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学術会議解体法案 廃案以外の道はない

2025年04月12日 | 社会・経済

学術関係者ら国会内集会

「しんぶん赤旗」2025年4月12日

田村委員長 決意表明

 石破政権が日本学術会議解体法案の審議入りを急ぐ中、学術会議と連携する学協会の会長や研究者らは11日、国会内で「法案には廃案以外の道はない」と訴え、集会を開きました。

 法案は、学術会議を国の機関から切り離して特殊法人化し、首相が任命する「監事」「評価委員会」などを新設。政府から独立した科学者の代表機関である学術会議を政府の監督下に置こうとするものです。

 広渡清吾・学術会議元会長は、形式的な会員の任命権しか持たなかった首相が法案によって「全体を監督する地位を与えられる」と危惧を表明。小玉重夫・日本教育学会会長は、学術会議が軍事研究に一貫して慎重な姿勢を示してきたことを紹介し、学問を軍事に動員させないためにも、廃案に追い込むことが大切な課題だと強調しました。

 三成美保・ジェンダー法学会理事は、会員選考の自律性を保障している現行の学術会議は、現会員が次期会員を選ぶ方式で、会員の女性比率を急速に伸ばしたと指摘。「現行法に何ら問題はない」と述べました。

 吉村忍・学術会議第3部前部長は、混沌(こんとん)とした社会の中で、多様な学問領域の科学者が真の科学的合意形成を進める学術会議の役割を強調。国会議員に対し「国家百年の計における熟議」を求めました。

 日本共産党の田村智子委員長が「法案の危険性を知らせ抜いて必ず廃案に追い込む」と表明。小池晃書記局長、塩川鉄也国対委員長があいさつし、堀川あきこ衆院議員が参加しました。立憲民主党、社民党、れいわ新選組の議員もあいさつしました。

 集会は、法案反対のオンライン署名を呼び掛けている学者や法律家らでつくる16団体が主催。廃案に向け声をあげることを呼び掛ける声明を発表しました。


「軍拡」に差し障る「学問」は邪魔。
学術予算を減らし、「金」と「組織改定」により学問を「軍拡」に利用・再編するものです。
断じて許せません!


面積の1/2以上の雪がなくなると積雪0と言います。


日米関税交渉 不当な要求に屈するな

2025年04月10日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2025年4月10日

 トランプ米政権が約60カ国・地域を対象に「相互関税」を引き上げた。24%が課せられた日本は引き下げを求め、赤沢亮正経済再生相がベセント財務長官ら米国側との閣僚協議に臨む。

 協議の出発点は米政権の理不尽な関税引き上げだ。日本政府は不当な要求に屈してはならない。

 トランプ政権は相互関税の税率算定の根拠に「非関税障壁」を挙げているが、実際には貿易赤字額を基に大ざっぱに計算されたとみられている。米側の目的は不公正な貿易ルールの是正でなく、貿易赤字額の削減にあることは明白だ。乱暴な手法には抗議する。

 米通商代表部(USTR)のグリア代表は日本に自動車や農産物の「市場開放」を求める考えを表明したが、日本の関税の平均実行税率は2023年時点で3・9%と欧州連合(EU)などより低く、当時の米国の3・3%と同程度だ。米国側が「非関税障壁」と指摘する項目も、多くは国際的な枠組みに沿ったものだ。

 1期目に中国に認めさせたように、一定額以上の米国産品の輸入を迫る可能性もあるが、理不尽な要求を受け入れてはならない。

 トランプ大統領は日本との関税交渉開始が決まるやいなや、反対していた日本製鉄によるUSスチールの買収計画について再審査を指示した。買収問題を関税交渉で日本から譲歩を引き出す材料にする可能性もあり警戒が必要だ。

 日本は関税を巡り米国と交渉する最初の国になりそうだが、米国にとっては事を荒立てない「御しやすい国」と足元を見られた可能性がある。しかし、日本が安易に譲歩すれば交渉を控えたほかの国々にはあしき前例となり、米国の理不尽な要求が際限なく続くことになりかねない。

 交渉を担う赤沢氏は石破茂首相の最側近とはいえ、外交経験に乏しい。米国相手に一対一の交渉は難しく、日本は独仏などと連携して対応に当たるべきだ

 2期目のトランプ政権で政治リスクが極めて高くなった米国への依存度を引き下げることも、中長期的には考えなければなるまい。


待ちきれない春。


トランプ関税 全世界標的の横暴

2025年04月08日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年4月8日

 全世界を標的にした横暴極まりないトランプ米政権の関税措置に動揺と怒りが広がっています。国際ルールに違反する一方的な関税の発動が相手国の報復関税を呼び、世界経済の後退を招くとの懸念から、世界同時株安が進行。トランプ氏は強硬姿勢を崩さず、先行き不透明感が増しています。(杉本恒如)

「パニック売り」株急落

 最初に激しく株価が下がったのは米国市場でした。

 4日の米ダウ工業株30種平均終値は前日比2231・07ドル(5・5%)安の3万8314・86ドルとなり、史上3番目に大きな下げ幅を記録しました。中国がトランプ関税への報復措置を発表したことを受け、「貿易戦争」激化の恐れから売りが売りを呼びました。

 しかしニューヨーク・タイムズ紙(6日付)によると、トランプ氏は「(対中貿易赤字の)問題が解決されない限り、私は取引しない」と話し、計54%もの対中関税を長期にわたって続ける考えを示しました。

 このため、7日の東京市場では「パニック売り」が発生。日経平均株価が前週末比2644円下落して3万1136円58銭を付け、史上3番目の下落幅となりました。トランプ政権は、貿易相手国に応じた関税率の上乗せ措置を9日に発動するうえ、半導体や医薬品への関税も今後発表する方針を示しています。

 混乱長期化の恐れが強まっています。

 他方、5日のトランプ氏のSNSによると、「米国と合意できれば関税をゼロに引き下げたい」と表明したベトナムのトー・ラム共産党書記長に対し、トランプ氏は「近い将来の会談を楽しみにしている」と伝えました。トランプ関税の脅迫的な側面もあらわになっています。

根底に米国経済の落日

 トランプ政権の無謀な関税措置の根底にあるのは、米国経済の落日です。トランプ政権が全世界への関税措置を発表した2日、トランプ氏が署名した大統領令には、国内の製造業基盤が空洞化した現状への強烈な危機感がつづられています。

 大統領令は「米国の年間の物品貿易赤字が大きくかつ長期化しているため、製造業基盤の空洞化が進み、先進的な国内製造能力の拡大が阻害され、重要なサプライチェーン(供給網)が損なわれ、防衛産業基盤が外国の敵対国に依存するようになった」と強調。「国家非常事態」を宣言したのです。こうした米国経済の脆弱(ぜいじゃく)性は「生活必需品の入手に困難をきたした新型コロナウイルス感染症のパンデミック時」に露呈し、「他の面でも米国経済を脅かしている」と指摘しています。

 「1997年から2024年までの間に、米国は約500万の製造業の雇用を失い、史上最大の製造業雇用の減少を経験した。雇用喪失の多くは特定の地域に集中していた。これらの地域では、雇用喪失が家族形成率の低下や、麻薬性鎮痛剤乱用などの社会的傾向の増加を招き、米国経済に多大なコストを課している」

 米国は「重病」だと語るトランプ氏が起死回生の「手術」として打ち出したのが全世界関税でした。問題は、病気の原因を誤診し、手術の方法を間違えていることです。

 米国の製造業が空洞化した最大の原因は、米国の多国籍企業が他国の低賃金・低税率地域に生産拠点や資金を自由に移動させるために、米国政府が主導して「自由貿易」システムを構築したことです。製造業の空洞化や貧困の広がりは日本を含む多くの国で起きています。この病気を治すためには多国間の協調が欠かせません。

 ところがトランプ氏は「米国外に全部または大部分の原因」があると決めつけ、「他国による不公正な貿易慣行」をやり玉にあげるのです。筋違いの非難に基づくルール違反の一方的関税措置では真因を除去できず、他国との対立を長期化させて世界経済を深く傷つける恐れがあります。

「米国が最大の敗者に」

 トランプ関税は「米国が自身の首を絞める愚策だ」(3日付「日刊工業新聞」)との見方が、米国を含む各国で強まっています。

 シンガポールのビジネス・タイムズは「米国が最大の敗者に」(3日)と題した記事を掲載。トランプ関税発表後の米国の株価指数の急落がアジア株や欧州株より大きかったと指摘したうえで、「トランプ氏の政策がインフレをあおり米経済のリセッション(景気後退)の可能性を高めることを投資家は懸念している」と報じました。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(4日付)は、米国で最も売れているフォードのピックアップトラックF150に使われている部品は少なくとも24カ国から調達されているため、「(25%の)輸入関税はその平均価格を数千ドル引き上げる可能性がある」と指摘。ワシントン・ポスト紙(3月28日付)は「平均して自動車1台あたり6000ドル(約87万円)の値上がりになる」という経済学者の予想を報じました。

 「米国の威信は失墜した」(3月6日付「沖縄タイムス」)という評価も広がっています。経済学者のポール・クルーグマン氏は4月3日、「彼(トランプ氏)は完全に狂っている。ほとんどの人が予想したよりはるかに高い関税を課しているだけではない。貿易相手国について誤った主張をしている」と発信しました。ロイター通信によると、ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は3日、「これは『アメリカ・ファースト(米国第一)』ではなく、『アメリカ・アローン(米国孤立)』だ」と批判しました。

 傍若無人なトランプ関税は、米国市場に依存する経済と、米国政府に追従する政治の危険性を浮き彫りにしています。


今日一日、霧雨模様。
雪解けの中でキノコを発見。
これぞユキノシタ(エノキ)かな?
自信ないので食べません。


トランプ政権に抗議 全米1300カ所超 最大規模 “民主主義に手をつけるな”“退陣を”

2025年04月07日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年4月7日

 【ワシントン=洞口昇幸】米首都ワシントンで5日、トランプ政権に対する大規模な抗議デモが行われました。中心部に多数の市民が結集し、「(民主主義や大事な権利・制度に)手を付けるな」「トランプ(大統領)は退陣せよ」などのシュプレヒコールを繰り返しました。

 行動は、他の米主要都市でも行われ、国内外1300カ所以上で同様の抗議行動がありました。主催団体の事前の参加登録者数は約60万人で、第2次トランプ政権発足後では最大規模だといいます。

 トランプ大統領は1月20日の就任直後から大統領令を連発して、移民の大量強制送還、ジェンダー平等や多様性を否定する政策転換などを強硬に推進。実業家イーロン・マスク氏に「政府効率化省」のトップを任せ、連邦政府職員の大量解雇、教育・医療・分野や社会保障などの公共サービス削減を進め、広範な国民に不安を広げてきました。

 対外政策では重要な国際協定や国際機関からの一方的離脱、国連や国際法を無視したウクライナ問題での停戦交渉や極端なロシア寄りの姿勢が、国内外から批判や危惧の声を浴びてきました。

 首都中心部のワシントン記念塔周辺では、「米国よ目を覚ませ、ファシズムが到来している」「差別する者は愛国者ではない」「富裕層に課税を」などの横断幕やプラカードが見られました。

 中西部ミズーリ州から参加した男性(35)は耳が不自由であることを明かし、「トランプ政権が医療や社会保障の制度、公共サービスを削減しようとし、マスク氏とともに寡頭制(少数の権力者の支配)のように政策を強行するのは許せない。高関税政策も物価上昇につながらないかと心配だ」と語りました。

 友人と参加したオルガ・ルーディさん(63)は「ウクライナの解放が米国をより安全にする」とのプラカードを掲げていました。「ロシアによるウクライナへの侵略戦争を早く終結させて平和になってほしい。しかしロシアの占領を容認するような合意を目指すなら国際社会の悪例となる。これからもトランプ政権に対し声を上げていくし、声を上げる人を増やしていきたい」と述べました。


カバノアナタケです。

雪が消えると収穫は難しくなるので今のうちでしょうね。



積雪20㎝です。


トランプ関税 一方的措置 撤回求め雇用守れ

2025年04月06日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」主張 2025年4月6日

 海外からの輸入品に一方的に関税を課すトランプ米大統領のやり方が世界に衝撃と怒りを広げています。これまで米国自身が主導して世界に押しつけてきた貿易の国際ルールにも反し、他国民の犠牲をいとわない身勝手なやり方です。石破茂首相は毅然(きぜん)と撤回を求め、日本経済や暮らしへの悪影響を防ぐ万全の対策を取らなければなりません。

 トランプ政権は、すべての輸入品に一律10%の関税をかけた上で、各国が米国製品に課している関税や「非関税障壁」を言い立てて、国・地域ごとに異なる上乗せ関税をかけるとします。上乗せ関税の算定方法はでたらめで恣意(しい)的です。アジア諸国に、より重い税率を求めるものになっています。

■経済主権侵す暴挙

 日本には合計24%を適用するとします。トランプ氏は「日本が米国産のコメに700%の関税を課している」などと根拠不明な主張をしたうえに、日本の安全基準を「非関税障壁だ」と攻撃しています。各国の経済主権・食料主権を侵害する暴挙です。

 自動車については、すべての輸入自動車に、従来の税率(日本の場合、乗用車は2・5%、トラックは最大25%)に25%を上乗せする追加関税が3日に発動されました。

 日本共産党の田村智子委員長は、第1次トランプ政権下の2019年の日米貿易協定の概要文書は「追加関税は課さない」としており、今回の措置は協定違反だと指摘、違反を米国に明確に伝えるよう政府に迫りました。(3月14日、衆院財務金融委員会)

 石破首相は、日本は米国に多額の投資をしているなどとして個別の適用除外を求めてきましたが、成功しませんでした。米国の顔色をうかがうのでなく、世界経済全体に多大な悪影響をもたらす「トランプ関税」に毅然と抗議し、撤回を求めるべきです。

 日本国民の暮らし、雇用、営業を守り、地域経済や下請け企業への影響を食い止める対策が急務です。田村氏は4日の与野党党首会談で、「08年のリーマン・ショック時の非正規労働者の大量解雇のような国民への犠牲転嫁があってはならない」と石破首相に強く求めました。

 米国産農産物の関税引き下げや安全基準の規制緩和で米国に譲歩し、日本の産業や国民の安全をないがしろにすることは許されません。

■新たなルール必要

 米国は、多国籍企業が低賃金・低税率地域へ工場や資金を移し利益を上げるために「自由貿易」体制をすすめてきました。それが米国内の産業の空洞化と雇用の破壊、中間層の没落という形で米国自身を直撃しました。新自由主義的な貿易システムは多国籍企業に莫大(ばくだい)な利益をもたらす一方で、各国の国民に貧困と格差をもたらしました。

 極端な保護主義に走る今回の「トランプ関税」は、米国主導の「自由貿易」ルールの行き詰まりを示しています。

 米国の身勝手なやり方は各国の批判と反発を招き、米国の道義的な力、外交的威信は地に落ちています。

 各国の経済主権・食料主権を尊重する新たな貿易ルールの構築が求められています。


今こそアメリカからの「隷属」関係の見直しを図るべきです。
さよならアメリカ、さよならトランプ!

今日の最高気温-1度。
明日から+になります。
ながかった冬日もようやくおわりました。
そして初めて10℃に。
春は急ぎ足です。

クモノスバンダイソウ


クロッカス


ヤブカンゾウ(トラフ工事の後に出て)

ためになる「読者の広場」。
ナンバーディスプレイ70歳以上無料に。


雨宮処凛 生きづらい女子たちへ 「加害」と「被害」をめぐるあれこれ 〜「受動的攻撃」を描いたある漫画

2025年04月04日 | 社会・経済

Imidas連載コラム 2025/04/01

 少し前、たまに行くスーパーで店員に怒鳴り散らしている男性をよく見かけた。

 レジに並んでいる時は大人しいのに、自分の番が来て店員さんが商品をピッとし始めると舌打ちするなど苛立ちを隠さず、足を踏み鳴らすなどして「遅い」とアピール。店員さんが動揺して失敗(商品を落としたり)すると、「カーン!」とゴングが鳴ったかのように攻撃が始まる。

「使えねぇ!」

「こんなに仕事トロいなんて信じらんねぇ!」

「俺が上司だったら今すぐクビだクビ!」

 スーパー中に響き渡るような怒号。

 最初に見た時は震え上がるほどに恐ろしく、その場から逃げ出したくなった。

 しかし、何度も見ているうちに「またか」と思うようになってきた。そのうち、その人はわざわざ「キレるため」にこのスーパーに来ているような気がしてきた。やられる方はたまったものではないが、罵倒も「一連の儀式」のようで、周りの空気も「またやってる」という呆れた感じになってきた。

 印象に残っているのは、その男性は他の客には決して迷惑をかけなかったこと。時には「客を代表してみんなのために言ってやってるんだ」という使命感すら垣間見えた。また、男性がキレるのは女性店員に対してだけで、男性店員がいるレジには決して並ばなかったことも覚えている。

 そうしてある時期から、そのスーパーで男性の姿を見かけることはなくなった。

 もしかしたら、出禁になったのかも。

 そう思うと、ほっとした。「カスタマーハラスメント」(客からの暴言や不当な要求などの迷惑行為)という言葉が注目され、あらゆる店舗やバス・タクシー車内にも注意書きがなされる時代である。あんなやり方、令和に容認されるはずないのだ。

 もう怒鳴り声を聞かなくてもいい上、店員さんのメンタルを心配しなくてもいい……。

 解放された気分になりつつ、ふと「あの男性は、どこで買い物するのだろう?」という思いが頭に浮かんだ。

 そうして、カスハラは自分で自分の首を絞める行為なのだと改めて気がついた。やめたくてもやめられないのであれば、依存症と近いところがあるのだろう。思えば怒鳴っている男性は、何かに取り憑かれたかのような、そして独特の脳汁が出ている人特有の恍惚の表情すら浮かべていた。

 もうひとつ、思ったことがある。

 それは、あのスラスラと繰り出される暴言は、男性が普段言われている言葉なのかもしれないということだ。使えない、遅い、クビだというお決まりの、だけど人を「無能」と断じ深く傷つけるフレーズ。

 もしかしたら、スーパーでカスハラ加害をしていたあの人は、職場では被害者なのかもしれない。その屈辱が、歪んだ形で爆発していたのかもしれない。それで自尊心のようなものを取り戻そうとしていたのかもしれない。

 だけどやっぱり、やっちゃいけないことだ。

 カスハラはもちろん、パワハラなどの言葉が定着することによって、以前と比べれば表向きの暴力は随分減った令和7年。

 私は昭和生まれの50歳だが、思えば私たちの世代くらいまでは幼少期から暴力にまみれて育ってきたと言える。

 多くの家庭では「しつけ」と称した体罰が当たり前。それだけでなく、見ず知らずの大人から「うるさい!」と怒鳴られる(場合によっては叩かれる)なんて光景も普通にあった。

 小学校に上がると教師からの体罰は日常的なものとなり、中学に入るとさらにエスカレート。ヤンキーがギリギリ元気だった時代ゆえ、とにかく「ヤンキーの芽は早くつめ」とばかりにほんの少しの校則違反でも教師は生徒をボコボコにした。暴力が蔓延する場所ではそれに対するハードルは下がる。結果、生徒間では「殺し合い?」と思うほどの殴り合いが日常化していた。多い時では週に一度は男子生徒の誰かが血まみれになっているのを目撃する日々。今思うとありえないが、それが昭和生まれの日常だった。

 学校の外に目をやれば、ヤクザ映画やヤンキー映画が大流行。「男らしさ」「モテ」と暴力はもはやセットで、DVは「痴話喧嘩」と誰も相手にしなかった時代だ。セクハラという概念も、子供に性的なものを見せることは問題という意識もなかったことからテレビでは性的なシーンが堂々と流され、子どもたちが当たり前にそれを目にするという環境にあった。そうして今であれば「性暴力」と呼ばれることも、「いたずら」と言われスルーされていた。

 しかし、野放しにされていた暴力は、私たちのどこかに今も傷を残している。

 例えば体罰や暴言は、子どもの脳に悪影響を及ぼすことは広く知られるようになった。特に体罰は前頭前野の萎縮につながるという。

 そんなことが知られるようになり、以前より厳しい目が向けられるようになった暴力。

 また、ハラスメントの概念が広まったり、「心理的安全性」という言葉が注目されるようになったことで人の「傷つき」に敏感になる人は昔よりずっと増えた。

 一方、職場での会話をICレコーダーで録音することなども「自衛」として普通のこととなり、またスマホとSNSの普及によって暴力は記録され可視化されるものになった。どうせ誰も見ていないだろうと思って好き勝手していたら、それが撮影されて拡散され、人生が終了するリスクを誰もが負うようになったのだ。

 よって表向きには「安全」になったように見える令和。

 が、果たしてそうだろうか? 暴力や攻撃は地下に潜り、より見えづらい、わかりづらい形となって私たちをじわじわと追い詰めているのではないだろうか?

 最近、そんなふうに思い至る漫画と出会った。

 それは『被害者姫 彼女は受動的攻撃をしている』(竹書房、2025年)。

 著者の水谷緑さんの漫画はこれまでも何冊か読んだことがある。特にヤングケアラーの実態を綿密な取材に基づいて描いた『私だけ年を取っているみたいだ。』(文藝春秋、2022年)は大きな話題となったので知っている人も多いだろう。

 そんな水谷さんが今作品で取り組んだのは、サブタイトルにもある「受動的攻撃」。

 帯には、以下のような言葉がある。

〈「自分の意見を主張せず、争いごとが嫌いでニコニコしている」そんな“いい人”のアヤ。しかし彼女は無言で相手の罪悪感を刺激する。攻撃的な言葉を発さずに、相手を追い詰めていく。ーーそんな人、あなたのまわりにもいませんか?〉

 主人公は夫と小学生の娘と暮らす会社員のアヤ。

 いつもニコニコしていて人によって態度を変えず、上司には決して口答えしない。それだけでなく、意見も言わず、選択もしない。

 しかし、彼女の周りにいる人は、モヤモヤした気分を植え付けられる。

 例えば一緒にランチに行く際も彼女は〈なんでも大丈夫です!〉と言う。しかし、店に入ると明らかに浮かない顔。相手は〈もしかしてイタリアンいやだったのかな…〉と不安になる。〈大丈夫だった?〉と聞くと笑顔で〈え? おいしかったです〜〉。

 そんなシーンのあとはこう続く。

〈怒りを直接的に表現せず 無言・無視 ため息・わざと返事を遅らせるなどして 遠回しに相手の罪悪感を刺激する〉

〈これを「受動的攻撃」という〉

〈そもそも“攻撃”には「能動的攻撃」と「受動的攻撃」がある 「能動的攻撃」は暴力・暴言などのわかりやすい攻撃 「受動的攻撃」は一見“攻撃”とわかりにくい 本人もおそらく“攻撃”だとは思っていない〉

 少し前、「フキハラ」という言葉が注目された。「不機嫌ハラスメント」の略で、わざと不機嫌を隠さず、大きなため息をついたり大きな音を立ててドアを閉めたり舌打ちしたりという態度だ。周りにいる人を、「何か私が悪いことしたかな?」と不安にさせるコミュニケーション。

 しかし、「受動的攻撃」は、それよりさらに巧妙でわかりづらい。アヤも不機嫌な態度などは決して見せず、口癖は〈私が悪いんです〉。

 読み始めてすぐ、心当たりがありすぎることにざわざわしてきた。

 ため息や不自然な沈黙、そしてこちらからの連絡に対する返信の遅さや無視など、自分がこれまでされたことに名前をつけると「これ」だったのでは? ということが次々と浮かんだからだ。

 いや、自分が「された」側だから覚えているわけで、私も無意識にこのような攻撃をしていないなんて言えない。というか、してない自信がそもそもない。

 漫画ではアヤの日常が描かれていくのだが、〈彼女は体調不良で怒りを表現する〉という言葉には「うわ」と声が出た。それだけではない。

〈彼女は被害者ポジションに自分を置き 相手を加害者に仕立て上げる〉〈そのためならどんな我慢も厭わない〉

 実際、アヤは職場で攻撃対象とした上司の仕事を肩代わりすることでキャパオーバーとなり、過労で倒れるほどに我慢を厭わない。

 倒れれば、周囲は「アヤさんにそこまで仕事を押し付ける○○が悪い」「アヤさんは本当にいい子」「断れなくてかわいそう」という評価になる。上司はと言えば「ひどい人間」「悪者」になる。

 そんな受動的攻撃をする人について、漫画に登場する医師は、〈子どもの頃 親に合わせてきた人が多い〉こと、〈「怒り」を持てない環境にいた〉ことにより〈大人になってもストレートに主張でき〉ず〈遠回しなやり方で攻撃してコントロールしようとする〉のだと解説する。

 思えば多くの人は、人をコントロールする手段など持っていない。それは力のある者の特権でもあるからだ。

 が、唯一、「被害者ポジション」になればそれは手に入る。

 医師はそんな受動的攻撃について、「一概に悪いものではない」とも付け加える。「親に勉強を強いられた子どもが成績を落としたり不登校になったりは子どもが唯一できる攻撃で、程度の差はあれ誰もがしたことはあるのでは」、と指摘する。

 また、「被害者ポジション」は必要な時期もある。なんらかの被害を受けた人が自分の身に起きたことを「被害」と認識し、自らを被害者と捉えることが回復には不可欠というのは広く知られていることだろう。よって、被害者になることは必要な過程であるということも忘れたくない。

 一方、アヤはターゲットとした上司を「加害者」に仕立て上げ、相手を追い詰めていく。

〈あの人は「加害者」 加害者は罰せられ 被害者の私は守られる それが正解 いい気味〉

 そう思い、満足げに笑うアヤ。

 そんな彼女がどうなっていくかはぜひ漫画を読んでほしいのだが、「受動的攻撃」という概念はアメリカで生まれたものだという。「Passive aggressive」といわれ、嫌われるコミュニケーションだそうだ。

 漫画では会社や家庭での問題として書かれているが、今やネットでも猛威を振るっている「受動的攻撃」。

 SNSを開けば、今日も誰かが誰かに「傷つきました」と書き込み、名指された方は「加害者」と認定されて時に集団リンチの対象となる。そうして「加害者なのだから罰せられて当然」とばかりにエスカレートしていく攻撃。

 これは何も日本に限った話ではない。ジェンダーや人種、肌の色などの属性を巡り、世界中で今日も多くの人が「傷つきました」とSNSに書き込んで議論が終了したり、加害と名指された側が集団リンチの対象になったりしている。これを読んでいるあなたが「加害者認定」されない保証なんてどこにもない。

 ちなみにこのような状況について分析された『「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード』(カロリーヌ・フレスト著/堀茂樹訳、中央公論新社、2023年)は一読の価値がある。フランス人ジャーナリストによって書かれたものだが、確実に身に覚えがある今日的なモヤモヤの正体が鮮やかに示されているからだ。

 ということで、暴力が封じられた世界で新たに出てきた、見えづらい攻撃。

 今一度、加害と被害、そして自分や周りの人々を見直すために「受動的攻撃」という言葉を覚えておいて損はないだろう。

 


新年度予算成立 石破政権“延命戦略”の破綻

2025年04月01日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」主張 2025年4月1日

 衆院で与党過半数割れに追い込まれた石破茂政権は部分的修正と引き換えに一部野党を取り込んで辛うじて予算を成立させました。衆院での修正に続き、参院で再び高額療養費制度の負担増を先送りする修正がされました。参院で修正された予算が衆院に差し戻された上で成立するのは現憲法下で初めてです。

 予算は成立させても、小手先の取り繕いで国民の反発をかわして自民党政治を続ける“延命戦略”では、多くの矛盾や軋轢(あつれき)が避けられません。石破政権の“延命戦略”は破綻しています。

■命をもないがしろ

 新年度予算に求められることは、自民党政治の下での経済の停滞と衰退、物価高騰による暮らしの困難の打開です。しかし、社会保障関係費、文教費、中小企業対策費など、暮らしの予算はどれも物価上昇に追いつかない実質マイナスです。

 一方、軍事費は前年度比9・4%増の8・7兆円と突出しています。さらに法人税率の引き下げや大企業への優遇税制による減税額は11・1兆円まで膨れ上がるなど大企業へは大盤振る舞いです。

 暮らし優先の予算にするためには、「日米軍事同盟絶対」「財界・大企業中心」の二つのゆがみにメスを入れることが必要です。

 ところが、石破政権は「103万円の壁」「高校授業料無償化」など、ごく一部の課題で国民民主党や日本維新の会と個別に密室協議を重ね、抱き込むことで予算の成立をはかろうとしてきました。

 維新の賛成をとりつけ、予算を衆院通過させたものの、密室での修正では国民の支持はえられません。予算に盛り込まれていた高額療養費の負担上限の引き上げが国民の大きな怒りをよび、参院で負担増「凍結」という予算の再修正をせざるをえなくなりました。命にかかわる制度改悪で治療断念を迫られるという患者の悲痛な声と改悪中止を求める運動が政治を動かしました。

 国民生活をないがしろにする自民党政治への怒りは、石破首相の商品券配布問題でさらに広がっています。

 石破首相は予算の衆院通過後、首相公邸に自民党の1期生議員を集めて会食を行い、“お土産”として1人10万円の商品券を配っていました。商品券配布は自民党政権の慣例で、原資は官房機密費だった疑いが濃厚です。物価高に苦しむ国民生活とかけ離れた自民党の金権体質に強い批判があがっています。

■政治前に進める力

 石破内閣の支持率は急落しています。石破首相はあわてて、予算成立後に「強力な物価高対策」を打ち出す考えを示しました。

 しかし、国会で審議中の予算にまともな対策がないと自ら告白したとの批判をあびるなど迷走を重ねています。大軍拡と大企業へのばらまきを見直さなければ、暮らし優先の政治は実現できません。

 政治を前に進める力は、密室協議ではなく、国民の要求と運動にこそあります。国民の声を突きつけ、議論を起こすことこそが、石破政権を追い詰め、政策を変えさせる“真の力”となります。


今朝も真っ白です。
それでも陽射しに恵まれました。
畑の積雪は約45㎝。
本当に4月中に桜が咲くのか?
普段ならGW明けですから。


沼の脇の早く雪がなくなったところからスイセンが出てきました。


法人税減税 首相「深い反省」 小池氏の追及に“効果上がらず”

2025年03月31日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年3月29日

 日本共産党の小池晃書記局長は27日の参院財政金融委員会で、「物価高対策というなら消費税減税だ」と石破茂首相に迫りました。

 「消費税は社会保障の財源として極めて重要だ」とした石破首相に小池氏は、消費税導入以来の消費税の累計が539兆円であるのに対し、法人税減税と所得税、住民税の減税の累計も613兆円にのぼるとして、「結局、所得税や法人税が支えていた社会保障財源が消費税に移っただけだ」と反論しました。

 そのうえで、「法人税減税は、賃上げや設備投資、下請け支援にも回っていない」として、その効果がないことを政府税調も認めていると強調しました。

 石破首相は、「法人税を下げたことが思ったような効果を上げなかったという深い反省の上に、法人税改革に取り組んでいきたい」と述べました。

 小池氏は6日の参院予算委員会でも法人税減税の問題について追及していましたが、石破氏が「深い反省」を口にすることはありませんでした。


これからも諸物価の値上がりが予定されています。
その分、また消費税が多く取られる仕組みです。
富むものが貧しいものにその富を再分配するのが「税」でしょう。
「消費税反対・消費税減税」を旗頭に「政権交代」を!
「防衛費」によって国民の生活を破壊するな!

朝起きたら7㎝ほどの雪が積もっていました。
今日も雪です。
最低氣温(ー)がまだ続きます。


小沢一郎がブチ上げる石破内閣「総辞職」論 みたび、政権交代の大政局をつくれるか?

2025年03月30日 | 社会・経済

日刊ゲンダイデジタル 2025/03/30

「不信任案が出れば石破は総辞職するだろう」

 このところの石破内閣の支持率急落を受けて、立憲民主党の小沢一郎(元民主党代表)が、記者団を前にこんな見立てを披露したそうだ。

 かつて細川護熙(日本新党)、さらに鳩山由紀夫(民主党)を神輿に担ぎ、自民党を下野に追い込んだ小沢の言葉には、常人には測りがたい確信めいた響きがある。

 確かにこのところの石破内閣の支持率急落は、野党にとって自公政権を追い込む絶好のチャンスだが、不信任案の提出に向けた野党第1党、立憲民主党の動きは鈍い。その足かせになっているのが、早々、内閣不信任案の提出に待ったをかけた立憲民主党の野田佳彦代表にあることは衆目の一致するところだ。

「不信任を出したところですぐに連立って話があるかどうか。不信任っていうのは、伝家の宝刀だと思っているので、うかつに言わないようにしているんですよ」

 野田は25日のテレビ番組でこう言って、内閣不信任案の提出にためらいを見せている。小沢の見立てどおりに総辞職するかどうか、つまるところ野田に出す気がなければ何事も始まらない。だからか、同じ日、国会内で記者団に囲まれた小沢は「不思議だ。万年野党が好きなのか。石破退陣なら首相指名は野田代表にこだわらず野党候補一本化を目指すべき。野党政権をつくることができるならだれを担いでもいい」と、野田へのイライラを募らせている。

■石破よりも立憲・野田の交代が先?

 そもそも野田と小沢は犬猿の仲だ。旧民主党政権下の2012年、小沢は野田内閣の消費税率10%引き上げに反対して離党した。その小沢をはじめ多くの所属議員や支持者が昨年秋、立憲民主党代表選で野田支持に回ったのは政権交代を期待してのことだ。

 自公連立与党が過半数割れした先の衆院選後の首相指名選挙の際には、みすみす石破政権誕生を許した野田に対して小沢は「84票の無効票が野田氏に入れば内閣を取れた。よく考えるべきだ」と苦言を呈してもいた。

「野田には野党第1党の代表として、野党をひとつにまとめて自公政権と対決する姿勢が見えない。立憲の支持率が上がらないことへの危機感も乏しい。小沢さんじゃなくても、見ていてイライラしますよ」とは、同党所属議員の声。

 もっとも、野田が内閣不信任案の提出に舵を切ったとしても、これを迎え撃つ石破首相は小沢の意に反し、総辞職なんか考えていないかもしれない。

 官邸スタッフは「自民党や内閣の支持率が急落しても、石破は辞める必要がないと国民世論は言ってますし、本人もやる気満々。不信任案を出されたら解散に打って出るつもりです。解散の2文字をチラつかせれば、自民党内の石破降ろしを牽制できますし、立憲も本音では今の支持率では解散されたら困りますからね」とうそぶく。

 要は、立憲など野党がどこまで本気で政権を取る気があるのかが問われている。あるのなら、仮に解散されても怖くはないはず。

 ビビる野田に代わる“野党統一の首相候補”を小沢が早急に用意できるかどうか。それが次の焦点だろう。

(特命記者X)


そうなのですよ。
まずは野田降ろし、これがなければ何の進展もない。
こんなにも国民生活が苦しい時に・・・

今日も雪でした。
強い風が吹き、一時は吹雪状態。

昨日、白樺樹液の採取始めました。

室内では君主蘭の蕾が。


トランプ高関税 連帯で危機乗り越えよ

2025年03月26日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2025年3月25日

 トランプ米政権が鉄鋼・アルミニウム製品の輸入にすべて25%の税率を課し、日本も対象国に含まれた。異常な高関税が自動車など日本の基幹産業に広がれば、経済への打撃は計り知れない。

 危機を乗り越えるために、日本は欧州連合(EU)諸国などと連帯して、理不尽な要求に対抗しなければならない。

 鉄鋼の場合、米国市場における日本からの輸入は全体の4%程度と小規模で、高関税が直ちに景気の足かせになるとは言い難い。

 ただ、トランプ政権は関税の対象を、対米輸出額が年6兆円規模に達する日本の自動車産業に拡大する構えを見せている。取引企業を含めて裾野が広がる自動車にも高関税が課されれば、その痛手が雇用に及ぶ恐れさえある。

 トランプ政権は貿易交渉で一国が相手の相対取引を優先する。大国である米国が圧倒的優位に立てるためだ。相手に無理難題を押しつけて、交渉の主導権を握る戦略でもある。

 日本にも「鉄鋼を不当に安く売りつけ米国の雇用を奪った」(ラトニック商務長官)などと、的外れな批判で威嚇している。

 政府は、事実に基づかない発言には毅然(きぜん)と反論せねばならない。SNSを含む米メディアにも積極的に情報発信し、高関税が物価の高騰につながり、そのツケは米国民自身が払うことになる、という動かしがたい事実を、米世論に粘り強く訴えるべきである。

 トランプ政権下の対米交渉でカギを握るのは自由貿易という価値観を共有する国々との連帯だ。

 日本とEUは経済連携協定(EPA)を結ぶ。英国は日本が主導する環太平洋連携協定(TPP)の参加国で、G7(先進7カ国)のカナダ、G20のオーストラリアも立場を共有する。

 これらの国との多国間交渉を、トランプ政権への対抗、けん制の場として活用すべきだ。

 中国やインドとの対話を続けることも忘れてはならない。

 日銀の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の記者会見で、米国を「不確定なところが非常に大きい」と不安視した。

 利上げを模索する中で政策金利を据え置いたのも、トランプ政権の動向を見極めようと判断したのだろうが、物価高騰を放置せず、あくまで家計を優先した金融政策を貫くよう求めたい。

⁂     ⁂     ⁂        

 サンダース米上院議員 遊説大盛況

トランプ政治に対決

「しんぶん赤旗」2025年3月25日

 米民主党から大統領選挙に2回挑戦した進歩派のサンダース上院議員が全米各地でトランプ政権への対抗を呼び掛ける集会を開き、場所によっては数万人が集まる大盛況となっています。背景には、民主党主流派がトランプ政権に妥協する動きを見せる一方で、サンダース氏が「1%の富裕層・大企業のための寡頭政治は許さない」と対決姿勢を鮮明に打ち出していることがあります。(島田峰隆)

「米国民は寡頭政治許さない」

 サンダース氏は20~22日にかけて、西部のネバダ、アリゾナ、コロラドの3州で五つの集会を開きました。民主党進歩派のオカシオコルテス下院議員も同行し演説しました。

 現地からの報道によると、コロラド州デンバーの集会には3万4000人が参加。サンダース氏によると、トランプ氏がこれまでデンバーで開いたどの集会よりも参加者数は多くなりました。

 アリゾナ州トゥーソンでは、2万3000人以上が集まりました。ネバダ州でも過去最大規模の集会が開かれました。

 デンバーでの集会でサンダース氏は、実業家イーロン・マスク氏が進める政府職員の解雇や支出削減を批判。「1%の富裕層に減税するために、世界で最も裕福な人間が政治を牛耳り、社会保障を削減し、メディケイド(低所得者向け医療扶助)をなくし、教育省を事実上解体しようとしている。そんなことは許さない」「米国民は寡頭政治を受け入れないとはっきりと声を上げている」と訴えました。

従来の支持超え

 サンダース氏は、トランプ政権の発足を受けて、2月から「寡頭政治と闘うツアー」と銘打った遊説を始めています。「億万長者や大企業による政府の乗っ取りと独裁政治への動き」に注意を喚起し、国民的な闘いを呼び掛けることが目的です。

 労働組合幹部なども招き、▽大企業・富裕層の公正な税負担▽人権としての医療▽大企業や富裕層による政治の買収ストップ―などを訴えています。

 米メディアによると、集会にはサンダース氏の従来の支持層の枠を超えた市民が多く参加しています。同氏が民主党予備選で大善戦した2016年の大統領選の時以上に人が集まる集会もあるといいます。

深く根付く抵抗

 サンダース氏は「民主党の多くがトランプ政権との闘いを避けている」と繰り返し批判しています。

 民主党のシューマー上院院内総務ら一部の上院議員は3月上旬、政府閉鎖を回避するとして共和党が出した予算の可決を容認しました。同予算は、トランプ政権が進める政府機関の閉鎖なども一定の範囲で可能にする内容です。シューマー氏らの行為には、民主党内でも「裏切りだ」と批判が広がりました。

 労働関係が専門の米ラトガース大学のエリック・ブラン准教授はSNSで、民主党の指導部の間にトランプ政権に屈する動きがあると指摘。一方でそのこと自身が労働組合やサンダース氏らの抵抗を強めていると強調しました。

 ブラン氏は「今日の反トランプ運動は、労働組合運動や、富裕層に対する抵抗に根付いている。それは労働者の間に今後さらに深く根付き、そうすることでトランプ主義を最終的には克服する可能性を秘めている」と指摘しています。


そうです、我々は99%なのです。
「連帯」でトランプを包囲しましょう。


特報 シリーズ介護保険25年 介護事業者の倒産・休廃業 過去最多

2025年03月22日 | 社会・経済

東京商工リサーチ情報本部情報部課長 後藤賢治さん

「しんぶん赤旗」2025年3月22日

サービス“空白”で社会に損失 真面目な事業者ほど赤字に

 2024年は介護保険制度が始まって以来、もっとも多くの介護事業者が消滅した1年間でした。倒産・休廃業が過去最多を大幅に更新したのです。実態を継続的に調査している民間調査会社・東京商工リサーチ情報本部情報部の後藤賢治課長に、事業者が直面する危機について聞きました。(本田祐典)

 ―倒産や休廃業の動向を教えてください。

 24年の介護事業者倒産は172社と過去最多でした。前年比で約4割増という、予想を上回る急増ぶりです。これまで過去最多だった22年の143件と比べても大きく増加しています。

 24年の休廃業・解散も612社と過去最多で、前年比約2割増でした。たった1年間で、倒産と休廃業・解散の合計784社が市場から消えました。

 ―倒産や休廃業に追い込まれた事業者の特徴を教えてください。

 倒産件数を大きく押し上げたのは、小規模・零細事業者です。従業員10人未満の事業者が倒産の8割超を占め、資本金1千万円未満も8割超となっています。

 休廃業・解散もやはり小規模な事業者が多い。先行きの見通しが立たず、今後も赤字が拡大する懸念から、倒産する前に事業をやめることを選ぶ事業者が増えています。

 サービス別にみると、訪問介護をおもに行ってきた事業者の苦境がきわだっています。24年の倒産172社のうち半数近い81社が訪問介護でした。休廃業では612社のうち7割超の448社を占めています。

 訪問介護の次に多いのは、デイサービスなど通所・短期入所です。倒産56社、休廃業・解散70社でした。

 ―訪問介護が特に厳しくなっている要因は?

 訪問介護はコロナ禍の前から、そうとう効率よくサービス提供しないと赤字を避けられなくなっていました。賃金を増やせず慢性的なヘルパー不足で、高齢化も深刻です。ガソリン代高騰、物価高などでコストも増えてきました。

 コロナ禍では、感染防止で訪問が抑制され、さらに経営が悪化しました。実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」などの資金繰り支援で一時的に倒産を抑制してきたものの、借入金が増加しています。

 これらに加えて、24年4月に訪問介護の基本報酬が2~3%のマイナス改定(報酬引き下げ)となり、倒産・休廃業を増やす要因となっています。

 ―今年は経営環境の改善を見込めますか。

 中小事業者を中心に倒産・休廃業が高水準で続くとみています。物価高などのコスト増がボディーブローのように響き、事業者が赤字を積み上げていくでしょう。コロナ関連の資金繰り支援も今年夏ごろから順次、返済が始まります。

 報酬を引き下げられた訪問介護は、次の改定(27年4月)前に報酬を見直すなど緊急の経営支援策を講じる必要があります。また、行政も支援するなどして、事業者間でヘルパーを相互に応援・派遣できる体制を整えることや、介護用品・資材の共同購入といったコスト削減の仕組みづくりも有効だと思います。

 ―倒産・休廃業の増加による影響は?

 もっとも懸念するのは、介護サービス“空白地域”の拡大です。高齢者が地域での生活を維持できなくなり、都市部への転居や施設入居を余儀なくされます。地域社会の衰退、介護離職の増加など結果的に社会全体の損失につながります。

 介護する家族の多くは40代、50代の中堅社員で、介護離職は企業にとっても大損失です。介護休業制度も十分活用されておらず、離職を防ぐ対策が急務です。

 ―訪問介護のなかでも掃除や洗濯、調理などの「生活援助」は特に報酬が低く、業界大手などは提供を避けています。

 生活援助をおもに引き受けてきたのは、地域貢献や利用者からの評判を重視する中小事業者です。中小事業者が地域から消えると、生活援助を受けられない状況が起こりえます。

 これまで生活援助を提供していた事業者からも、経営を守るためにもう提供できないという話を聞きます。しかし、生活援助は自立支援や重度化予防という重要な役割があります。

 ある事業者は「生活援助をやめてしばらくしたら、利用者の状態が悪化し、より報酬が高い身体介護の依頼が来た。そのおかげで訪問を再開できたが、本来は悪化を防げたはずだ」と話しました。

 真面目な事業者ほど損をする制度になっていないでしょうか。利用者にとって本当に必要なサービスを提供すると採算が合わない。かといって、効率的なサービスに特化するのも理念に反するという悲しい思いを聞いています。

 ―倒産が増加する一方で、介護保険給付の対象とならない「自費サービス」の市場が拡大しています。

 介護保険でカバーできない、より質の高い、きめ細やかなサービスを求める高齢者層のニーズがあります。自費サービスは今後ますます拡大するでしょう。

 一方で、いまの介護サービスを保険給付から外して自費サービスにすれば、経済的格差が介護の格差となる可能性も懸念されます。

 ある経営者は「高齢者が増えていくのに介護事業者が減っている。今後5年、10年で訪問介護は自費の高級サービスになるだろう。お金持ちしか介護を受けられない時代が来るかもしれない」と語っています。

 このままでは、現実味を帯びてくる言葉です。ここまでは介護保険で行うという基本軸のサービスについては、社会全体で提供体制を守る必要があります。

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介護保険で国家的詐欺

シンポ開催 制度改悪を止めよう

「しんぶん赤旗」2025年3月17日

 介護保険創設25年を前に「このままで介護保険制度は持続可能なのか? 介護保険制度のいま・これから」と題したシンポジウム(主催・守ろう!介護保険制度・市民の会)が16日、東京都北区で開かれ、介護家族、事業者、ホームヘルパー、社会学者らが討論しました。

 東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは、介護保険は「ケアの社会化」の第一歩と指摘。ところが政府は▼給付を要介護3以上に限定、軽度者の訪問介護などを自治体に丸投げ▼利用料の原則2割負担▼ケアプラン有料化―を狙っており、実施されれば「老後の沙汰も金次第で、家族もお金もなければ在宅という名の『放置』」になると警鐘を鳴らしました。

 「ケアを社会の下支えでなく社会の柱に」と訴えたのはホームヘルパーの藤原るかさん。ヘルパーの7割を占める非正規「登録ヘルパー」は、月収が月により数万円減少することもある劣悪な働き方を強いられていると語りました。

 認知症の人と家族の会・前代表理事の鈴木森夫さんは、介護保険成立時には介護の社会化と期待したが、特養ホームへの入居が要介護3以上に制限されるなど給付抑制と負担増が進んだと指摘。介護家族はますます不安な状況に陥っていると告発しました。

 全日本民医連事務局次長の林泰則さんは、25年間の経過を振り返り「『制度の持続可能性』の名で改悪が進められ負担増と給付削減、介護報酬は低く据え置かれ、保険料は上昇している」と述べ、介護保険の「国家的詐欺」といえる状況を批判しました。そのうえで上野さんが指摘した「3大改悪」阻止へ、参院選挙の争点にしていこうと語りました。

 コーディネーターはNPO法人暮らしネット・えん代表理事の小島美里さんが務めました。


高い介護保険料、年金から天引きされています。
年金が数千円上がるかと期待したときも介護保険料のそれを上回る金額に「絶望感」を抱いた時もありました。
そんな、苦労して納めても、いざ使おうとしても「施設」がなくなっている、あるいはなかなか使えないといった事態が起きています。
これ、まさに「国家的先詐欺」でしょう。


富裕層への資産課税を 参院委で小池氏 経団連も提言

2025年03月17日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年3月16日

 日本共産党の小池晃書記局長は13日、参院財政金融委員会で、昨年12月に経団連が政策提言で富裕層への課税強化を打ち出したことを示し、世界でも採用されている富裕層への資産課税を日本でも検討するよう求めました。

 小池氏は、経団連の提言「フューチャー・デザイン2040」を引いて、「日本の可処分所得の格差を示すジニ係数はイタリアや韓国よりも高い」と指摘し、「日本が国際的にみて格差が大きいという認識はあるか」と追及。加藤勝信財務相は「格差拡大への指摘は認識している」と答えました。

 小池氏は「税によるジニ係数の改善率はG7(主要7カ国)で最も低い。所得税の累進構造を弱めて消費税を10%に増税したことで所得再分配効果が弱まったことは事実だ。税と社会保障による改善率もG7平均を下回っている」と強調しました。

 小池氏は、経団連が経済的格差の広がりの事実認識に基づき、富裕税への課税強化を提案したと指摘。「『消費増税への理解を得るため』という位置づけには合意しないが、重要な提案だ。わが党も富裕層への資産課税として富裕税を提案している」と述べ、「今後の方向性として検討すべきだ」と要求。加藤財務相は「格差是正の重要性は否定しないが、再分配機能をどの程度発揮させるか検討が必要」と述べるにとどまりました。

⁂     ⁂     ⁂

NY市民「富裕層に課税せよ」

支出削減に抗議

「しんぶん赤旗」2025年3月17日

 米ニューヨークで15日、トランプ政権が政府機関の職員の解雇や支出の削減を強権的に進めていることに抗議して、市民がデモ行進しました。写真(ロイター)は、「富裕層に課税せよ」「われわれの健康を守れ」と書いたプラカードを掲げて、金融機関が集まるウォール街を歩く人たちです。(写真は省略)

 実業家で大富豪のイーロン・マスク氏が率いる政府効率化省が進めている支出削減を巡っては、高齢者や障害者を対象とした公的扶助も対象にされる可能性があるとして、市民に不安が広がっています。

 ロイター通信によると、デモ行進に参加した人たちは「政府効率化省に殺される」「(富裕層や大企業の)利益よりも人間を優先しろ」などと訴えました。

 ニューヨーク市内では同日、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車大手テスラの店舗前でも市民が抗議しました。

 参加者は、テスラが莫大(ばくだい)な利益を上げているにもかかわらず、税金をまともに払っていないと批判。財政赤字のつけを国民にしわ寄せするのではなく、マスク氏のような富裕層や利益を上げている大企業に公平な負担を求めるよう訴えました。


「再分配機能」ー低所得者がせっせと積み上げた「税金」で自分たちへする「再分配」(支援給付金)では意味がない。
 NYデモ、日本も同じです。
医療・福祉・教育を削るな!


GPIF理事の癒着疑惑 大臣へ報告 7カ月せず

2025年03月13日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2025年3月13日

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国債取引をめぐり、植田栄治理事・最高投資責任者(元ゴールドマン・サックス証券取締役)と特定の証券会社との癒着が疑われたにもかかわらず、所管大臣の厚生労働相に報告が上がったのは疑惑発覚から7カ月後だったことが、本紙の情報開示請求で分かりました。GPIFの隠ぺい体質とともに厚労省の監督体制が問われます。(佐久間亮)

 GPIFは約250兆円に上る公的年金積立金を金融市場で運用する公的機関。原資は年金保険料です。

 GPIFをめぐっては、内規の原則から逸脱して、国債取引を長期にわたって特定の2証券会社に独占させていたことが、2023年12月の内部通報を契機に明らかになっています。GPIFから調査を委嘱された法律事務所は24年3月、2社の選定を植田氏が主導し、うち1社については同氏が証券会社時代に築いた「人的な関係性」の有無を選定の判断材料とし、投資情報まで伝えていたとする調査報告書をまとめています。(本紙1月26日付で報道)

 今回、本紙が情報開示請求で入手したのは、厚労省の24年7月23日付の「厚生労働大臣説明資料」。同月26日の同省審議会でGPIFの国債取引をめぐる問題が議題となるのを前に、厚労相に調査結果を説明する資料です。同省は同資料以前に厚労相に問題を報告した記録はないといいます。

 報告の遅れに加え、報告の中身も問題です。同資料に記載された経過説明は、植田氏が過去の取引実績などをもとに2社を選定したが、癒着や法令違反は認められなかったとするのみで、植田氏が自らの「人的な関係性」で企業を選定したという調査報告書の核心に触れていません。厚労省は、資料作成時点では調査報告書に目を通さず、GPIFから口頭で調査結果の説明を受けていたといいます。GPIFが調査結果の核心を隠した疑いもあります。

 厚労省とGPIFは調査で癒着の証拠が見つからなかったことから、植田氏を理事に再任し、最高投資責任者の地位に置き続けています。

 

 

GPIF疑惑 大臣報告7カ月後 厚労省に当事者意識欠如

証券関係者も「驚き」

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国債取引をめぐる疑惑の報告が遅れたことについて、厚労省の担当者は「所管する組織の内部通報を大臣にいちいち報告することはない。法律事務所の調査を待った」といいます。

 しかし、今回疑惑の中心にいる植田栄治氏は、独法の職員や大勢いる役員の1人ではありません。250兆円という巨額の国民の資産を預かり、世界最大級の機関投資家と呼ばれるGPIFの最高投資責任者です。そのうえ内部通報で発覚した疑惑の中身は、植田氏が自らの「人的な関係性」で企業を選定していたという、「外形的に癒着が疑われるケース」(宮園雅敬GPIF理事長、2024年3月25日)です。

 理事長の宮園氏でさえ、内部通報まで国債取引の2社独占を知らなかったことが取材の過程で明らかになっており、植田氏の独断専行の異様さが際立っています。

 特定企業との癒着は不正常な資産運用の温床となり、年金積立金という国民の財産の棄損につながりかねません。法律事務所の調査を待っていたという厚労省の回答からは、事態の重大性に対する緊張感も、自身が問題の渦中にいるという当事者意識も全く感じられません。市場のクジラと呼ばれるGPIFの監督官庁として無責任と言わざるを得ません。GPIFに対する同省の統治不全が、植田氏の独走を許す土壌となった疑いもあります。

 GPIFから調査を委嘱された法律事務所は、植田氏らの携帯電話やパソコンのデータなども調査し、癒着を裏付ける証拠は「発見されなかった」としています。しかし、厚労省によれば、今回の調査の対象は業務用の携帯電話とパソコンだけ。近年、証券会社などで癒着の疑いが生じた際は、私物の携帯電話やパソコンにも調査が及ぶことが一般化しているとされています。今回の法律事務所の調査が十分だったと言えるのかは疑問が残ります。

 ある証券業界関係者は、GPIFは公的金融機関のなかでも厳格なルールに基づいて取引企業を選定している印象を持っていたとし、「植田氏が人的関係で選定したのが事実だとすれば驚きだ」と語ります。「証券会社で担当者が人的関係で取引企業を選定すれば必ず問題になります。人的関係は選定の入り口になることはあっても、ゴールになることはあり得ません」

 証券業界からも異常さが指摘される企業選定が、なぜ植田氏のもとで可能になったのか、癒着は本当になかったのか―。疑惑を解明し、国民に対して説明する重い責任が、厚労省には課されているはずです。

 

発覚時に報告すべきだ

元経済産業省官僚 古賀茂明さん

 官僚からすると、大臣に報告すると自分の責任が問われかねないので、なるべく問題を隠そうとする傾向があります。「赤旗」などが調査し報じなければ、国民に知らせないままひそかに問題を処理してしまう。法律事務所の調査も、往々にして問題はなかったというお墨付きを与えるものになっています。

 本来は問題が発覚した時点で大臣に報告し、指示を仰ぐべきです。国民の資産の運用には一点の曇りもあってはいけません。GPIFの運用に疑いが生じたのであれば、所管する厚労省にとっても非常に大きな問題だと捉えるべきです。

 疑われること自体が大問題で、癒着の証拠が見つからなかったから問題なしというのはおかしい。厚労省が調査報告書を読んでいなかったというのも、官僚の常識からいって考えられません。


苦しい生活の中で払い続ける「年金」。
この「年金」で「遊ぶ」上級国民。
そんな感じか!

今日、無事に退院してきました。
更新もない中、大勢の方に訪問いただきありがとうございました。
「術後が痛くて大変だ」と、脅かされてきたのですがそれほどでもありませんでしたよ。
手術後の飯も普通食だった。
(後で聞いたら間違ったそうで、本当はお粥)
でも、食べ物を飲み込む時は痛くないけど、空気を飲む時の方が痛い。
この間、ほとんど運動していないのでこれから少しづつ慣らしていきます。

4Fの病室から、退院直前に。ここは旭川市。


石破政権どこまで冷血 高額療養費引き上げ「予定通り」強行…患者団体や野党が求める「凍結」突っぱねる

2025年03月01日 | 社会・経済

日刊ゲンダイDIGITAL 2025/03/01

「一時凍結へ」──。石破政権が負担上限額の引き上げを予定している高額療養費制度の見直しについて、そんな見出しのニュースが27日、駆け巡った。ところが、一夜明けた28日の衆院予算委員会で石破首相が表明したのは、問題先送りの弥縫策。がん・難病患者に負担増を強いる愚策の強行だった。

■来年8月以降は「検討」の弥縫策

「高額療養費制度の見直し自体は実施させていただきたい」

 衆院予算委で立憲民主党の野田代表から「見直し凍結」の英断を迫られた石破首相は、開口一番、こう答弁。今年8月からの負担上限の引き上げを予定通り実施すると宣言した。

 当初計画では、療養費制度の負担上限は年収700万円の場合、現行の8万100円から今年8月に8万8200円に引き上げられ、年収区分の細分化に応じて2026年8月には11万3400円、翌27年8月以降は13万8600円に3段階で跳ね上がる算段だった。あまりに非情な負担増に批判が集まり、石破政権は26年以降の見直しの再検討を余儀なくされた。

 しかし、患者団体や立憲を中心とする野党が求めているのは、あくまでも「凍結」。8月からの引き上げを白紙に戻し、当事者を含めた議論のやり直しだ。これに対し、石破政権は見直し実施の既定路線を崩さず、来年8月以降については、予算委で「本年秋までに決定したい」と時間稼ぎをし始めた。

 そもそも、療養費制度の負担上限引き上げは厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)で昨年11月から約1カ月間のわずか4回の議論で決まった経緯がある。がん・難病患者をなおざりにした結果、非難ゴウゴウの事態を招いているのに、それでも引き上げ強行とは血も涙もない。

■「この間の物価上昇分だ」答弁のマヤカシ

 なぜ、そこまでかたくななのか。石破首相は予算委で、引き上げが約10年ぶりだとして「この間の物価上昇分だ」と言い繕った。そうであれば行うべきは、患者の負担減だろう。

 総務省はきのう、全国の先行指標とされる東京都区部の小売物価統計調査を発表。2月はコシヒカリが5キロ当たり4363円。前年同月から8割近くも上昇し、過去最高を更新した。主食たるコメもしかり、あらゆる食料品、ひいてはモノの値段が上がっているというのに、難病治療の負担増も強いるとは理屈が通らない。

「物価上昇に負けないほど賃金が伸びて可処分所得が増えているならまだしも、そうではありません。物価は上がり続け、家計は圧迫されています。大病すれば収入減は避けられません。本来なら、物価上昇分を考慮して難病患者の負担を減らすべきです。政府は一体、何重苦を強いるつもりでしょうか」(全国保険医団体連合会事務局次長・本並省吾氏)

 場当たりでは墓穴を掘るだけだ。引き上げ凍結の再考しかない。

  ◇  ◇  ◇

 自公維で合意した「高校無償化」は5000億円かかるのに、200億円で可能な高額療養費「見直し凍結」は拒否…関連記事【もっと読む】で詳しく報じている


国民の命も生活も眼中にない、ただ裏金欲しさの偶作が続く。
「高校無償化」も必要。
必要のないものは、突出した「軍事費」だ。
「軍事費」によって国民が見殺しにされる事態は避けなければならない。

今日もプラス氣温の良い天氣。
家の前の舗装道路の氷割り、好きなんです。
これから札幌へ行ってきます。
帰りは遅くなりますので、今のうち更新です。


宇宙船トランプ号の目的地

2025年02月27日 | 社会・経済

氣になる記事を見たので紹介しておこう。
でも、長い記事なので興味のない方はスルーしてください。

 

【寄稿】宇宙船トランプ号の目的地(北丸雄二)

マガジン9 https://maga9.jp/250226-8/

米国・トランプ大統領が2期目の政権をスタートさせてから1カ月あまり。この間、70本を超える大統領令に署名しています。なかでも、就任後すぐに、連邦政府のDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムの廃止と、「性別は男と女の2つだけ」とする大統領令に署名したことは大きな波紋と動揺を広げました。こうしたトランプ政権の姿勢から見えてくるものは何か。ジャーナリストの北丸雄二さんにご寄稿いただきました。

救命ボートの倫理とは

 「救命ボート倫理(lifeboat ethics)」と称して提示される問いがあります。60人乗りの救命ボートにはすでに50人が乗っている。そこにさらに波間を漂う100人もの遭難者がいる。さてその場合、何をどうするのが倫理的か、あるいは最適解か?

 1974年にアメリカの生態学者ギャレット・ハーディン Garrett Hardin が持ち出したこの倫理上の難題は古代ギリシャの「カルネアデスの舟板」(※)の逸話にも似ていますが、カルネアデスが個人の行為として刑法上の緊急避難に敷衍されるのに対し、ハーディンの方は集団の行動規範をどこに求めるかの問題として豊かな先進国と貧しい途上国の関係に置き換えられました。

 残った空間に10人だけを乗せるか、あるいは全員の救命を試みて舟もろとも沈没するか、それとも安全を確保するために10人分の余裕を残したまま波間の全ての遭難者を見捨てるか。

 地球の生態系(人命)を維持するための資源(救命ボート)には限界があります。したがって全員の救命を図るという「完璧な正義」の実現は、実は「完璧な破局」に結びつく。だから生態系維持のためには現状を危険にさらす要素(他の遭難者)は排除しなければならない。すなわち未来を守るためには、途上国を見捨てて先進国の安全を確保することは、倫理的とは言えないまでも必要悪なのだとハーディンは結論づけるのです。

 ハーディンのこの主張は当然の帰結として途上国への援助の停止、共有資源の独占的管理、厳格な移民政策などの政策に結びついていきます。もちろんこれは「反人道的」で「再分配の正義に反している」として強い反発を浴びました。

 もうお分かりでしょう。その批判から半世紀以上が過ぎ、私たちがいま目撃しているのはまさにこの「救命ボートの倫理」の再来です。トランプ政権が、第一次から4年間の周到な準備期間を経た第二次の今回、さらに徹底させているのが、「完璧な正義」を廃棄することで「完璧な破局」から逃れるという道筋の確立です。

 例を取ります。

 完璧な正義とは何か? 少数者を含め、全ての弱者・遭難者を救おうという「DEI(多様性、公平性、包摂性)」の思想に染まる「WOKE(意識高い系)」の理想と目標がそれです。

 なぜトランピズムがそれを徹底排除するのか? 救命ボートもろともの沈没=完璧な破局を避けて、自分たちが生き残るためです。

 その「自分たち」をトランプ政権は「アメリカ・ファースト」という大きな言葉で代用しています。しかしこの「アメリカ」をよく見てみれば、それは未申請・無届け移民やLGBTQ+、およびBLM(Black Lives Matter)の黒人や先住民たちを含まない「普通のアメリカ人」、つまり白人系のアメリカ人に象徴されるアメリカのことです。

※カルネアデスの舟板:船が難破し、船員たちが海に投げ出されたとき、小さな板が流れてきた。一人しかつかまれない板を、自分が生き延びるため他者から奪って相手を水死させたら罪に問えるかという問題

エコファシズムとの関係

 ところでハーディンの生態学(エコロジー)は、1960年代の先進国の工業化に伴う化学農法の拡大や公害の激化を背景にしています。地球の生態系が危機に直面している。1962年にレイチェル・カーソンの『沈黙の春 Silent Spring』が出版され、ジェイムズ・ラヴロックが地球全体を一つの巨大生態系と見る「ガイア理論」を打ち出したのもこのころでした。やがて1973年には、それはノルウェーの哲学者アルネ・ネスの「ディープ・エコロジー」という概念に”深化”します。

 従来の環境保護活動は「シャロー(浅い)」、もっとディープに(深く)徹底しなければならない、というこの考えは、ガイア生態系の中で全ての生命存在が人間と同等の価値づけをされます。そうじゃなければ地球は救えない。人間の利益だけを考えていてはダメなのです。そこではガイアを保護すること自体が目的であって、人間存在の利益は結果的に付与される付随物に過ぎない。

 そしてこの価値観が、実は40年前のナチスの「エコファシズム」と共通する。

 これが本稿の本題である性的少数者排除とどう結びつくのか──トランプ政権の「アメリカ」第一主義が、エコロジーとファシズムの結託によってもたらされるということを示すには、かなり複雑な論理の道筋を辿らねばなりません。

 ナチス・ドイツは発足直後の1933年に動物保護法、1934年に国家狩猟法、1935年に帝国自然保護法を制定しました。動物虐待の禁止、麻酔なしの生体解剖の禁止、野生生物の保護のための森林保護などはまさに地球の生態系の保護、つまり環境保護の先駆け政策です。人間のことだけを考えていてはダメ、人間中心主義から脱却して、全体のバランスを優先しなければダメ。これは、生態系の保護のためには人間の排除もやむなしというJ・ベアード・キャリコットの生態系中心主義に辿り着きます。そこでは人間も動物も同じ要素です。「同じように守られるべき」という主張は同時に、「同じように切り捨ててもやむなし」という結論にも等しく反転します。

 こうして人間と動物の境界線が薄れます。動物の屠殺と、人間に対する殺人が同じレベルで論じられるようになる。

 先進国では19世紀末からフランシス・ゴールトンの提唱した優生思想が受け入れられるようになっていました。ダーウィンの進化論と遺伝学を、人間集団の遺伝的な質を向上させるより良き未来のために使おうという思想です。

 優れた者を優先させるこの考えは、ハーディンのあの「救命ボートの倫理」です。劣っている者=遅れてきた遭難者は見捨てても良い。むしろ人口は積極的に減らした方が持続可能な未来のためには効率が良いとまで言う、マルサスの人口論の発展系。あと10人が乗れるのに、その10人をも乗せずに60人乗り救命ボートに50人のままで行った方が生存率は高まるのですから(あるいはその50人すら40人、30人に減らした方が……)。

 ナチスはそうしてドイツのために「劣等民族」であるユダヤ人の”浄化”に踏み出します。それは動物を屠殺するのと倫理的に違いはない。優秀なアーリア人こそが「ドイツ」です。ちょうど「アメリカ・ファースト」の「アメリカ」が「自分たち」だけのアメリカであるように。

 こうしてディープ・エコロジーは実はナチスによって都合よく使われたエコファシズムにも繋がってしまう。それは「救命ボートの倫理」なのです。トランプを熱狂的に支持するMAGA(※)の人たちは、「自分たち」はその救命ボートに初めから乗り込んでいるのだと信じて疑わない人たちです。本当にそうなのかは、これからのトランプ統治の数年でわかることですが。

 そうやって見直してみると、トランプ政権が矢継ぎ早に打ち出す行政上の大統領令や外交における新基軸──”不法”移民の即時強制退去、高関税の脅し、法人減税、ウクライナとガザにおける「力による現状変更」の容認、グリーンランドやパナマ運河への覇権宣告、51番目の州としてのカナダ構想、行政省庁の縮小解体、DEIの排除、人種および性的多様性の否定、メディアやジャーナリズムの封じ込め、そしてイーロン・マスクの偏重──も、巷間言われる「支離滅裂」「何をやるか予測不能」ではなく、全てがこの「救命ボートの倫理」に則っていることがわかります。そしてこれらの背後には現在、トランプを盾にトランプ以上にトランプ的な政治を体現している、下野の4年間を臥薪嘗胆に周到に準備した、法理論に長けた多数の若手政治戦略家たちが控えているわけです。

※MAGA:Make America Great Againの頭文字をとった造語。トランプの選挙スローガンであり、熱狂的な支持者のこともMAGAと呼ぶ

「キャンセル」される「T」の存在

 その中で、あたかも「自分たち」以外の象徴のように消し去られようとしているのがトランスジェンダーの人たちの権利です。これまで米国政府サイトで使われていた性的マイノリティを列記する言葉「LGBTQI(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クイア・インターセックス)」が、トランプの再就任直後にすべて「LGB」に変わりました。「LGBTQI旅行者 」のための情報を提供していた国務省のサイトは現在、「LGB旅行者」に、LGBTQI+の養子縁組希望者のための情報ページも「LGB」向けになりました。コロナやエイズ禍で活躍したCDC(疾病管理予防センター)のサイトからも、司法省、労働省、商務省などのサイトからも、LGBTQ+関連の健康資料や性的指向に基づく差別回避の指針などが軒並み消え去りました。「T」だけでなく「LGBTQ+」全部がなくなりつつある……。

 実はトランプが最初にアメリカの政治土壌に足を下ろした2017年1月20日のその初日にも、ホワイトハウスのウェブサイトからエイズやLGBTQ+関連のページが跡形もなく消えました。その4年後にバイデン民主党が政権を取り戻して、同時に関連サイトも復活するのですが、さらに4年後の今回、2025年1月20日に再びそれらが(より大規模に)「存在しないもの」になったというわけです。

 前回は騒がなかった日本のメディアも「性別は『生物学的な男女のみ』トランプ氏、多様な性認めぬ大統領令」(朝日)、「『性別は男性と女性だけ』 トランプ氏、大統領令でDEI施策縮小」(毎日)、「性別は『男性と女性だけ』、『ドリル、ベイビー、ドリル』…トランプ第2次政権は前政権否定から」(東京)=いずれも2025年1月21日付=と大きく取り上げました。日本のジャーナリズムにおいてもやっと性的多様性を含む「DEI」問題が”旬”のテーマになったことの証左ですが、本家アメリカが逆方向に向かって日本の方が人権意識に覚醒するというのは皮肉な話です。

“予告”されていた大統領令

 おさらいしましょう。

 トランプの前のオバマ政権は教育や社会保障といった分野で「性別」の定義を個人の選択とする考えを打ち出し、トランスジェンダーの児童生徒に自らが選んだ「性」のトイレの利用を認めました。米軍へのトランスジェンダーの入隊も2016年に受け入れることを決めました。

 ところが第一次トランプ政権は発足1カ月余の2017年2月22日、生徒が性自認に則してトイレを使用できるとしたオバマのトランスジェンダー生徒保護ガイドラインを撤回。同7月には「米軍は圧倒的な勝利のために集中しなければならず、トランスジェンダーの受け入れに伴う医学的コストや混乱の負担は受け入れられない」などとして米軍へのトランスジェンダー新規入隊の停止措置を執ったのです。

 当時すでに米軍全体の0.7%ほどに当たる約9,000人のトランスジェンダーが軍務に就いていました。その当時の連邦裁判所は流石にトランプのこの措置を混乱が大きいとして阻止し、入隊手続きは再開されましたが、トランプ政権は諦めません。発足2年目、2018年の中間選挙を控えて、保守派の票固めをしたいトランプはさらなる攻撃に出ます。

 選挙直前の同年10月、ニューヨーク・タイムズはトランプ政権が「性別」の定義を「男性か女性かのいずれか一方」であり「生まれた時または生まれる前に確認された不変の生物学的特徴に基づく」と規定し、また「出生証明書の原本に記載された性別は、信頼できる遺伝的証拠による反証がない限り変更できない」とする方向で統一することを検討している、と報じました。

 それまでの小手先のトランス排除措置ではなく、性別に違和感を持つトランスジェンダーの存在自体を全否定しようとしたのです。

 ね、今回の大統領令と全く同じ文言でしょう?

 全米で推定140万人(0.4%)と言われたトランスジェンダーの人々の存在を「無」にする動きは7年前のそのときは後が続かず拡大しませんでしたが、すでに十分に予告されていたわけです。

トランスジェンダー抜きに語れぬ歴史

 「性別は男女の2つだけ」という今回の大統領令は、ややこしいトランス差別のあれこれをまとめて一気に吹き飛ばす論理です。

 トランスジェンダーの存在が社会一般に認知されるようになったのは1969年の「ストーンウォールの暴動/反乱」が契機です。当時は性的少数者の内実に関する認識はそう解像度が高くはなく、外部の人間にとっては十把一絡げに「ヘンタイ」であり「オカマ」でした。英語ではいずれも侮蔑語や卑称の「ソドマイト(ソドムの住民)」だったり「ファゴット」「クイア」そして「ゲイ」だったわけです。

 ニューヨーク・マンハッタンのダウンタウン、グリニッジ・ヴィレッジにある「ストーンウォール・イン」はいわゆる「ゲイバー」として伝えられますが、この「ゲイ」は当時は今で言う「LGBTQ+」の人たちを網羅的に示す言葉でもありました。そしてその「暴動/反乱」の主体は、警察の暴力や摘発の最大の標的だった男性相手の街娼たち、つまりドラァグ・クイーンあるいはトランス女性、そして警官隊への反撃を呼びかける第一声を挙げたレズビアンだったというのが定説です。

 つまり現在に続く「ゲイ」の人権運動・解放運動は、ゲイ男性というよりむしろ(今で言うノンバイナリーやトランス女性をも少なからず含んでいただろう)ドラァグ・クィーンや、(今で言うノンバイナリーやトランス男性をも少なからず含んでいただろう)レズビアンの闘士たちが動いたからという起点抜きには語れない。

ちゃぶ台返しの「男女二元論」

 しかし、トランプ政権は当初からすでに同性婚も合法化され可視化や理解も定着したゲイやレズビアンへの攻撃を諦め、より政治問題化しやすく一般の理解も浅いトランスジェンダーを標的にします。

 政治問題化とは、新たな政治資金を集めるためのネタにするということです。また同時に、トランスジェンダーの人たちを、「普通のアメリカ人」にとっての脅威として恐怖を煽ることです。敵を作り、それに打ち勝つための資金を募る、という古典的な政治手法です。

 最初は女性トイレや女性更衣室へのトランス女性の”侵入”を性暴力的脅威だと訴えました。それはやがて女性の競技スポーツの分野でトランス女性が「男性の肉体で思いのままにメダルを獲得している」という話になります。しかし前者はトランス女性による性加害の危険性ではなく、性犯罪者による性加害の問題です。後者は、トランス女性のスポーツ選手にトップ選手はほとんどいないという事実を挙げて包摂的な参加方法を模索する研究者と、わずかな差で勝敗の分かれるトップクラスのスポーツではトランス女性の参加禁止は必須とする研究者で議論が分かれます。

 ところが「性別は男女の2つ」と断じた今回の大統領令は、上記の論争に簡単に片をつける──女性スペースにおけるトランス女性の、性犯罪とか脅威とかの可能性の真偽を論じる面倒くさい議論よりも、「人間には男か女かしかいないのだから出生時の性別で男なら女性スペースには入れない。それが常識だろう」というものです。

 女性競技スポーツにおける議論も同じ。「テストステロンがどうだ、筋肉量がどうだという面倒な話はどうでもいい。男なら男、女なら女。話は簡単」

 トランプが第二期の就任演説で「常識の革命 the revolution of common sense が始まる。コモンセンスこそが全てだ」とブチ上げたのはそういう「常識」のことです。19世紀末からコツコツと積み上げ、人間の性とジェンダーの在り方の不思議を解像度を上げることで「新たな常識」として更新してきた性科学や精神医学の成果が、最大の支持母体であるキリスト教福音派的な「常識」の一言でまるでなかったことにされる。人智の基盤を「宗教から科学へ」シフトしてきた人間の歴史が否定されるわけです。MAGAの人たちが批判する「キャンセル・カルチャー」とはまさにこちらの方ではないか?

吹き荒れるトランス排除の嵐

 このスタンスで、トランプは「化学療法・外科手術による性器除去から子どもを守る」とする別の大統領令にも署名しました。19歳未満を対象とした性適合治療への連邦資金援助を停止する措置です。

 これにも伏線があります。第一次トランプからバイデンに政権が変わった2021年から、主にトランスジェンダーを標的にした反LGBTQ+政治の戦場は連邦から州や地方自治体に移りました。トランス敵対法案の提出は2023年には全米で合わせて年間604本に積み上がり、うち87本が成立。2024年には43州672本に増えました。うち可決は50本で、他613本は否決されたものの、2025年には大統領令のお墨付きもあって激増する恐れがあります。

 現時点では全米50州中26州で青少年を対象とした投薬、手術、メンタルヘルスなどの性適合治療が制限されるようになっています。うち25州は共和党主導の州です。

 「賢いトランプ」として一時はトランプに代わる大統領候補として売り出したフロリダ州知事のロン・デサンティスは2022年7月に州議会共和党と結託して、ゲイなどの性的少数者について公の場で話すことを禁ずるいわゆる「Don’t Say Gay(ゲイと言うな)法」を施行し、現在は高校までのすべての公教育でジェンダー・アイデンティティや性的指向などに関して教えることを禁止しています。もちろんLGBTQ+に関する書籍は図書館から取り除かれてしまいました。これはロシアのプーチン政権が2013年に成立させた「同性愛宣伝禁止法」と同じ考え方です。その思想が全米に拡大しつつあります。

 まだあります。一時はトランプの政敵だったマルコ・ルビオが長官に任命された国務省は、バイデン時代に導入された性別欄「X」付きのパスポートの発行申請を認めなくなりました。『ユーフォリア』や『ハンガーゲーム 0』に出演したトランス女性俳優兼モデルのハンター・シェイファーが、再発行パスポートの性別欄が「F(女性)」から「M(男性)」に変更されたとTikTokで抗議したニュースが流れたのも最近のことです。

 また、連邦刑務所に収監中のトランス女性の受刑者の一部はすでに隔離用施設に移送され、男性用刑務所への移送を告げられている事例も始まりました。

 このほかにも「ドラァグ(異性装)の禁止」「トランス学生のカミングアウトの強制」「出生証明書の性別変更の禁止」「運転免許証の性別変更の禁止」などの法案があり、中にはインターセックス(男女いずれの典型的な身体的特徴=染色体・生殖腺・性器などに当てはまらない性別未分化)の子どもに性別決定手術を強制する流れも生まれそうなのです。

 こうした反トランスの空気が濃くなる中では、反トランス法の制定後にトランスの若者の自殺企図が前年比最大で72%増加した州もありました。トランプ二期目のアメリカ社会で、マイノリティ全般への差別加害がどれだけ拡大するか心配です。

「ノアの方舟」のアナロジー

 さて、再び「救命ボートの倫理」です。

 ここからの結論はなんとも突飛なものです。でも、就任1カ月で前代未聞の約70本もの大統領令を出し、それらが多方向に実に突飛に突出するように見える政権の狙いを見極めるには、こちらも論理を繋ぎながら突飛な分析にならざるを得ない。

 現時点でわかっているトランプ政権の政策では、まず高関税貿易と無届け移民労働の排除でさらなるインフレが誘導されることになります。次に同じく高関税貿易と法人税減税と行政省庁の縮小解体による規制解除で国内企業活動が活性化します。ウクライナ、ガザ、グリーンランド、パナマ運河などにおけるアメリカの覇権拡張で国家の権益も増大する。

 その流れで登場するのは超格差社会です。一般国民の所得も伸びる一方で、企業や富裕層の収益は比較にならないほどに増大します。ちょうど、イーロン・マスクの個人資産が2024年春の時点で約2000億ドル(30兆円)だったのが、同年末には人類史上初の約4000億ドル(60兆円)に倍増したように。

 4000億ドルというのは、韓国、オランダ、ブラジルの国家予算に匹敵します。マスクの所有するスペースXなどは米国政府から200億ドル(3兆円)もの連邦資金を得てロケット開発を進行中ですが、そのマスクがDOGE(政府効率化省)のトップとしてNASA(アメリカ航空宇宙局)を潰そうとしているのはまさに利益相反、つまり「NASAの宇宙開発は効率が悪いから是非うちのスペースXのロケットに転換を」と言っているようなものなのです。

 超格差社会の出現で、何をするのか? 超富裕層向けの救命ボートを作ることです。

 「救命ボートの倫理」はナチスのエコファシズムと通底していると書きました。人減らしを目論むマルサスの先の「超」人口論とも。ゴールトンの優生思想とも。

 地球は、もう人類を支えるだけの環境を持ち得なくなっている。気候変動は(「神の意思なのだから」と福音派支持者には説明するが)もはや人間がどうこうできるものではない。しかし民主主義とは、WOKEとは、DEIとは、現在の77億人から2050年には97億人にもなる全ての人類を救おうとする非効率な試みだ。完璧な正義は完璧な破局をもたらす。我々は世界全体を救うことなどできない。ならば、生き延びられる者、優秀な者、選ばれし者が生き延びる道こそが人類の選択すべき最も倫理的な道である。

 まさに福音派の好きそうな「ノアの方舟」のアナロジー。実に古典的な白人至上主義、男性優位主義の復活です。

 ベルリン自由大学グローバル思想史大学院の博士研究員ベン・ミラーは、ローリングストーン誌の「ARE TRUMP’S ACTIONS ‘UNPRECEDENTED’? HERE’S WHAT SEVEN HISTORIANS SAY(トランプの行動は先例なきものか? 7人の歴史家は語る)」(2025年2月22日)の記事でこう指摘しています──トランスジェンダーの人々に向けていま飛んでいる攻撃は「the front of a flying wedge which is really going after the bodily autonomy of absolutely everybody, cis women included(トランス女性とシス女性を分断させる楔(くさび)の先端に見えるが、実はそれはシス女性を含む本当に全ての人間の身体的自律を対象とした攻撃なのである)」。

 トランス女性でもシス女性でもない誰かが、この楔を投げつけている。そしてその誰かは、他の全ての人間の自律を蔑ろにして、自分たちだけは別の世界にいる。

 かつて「宇宙船地球号 Spaceship Earth」という言葉がもてはやされました。地球という運命共同体の乗組員の一員として、国家間の争いはもうやめようという意味でも使われました。

 いまイーロン・マスクの画策する「宇宙船トランプ号」は、そんな地球を見捨てて「自分たちだけ」で火星へ向かおうとしています(いま何か起きた時の当座の避難場所は太平洋のシェルター付きの孤島だったりしますが)。その「陰謀」の目眩しに、地球上に取り残されることになる私たちにはトランスジェンダーや異人種や移民や難民の「問題」にボウボウと放火して騒がせている。トランス抹消の目論見は、そういう大きな青写真の中で考えなければならない──私のこの「突飛な」「突拍子もない」分析が、トランプ嫌いの癇癪持ちの妄想に過ぎない「陰謀論」であればよいのですが。