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「非自民」首長が次々と生まれる理由と「地域主権主義」

2023年11月02日 | 生活

 現代の旗手が語ったLINーNet集会

「東京新聞」2023年11月2日 
 
 「地域主権主義」に根差す政治や行政を目指し、住民や首長、地方議員らでつくる「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LINーNet)が10月25日、東京都杉並区で5回目の集会を開いた。シンポジウムでは、LINーNet世話人で世田谷区の保坂展人区長、杉並区の岸本聡子区長、政治分野のジェンダー平等を目指す「FIFTYS PROJECT(フィフティーズ プロジェクト)」の能條のうじょう桃子代表、政治学者で東京工業大の中島岳志教授の4人が、東京西部で「非自民」のリベラル派首長や議員が相次いで誕生している背景などを語り合った。(山口哲人、原田遼、関口克己)

◆「政党間のギスギスした対立ではなく」

世田谷区の保坂展人区長

世田谷区の保坂展人区長

 保坂展人・世田谷区長 東京の西側では、国政与党が継続して首長を出す構図が崩れて、市民運動をルーツとする首長が増えている。これは永田町からは見えない光景。それらの自治体はコモン(公共財)の考え方を共有し、良い政策を互いに学んで実現させようとしている。国の動きを待つのではなく、自治体から変えている。
 世田谷区と渋谷区が2015年に始めた同性カップル認証制度は、今は9000万人の人口を占める多くの自治体が同様の制度を持っている。政党間のギスギスした対立ではなく、相互扶助の手法を取る仲間が増えるといい。

◆「大きな流れをつくったのが女性や若者だった」

政治学者の中島岳志さん

政治学者の中島岳志さん

 中島岳志・東京工業大教授 東京西部での変化は、世界的な大きな潮流と呼応している。この10年間、世界の中で注目してきた動きがミュニシパリズム(地域主権主義)。ジェンダー、フェミニズムのような運動が起きても、いきなり国政を変えるのは難しい。まずは自分たちが住む自治体の選挙にしっかりとした候補を出して、着実に変えていく動きが起きてきた。新自由主義の下で次々と民営化したものを公共の手に取り戻し、市民参加型で取り組んでいる。
 日本では与野党の既成政党に対する失望が国民の間で広がっている中、昨年6月の杉並区長選での岸本区長誕生と、今年4月の統一地方選は、20年ぐらいたつと「あれが起点だった」と位置づけられるのではないか。「票にならない」といわれてきたジェンダーや環境、気候変動問題が票を動かしたのだから。その大きな流れをつくったのが、これまで政治から遠ざかってきたと見られてきた女性や若者だった。

◆「自分たちの手で代表を増やす」

「FIFTYS PROJECT」の能條桃子さん

「FIFTYS PROJECT」の能條桃子さん

 能條桃子・FIFTYS PROJECT代表 21年に東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言があった時、抗議署名を立ち上げて15万筆を集め、実際に森氏辞任につながった。だが、その年の新語・流行語大賞に「ジェンダー平等」がトップ10に選ばれたことで、「ただの流行で終わってしまう」との危機感を感じた。
 ジェンダー平等に日本の中でさらに取り組む必要があると思い、目を向けたのが地方議会。昨年調べたところ、全国約3万人の地方議員のうち、20代女性は15人、30代女性207人で、合わせても1%未満。一方、60代以上の男性が56%という数字を見た時に、まずは地方議会から変えないといけないと思った。
 昨年夏に「FIFTYS PROJECT」を立ち上げた。若い女性を応援すれば良いのではなく、マイノリティーの代表として意思を持つ人が議員にならないと意味がない。選択的夫婦別姓実現に賛成、推進▽トランスジェンダー差別反対、などの四つの政策に賛同する人たちを集め、今年の統一地方選では29人の候補者が出て、24人が当選した。東京だけではないが、確実に自分たちの手で代表を増やしている。

◆「一番分かっていないのが今、「保守」と言っている人たち」

 中島氏 東京西部で起きている動きを左右の問題にしたくない。岸本区長や保坂区長の行動はリベラルな保守の王道。能力も倫理性も不完全な人間が担う社会は不完全なまま推移せざるを得ない。それならば、特定の理論家の言う通りではなく、歴史の風雪に耐え、多くの庶民が残してきた英知に徐々に手を入れていくのが保守の考え方。漸進的に改革をする。
 だから保守はリベラルでなければならない。自分と異なる見解にまずは耳を傾け、理があると思ったら合意形成をしていくのが保守政治。これを一番分かっていないのが今、「保守」と言っている人たち。今後、左右の対立みたいなものを超えた地平が現れることを期待したい。

◆変えなければならない「宿命的な関係」

杉並区の岸本聡子区長

杉並区の岸本聡子区長

 岸本聡子・杉並区長 ある記事の中で書かれていたが、公園や道路、学校などの公共空間の計画について、「まだ決まっていないから詳細を発表できない」、決定後は「もう決まったことだから変えることができない」となるのが行政。行政と住民の間にはこんな宿命的な関係があるように思う。
 この関係があると、社会的合意形成に、若手や女性を含めたマイノリティーの人たちが関わるのが難しくなる。議会も住民の代表ではなく、町会や商店街などの代表のような人たちだけで占めることになってしまう。この関係性は、地方自治や公共空間をどうつくっていくかという点で、とても重要だ。

◆自治体は「ごみ回収をするぐらいの存在」?

 保坂氏 12年前に区長に初当選した後、区の幹部職員180人を集めた時、「自治体としてやらなければいけない定型的な業務は95%しっかりやってください。ただ100%になると、流れない水のようによどむので、5%は大胆に変えましょう」と申し上げた。すると、幹部職員はホッとし、私の支援者はガッカリした。区長1年目に5%変えても95%が残るが、次の年はまた5%…を12年続けると、かなり変わった。漸進的改革だ。
 能條氏 子どもを持つ前の世代は、自治体をごみ回収をするぐらいの存在と思っている人が多いのではないか。実家を出て、大学に入ったり就職したりすると、どこに住んでも一緒と感じ、自治体の存在が遠くなるのは仕方がない。
(左から)世田谷の保坂展人区長、能條桃子さん、杉並区の岸本聡子区長、政治学者の中島岳志さん

(左から)世田谷の保坂展人区長、能條桃子さん、杉並区の岸本聡子区長、政治学者の中島岳志さん

 私たちの活動は、若い女性議員を増やすことだが、同時に地方議会は意味がある存在だと私たち自身が気づいて、自分たちの代表を議会に送り込んだのなら、私たちは何を伝えたいのかを考える作業をする。こういうことを通じて、地方議会と近づくヒントを探しているという実感はある。

◆「民主主義を耕し、育てるという循環」

 中島氏 民主主義の中でも、選挙に行くだけではなくて、日常の中で、特に基礎自治体と関わり、自分の価値観と異なる他者と出会いながら熟議をして、合意形成をしていく熟議デモクラシーがコモンを作るために重要なポイントになる。
 岸本氏 選挙と選挙の間に、その自治体に住む人が民主主義を耕し、育てるという循環によって、競争や成長の先にある成熟社会の一つの姿を地方自治から見ていきたい。この思いは、会場の皆さんに共通しているだけではなく、欧州で20年間仕事をしてきた私の最大のこだわりでもある。
 参加型民主主義、熟議民主主義の仕組みや実践は数多くある。杉並区で試験的に予算の一部の使い方を住民が決める「参加型予算」もその一つ。住民が納めた税金を使うことに対し、民主性や透明性、説明責任を今以上に高め、議会外の人でも意見を言える仕組みを作りたい。杉並区でも世田谷区でも使っているミニ・パブリックスの手法がある。無作為で選んだ人たちが、対立になりがちな開発のようなテーマで熟議をして決める訓練をしたい。

園のようす。



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