への人権侵害が確認されている。

 倒壊現場には、複数の有名ブランドのタグがあちこちに転がっていたという。このような劣悪な状況で労働者たちが世界的に有名なブランドの衣服をつくっていたという事実は、世界の消費者に衝撃を与えることになった。

 ところが、事故当初、有名ブランド企業はこの事故の責任を認めようとはしなかった。そのため、欧米を中心に消費者たちによる不買運動が起き社会的に厳しい目が向けられると補償をすることになったのだ。この時に、有名ブランド企業へ社会的責任を問う根拠となったのが、「ビジネスと人権原則」である。

日本でも問題化

 実は、このような「ビジネスと人権原則」基づく動きは日本でも展開されている。私が代表を務めるNPO法人POSSEも加盟する国際NGO「クリーン・クローゼス・キャンペーン」とインドネシアの衣服生産工場労働者が2018年に来日した。その目的は、ユニクロへ抗議するためだ。

 彼ら彼女らが働いていた工場の労働環境はユニクロとの契約が始まってから悪化したという。ユニクロは注文量が非常に多く納期が短い。その結果、労働者たちは、残業代も払われない中で強制的に残業させられ最低賃金以下で働かされることになった。

 さらに、この状況に抗議するために、労働組合を結成すると組合の委員長は解雇通告されたというのだ。最終的には、工場は倒産し、そこで働く労働者全員が仕事を失った。

 この事例に見られるように、ユニクロは発注側としてサプライヤーである工場に対して「力」をもっており、下請け工場に様々な要求を突きつけることができる。このような力関係のなかで、一番利益を得るのがブランド企業であり、最底辺でもっとも不利益を被るのが現地の労働者なのである。

 遠く離れた下請け工場の倒産に対する補償を実現するのは無理な話に思えるかもしれないが、実現している例がある。

 例えば、アディダスは、下請け工場が破産して2800人の労働者が失業した際に直接的な雇用主でもないにもかかわらず責任をとった。また、ナイキは、インドネシアの下請け工場労働者の残業代を支払ったのだ。ユニクロが、自社の衣服を製造する労働者たちに未払い賃金や失業時の補償などを行うのはグローバル大企業としての社会的責任であると考えられている。

「ビジネスと人権原則」と技能実習生

 当然のことながら、「ビジネスと人権原則」は、日本国内の技能実習生の人権も含まれる。そのことが確認された実例もすでに存在する。

 技能実習生の問題で、直接雇用関係のないブランド企業が注目を集めたのは、2017年12月に放送されたガイアの夜明け「"絶望職場"を今こそ変える!」(テレビ東京)だ。

 番組内で取り上げれらたのは、岐阜県の縫製工場で働く中国人技能実習生だった。彼女たちが置かれた状況は、すさまじく、残業代の時給が400円以下でさらに過労死するほどの長時間労働をさせられていた。

 実習生たちが労働組合に加入した後、会社に対して未払い賃金を請求すると会社は偽装倒産し支払いを逃れようとした。そこで、彼女たちは協力を得ようと自分たちがつくっていた有名ブランド「セシルマクビー」の本社に訪問して申し入れを行った。

 しかし、「セシルマクビー」側は申し入れ書を受け取っただけで積極的には技能実習生の人権侵害問題に関わろうとしなかったのだ。その後、番組取材班は、「セシルマクビー」側に取材を申し込んだが、法的義務がないことを理由に取材を拒否し、さらには、社名が特定されるような映像を使えば法的措置を取ると脅した。

 この経緯のすべてが放送された後、視聴者たちによって、すぐに企業名が特定され、いわゆる「炎上」状態となった。このような厳しい社会的な批判にさらされた後、「セシルマクビー」側は、謝罪と改善を表明したのである。

 また、2018年に岐阜県内の別の縫製工場では、最低賃金以下でミャンマー人技能実習生を働かせていた。実習生たちは衣料品販売店大手「しまむら」に衣料品を納品しており注目を集めた。「しまむら」は、自社の社会的責任をアピールするために、全ての取引先企業に対して、実習生への人権侵害がないように求める通知を出したのである。ちなみに、工場の経営者は実習生に対する人権侵害の理由について「単価が安く、法律を守っていたら事業が継続できなかった」と述べている。

 さらに、2019年には、ノーナレ「画面の向こうから―」(NHK総合)という番組が放送された。番組では、愛媛県の縫製工場で働くベトナム人技能実習生たちが、奴隷のような状況で「今治タオル」をつくっていた様子が取り上げられた。放送後、Twitter上では「#今治タオル不買」のハッシュタグが呼びかけられ炎上状態となった。その際に、問題となったのは、当該の工場だけでなく、「今治タオル」のブランドそれ自体であり、「今治タオル」ブランドの認定や商標を管理する今治タオル工業組合は、組合として社会的責任があることを表明し、外国人技能実習生の労働環境を改善するための取り組みを約束した。

 このように、近年では「ビジネスと人権原則」に基づいて、サプライチェーンに関わる取引先企業などが、技能実習生の人権侵害に対して取り組む社会的責任が明確になっている。スターバックスやファミリーマートも、これらの事例にならうならば、自らの社会的責任を果たすべきである。SDGsを標榜する企業であれば、それは「当然」のことだろう。

外国人労働者差別反対デモ」

 NPO法人POSSEと総合サポートユニオンでは、11/27(金)18時から「外国人労働者差別反対デモ」を行う。集合は、日比谷公園霞門である。

 外国人労働者への差別や人権侵害は、日本社会全体に蔓延している。パスポートや在留カードの取り上げ、強制帰国、長時間労働、残業代不払い、パワハラ・セクハラなど私たちへも相談が絶えない。そのような状況を変えるには、広く社会へ「差別や人権侵害を許さない」という声を上げることが重要だ。

 労働問題を抱えた外国人労働者の方や、それらの差別を無くしたいというひとびとは、世界中で具体的な行動をはじめている。私が代表を務めるNPO法人POSSEをはじめ日本の諸団体でも、多くの市民や学生のボランティアが参加している。

 ますますの外国人技能実習生の権利行使を支える「人権運動」の広がりを期待したい。

NPO法人POSSE 外国人労働サポートセンター

メール:supportcenter@npoposse.jp

今野晴貴

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間3000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。著書に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。2013年に「ブラック企業」で流行語大賞トップ10、大佛次郎論壇賞などを受賞。共同通信社・「現論」、東京新聞社・「新聞を読む」連載中。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。POSSEは若者の労働問題に加え、外国人やLGBT等の人権擁護に取り組んでいる。無料労働相談受付:soudan@npoposse.jp

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

コロナと実習生 制度の矛盾が露呈した

「東京新聞」社説 2020年11月26日

 コロナ禍に伴う解雇などで外国人技能実習生らが苦境に陥っている。「国際貢献」の美名とはかけ離れた「雇用の調整弁」としての技能実習制度の本質が露呈した。制度の廃止を検討すべきだ。

 北関東で家畜や果物が大量に盗まれた事件に関連し、群馬県警は十月、入管難民法違反などの疑いでベトナム人の技能実習生ら十数人を逮捕した。大半は県外の実習生で「コロナで仕事がなくなり、群馬のコミュニティーに身を寄せた」と話しているという。

 外国人実習生の人数は昨年末時点で約四十一万人。その約半分がベトナム人だ。コロナ解雇に加えて、祖国と結ぶ定期便は運休。多くの実習生が来日のため、祖国で多額の借金をしており、手ぶらでは帰れない事情も抱えている。

 かねて技能実習制度は賃金の未払いや不当な労働条件など問題が多く、政府は改善のため、二〇一七年に技能実習法を施行した。

 三条で「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定めたが、実態は有名無実。コロナ解雇はその典型といえる。

 祖国の送り出し団体と日本の派遣先をつなぐ監理団体、それを統括する「外国人技能実習機構」も設立した。しかし、実習生の窮状に対応しているとは言い難い。

 政府は四月、コロナ禍で解雇された実習生らの他業種への就労を特例として認めた。従来は本国で経験した技術を日本で磨くという制度の趣旨から、他業種への転職は許されなかった。「出稼ぎ」の実習生には朗報だが、技能向上という建前はここでも崩れた。

 加えて、特例には政府の弥縫(びほう)策という側面もある。昨年四月に施行された特定技能制度は農業や介護などの単純労働を外国人に認めるものだが、送り出し国には不評で応募が予想を大幅に下回っている。特例でその不足の穴埋めに解雇された実習生を回した形だ。

 結局、「技術移転」などの名の下、安価で都合のよい労働力を集めるという制度の本質がコロナ禍で浮き彫りになったといえる。

 国の制度で受け入れた以上、政府には実習生を守る責任がある。まずは雇用助成金などで解雇を防ぎ、健康相談などの充実も図るべきだ。

 そのうえで技能実習制度を廃止し、当面は特定技能制度を拡充する必要がある。菅義偉首相は官房長官時代の昨年十二月、外国人受け入れの関係閣僚会議で「外国人が国を選ぶ時代」と発言した。それにふさわしい対応を求めたい。


 先週に続き「講習」を受けてきた。そんなわけで更新するのが遅れてしまいました。

梅ではありません。キノコです。(昨日撮影)今日はまた雪が積もっているはずです。


雨宮処凛がゆく! 第540回:渋谷・女性ホームレス殺害〜「痛い思いをさせればいなくなる」を地でいくこの社会。の巻

2020年11月25日 | 社会・経済
 「殺してくれてせいせいした」「彼らは人間の姿はしているが人間ではないですから」

 この言葉は、横浜の中学生グループがホームレス襲撃を繰り返していた1980年代、地元の地下街の商店主らが発した言葉だ。82〜83年、襲撃事件は相次ぎ、死者も出ていた。なぜこのような事件が起きたのか話し合う場で、商店主らはそう口にしたのだという(「福祉労働167」ひとりの取材者/当事者として 金平茂紀)。

 11月16日、路上生活者と見られる女性が寝泊まりしていた渋谷のバス停ベンチにいたところを殴られ、命を落とした。

 事件から5日後、母親に付き添われて逮捕されたのは、46歳の男だった。

 男は母親と二人暮らしで、自宅マンション1階で母親とともに酒屋を営んでいたという。3年前に亡くなった父親は、「息子がひきこもりがち」と心配していた。近所の人の中には男を「クレーマーのようだった」と話す人もいたようで、近くに引っ越してきた人は、アンテナの設置位置を変えるよう強く求められたという。その際、男は「自宅のバルコニーから見える世界が自分のすべて。景色を変えたくない」と語ったそうだ。

 そんな男は事件前日の15日、バス停にいた女性に「お金をあげるからどいてほしい」と言ったという。が、翌日もまだ女性はいた。無防備な女性に対して、男は袋に石を入れ、殴りつけたという。

 逮捕された男は、「自分は地域でゴミ拾いなどのボランティアをしていた。バス停に居座る路上生活者にどいてほしかった」などと事件の動機を説明しているという。

 この時だ、私の頭に冒頭の言葉が浮かんだのは。

 そうして同時に、「ゴミを掃除しただけ」という言葉を思い出した。それは過去、全国各地で発生していた野宿者襲撃に関わった少年少女たちの一人が悪気なく口にした言葉だった。もしかしたら子どもたちは「ホームレスを襲撃する」=「ゴミを掃除する」ことで、「大人たちに褒められる」と思っていたのではないだろうか?

 「まさかそんなことはない」と言っても、周りの大人たちが悪気なく、「彼らは人間の姿はしているが人間ではない」などと日常的に口にしていたら? 「臭い、汚い、一刻も早くどこかに行ってほしい」「怠けてるとあんなふうになるんだぞ」などと言っていたら?

 逮捕された男は、動機について、「痛い思いをさせればあの場所からいなくなると思った」とも供述している。

 あまりにも幼稚な言い分だが、私は彼女を本当の意味で「いなくならせる」方法を知っている。声をかけ、自分でダメなら周りの支援者にも協力を仰ぎ、事情を聞ける限り聞き、彼女が使える公的な制度に繋げる。「こういう制度がありますよ」だけではなく、役所などには同行する。その間、困窮者支援のために寄せられた寄付金からホテル代や食費などを給付し、まずは身体を休めてもらうだろう。とにかく安定した生活へのとっかかりを手にするまで、できることはする。

 このような知識を、私は学校でも教えたほうがいいと思う。自分や自分の大切な人や見知らぬ人が「家がないなど命に関わる事態」になっていた時に、何をどうすれば生活が再建できるのかというノウハウだ。そんなことも知らされないでこの不安定な社会を生きていくなんてことは、この時代、無理ゲーに他ならないと思うのだ。

 が、残念ながら今の日本では大多数の人が最低限の「死なない方法」すら知らない状態だ。そんな中、ボランティアで「ゴミ拾い」をしていたという男は、とにかく自分の視界から「異物」を排除したかったのだろう。そうして、無防備な女性を、まるで野良犬でも追い払うかのようなやり方で痛めつけた。

 しかし、「痛い思いをさせればあの場所からいなくなると思った」と述べた彼を、この社会は非難できるのだろうか。

 彼女がいたベンチこそ、同じようなものだった。野宿者排除のため、横になれないよう仕切りがつけられた小さなベンチ。言うなれば、「寝づらくすればホームレスがこないと思った」というベンチだ。

 それだけではない。コロナ禍で生活保護申請に何度か同行しているが、役所の中には「嫌な思いをさせればもう来なくなる」というような対応をするところもある。わざわざ難癖をつけてアパート転宅をさせない。すでに所持金がないのに一時金を出さないなど。そんな時、「この人たちは、とにかく困窮者に嫌な思いをさせて自分の目の前からいなくなってほしいんだな」と思う。いなくなったら忘れるか、忘れなくても「もう来ないということは、きっとなんとかなったんだ、よかったよかった」ということにしたいんだろう。だけどそれでは、問題は何一つ解決していないどころか、より深刻になっている。

 それだけではない。炊き出しにだってそんな嫌がらせの魔の手が及んでいる。コロナ禍の中、都内で炊き出しに並ぶ人たちは1.5倍から2倍に増え、減る気配はないが、そんな場所にも「排除」が忍び寄っているのだ。例えば新宿の都庁前。ここでは6年前から「新宿ごはんプラス」が困窮者に食品配布や生活相談会をしているが、都はコロナ禍で人が増えた頃から難癖をつけるようになり、ついには嫌がらせのようにカラーコーンを配置するようになったのだ。週に一度、わずか数時間の食品配布である。土曜日だからボランティアと並ぶ人以外いないような場所だ。それなのに、嫌がらせのように置かれるカラーコーン。これだって、「嫌な思いをさせればこの場所からいなくなる」ということではないだろうか。

 さて、ここで亡くなった女性について、触れよう。報道によると、所持金は8円で、広島県出身。約3年前まで杉並区のアパートに住んでおり、今年の2月頃までスーパーで働いていたという。事件が起きたバス停のベンチで寝泊まりするようになったのは今年の春頃から。

 2月までスーパーで働いていたということは、コロナによる失業かもしれない。バス利用者のいない夜中に来て、朝早くいなくなったという。いつも大きなキャリーケースを引きずっていたそうだ。住まいを失い、屋根をある場所を探し続け、やっと見つけたのが吹きっさらしの、だけどわずかに屋根のあるバス停だったのだろう。しかし、ベンチには横になれないよう、しっかり仕切りがついていた。

 彼女と同じような状況にいた人を支援したことがある。一ヶ月、横になって寝ていない上、いつ身の危険があるかわからないからと熟睡できていなかったその人は、ホテルを予約すると、次の日の夕方まで爆睡したと嬉しそうに話してくれた。久々のベッドと久々のお風呂は、どんな特効薬よりも人を元気にさせるということを、私は困窮者支援で初めて知った。

 殺された女性も、支援団体にSOSを出してくれていたら、その日のうちからベッドで眠れて公的支援につなげることができたのに。彼女のいた渋谷には、炊き出しや相談会もあったのに。いくらそう思っても、すべては後の祭りだ。

 一方で、逮捕された男の年齢も気になる。46歳、ロスジェネ。親と同居し親と一緒に酒屋を経営し、引きこもり気味だったという男。「貧乏くじ世代」だけど、同時に強烈な自己責任論を刷り込まれてきた世代でもある。逮捕された男の年齢を耳にした瞬間、どこかで「やっぱり」という思いもあった。

 最後に、長年ホームレス支援をしている奥田知志氏がこの事件を受けて書いた原稿「電源の入らない携帯電話がつながる日はあるか〜渋谷・ホームレス女性殺害
 の一部を引用して終わりたい。

 「もし、小学生の女の子がバス停で夜を過ごしていたならばどうだろう。『大騒ぎ』になっていただろう。心配されながら1ヶ月も放置されることは、まずない。しかし、相手が大人であり、かつ『ホームレス』の場合、強烈なブレーキがかかる。これを差別と言う」

 そうなのだ。見て見ぬふりできるのは、「差別」によってブレーキがかかっているからなのだ。

 そろそろ年の瀬、野宿の人々はこれから厳しい寒さに晒される。コロナ禍でこの年末で廃業、倒産が決まっている、これからどうしようという声もこのところよく聞く。このままでは、路上に出てくる人も増えるだろう。

 今年の年末は、いつもよりずっと忙しくなりそうだ。

※「新型コロナ災害緊急アクション」では、相談を受け付けています。相談フォームからお送りください。
https://corona-kinkyu-action.com/


横になれないベンチね!考えるものだ。
もっと考えなきゃいけないもの あるんじゃないの?
国や自治体による差別、いやがらせ。
国民、市民がまねるのも当然な世の中になってしまった。!

 


アベを逮捕せよ!

2020年11月24日 | 社会・経済

「#安倍晋三の逮捕を求めます」と同時に安倍政権による生活保護基準引き下げの再検証が必要

藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授

11/23(月) 17:58ツYAHOO!news(個人)

#安倍晋三の逮捕を求めます がTwitterでトレンド入り

Twitterで「#安倍晋三の逮捕を求めます」というワードがトレンド入りした。

各大手メディアが安倍晋三前首相のいわゆる「桜を見る会」をめぐって、東京地検特捜部が、安倍前首相の公設第1秘書らから任意で事情聴取したことも報道されている。

弁護士ら市民団体が当初より公職選挙法違反、政治資金規正法違反だと主張している問題だ。

安倍前首相には改めて検察の調査や聞き取りに対して、真摯で誠実に応じてほしい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

岡本宏史(外科医 Hiroshi Okamoto)

少しでもおかしいと思っている人はしっかりと意思を示そう。 見て見ぬふりをやめて未来の日本のため、子供たちのため声をあげよう。 #安倍晋三の逮捕を求めます

午後3:28 · 2020年11月23日

 

大神ひろし@ppsh41_1945

11月23日

これだけ不正を繰り返してきた安倍前首相が逮捕されなかったら、日本はもう法治国家じゃない。

当然ながら、世論も以前より本件を重要視しており、政治の信頼が揺らぐ象徴的な事件として扱ってきた。

安倍前首相が退任したタイミングであるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、前政権の総括や振り返りが十分ではない。

これを契機に安倍政権を再度検証していく作業が各分野で必要であろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

生活保護基準引き下げを強行した安倍政権

その一つに安倍政権でおこなわれた生活保護基準引き下げがある。

2012年の自民党選挙公約に掲げられた「生活保護費10%削減」を断行した安倍政権だったが、この手法や手順に疑問が呈されている。

生活保護基準の引き下げ根拠が曖昧であるだけでなく、従来の専門家の算定方法や議論を軽視し、突然新しい算定方法まで持ち出して強引な結論を導き出している

つまり、安倍政権の政治的意図を反映させた結論ありきの政策だったのではないか、ということだ。

過去の積み重ねられてきた専門的な議論を軽視した結論に対し、さすがに危機感を有した専門家も多くいる。

日本社会福祉学会会長だけでなく、厚生労働省内で生活保護基準の専門家委員も歴任してきた岩田正美氏(日本女子大学名誉教授)もその一人だ。

岩田氏は政府専門家委員の経験者としては異例の反対派として、裁判所にも出廷して生活保護基準の決定方法に重大な疑義が生じていることを証言している。

日本弁護士連合会も2017年に会長声明を発出している。

生活保護基準引き下げが生活保護受給者のみならず、市民生活にとって負の影響が大きすぎるため反対の立場をとる。

会長声明では的確に生活保護基準引き下げが多くの市民生活と無縁でないことを分かりやすく提示してくれている。

専門的で長文ではあるが、お時間があれば一読いただきたい。

生活保護基準について一切の引下げを行わないよう求める会長声明

厚生労働省は、2017年12月8日の第35回社会保障審議会生活保護基準部会において、2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に引き下げる案(以下「厚労省案」という。)を示した。2004年からの老齢加算の段階的廃止、2013年からの生活扶助基準の削減(平均6.5%、最大10%)、2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の削減に引き続くもので、特に、子どものいる世帯と高齢世帯が大きな影響を受ける。

厚労省案によれば、子どものいる世帯の生活扶助費は、都市部の夫婦子2人世帯で13.7%(2万5310円)も大幅削減され、母子加算が平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円)、3歳未満の児童養育加算(1万5000円)が5000円削減され、学習支援費(高校生で5150円の定額支給)が廃止される可能性がある。また、高齢(65歳)世帯の生活扶助費は、都市部の単身世帯で8.3%(6600円)、夫婦世帯で11.1%(1万3180円)、それぞれ大幅削減される可能性がある。 

今回の引下げの考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。

しかし、我が国では、厚生労働省が公表した資料によっても、生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合)が2割ないし3割程度と推測され、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在する。この層を比較対象とすれば、生存権保障水準を引き下げ続けることにならざるを得ず、合理性がないことが明らかである。

特に、第1・十分位の単身高齢世帯の消費水準が低過ぎることについては、生活保護基準部会においても複数の委員から指摘がなされている。また、同部会報告書(2017年12月14日付け)も、子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。

いうまでもなく、生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であり、最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険の保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準等の労働・教育・福祉・税制などの多様な施策の適用基準と連動している。生活保護基準の引下げは、生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに、生活保護を利用していない市民生活全般にも多大な影響を及ぼすのである

大幅削減に対する批判に配慮し、厚生労働省は、減額幅を最大5%にとどめる調整に入ったとの報道もある。しかし、5%であっても大きな削減であるし、削減の根拠に合理性がない以上、削減幅を減らしたから許されるというものではない。更なる生活保護基準の引下げそのものが、これまでの度重なる生活保護基準の引下げによって既に「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者を更に追い詰め、市民生活全般の地盤沈下をもたらすものであり、容認できない

よって、当連合会は、厚労省案の撤回は当然の前提として、本年末に向けての来年度予算編成過程において、一切の生活保護基準の引下げを行わないよう求めるものである。

2017年(平成29年)12月20日

日本弁護士連合会 会長 中本 和洋

「桜を見る会」の検証作業も大事なことである。今後の推移を注視しなければならない重大な関心ごとだ。

そして、同時に社会政策の変更は、抽象的なものではなく、人々の暮らしに直接大きな影響を与える問題だ。

その決定の際には十分な説明と合理的な方法を用いることが重要である。それは安倍政権でなされたといえるだろうか。

安倍政権が強行してきたために、専門家からも疑義が生じている社会政策について、これを契機に見直し、総括がされていくことを期待したい。


雪化粧。

 


都庁が無情のコーン再び設置 「これでは弱者の敵だ」 困窮者はよけながら食品受け取り

2020年11月23日 | 社会・経済

「東京新聞」2020年11月22日

 生活困窮者が支援団体から食品を受け取るため列をつくる東京都庁敷地の一部に、都が複数の三角コーンを突然設置した問題で、都は14日に続き21日もコーンを置いた。敷地に入らないようにという警告とも取れる措置が繰り返され、支援団体や利用者から困惑する声が聞かれた。

 団体は、都庁通り高架下の歩道で食品配布と生活相談を行っている。食品を受け取る人は、歩道に隣接する敷地に並ぶ。だが歩道と敷地の境界を示すように、この日も前回同様、コーン約20個が2列に並べられ、ポールでつながれた。

 食品配布は新型コロナウイルス感染拡大の影響で最近は利用者が多く、21日も前回より5人多い162人。ポールをよけるように敷地から歩道に出て、食品を受け取った。

 列に並んだ80代男性はコーン設置を「都は困っている人を助ければいいのに、これでは弱者の敵じゃないか」と憤った。現場にいた都職員は取材に「敷地と歩道の境界をはっきりさせるため置いた」と、前回と同様の説明をした。

 食品は、支援団体「新宿ごはんプラス」(中野区)と認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(新宿区)が配っている。ごはんプラスの大西連共同代表(33)はコーン設置を「威力を示す行為。公助が足りない中、共助まで妨害する姿勢はよくない」と批判した。

 感染者急増の影響で困窮者支援の必要性は高まりそうだが、それに冷や水を浴びせるようなコーン設置に60代男性は「なぜ置いているのか分からない」と漏らした。(中村真暁)


 こんなことをしているからバス停の女性ホームレスが殺される。役立たずな「役人」ばかりでもあるまい。

 今日は午後からミニトマトのジュースを造り、今までかかってしまい更新が遅くなってしまいました。


竹中平蔵とマイナンバーカード

2020年11月22日 | 社会・経済

菅政権とパソナ 規制緩和という名の利益誘導が進むカラクリ

 NEWSポストセブン 2020/11/19 

 菅政権の「新自由主義政策」のブレーンとされるのが、人材派遣大手パソナグループ会長の竹中平蔵氏である。だが、菅氏と竹中氏の関係は、通常の政治家とブレーンの関係とは趣が異なる。竹中氏が小泉内閣で総務大臣を担当していたころ、菅氏は副大臣として仕える身だった。つまり、主従関係が逆だったのだ。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *

(郵政民営化を通じて)菅を表舞台に引き上げた竹中平蔵は、もともと小泉純一郎政権時代、首相の諮問機関「経済財政諮問会議」に出席していたオリックス会長の宮内義彦とともに、郵政民営化やIT改革に取り組み、数々の規制緩和政策を推し進めてきた。これが格差社会を産む新自由主義だと非難され、旧民主党の鳩山由紀夫政権で見直された。鳩山内閣は新たに国家戦略室を設置し、経済財政諮問会議は、事実上活動を停止する。

 そこから2012年12月、第二次安倍政権誕生により、経済財政諮問会議が復活する。そこで官房長官に就いた菅は、メンバーに竹中の起用を提案した。だが、それに財務大臣兼副総理の麻生太郎が異を唱えた。

 結果、前首相の安倍晋三は新たに産業競争力会議という有識者会議を設置し、そこに竹中を委員として起用した。安倍が菅に配慮した形だ。ちなみに楽天の三木谷浩史が産業競争力会議の民間委員として医薬品のネット販売をぶち上げ、頓挫したのは前号(『週刊ポスト』2020年11月20日号)で書いた通りだ。

 産業競争力会議は経済財政諮問会議より格下だが、安倍前政権の経済政策では、むしろこっちの主張が目立つようになる。それは菅・竹中の連携によるところが大きい。「働き方改革」と名付けた労働の自由化をはじめ、空港や水道の民営化をぶち上げていった。それらは菅と竹中がタッグを組んで進めようとした政策にほかならない。

 現在、東洋大学国際地域学部教授、グローバル・イノベーション学研究センター長の肩書を持つ竹中は、人材派遣大手「パソナグループ」の取締役会長であり、金融コングロマリット「オリックス」や「SBIホールディングス」の社外取締役でもある。人材派遣会社の会長が、残業代タダ法案と酷評されたホワイトカラーエグゼンプションや派遣労働の枠を広げ、今なおデジタル庁構想を後押しする。デジタル庁構想の基幹政策であるマイナンバーカードの普及は、パソナのビジネスにもなっている。

 また竹中が社外取締役となったオリックスは2015年、空港民営化事業に進出。国や地方自治体が施設を所有したまま、利用料金を徴収する「コンセッション方式」なる新たな民営化事業で、その第一号空港が関空(関西国際空港)と伊丹(大阪国際空港)だ。

 空港のコンセッション事業を授けた経営コンサルタントの福田隆之は、竹中の知恵袋であり、2018年まで菅官房長官補佐官を務めた。空港を手掛けたあと、コンセッション方式による水道の民営化を進めようとしたが、仏業者との蜜月関係を指摘する怪文書騒動に発展し、官房長官補佐官を追われるように辞任する(*)。

【*改正水道法の審議中、福田氏が視察先のフランスで水メジャーから接待を受けていたのではないかという怪文書が出回り、野党が追及しようとする中で官房長官補佐官を辞任した】

 福田はその後、竹中がセンター長を務める東洋大のグローバル・イノベーション研究センターに客員研究員として招かれ、今も竹中のブレーンとして奔走していると聞く。

 産業競争力会議は安倍前政権の途中、未来投資会議と名称を改めるが、実態は変わらない。菅自身は自らの政権をスタートすると、その未来投資会議を「成長戦略会議」と改め、ここに竹中をはじめとした経済ブレーンを据えた。インバウンド政策を提唱したデービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)も成長戦略会議に加わっている。

 菅政権ではここにブレーンたちが集結し、規制緩和という名の利益誘導政策を授けている。

【プロフィール】

森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。

※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号

⁂   ⁂   ⁂

「持たなきゃ生きていけない」 マイナンバーカード普及に躍起の菅政権 「強制化」に警戒も

「東京新聞」2020年11月22日 06時00分

 菅義偉首相が目玉政策に位置付けるデジタル化推進の一環として、マイナンバーカードの普及促進に力を入れている。2022年度末までの全国民の取得を目標に掲げ、来年3月には健康保険証としての利用を開始し、運転免許証との一体化も計画。利便性の向上を図るが、国民には個人情報の漏えいなどを不安視する声も根強く、任意のはずの取得が事実上の強制になるのではないかとの懸念もある。(井上峻輔)

◆「安全安心利便性」をアピール

 「マイナンバーカードは安全安心で利便性の高い『デジタル社会のパスポート』だと認識いただきたい」

 平井卓也デジタル改革担当相は17日の参院内閣委員会で国民に呼び掛けた。

 マイナンバーカードは、裏面に個人を認証できるICチップを搭載し、オンラインで本人確認が可能。政府は「あらゆる手続きが役所に行かなくてもできる社会」の実現に不可欠としており、首相は来秋にも設置予定のデジタル庁に普及推進を担わせる方針だ。

 カードは16年に交付を開始したが、コンビニでの住民票取得といった使用場面に限られることなどから普及が進まず、今年4月1日時点の交付率は16%と伸び悩んでいた。政府は7月、普及策として、カードを持つ人を対象に食事や買い物に使える最大5000円分の「マイナポイント」を還元する申し込みの受け付けを開始。申請数は急増し、交付済みを含めた今月17日現在の申請率は25.3%となった。

◆保険証や免許証と一体に

 政府は、健康保険証に加え、26年までに運転免許証と一体化させる方針。今月下旬から、未取得者にスマートフォンから申請できるQRコード付きの交付申請書を送って申請を促す。

 平井氏は取得を義務付ける法制化について「強引ではうまくいかない」と否定しつつも「もっと有効に使えることが増えたら、自然と持たなければ生きていけない世界になる」と普及に躍起。自民党は17日にまとめたデジタル政策に関する提言に、カードとの一体化による保険証の将来的な廃止を盛り込んだ。

◆任意のはずが…

 こうした政府・与党の動きに、市民団体「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎さん(59)は「任意のはずのマイナンバーカードが強制になってしまう」と警戒。「これだけの人数しか取得していないのは、カードで生活が豊かになるという実感よりも、落としたり不正利用されたりする不安の方が勝っているから。そういう気持ちを持っている人が多いことの表れだ」と指摘する。


竹中平蔵さんの資産管理や納税管理に使った方がいいのでは!?

 ところで、このブログの「アピール機能」がつまらない。掲載されてから終わるまでの時間が早い時は6分、遅い時は2時間?(あまりの長さに追跡できずに寝てしまった。)それでも平均すると20分ぐらいだろうか?30分、40分もざらである。こんなに長い時間が必要だろうか?10分もあれば充分である。blog利用者が300万人もいるそうな!時間を短くして多くの人に利用してもらった方が我々利用者も嬉しいのではないだろうか!?以前はほぼ1日に1回くらいチャンスが訪れたのだが、いまでは5日に1回くらい。こんな機能いらない!事務局にも要望しているのだが、さっぱり改まらない。


「この人員体制ではもう限界」保健、医療、福祉に重い負担を強いてGo Toキャンペーンは暴挙ではないか

2020年11月21日 | 社会・経済

藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授YAHOO!NEWS(個人)11/20(金) 

新型コロナウイルス「第3波」襲来

11月19日に新型コロナウイルス感染者数が過去最多を更新した。

すでに新型コロナウイルスは「第3波」として日本全国に襲いかかっている。

その最中、東京都では本日からGoToイートの食事券販売が開始された。

保健、医療、福祉現場の緊迫感をよそに、GoToトラベル同様、これから飲食店利用も増えていくことだろう。

高い確率で飲食店でもさらにクラスター(感染者集団)が発生することが予想されている。

日本医師会の中川会長は11月18日の記者会見で、「Go Toトラベル」について「経過や感染者が増えたタイミングなどを考えると、間違いなく十分に関与している」と述べている。

GoToイートも東京都など首都圏で、さらに感染者を増やすことに関与していくに違いない。

人の移動や交流を制限しなければならない時期に、社会経済活動を理由として感染者を増やし続ける政策は正しいのだろうか。

福祉専門職として強い危機感を有している。

「感染拡大防止と社会経済活動の両立」は現実に不可能

菅首相をはじめ、政府関係者から出る言葉は「感染拡大防止と社会経済活動の両立」である。

なぜか政府関係者はこの両立が可能だと根拠なく信じており、各種GoToキャンペーンを推進する力になっている。

経済界を中心にして、経済活動最優先で、根拠が希薄なまま政策実施を続けてきたクセが緊急時でも治っていない。

いつも「命より金」である。

そのようななかで、感染拡大防止に力点は置かれているだろうか。

当然ながら、感染拡大防止のためには、保健、医療、福祉体制の整備・拡充が必須である。

感染拡大防止と社会経済活動の両立というなら、せめてGoToキャンペーンと同額を予算措置し、人員配置や体制を整えていくべきではないか。

すでに保健福祉の現場からは緊迫感ある訴えが起こっている。「この人員体制で感染拡大防止はもう限界である」という訴えだ。

大阪府関係職員労働組合が保健所の現場実態を伝え、職員増員や体制整備の必要性を訴えている。

彼らによれば、1991年から2018年にかけて、全国の保健所数は45%減り、保健所職員は19%減ったことが指摘されている。

最前線の保健行政を軽視し、縮減し続けてきた政治政策が失敗だった、という指摘だ。

https://twitter.com/i/status/1328986305317933056

政治の失敗を少ない人数で懸命に現場担当者は受け止めているが、いつまで体制が維持できるかわからない現状だ。

この署名は多くの注目や支持を集め、政策転換を促す圧力になっている。ぜひ協力をお願いしたい。

このような声を私たちの社会は真摯に受け止めて、政治や政策を考えていかなければならないだろう。

保健、医療、福祉体制を削り切った日本社会では「感染拡大防止と社会経済活動の両立」は現実に不可能だ。

少なくとも、公務員バッシングにのり、保健、医療、福祉体制が崩されてきたことを反省することが日本社会に必要とされている。

このまま新型コロナウイルス感染拡大が続けば、保健、医療、福祉関係者が過労死に追い込まれていくことも懸念される。

政府関係者による「感染拡大防止と社会経済活動の両立」という無意味な言葉が一人歩きするなか、憤りを禁じ得ない。

今からでも遅くないので、GoToキャンペーンの見直しと感染拡大防止にこそ予算配分を集中させて欲しい。


 今日も午前中は雨。さほどの雨ではなかったので何とか外での仕事をこなした。明日は雨から雪に変わるようだ。いよいよ月曜日から最低気温は氷点下の予報。最高気温も2.3℃と、もうすぐ真冬日になる。長引く雨ならば雪に変わってくれた方が仕事はしやすい。

 いろいろニュース記事を見ているが、「名は体を表さず」の記事が多い。見出しを読んでも何が書いてあるのかわからず、いちいちチェックしなければならない。それが「本音」か?


内田樹の研究室 アメリカの新しい論調から「ベーシックインカムについて」

2020年11月20日 | 社会・経済

2020-11-18 mercredi

Foreign Affairs Report を定期購読している。アメリカの本家のForeign Affairs の主要記事を和訳してくれたもので、雑誌の性格上、ホワイトハウスの政策決定過程に関与している、あるいはしたことのある人の寄稿が多いので、アメリカが今何を問題にしているのかを知る上ではたいへん貴重な情報源である。でも、「おう、俺も読んでるぜ」という人に会ったことがない。どうしてなんだろう。ほんとに貴重な情報源なんだけど。

ともかく、その2020年11月号に、日本人もよく読んでおいた方がいいと思われる記事があった。情報を共有しておきたいと思う。

それはカナダの学者のベーシックインカム(BI)論である。

2020年の大統領選の民主党候補に立候補したアンドリュー・ヤンはすべてのアメリカの成人に月額1000ドルを給付するというBIのアイディアを提示した。残念ながら、まったく支持が広がらず、2月のニューハンプシャーの予備選で撤退した。しかし、3月にアメリカでパンデミックが広がると事態が一変した。共和党のロムニー上院議員は一回限りの支給だが、全員に1000ドル給付を提案した。実際にアメリカ政府は所得条件をつけて、最大1200ドルの一時給付、失業者には毎週600ドル給付することを決定した。

ふだんのアメリカなら「自助」である。失業したのも病気に罹るのも自己責任である。公的支援を求めることは許されないというリバタリアン的な発想が主流である。

けれども、今度はあまりに短期間にあまりに大量の失業者が出現したのである。自己責任で放置するには多すぎた。そして、既存の社会福祉プログラムではこれに対応できなかった。

理由の一つは彼らの多くがパートタイマーや自営業やギグワーカーで社会保障の受給条件を満たさなかったこと。もう一つは給付レベルが低すぎて、そんなものをもらっても生活できなかったこと。もう一つは支給条件の検査が面倒すぎること。支給するまでにさまざまな条件をクリアし、ケースワーカーとの定期的な面談を義務づけると、もうシステムが押し寄せる受給希望者に対応できない。

だから、受給条件を緩和し、給付レベルを上げて、申請プロセスを大胆に簡略化した。「申請すれば支給される」というシステムの信頼性を高めたのである。これはBIにアイディアとしては近い。

その経験を踏まえて著者(Evelyne L. Forget)はこう述べる。

「BIは単なるお金だが、それは他の所得支援プログラムと比べて大きなメリットがある。政府がやるべきことは、お金を口座に送金するだけだ。これは、現在実施されている複雑で官僚的なシステムの多くよりも、はるかに効率的な支援方法だ。」(「ベーシックインカムの台頭-パンデミックが呼び起こした構想」、FAR, 2020, No.11, p.21)

もう一つ大きなメリットがある。「誰が何を必要とするかを深く考える必要がないことだ。」(Ibid.)

アメリカにはフードスタンプ制度があるけれど、これは栄養支援なので、食物以外に使えない。酒もたばこも買えない。「好きにさせると人は悪い決断を下す」という人間観が制度設計の前提になっている。

「だが、BIでは、概して貧困の原因はお金がないことで、政府はこの問題を解決し、それをどのように使うかは市民に委ねるべきだと考えられている。」(Ibid,)

その論拠として著者はカナダのBI事例を挙げる。

カナダのマニトバ州では1975年から78年までBIを実施した。その結果わかったこと。

病院の受診者が減った(主にメンタルヘルスのカウンセリングが減ったため。鬱病、睡眠障害などを訴える患者数が減った)。犯罪発生率が減った。就職する人の数が増えた。

BI反対論者は「BIを支給されると就労意欲が減殺する」と主張しているが、これはBIについては当たっていなかった。

その中で、就労者が減った社会集団が二つあった。一つは第一子を出産した女性たち(彼女たちはBIを利用して産休を延長した)。一つはティーンエイジャーの若者たち(高校を中退して就労するのを止めて、ハイスクール卒業資格を得るまで学校にとどまった)いずれも長期的にはBI利用者の生活のクオリティを高める効果があった。

フィンランドとオラダの実験では、通常の社会保障プログラムに従い、職探しをし、職業訓練を受け、ケースワーカーと定期的に面談する集団よりも、BIを支給しただけで放っておいた集団の方がフルタイムの仕事を見つける率が高かった。

「研究者たちは、官僚的な条件を強要しなければ、より良い仕事を探す時間が増えると結論づけた。」(p.23)

BIの最大の難点は莫大な金がかかることである(アメリカの場合、BIの実施に必要な金額は3兆ドル。年間予算の6分の1に達する)。

「しかし、BIを支出とみなすのは、間違っている。それは、人々が望む社会への投資であり、健康、教育、安全を重視する人がそれぞれに投資する。(...)BIは、メディケアのような他のプログラム、貧困層の医療ケアの責任を負ってきたプログラムの負担を軽くする。病気になるまで待って貧しい人に治療費を払うよりも、自分の世話をできるように、事前にお金を与える方がいい。」(p.24)

費用対効果を考えると、既存のプログラムよりもBIの方がすぐれていると著者は結論している。もちろんBIは公共サービスの代行をするわけではない。障害や依存症を抱えている人たちにはBI以外に特別の支援が要るし、医療と教育についての支援は全国民が享受する権利があると著者は述べている。

これくらいの基本的な了解の上に議論が始まっている。竹中平蔵が「一人7万円くばって、すべての社会保障制度を廃止する」とぶち上げたのはBIでもなんでもない。ただの棄民政策である。術語は厳密に使わねばならない。


 昨日からの雨が結構な量になった。(私設の雨量計は撤去したのでどれくらい降ったのかわからない)園地の整理と薪集め。ずっしりと濡れている。

今日もクレソンを・・・


雨宮処凛がゆく!  10月の自殺者数、2000人超の衝撃。の巻

2020年11月19日 | 社会・経済

2020年11月18日

マガジン9  https://maga9.jp/201118-2/

 

 衝撃の数字が発表された。それは、10月の自殺者数。

 2153人と、とうとう2000人を超え、男性は前年同月比で21.3%増えて1302人。女性は前年同月比でなんと82.6%も増えて851人。

 背景には様々な理由があるだろうが、やはり困窮の現場を見ている立場としては、女性の貧困が極まっていることも要因のひとつに思える。新型コロナウイルス感染拡大で真っ先に影響を受けたのは観光や宿泊、飲食などのサービス業で働く人々だったが、「コロナ以前」の売り上げにはほど遠く、この先の展望がまったく見えない状態だろう。その上、「第三波」を受けて飲食店などは今、再び苦境の中にいる。国がいくら「Go Toトラベル」と呼びかけても、このところ旅行のキャンセルも増えていると聞く。

 厚労省の集計では、コロナによる解雇や雇い止めは7万人以上。が、8月の労働力調査を見れば、パート、アルバイトは前年同月と比較して74万人も減っている。その多くを占めるのが女性で、その数、63万人。

 そんな厳しい現実を反映するかのように、ここ数日、私も参加する「新型コロナ災害緊急アクション」へのメール相談は増え続けている。やはりすでに路上に出た人や所持金が1000円以下の人が多く、中には女性もいる。そんな悲鳴からは、何かが「決壊」しつつある印象を受ける。もしかしたら11月の自殺者はもっと増えてしまうのかもしれない。そんな「最悪の予想」が当たらないことを祈るしかないのが歯がゆい。

 ちなみに、無料の電話相談「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも相談会」の8月の相談内容を「貧困研究会」が分析したところ、衝撃の数字が明らかになっている。今年の2月と比較してどれほど収入が下がったかという質問をしているのだが、自営業主が月収でマイナス11万4000円、派遣社員がマイナス9万2000円、フリーランスがマイナス6万円となっていることがわかったのだ。

 自営業とフリーランスは収入に幅があるので分析しづらいが、例えば派遣社員の月収を、非正規の平均年収179万円から計算すると約15万円。そこから9万2000円を引けば、残るのはわずか5万8000円。東京だったらこの額では家賃を払うことも難しい。「貯金があるだろ」と言う人もいるかもしれないが、月収15万円で一人暮らしをしていたら、貯金など夢のまた夢だ。

 貧困以外にも、自殺の原因は様々だろう。

 例えば私の場合、感染が拡大し始めてすぐの頃はあまり外に出ず人に会わない生活を送っていた。コロナへの不安。仕事の不安。この先どうなるのかという不安。そんな中、一人でいるとどんどんマイナス思考になっていき、そのうちに被害妄想っぽくなっていて、「自分だけ仲間はずれにされてるんじゃないか」とか「みんな私のこと怒ってるんじゃないか」「嫌ってるんじゃないか」など、どんどん悪い方に思考が向いてしまうループにハマったことがある。

 特に一人暮らしだと話す相手もいないので「妄想」は強化されていくばかり。そんな時、家族がいる人が羨ましいと思いながらも、一方で、家族がいるからこそ追い詰められた人も多く知っている。夫がリモートワークになったのでDVから逃れられなくなった女性や、四六時中顔を合わせている中、親の虐待が激しくなった子どもたち。そんなふうに多くの人がストレスを抱え、コロナという「見えない敵」の脅威に日々晒されている。そんな不安でいっぱいの日々に、「なぜこの人が」と芸能人の訃報が幾度ももたらされる。「平常心でいろ」という方が無理な話だ。

 自分自身、精神的に追い詰められるのを回避するため、10月頃から感染対策をしつつ、友人と久々に会食し始めてきた。しかし、ここに来て第三波。そういった機会はこれから少なくなることを思うと、どうやって気持ちの安定をはかっていくか、全ての人にとって重要な問題だ。

 一方で、報道を見ると、コロナによる困窮の果てと思われる事件もあちこちで起きている。

 例えば11月、熊本で53歳の男性が窃盗容疑で逮捕されている。

 「家と食べ物に困っていて、警察に捕まりたかった」と容疑を認めているという。男性は5月まで機械を製造する会社に派遣で働いていたものの、新型コロナによる不景気で契約を打ち切られ、以来、漫画喫茶などを点々としていた。逮捕時の所持金は2300円(朝日新聞2020/11/11)。

 8月には、30歳の女性が福岡で逮捕されている。容疑は、恐喝未遂と建造物侵入。真珠販売店で店員にカッターナイフを向け、現金を脅し取ろうとしたのだ。結果は、未遂。そのまま交番に駆け込み、一部始終を話して逮捕となった。この女性は物心ついた頃から施設で育ち、中卒後は飲食店で働いていた。しかし、新型コロナで働いていたうどん店の仕事を失う。たちまち家賃を払えなくなり、公園で寝泊まりする日々に。「食べ物をください」と書かれた紙を持って路上に立つこともあったという。逮捕時の所持金はわずか257円だった(西日本新聞2020/10/22)。

 また、10月にはベトナム人13人が逮捕されている。群馬県など北関東で家畜や果物の盗難が続いていたが、それに関わっていたのではないかと捜査が進められている。

 11月10日には、都内の風俗店が摘発された。実習生ら約30人を働かせた容疑で経営者の男女2人が逮捕されたのだ。働いていた女性たちは、ベトナムから技能実習生として来日したものの、コロナによって生活苦に陥ったり、帰国したくても帰国できない状態だった。

 派遣社員、施設出身の女性、そして外国人。コロナ禍は、この国のもっとも弱い部分に大打撃を与え、コロナ以前からの矛盾を嫌というほど白日の下に晒している。国は非正規雇用を拡大し、実習生の受け入れを進め、一方でセーフティネットを切り崩すことで、「守られない人たち」を大量に生み出してきた。コロナ禍まで、そんな人たちは必死に働いてなんとかギリギリ自分の生活を成り立たせてきた。しかし、そんなギリギリの生活に、「トドメの一撃」のようにコロナ禍が襲ってきたというわけである。

 ここに残酷なデータがある。コロナ禍において、所得が少ない人ほど収入が減っているというものだ。沖縄大教授の山野良一氏が朝日新聞のデジタルのアンケートを分析した結果によると、子育て中の年収400万円以下の世帯では7割が減収。年収200万円以下の世帯に限ると3割が収入が5割以上減っていたのだ。それに対して、年収600万円以上の世帯は約6割が「変わらない」と回答。5割以上減収した人はわずか2.5%だった(朝日新聞2020/7/5)。

 年収600万円以上の人々の多くは、リモートワークができる環境にあるだろう。大多数が正社員だろうから、休業補償などの制度も整っているはずだ。かたや電話相談などでよく耳にするのは、「正社員はリモートワークができるが派遣社員は出社しないといけない」「正社員には休業手当が出るが非正規は出ないと言われた」などの声だ。

 同時に、先ほどの「派遣社員が9万2000円の減収」という分析を思い出す。年収200万円の人が5割減収するということは、年収100万円になるということだ。国は「前年比で5割以下」などという基準ではなく、「一人世帯で/三人世帯で収入がこの額以下だったら即給付」という形での給付を大々的に進めるべきではないのだろうか。生活保護の手前にそういうものがあれば助かる、という人は絶対に多いはずだ。

 そんな安心は、自殺防止にも、ホームレス化を食い止めることにも繋がる。セーフティネットの強化は、必ず社会を強くする。コロナ禍を機に、そんな転換があればいいと心から思っている。


 今の社会、何をなしても格差拡大につながってしまう。格差を縮める意識的な政策が必要なのだが、意に介しない歴代政権。

 今日は1日中わりと強い雨が降り続いている。昼から講習があったので受けてきた。(また来週も)

写真は昨日の圃場。この日も弱い雨が降り続いていた。

青森の友人より今年もリンゴが届いた。



種苗法改定案が衆院農林水産委員会で可決。

2020年11月18日 | 野菜・花・植物

衆議院農林水産委員会種苗法改正法案参考人陳述

2020年11月12日、衆議院農林水産委員会での種苗法改正法案に関する審議で参考人として招致され、陳述してきました。その発言内容は時間の関係もあって、以下の通りではないのですが、とりあえず準備した原稿を以下に掲載します。

 

 このような機会を与えていただいたことに感謝いたします。これまで国内外の食について研究してきました。その観点から今回の種苗法改正法案が持つ問題について話します。
 まず農水省・政府はこの法改正の必要性を日本の優良な品種の海外流出を避けるために国内における自家増殖を規制しなければならないからと言います。これは逆に言えば、日本の国内の農家が国外に流出させている犯人だということになります。しかし、その確たる証拠は出されていません。根拠の乏しい説明になっています。
 そして農水省自身が海外での不正な使用を止めるためには海外での登録こそが唯一の解決策と明言されている通りであり、この説明はあまりに取って付けた説明といわざるをえません。
 また農水省は自家増殖を止めないと種苗企業が新品種開発する意欲をなくしてしまうから、自家増殖は規制するとしますが、これまたおかしな説明であり、配布させていただいたこのグラフをご覧いただければわかる通り、現在の品種登録が始まる1978年以来、新品種は毎年順調に増えてきました。自家増殖が可能であるにも関わらずです。しかし、10年前から伸び悩みになりました。近年では自家増殖できる余裕のある農家はむしろ減っているにも関わらず、新品種の登録数が伸びていないのです。説明になっていません。

 今回、法案の説明でさらにおかしいのが農家にどのように影響を与えるかに関するものです。登録品種は1割程度しかない。9割は自由に自家増殖できる一般品種だから影響を与えないと農水省は説明しています。しかし、果たして登録品種は1割か、調べてみると異なる事実がわかります。5ページを見ていただければわかりますが、現在、お米は都道府県ごとに産地品種銘柄が策定されていますが、選ばれた銘柄を調べてみますと、その半数以上が登録品種になっています。実際に生産されている銘柄を品種検査で調べると品種の数の上では64%が登録品種です。生産量で比較すると一般品種が多くなるのですが、それでも登録品種は33%を占めています。

 お米以外でも各県で力を入れているたとえば沖縄のサトウキビのような品種では登録品種の割合がきわめて高いと考えられます。

 このように登録品種は農水省が宣伝されているように1割くらいしかない、という説明とは異なり、日本の農業に大きな存在感を持っているのが現実であり、登録品種はわずかしかないから農家には影響がないという説明はまったく現実と異なるものになっているといわざるをえません。

 登録品種の自家増殖は規制されるのがグローバルスタンダードであるかのような説明を聞きますが、しかし、実際には世界ですべての登録品種の自家増殖を規制している国は存在しないと思います。EU諸国では小麦などの主食、ジャガイモなどの重要食はその例外に設定されており、自家増殖が認められています。許諾料の支払いが必要になりますが、穀類92トン、イモ類185トン未満の小規模農家は支払いが免除になります。どれくらいの規模かというと、だいたい15ヘクタールから18ヘクタール未満の農家は支払免除になると考えられます。これが小農だということになりますと、日本の農家のほとんどは小農であり、免除されるべき対象となります。
 米国では、自家増殖禁止となるのは特許の取られた作物のみで小麦など特許の取られていない作物はすべて自家増殖が可能になっています。それなのになぜ日本だけ、例外なしの許諾制にしてしまうのでしょうか? 世界に類のない法改正案といわざるをえません。

 農水省は許諾料はとっても安いから農家に影響を与えないと説明しています。しかし、許諾料に関する規定は種苗法改正案には存在していません。現在は地方自治体が作っているものが多いので、その許諾料は安いかもしれませんが、地方自治体から民間企業への移行が進められたら、安いままですむとは考えられず、そもそも許諾を与えないケースも増えてくると懸念せざるをえません。そもそも生産資材の低廉化を目的とした農業競争力強化支援法に反する立法といわざるをえません。

 農水省の説明では日本の優秀な品種が海外流出するという懸念が強調されます。しかし、世界の現状は農水省の説明とは大きく異なるものになってしまっているといわざるをえません。以下のグラフはUPOV同盟のデータですが、日本は20年前までは世界第2位の新品種を作る国でした。しかし、世界の他の国が伸びるのに対して、日本だけが純粋に減少を続けています。中国には2009年に抜かれ、韓国にも2015年に抜かれています。2001年-2018年で36%の減少です。一方、韓国は2.8倍、中国は22.8倍に増えてしまっています。この原因は何でしょうか?

 日本の国内市場は今、安い海外産の農産物であふれかえっています。これは農業を犠牲にして進められたさまざまな自由貿易協定の結果です。そして離農者は毎年増えるばかりです。離農者が増えれば種苗の買い手がどんどん減ることを意味します。そして、農村の衰退に伴い、新品種の育成に必要な人材も得がたくなってきています。
 そして、1998年まで地方自治体には補助金という形で種苗事業に安定財源が確保されていました。しかし、それは地方交付税となり、種苗事業に安定的な投資が行われていないというのが現実だといわざるをえません。
 外国産品と競合を迫られる農家にとってさらにその負担を増やす種苗法改正はさらなる離農者を増やすことでしょう。地域の種苗市場はさらに狭くなります。地域の育種農家、種苗を買う農家を増やし、支える政策が欠如していたことがこの停滞の最大の原因と言わざるを得ません。

 今、日本が唯一、種子を自給可能であるのが稲です。お米は日本の食料保障の最後の砦であり、今、この砦を守ってきた外堀は埋まり、今、内堀が埋められつつあります。米国は大豆やトウモロコシは民間企業まかせにしていますが、主食である小麦は農家が自家採種を行い、公共機関も安価な品種を提供できるからこそ、安定した状況を継続できています。日本もそうでした。しかし、今や、この最後の砦にも手がかけられようとしています。もし、公的種苗事業が衰退していき、民間企業に委ねられた場合、これまで地域を支えていた多様な品種は失われてしまう可能性があります。稲の多品種供給する民間企業は存在しないからです。
 食は社会の基盤であり、それを失うことは独立国としての体裁すら奪ってしまうことにつながります。現在でも日本に登録される品種での外国法人の割合は激増しています。現在はお花の品種に特化していますが、今後、公的種苗事業が衰退すれば、米を含むその他の品種にも広がっていくでしょう。

 農水省は2015年に知財戦略2020を策定しました。その中で種苗の知的財産権が大きな柱に位置づけられました。知的財産権では育成者権と特許法の特許権の2つの形態がありますが、この2つとも農水省は強化していく姿勢を示しています。これは種苗法の枠を越す話ですが、知的財産権を強化することは何をもたらすか、注意が必要です。

 このグラフですが、米国でも登録品種が増えているのは特許ではない、通常育種での種苗になります(上左)。特許を取られた新品種はこの20年間、ほとんど増えていません。しかも、その特許を取られた品種登録の6割は外国企業となっています(上中)。あの米国ですら自国の種苗事業者の割合が4割になってしまうのです。もし日本で知的財産権を過度に強化していった場合、それは圧倒的に外国企業に日本の種苗市場を握られる結果にならざるをえないでしょう。

 看過できないのが種苗表示です。今回の種苗法改正で種苗への表示は強化されるとのことなのですが、その表示義務項目に「ゲノム編集」などの遺伝子操作の表示義務がありません。これは深刻な話です。普通の大豆の種子と思って買ったら、それは「ゲノム編集」されていて、知らない間に遺伝子操作された種子を育ててしまったということが起こりえるわけです。有機認証もできなくなってしまうでしょうし、どれが「ゲノム編集」されているのかいないのか、農家すらわからないという状況になります。

 EUやニュージーランドは「ゲノム編集」は従来の遺伝子組み換えと同等として規制する予定ですし、韓国や台湾などがそれに追従する可能性もあります。しかし、日本の農産物は区分できないので、日本の農産物は輸出すらできないという事態になりかねません。さらには日本食を忌避する、日本への観光を避けるということにもなりかねません。これは日本の食への信用を大きく失わせるものといわざるをえません。

 これまでの種苗法は新品種を育成した育成者とそれを使う側の農家の権利をバランスさせることに大きなエネルギーを注いで作られたと伺っております。現行種苗法を作られた方々のご努力には強い敬意を表せざるをえません。

 しかし、今回の種苗法改正はそのバランスを壊してしまうものです。農水省によれば在来品種・一般品種があるからバランスはそこで取ればいいというのですが、登録品種は法律で守られているのに在来品種を守る法律はこの日本にはありません。もし、このような種苗法改正をするのであればその前に在来種を守る法律を作ることは不可欠だと考えますが、それは提案されておらず、今回の法改正はまったく法的にバランスを失わせてしまうものといわざるをえません。自家増殖は農業の根幹技術であり、それが規制されることは日本の農業の未来に大きな制約となってしまいます。

 今、この停滞している種苗育成をどうしていくべきでしょうか、その鍵は以下のように育種家農家、買う側の農家の双方を底上げする政策ではないでしょうか? それがなければ日本の新品種はアジア諸国に追いつくことも不可能でしょう。これをバランスを壊した改正種苗法に変えてしまったら、なおさら厳しい状況が日本の農業にもたらされざるをえません。

 今、種苗の多様性が危うくなっています。多様性を失うことで今、わたしたちのこの地球の生態系はかつてない危機に瀕していると言われています。これに対してFAOはローカルな多様な食を守ることが今後の人類の生存に欠かせないとしています。現在、日本では地方自治体がお米で300近い品種を作っており、在来種を守る農家は1000品種近い多様な品種を守っていると言われています。まさにこの多様性を守ることこそ、日本の食と農を守る上で本質的に重要であるといわざるをえません。

 これまで多様な品種を作ってきた地方自治体、そして農家の方たちが作る種苗が民間企業の専売に変わっていけば品種の多様性は劇的に奪われてしまいます。日本の未来が奪われるに等しいと思います。

 今、必要なのはこの種苗法改正ではなく、この日本が持つ伝統的在来種や一般品種を含む多様な種苗を保全し、活用する政策ではないかと考えます。そして世界はすでにその方へ足を踏み出しています。ブラジル、韓国でも進んでいますし、そしてイタリアでは生物多様性を守るために中央政府が地方自治体に権限を移譲し、トスカーナ地方などは在来種保全政策を進めていると聞きます。米国でも昨年、先住民族が守ってきた種子を守る法案が提案されています。

 最後に、世界では食料・農業植物遺伝資源条約においても、2018年に成立した小農および農村で働く人びとの権利宣言においても農家は種苗を守ってきた貢献者とされています。登録品種を著作物にたとえるならば農家はその著書の共著者なのです。その権利を守ることが世界の常識となりつつある中、その権利を世界で類例のない形でその権利を奪うような法改正はありえないといわざるをえません。

 この10年、世界は大きく変わりました。各国政府も大きく政策を転換させています。しかし、残念なことに日本政府は古い考えにしばられたままのようにみえてなりません。

 残念ながら賛成も反対もまだ農家の中に浸透していません。過半数の方は知らないし、関心がないのが現実です。このような中で拙速に、当事者である、権利者でもある農家を置き去りにこのような審議が急がれることに対しては強い違和感を表明せざるをえません。地方の農家がすべて参加できる地方公聴会の開催は不可欠であると考えます。
 今回の種苗法改正は22年ぶりの歴史的な改正となります。おかしな説明のみで採決することは歴史的な汚点を作り出すことになるでしょう。

 国民の食糧と健康を守る賢明な議論が行われることを心から祈念して、こちらの報告を終えます。


    種苗法改定案が衆院農林水産委員会で可決された。
農家は畑の土や気候などの状態に合わせて畑にあった種を育ててきた。一つの品種でも作る人によってさまざまな形態になりうるのです。砂地にあったもの、粘土地にあったもの温度、湿度、風、様々な要因で自分にあった種を育てるのです。
 コロナ禍のドサクサに誰のための改正なのでしょうか?
国民の食糧と健康を守るために、廃案に追いこみましょう!


バイデン勝利。しかし米国には不穏な空気が漂い始めた。(想田和弘)

2020年11月16日 | 野菜・花・植物
  映画作家 想田和弘

 米国民主党のジョー・バイデンとカマラ・ハリスのコンビが、次期大統領・副大統領にそれぞれ就任確実となった。

 しかし予想した通り、現職大統領のドナルド・トランプは選挙に負けたことを認めようとせず、「不正選挙が行われた」と主張し法廷で争う構えだ。無論、不正選挙が行われたという具体的証拠などない。証拠はなくともそう強弁することで、大統領の座に居座ろうという魂胆である。

 僕はかねてから、このシナリオを恐れていた。トランプが選挙で負けてもあれこれイチャモンをつけてホワイトハウスを去ろうとせず、大勢の共和党議員や支持者たちが彼に同調したら一体どうなるのか。内乱が勃発するのではないか。

 共和党の主要人物たちはしばらく沈黙を守っていたが、この4年間のパターン通り、案の定、トランプに同調し始めた。

 マコーネル上院院内総務は「大統領には法的措置を取る権利が100%ある」などとトランプの行動を擁護した。

 ポンペオ国務長官は「トランプ政権2期目に円滑に移行するだろう」などと、あたかもトランプが勝者であるかのような発言をした。

 加えてバー司法長官は、選挙での不正に対する調査を容認する異例のメモを全米の検事らに送った。そしてそれに抗議した司法省高官が辞任した。

 トランプが赤信号を渡るならみんなで渡ろう式の、恥知らずな連中である(辞任した高官除く)。

 更に不穏なことに、トランプは反人種差別デモに対する米軍の投入に慎重だったエスパー国防長官を突然、解任した。

 なぜこんなタイミングで解任するのだろうか。

 控えめに言って、不穏である。

 少し希望が持てるのは、トランプが台頭して以来の約5年間で、米国のメディアがトランプ発言の報じ方を学んだことである。

 象徴的だったのは、11月5日の夕方、トランプが会見を開いたときの出来事だ。彼が「民主党によって選挙が盗まれようとしている」と陰謀論を展開し始めるや、米3大ネットワークのABC、CBS、NBCは、揃って中継を打ち切ったのである。嘘をそのまま垂れ流し、ディスインフォメーションに加担することは、報道機関としてするべきでないとの判断からである(その点、日本のテレビ局はまったく何も学んでいないようで、トランプの会見を最後まで中継したようである)。

 トランプの弁護士、ルーディ・ジュリアーニが先月「ウォールストリート・ジャーナル」に持ち込んだ、バイデンの息子に関するスキャンダル情報でも、同様のことが起きた。トランプ陣営は、選挙直前に不利な情勢をひっくり返す「オクトーバー・サプライズ」として期待していたようだが、ジャーナルの編集者たちは根拠が薄いと判断して、結局報じなかった。困ったトランプ陣営はタブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」に持ち込み、同紙は報じたが、効果は限定的だった。ジャーナルとポストではメディアとしての信頼度がまったく異なり、他のメディアも続報をしなかったからである。4年前、ヒラリー・クリントンに関する根拠の薄いスキャンダルを各メディアが垂れ流し、トランプのディスインフォメーションに貢献してしまったのとは対照的である。

 ツイッターの対応も、今回は違った。開票が始まってからディスインフォメーション合戦が始まると予期したツイッターは、不確かな情報が含まれるツイートには警告を付与し、拡散しにくいようにした。その結果、トランプが発するツイートの多くに警告が付き、拡散が抑制された。

 「メディアが発信を制限・抑制せずとも、読者や視聴者が判断すればよいのでは」という意見も、相変わらず根強い。

 しかしそれはあまりに素朴すぎる考えである。少なくとも、ひとたびデマが広まってしまうと、完全に取り除くことは事実上不可能だということを無視している。デマ記事と、それを訂正した記事では、前者の方がはるかに広まりやすいというデータもある。残念ながら、嘘は「言った者勝ち」なのである。

 トランプはそのことを熟知していて、自己利益のため故意にデマを流す。彼の発言をそのまま流すことは、彼の犯罪に利用されることであると、アメリカのメディアはようやく悟ったのだと思う。

 嘘ばかりついてきたトランプは、今や悲しきオオカミ老年である。嘘が「言った者勝ち」であるのは実は最初だけで、最後には負けるのだと、イソップ童話と同様、今回の選挙結果は教えてくれている。

 しかしその選挙結果を、トランプとその一派は受け入れようとしない。そして米軍や司法省含め、絶大な権力を握っているのは、依然として彼らなのである。

 バイデン勝利の喜びもつかの間、米国の民主主義は、もしかしたら絶体絶命のピンチに突入しようとしているのかもしれない。

 僕の懸念が杞憂に終わることを、切に願う。


今日の散歩道。

今日は比較的に暖かい。

園地内を整理しているとキノコがたくさん。

クレソンとキノコで鍋か・・・
クレソンについての記事、以下ご覧ください。

最強の野菜

2018年10月17日 | 野菜・花・植物

最強の野菜に輝いた”クレソン”


内田 樹 「コモンの再生」が日本を救う その3

2020年11月15日 | 社会・経済

日本列島をどう守るか 過疎化に“100万人の引きこもり”が役立つワケ

文春オンライン2020.11.14 

    いまや日本の過疎地域は国土の6割弱、市町村数の半数近くを占め、人口の偏在が進むなか、「所有者不明」の土地は国土の約20%を占め、手つかずのまま放置されている。新著『コモンの再生』を上梓した思想家の内田樹が、日本の過疎化問題の本質に切り込み、打開策を提言する。

――地方の「所有者不明」土地問題は全国的に深刻で、いまや九州本土を上回る約410万haもの面積が、手つかずの土地・空き家として放置されています。

内田 日本列島は森林が多く、人間が住める可住地は国土の30%に過ぎません。その上、過疎化が進行しているので、これまで人が住んでいた土地がどんどん放棄されて、人が住まなくなる。今世紀のうちに可住地の60%が無住地化するようです。

 先日ある県人会の講演に呼ばれて行った時に、地方の人口減の話をしました。講演後となりに座っていた方が「自分の故郷は、自分が子どものころは200戸の集落だったが、自分たちの子の代で引き続きこの集落で暮らすという家は2戸しかない」という話をしてくれました。1世代で人口が100分の1にまで減少するわけです。住人が2戸しかない集落だと、公共交通機関はどうなるのか、行政サービスや医療や消防はどうなるのか。バスは通るのか、ライフラインの維持はしてくれるのか。たぶん、そんな少人数のところにコストはかけられないということでいずれ切り捨てられることになると思います。そこが住めなくなると、いずれ森が集落を呑み込んでしまう。

 これまで、環境問題というと、「自然をどう守るか」という議論でしたけれど、これからはそれに加えて「過疎地の文明をどう守るか」という議論も並行して行わなければならなくなってきました。久しく人間の繁殖力が自然の繁殖力を圧倒してきたわけですけれども、そのフェーズが終わった。これからは自然の侵略からどうやって人間の文明を守るか、都市文明のフロンティアラインを守っていくかを考えなければならない。そういう発想はこれまでなかったですから。

――たしかにそうですね。

内田 自然の力は本当にすごいんです。廃屋って、外から見るとそれとわかるほど荒れ果てますよね。人が住まなくなると、すぐに壁がはげ落ち、瓦が落ち、柱まで歪んでしまう。前に東京で見かけた廃屋は、半年後に通りがかったら竹が屋根を突き破っていました。その家に人が住んでいる頃にも、庭には竹林があったんでしょうけれど、竹が家の下にまで根を伸ばして、床を突き破るというようなことはなかった。人間がそこに住んでいるというだけで、自然の繁殖力は抑制されるからだと思います。

人口減少時代は、自然の侵略を防ぐことがフロンティアの仕事

 昔はどんな神社仏閣でも「寺男」とか「堂守」といわれる人たちがいました。門の開け閉めをしたり、鐘を撞いたり、掃除をしたり、たいした仕事をするわけでもないのですが、広大な神域や境内に人が1人いるだけで大きな建物が維持されて、森に呑み込まれるということは起きなかった。これは文明を守るための、先人たちの知恵だったのだと思います。

 僕の友人で祖父母の住んでいた集落が無人になったという人がいます。親族が近くに住んでいるので、祖父母の墓参りに行きたいと言ったら、もう道が通れないから無理だと言われたそうです。集落全体が「山に呑まれて」、道路も藪で覆われて、獣や蛇が出るので、怖くてとても墓参りになどゆけないということでした。人間が住んでいると、それだけで自然の繁殖力はかなり抑制されるのですが、ひとたび無人になると自然が堰を切ったように文明の痕跡を覆い尽くしてしまう。

――日本中の過疎地域で同様のことが起きているでしょうね。

内田 人間はフロンティアを開拓して、自然を後退させてきたわけですけれど、これからの人口減少時代では、自然の侵略を防いで都市文明を守ることがフロンティアの仕事になる。

 いまの地方政策は、コンパクトシティ構想に見られるように、過疎地を積極的に無人化して、住人を地方の中核都市に集めて、行政コストを下げるという発想です。住人を1か所に集めてしまえば、交通網や通信網や社会的インフラの整備コストが一気に削減される。官僚たちはそういうことを机の上で電卓を叩いて計画しているのでしょうけれども、実際には里山が無人化すると、自然と文明の緩衝地帯がなくなる。そうなると、都市のすぐ外側にまで森林が迫り、野獣が徘徊するようになる。

 文明を守るためには、自然と都市の中間に里山が広がっていることが絶対に必要なんです。里山は自然の繁殖力を抑制し、それを人間にとって有用なものに変換する装置です。行政コストがかさむからというような理由で里山を無人化してしまうと、たいへんなことが起きます。だから、できるだける里山エリアを無人化させない。里山というフロンティアを守る必要がある。単なる社会政策上の問題ではなく、文明史的な問題なんです。

全人口の5分の1くらいは、里山エリアに住んだ方がいい

 経済学者の宇沢弘文先生によると、全人口の20-25%くらいは農村に住まなくてはならないそうです。いま日本の農業従事者は人口の1.3%です。農村人口というのは別に農業従事者のことではありません。自然の過剰な繁殖力を抑制するために里山に住む人たちのことです。宇沢先生が出した20~25%の農村人口という数字にはそれほどきちんとした統計的な根拠はないんじゃないかと思います。割と直感的な数字だと思います。でも、この直感を僕は信じます。全人口の5分の1くらいは都市ではなく、里山エリアに住んだ方がいい。そこで年金生活をしてもいいし、作家活動をしてもいいし、音楽をやってもいいし、陶芸をしてもいい。とにかく里山に「人がいる」ということが大事なんです。

――それは新型コロナウイルスのような危機に際して、里山がリスクヘッジになるということでしょうか。

内田 今回のコロナ禍で、都市が感染症に非常に脆弱であることがわかりました。狭い空間に人が密集して、労働、消費で斉一的な行動をとる。これが感染症にとって最悪の条件なわけです。SARS、MERS、新型インフルエンザ、新型コロナと、2002年から18年間で4回もパンデミックが起きました。自然破壊が進行して、それまで出会う機会のなかった野生動物と人間が出会って、人獣共通感染症が流行するようになったせいです。今世紀末までは世界の人口増は続き、アフリカや南米で自然破壊が進むことは避けられません。そうなると、数年おきに新しい人獣共通感染症が世界的なパンデミックとして襲来するということを前提にして社会制度を設計しなければならなくなる。都市に人口と資源を集中させて、都市機能がダウンするとたちまち国全体が麻痺するような脆弱な仕組みでは、これからあと定期的に訪れる感染症に対応できません。

 感染症対策として一番効果的なのは「広がって居住すること」です。他人と空間的な距離をとって生活している限り感染リスクは低い。だから僕が「田園に帰ろう」というのは何も農本主義的な発想だけで言ってるわけではありません。文明史的な要請によるものです。

 里山エリアに人口を移すというのは、1つは「日本の人口減」による自然の繁殖力の増大に対応するものであり、1つは「世界の人口増」による人獣共通感染症パンデミックに対応するものです。どちらもが同じことを要請している。

西部開拓者が理想像となった理由

 アレクシス・ド・トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』には西部開拓期の開拓民たちの「異常」な行動が記録されています。幌馬車に乗って開拓地に来た人たちが森を切り開き、畑を耕し、家を建てた。しばらくすると、その土地を棄てて、また幌馬車に荷物を積み込んでさらに西部に向かう。経済合理性を考えたら、まるで間尺に合わないことをしているわけです。でも、彼らは取り憑かれたように西に向かい、また森を切り開き、畑を耕し、家を建てた。彼らを駆り立てた情念は何だろうとトクヴィルは自問して、ある種の「狂気」だと答えています。

 僕はそれはちょっと違うのではないかと思います。西部開拓のフロントラインに立った人たちは、人間の力によって自然が屈服してゆくことを実感した。当時のヨーロッパにはもう本当の意味での自然は残されていなかったので、これは彼らにとって生まれて初めての経験だったはずです。手つかずの大自然が、人間の存在によってじりじりと後退して、そこが「人間の土地」に変わる。その経験がおそらくたとえようもなく強烈な全能感を開拓者にもたらした。そういうことではないかと思います。

 だから、西部開拓者はそれ以後のアメリカ人にとって1つの理想像になった。それは彼らが自信と自己肯定感に満たされた人たちだったからです。それ以外の時代、それ以外の土地においては見出しがたいような堂々とした人間たちがある時期に集団的に発生した。それが「フロンティア」というものの効用だったのではないかと僕は思います。彼らの全能感を基礎づけたのは、圧倒的な自然の繁殖力を自分の手で食い止めて、そこを人間の土地にしたという達成の経験でした。自然と文明の境界線を守る「歩哨」としての役割を担っていたことが彼らに深い自己肯定感を与えた。

――里山にもまた、そういう文明史的な意味があるということですね。

内田 そうです。いま里山が過疎化・無人化してゆくときに、ここをもう1度「フロンティア」として再興する。その前に1つ大きな問題があります。それは所有者・地権者がわからないという土地建物がいま過疎地にはたくさんあることです。私有財産ですから、自治体といえども勝手に手は付けられない。でも、無住の家屋は防災上も、防犯上も、公衆衛生上も非常に大きなリスクです。だから、何とか再利用したいのだけれど、できない。

 僕はそういう土地や建物はもう私有財産ではなく、公共財に戻してしまえばいいと思います。もともと土地というのは私有すべきものではないと僕は思っています。一時的に公共のものを借りて使用しているだけで、使用しなくなったら、再び公共に戻すということでよい。これらの無住の家屋や耕作放棄地をもう一度公共のものとして、地域の人々で共同管理する。

映画『シェーン』が示す土地をめぐる原理的な主題

――斬新な発想ですね。先生は本書のなかで、一定期間誰からの所有権も申請のない土地家屋をコモンにする「逆ホームステッド」法を提言していますね。

内田 ホームステッド法というのはアメリカ全土では1863年、南北戦争中にリンカーン大統領によって発令された法律です。部分的には40年代から施行されていました。国有地に定住して、5年間耕作に従事したアメリカ市民には無償で160エーカーを与えるという法律です。フランスから買ったルイジアナ、メキシコから奪ったカリフォルニアなど、北米大陸のほとんどが無住の地だったわけですから、そういうことができた。ヨーロッパの貧しい人たちがアメリカに行けば自営農になれるというので、毎年数十万単位で移民していった。西部開拓が可能になったのは、この法律があったからです。

 法律そのものは社会主義的な発想のものだったと言ってよいと思います。マルクスも、この法律を高く評価し、彼自身テキサスへの移住を考慮したほどでした。でも、これはヨーロッパから移民を北米に呼び寄せ、大量の労働者の人海戦術によって荒漠たる草原を耕地に換え、併せて巨大な市場を形成するというと資本主義的にもきわめてクレバーな政策でした。いわば社会主義的発想と資本主義的な発想がホームステッド法では矛盾なく共存していた。

 フロンティアの消滅は1890年ですが、それはもう移民たちに与えるだけの国有地がなくなったということを意味しています。わずか半世紀でアメリカのすべての「コモン」が私有地になったのでした。だから、西部開拓というのは実は大規模な「囲い込み」でもあったわけです。

『シェーン』という映画があります。主人公のガンマン、シェーンは農夫側の味方になって悪いカウボーイたちと戦うので、観客は農夫が「グッドガイ」で、カウボーイが「バッドガイ」だと思い込んで映画を観るわけですが、実はもう少し話は複雑です。この農夫たちはホームステッド法で土地を手に入れたニューカマーであり、カウボーイたちはそのはるか以前からこのエリアで放牧をしていた人たちだからです。それまで自由に出入りして、牧畜することができた「コモン」に、ある日政府発行の「土地権利書」を手にした移民たちが現れて、農地の周りに鉄条網を張り巡らして、「私有地につき立ち入り禁止」だと言い出した。「囲い込み」したわけです。

 伝統的な「コモン」を守ろうとするカウボーイたちと、「囲い込んだ」私有地を死守しようとする農夫たちの間で殺し合いが始まる。『シェーン』は果たして土地はコモンなのか私物なのかという原理的な主題を扱った、意外に深い映画なんです。

「引きこもり」が里山の「歩哨」として暮らす

――てっきり農夫かわいそうと思って観てました!

内田 映画では農夫たちが勝つわけですけれど、その農夫たちも、それから半世紀後には大恐慌のときに銀行に土地を奪われて、都市プロレタリアートに没落していく。19世紀のイギリスで起きたのと同じことがそのままアメリカでも繰り返されたのでした。

 西部開拓の時のコモンの私有化によってアメリカの農業生産力は劇的に向上しましたけれど、自営農となったと喜んだ農民たちも、やがて必然的に没落する。たしかにコモンを私有化すれば一時的に土地の生産性は上がるのですけれど、「土地の有効利用」を根拠として土地を私有化したものは、「それよりさらに高い生産性で土地を有効利用できる」という大資本家には理屈では勝つことができません。経済合理性を楯にして何かを奪ったものは、いずれ同じロジックで得たものを奪われるということです。

 僕が提案する「逆ホームステッド」法は、放置された私有地や無住の家屋を自治体が接収して、コモンにして、そこに住んで5年間生業を営んだ人に無償に近いかたちで払い下げるというアイディアです。里山に再び人を呼び戻すためには、よい方法だと思います。

 もう1つアイディアがあるんですけれど、それは「引きこもり」の人たちに「歩哨」をしてもらうというものです。

 一説によると、日本にはいま100万人の「引きこもり」がいるそうです。その人たちに過疎の里山に来てもらって、そこの無住の家に「引きこもって」もらう。里山だと「そこにいるだけで」、里山を自然の繁殖力に呑み込まれることから守ることができる。部屋にこもって1日中ゲームやっていても、ネットをしていても、それだけで役に立つ。

 それほどの給料は払えないでしょうけれども、人がいなくなった集落でも、お盆のときだけは戻ってくるから、家は廃屋にしたくないという人はたくさんいます。そういう何軒かの家からちょっとずつ出してもらえば、仕事になる。家賃は要らないし、物価だって安いし、気が向いたら、畑を耕して野菜だって作れる。

 そういうミクロな求人とミクロな求職をマッチングする仕組みができれば、かなりの数の「引きこもり」が里山の「歩哨」として暮らして、かつて西部開拓者が経験したような達成感や全能感を経験して、メンタル的に回復するというようなことが起きるんじゃないか。そんなことをぼんやり夢想しています。

「逆ホームステッド」法くらいの思い切った施策を

――やりたがる人、意外に多いと思います(笑)。

内田 フロンティアを守るのに実はそんなに頭数は要らないんです。大伽藍を守るのに「寺男」が1人いて、寝起きしているだけで十分だという話をしましたけれど、西部開拓でもそうなんです。

 映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』では、ダンバー中尉(ケビン・コスナー)が南北戦争で軍功をあげた見返りに好きな任地を選んでいいと言われて、フロンティアを選びます。フロンティアが消滅する前に見ておきたいという理由で。北米大陸全体が私有地に分割される前に、誰のものでもない大自然が広がっている風景を見たいと思った。彼が配属されたのはサウスダコタ州の砦なんですけれど、砦と言っても、あるのは丸太小屋だけ。そこに彼が1人で暮らす。砦ひとつで広大な辺境地域をカバーしている。軍務なんて実は何もないんです。そこにいるだけでいい。暇なので狼と踊っている。

 この映画が教えてくれるのは、見渡す限り人煙の絶えた草原のただなかに人が1人いるだけで、そこが「フロンティア」になるということです。そこが文明の最前線となる。大自然に向かって、「ここは人間の土地だ」と宣言している人間が1人いるだけで、自然はそれ以上侵食してこない。その「歩哨」としての責務を果たしているだけで、ダンバー中尉は彼に課された軍務を100パーセント果たしており、そこから深い達成感を得ることができる。

 農村人口を増やし、里山のフロンティアラインを守るには、「逆ホームステッド」法くらいの思い切った施策が必要だと僕は思います。土地は果たして私有すべきものなのか。私有してよいものなのかという問いを含めて、日本列島をどう守るかという課題を文明史スケールから捉え直すことが必要だと思います。

コモンの再生

内田 樹 文藝春秋  2020年11月7日 発売


冬支度。
ボートを沼から上げました。薄い氷が張っています。

バラ、やっぱり開花まで行きません。
 ここはネズミの害が多く、根元に網をまきつけてから支柱を立て縛ったり、保温資材で囲っています。今日はバラ・杏・梅・桃。明日はブルーベリーの予定。

今年最後のキノコ「ユキノシタ」