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教育社会学者・内田良氏 教員のタダ働きに甘える“学校依存社会”に警鐘

2024年06月10日 | 教育・学校

教育社会学者・内田良氏が公立教員「定額働かせ放題」問題に警鐘…「給特法」廃止と現場の意識改革が不可欠

日刊ゲンダイ2024/06/09

 いま、公教育が危機にさらされている。教員の長時間労働が常態化しているのだ。日本教職員組合が昨年発表した調査では、小中学校や高校教員の時間外労働の平均が、「過労死ライン」の月80時間を超えているという。特に問題視されているのが、公立学校教員に対し、残業代を支給しない代わりに月給4%を上乗せして支給する「給特法」だ。同法が長時間労働を容認し“定額働かせ放題”の温床になっていると指摘されている。半世紀ぶりの見直しで上乗せの4%が10%に引き上げられそうだが、根本的な解決にはならない。この問題に詳しい名古屋大学の内田良教授に話を聞いた。

 

■コストや労務管理の概念が欠落している

 ──教員の労働環境が悪化した背景にはまず、1971年に制定された教職員給与特別措置法(給特法)の問題が大きい。

「実際の労働時間に関係なく、一定量のみなし残業代を支給するシステムをつくったことで、定時や残業という概念が教育現場になくなってしまった。一般企業であれば残業代というコストが発生するので、おのずと時間外労働にブレーキがかかります。一方で、学校ではいくら教員が勤務時間外に働こうと、『給特法』によって月給の4%以上のコストは発生しない。そのため、コストの視点が欠落し、1970年代から一般企業ではタイムカードが普及する中、学校では労務管理という概念がなくなってしまいました」

 ──先月、文科省の中央教育審議会(中教審)の特別部会が、改善策として「給特法」の上乗せ分を10%に引き上げる提言をまとめた。しかし、教育現場では「給特法」自体にメスが入らなかったことに失望の声が広がっている。

「教員は別にお金が欲しいのではなく、早く家に帰りたいだけ。『給特法』が制定された1971年当時と比べて、教員の仕事は増大している。長時間労働に抑止力がかかるような、時代に即した法律の制定が不可欠です」

“聖職者メンタリティー”も共犯関係

  ──問題は「給特法」だけではないという。

「“聖職者メンタリティー”ともいうべき教員特有の考え方も、長時間労働に影響しています。日本の教育現場では、教員はお金や時間に関係なく、子供のために献身的に働くべきだという考え方が根強い。そのため、教員は私生活を犠牲にしてでも、部活動や学校行事、課外活動などに多くの時間を割いてしまう」

 ──聖職者メンタリティーも「給特法」と共犯関係になり、教職員の労働環境は悪化していった。そのことを象徴するような話がある。

「ある小学校が、コロナ禍で週に2回にしていた掃除の時間を、元の週5回に戻そうというのです。掃除が週2回になってもそこまで困ることではありませんし、働き方改革に逆行しています。掃除は1年生から6年生までみんなが協力するという貴重な機会で、教育的意義があるというのですが、教員40人で1日15分の掃除を週3回分増やすとして本来かかるはずの人件費を計算すると、年間300万円分のコストが発生します。労働時間と賃金がリンクしていないからこそ、いまだにコストの視点が欠落し、教育的意義のみで議論してしまう。現場の教員を責めるつもりはないのですが、これでは働き方改革の議論は進みません」 

 

教員のタダ働きに甘える“学校依存社会”に警鐘

 公立学校の教員に対し、残業代を支給しない代わりに月給の4%を上乗せして支給する「給特法(教職員給与特別措置法)」は、長時間労働を容認し、“定額働かせ放題”の温床になっていると問題視されている。そして、社会が学校に過度に依存していることも、教員の労働環境を悪化させる要因だという。

■部活動という休日出勤に誰も疑問を抱かない

 「先生は土日を含め、終日子供の面倒を見てくれるものだと、教員に対する社会全体の期待が物凄く大きい。私はこれを、“学校依存社会”と呼んでいます」

 ──“依存”の内容は多岐に及ぶ。

「例えば、子供が夜に出歩いていたとか、道端でうるさくしていたといった地域住民のクレームが学校に届くわけです。しかし、そういったことへの対応は本来、教員の職務の管轄外であり、家庭の問題であるはずです。他にも、土日にも部活動の顧問をしていることや、学校で起きたトラブルなどについて保護者の帰宅を待って電話するなど、教員の勤務時間外や管轄外の労働に、社会が疑問を抱かなくなってしまっている。教員も一人の私人であり、労働者です。にもかかわらず、勤務時間外にも子供の面倒を見ることを求め、教員に大きな負担をかけてしまっている。社会全体で改めて考えていかねばなりません」

 ──国もまた献身的に働く現場の教員に依存している。

「教員の待遇改善のため、労働時間に見合った給料を支給する制度に予算を配分するなど、財務省はもっと教育分野にお金を割くべきです。しかし、教員は自らを犠牲にし献身的に働いているので、現状の予算でも対応は可能だと考えているのでしょう。財務省は、文科省に予算をまわすことに消極的で、結局は教員の善意によるタダ働きに完全に甘えてしまっている。まさに“学校依存社会”を如実に表しているのです」

財務省は教育分野にしかるべき予算を

 ──そもそも予算が厳しい状況で、文科省は教員の働き方改革に抜本的な手を打つことができないでいる。NHKが教員の現状について「“定額働かせ放題”とも言われる」と報道したところ、文科省が「一面的な報道」だと抗議し、物議を醸した。

「文科省は、教員のなり手不足に最も頭を悩ませている。打つ手がない中で、少しでもネガティブなイメージが広がらないように、苦肉の策として今回のような行動に出たのだと考えられます」

 ──教育現場はすでに崩壊していると、内田教授は警鐘を鳴らす。

「現場では人手が全く足りておらず、教員は本分である授業の準備に時間を割けないでいます。校長先生などは、教員の補充のため『どこかに来てくれる教員はいないか』と、片っ端から電話をかけている状況。採用試験の倍率はあらゆる地域で急低下しており、教員免許を取得する要件が緩和されるなど、今やなりふり構わず教員を採用せざるを得なくなっている。そのため、すでに教育の質は担保できなくなってきています。いま一度、国に問いかけたいのは、学校がこんな状態でいいのかということです。未来を担う人材を育てるという重要な役割を持つ教育分野に、しかるべき予算を回すべきです」=おわり

(聞き手=橋本悠太/日刊ゲンダイ)

内田良(うちだ・りょう)1976年、福井県生まれ。名古屋大学大学院教授。専門は教育社会学。学校リスク(事故や長時間労働など)の調査・研究、啓発活動を行っている。


天気予報では☂マークが続いていたのでさぞ降ったもんだと思っていたのですが、畑は昼前に乾いてしまいました。

園のようす。


東京大「授業料の引き上げ」検討…学生が抗議に立ち上がった 経済的に厳しい人が「学びにくい」でいいのか

2024年05月21日 | 教育・学校

「東京新聞」2024年5月21日 

 東京大で検討されている授業料引き上げに対し、学内外で批判が広がっている。文京区の同大本郷キャンパスであった学園祭で19日、学生有志が反対の声を上げた。東大が引き上げに踏み切れば、他の国立大にも広がる可能性があるが、国際的にみても、日本の高等教育における家計負担の割合は高い。識者からは「国立大の使命を果たせなくなる」と懸念の声が上がる。(宮畑譲、中山洋子)

◆年53万5800円が64万円超え?

 「立ち止まって話を聞いてください」「年10万円の値上げがされようとしている。4年で40万円です」

 多くの学生や保護者らでにぎわう学園祭「五月祭」の会場に突如、学生たちの叫び声が響いた。訴えを聞いた来場者から「え、まじ?」と驚く声が漏れた。

 この数日前、東大が授業料引き上げを検討していることが報じられた。現在は文部科学省令が定める年間53万5800円の「標準額」だが、省令で最大20%まで引き上げが認められており、その場合は約10万円増の64万2960円となる。

◆「話し合いをしていることは確か」

 ニュースで値上げの動きを知った学生有志が交流サイト(SNS)で呼びかけて集まり、広場に横断幕をかかげ「学費を上げるな」とアピール。オンラインでも反対する署名を呼びかけている。

 学費免除を受けているという女子学生は「半年ごとに審査があり、いつ打ち切られるか分からない。経済的な理由で進学をあきらめる人をこれ以上増やしてはならない」と訴えた。抗議活動に参加した男子学生(20)は「ありえないと思った。周りに奨学金を受けている人たちもいるが、どれだけ大変かよく知っている。都立大などが授業料の無償化を進める時代に逆行している」と憤った。

 現状、東大内の議論はどうなっているのか。「こちら特報部」が取材すると、「学内で話し合いをしていることは確か。授業料においては多面的に検討している。審議中で公表できることはない」(広報課)とのことだった。

◆日本は公費に比べ家計負担が高い

 国立大の一部では、既に授業料の増額が始まっている。2019年の東京工業大をはじめ、一橋大、千葉大など計7大学が標準額を超える授業料を設定している。他大学でも引き上げられれば、さらなる家計や学生への負担が懸念される。

 経済協力開発機構(OECD)の22年の報告によると、高等教育にかかる費用のうち、日本は公的機関の支出割合が33%で家計負担が52%。平均は公的支出66%、家計負担22%となっており、日本の家計負担の割合の高さが目立つ。

 一方で、国から国立大への「運営費交付金」は減り続けている。国立大が法人化した04年度は全体で1兆2415億円だったのが、本年度は1兆784億円となり、20年間で約1630億円減少した。

◆「産学連携」のしわ寄せが学生に

 東大の授業料引き上げ検討について、京都大の駒込武教授(教育史)は「投入する税金を減らし、大学に企業のように稼がせようとする政府与党の方針がある」と指摘する。世界最高の研究水準を目指す大学を国が支援する「国際卓越研究大学」に、東北大が初めて認定候補として選ばれた。多額の基金運用益が配分される一方、授業料の設定も「弾力的」に行えるとされる。

 駒込氏は「運用益は学生の福利厚生や教員の待遇改善に使うのではなく、産学連携に投資して稼ぎなさいということ。前のめりな産学連携路線のツケを、学生に払わせようとしている」と批判する。東大も国際卓越研究大制度に応募した。今後認定されれば、現状の授業料の上限はなくなり、負のスパイラルが起きると警告する。

 「授業料が値上がりすれば、経済的に厳しい学生が集まらず、国立大の使命を果たせないばかりか、研究力を高めることにもならない。結局は日本全体の損失につながる」


学生が食糧配布に並ぶ時代である。
断固阻止しなければならない。
親も大変だ!

園のようす。
緑が日々濃くなっている。


STOP!学校の長時間労働

2024年05月19日 | 教育・学校

教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育の実現を求める教育研究者有志の会 桜美林大学教授 中村雅子さん

「しんぶん赤旗」2024年5月19日

現場理解なき「中教審まとめ」

 学校現場が直面しているのは、6000人以上も精神疾患で休職している、過酷な教員の長時間過密労働の問題です。研究者有志は▽教員にも残業代を支給する▽学校の業務量に見合った教職員を配置する▽これらを実現すべく教育予算を増額する―という3点を要望し、18万人超の署名を提出しました。

 それなのに「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」と題された「審議のまとめ」には教員増も残業代支給もなく、署名に託された願いを裏切るとんでもない内容です。しかも、「新しい職」などというものをすべりこませて、協働的な営みを分断しようとする。やってほしいことはやらずに、求めてもいないことを進めようとする。こんなことを教員は望んでいません。現場で困っている人たちの願いに全く応えようとしていないし、リスペクトもない。

 「おわりに」の結びには「国民の皆様からのご理解とご支援を心からお願いしたい」とありますが、現場の大変さに理解も支援もしていないのがこのまとめ案ではないでしょうか。こんな「まとめ」は絶対にダメです。

 残業代を出すしくみを求めるのは、先生たちがお金をたくさんほしいからではありません。民間企業のように、長時間労働を抑制する力になるからです。そもそも必要な仕事が勤務時間内に終わらない現状を、何とかしてほしいのです。目の前の子どもたちに、温かくて心のこもった教育ができる条件を、一日も早く保障すべきです。

 政府や文部科学省は、本当にやらなければいけないことから目をそらして、ばんそうこうを次々と貼ってごまかすような「改革」を進めてきました。その象徴が今回のまとめです。

 これでは、若い人が教員になろうという気持ちになれないでしょう。なんとか踏ん張ってきたベテランの先生たちも、怒りと深い失望でもう辞めてしまうのでは、ととても心配です。

 まとめでは、教員は高度の専門職だと認めています。そうであるなら、専門性が真に発揮できるよう、現場の願いを真正面から受け止めるべきです。そのための大きな運動が求められていると思います。(堤 由紀子)

 公立学校教員の長時間労働の解消について議論してきた中央教育審議会特別部会は13日、「審議のまとめ」を出しました。しかし、「失望した」「0点だ」など怒りが渦巻いています。関係者の願いをシリーズで紹介します。


園のようす。


教員不足 少人数学級に影

2024年05月15日 | 教育・学校

35人以下 やっと実現したのに弾力運用で40人

「しんぶん赤旗」2024年5月15日

 教員の長時間労働や志願者減少の影響を受け、教員不足に年々拍車がかかっています。今年度もすでに各地で深刻な不足が生じています。川崎市では4月の教員不足が市基準で131・5人となり、少人数学級が後退する学校まで出ています。(佐久間亮、島田勇登)

川崎、過去最多迫る

 川崎市の昨年4月の教員不足数は61・5人でした。年度途中に産育休や病気などによる離・休職者が出たことで今年2月には過去最多の146・5人を記録。今年度は4月からこの過去最多に迫る状況です。

 現在法律上の学級編成の標準は小学1~5年生まで35人以下です。川崎市では教員不足のため4学校5学級で標準を上回る36~40人編成としています。市教育委員会は、教員の志願者減少などを要因に挙げます。

 一方、川崎市教職員連絡会の大前博事務局次長は「少子化で教員が余るといって正規教員の採用を抑制してきたことが最大の原因だ」と批判。教員不足が学校の長時間労働に拍車をかけ、産休取得を同僚に謝らなければならないような職場環境の悪化をもたらし、さらに志願者が減る悪循環になっていると語ります。

千葉県、異例の通知

 千葉県では2月に県教委が、小学5年生以下でも実情に応じ36~40人編成にする「弾力的な運用」が可能だとする通知を市町村教委あてに出しました。2学級を1学級にし36~40人編成にした場合、教員を2人配置することなどが条件です。

 表向きは教員不足対策とは異なるものの、文部科学省が「例外的に許容」とする対応をわざわざ抜き出して通知にするのは異例。弾力運用を口実に35人以下学級を見直し、年度途中の休職者に備える自治体が出てくるのではと懸念の声があがります。

 同県教委は、1校で何人も教員が不足すれば弾力運用の複数教員配置に影響が及ぶ可能性もあるとしつつ「そうした事態は考えにくい」としています。

 全教千葉教職員組合の浅野涼平書記長は、年度途中に3人が産育休に入るのに代替教員のめどが1人もついていない学校もあるとし、県教委の見通しの甘さを指摘します。

 弾力運用で小学校低学年の35人以下学級が40人ぎりぎりの編成に見直されたある学校のベテラン教員は、この学校が現在抱える困難を考えるとやむを得ない面もあるとしつつ、こう語ります。

 「学校に余裕があれば弾力運用は必要ない。コロナ危機をへてやっと35人以下学級が実現したのに、また狭い教室に押し込められる。子どもたちが一番の被害者です」

これでは学校がもたない

残業代不支給を継続

 教員不足の要因の一つが、各地で過労死の悲劇を生みだしている異常な長時間労働です。文部科学省の2022年の調査では、小中学校とも持ち帰り残業も含めた1日の労働時間の平均は約11時間半に上り、中学校では4割近い教員が過労死認定ラインの月80時間を超える時間外労働をしていました。

 精神疾患による休職者数も過去最多を更新し続け、22年度は6539人です。

 文科省は昨年6月に中央教育審議会(文科相の諮問機関)に長時間労働解消に向け特別部会を設置。同部会は1年近い議論を経て13日に「審議まとめ」を策定しました。しかし審議まとめを見た教員からは「『このままでは学校がもたない』という現状をいっそう深刻化させかねない」との声が上がります。

 労働基準法は1日の労働時間を8時間と定めています。時間外労働には割増賃金を払わなければならず、違反した雇い主には6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 しかし、公立学校の教員は「教職給与特別法」で例外扱いとされ、月給の4%を教職調整額として一律に支給される代わりに、残業代は出ません。時間外労働は「自主的な活動」とされ、行政は残業代を負担せず、管理職が刑罰に問われることもありません。

 自民党は、特別部会の設置直前に提言を発表し、議論前から残業代支給を「選択肢とは言えない」と否定。その代わり教職調整額を10%以上に引き上げるとしました。

 残業代支給をめぐって特別部会では▽自主的な活動と労働時間の切り分けが困難▽残業を指示する管理職の負担が増える▽給与の負担は都道府県、服務監督は市町村教委と分かれているので残業代による労働時間抑制効果がない―などの意見が出る一方、教職員組合や全国高等学校PTA連合会は残業代支給を求める意見書を提出しました。

 教育研究者有志20人が呼びかけた残業代支給などを求める署名に18万人超の賛同が集まるなか、審議まとめに書き込まれたのは、残業代不支給制度の維持と教職調整額の10%以上への引き上げ。書きぶりも自民党の提言を引き写したかのようです。

低い教育予算を放置

 中教審は19年にも長時間労働解消をうたう答申を出しています。このときも残業代不支給制度に手を付けず、教職員定数の改善目標もなし。その結果、教員不足が深刻化し、文科省の21年4月の調査でも全国で2086人の教員が未配置となっていました。

 首都圏の小学校のある中堅教員は、教育委員会から業務改善の指示は盛んにくるが、労働時間が短くなった実感は全くないと断言。「在校時間を短くするため学校は午後8時に閉まるようになったが、みんなパソコンを持ち帰り、家で仕事をしている」といいます。

 この学校では、学級担任を受け持つはずだった新卒教員が着任早々職場を去りました。理由は分からないものの「年度初めは業務量が非常に多く、全員遅くまで学校に残っていた。イメージと違ったのでは」と推測。現在は教頭や専科教員で回しているものの「来年度まで担任が未配置の可能性もある」と声を落とします。

 19年の答申を取りまとめた小川正人東大名誉教授は当時、残業代支給には「1年間で9千億円から1兆数千億円が必要です。しかし、財源のめどはありません」(「朝日」18年12月24日付)と語っています。一方、盛山正仁文科相は5月14日の会見で、教職調整額を10%にした場合の国費負担は約720億円増となると語っています。地方負担分を合わせても約2160億円増です。

 前出の中堅教員の場合、月間時間外労働は平均50時間程度だといいます。4%が10%になると教職調整額は1万5千円から3万8千円に増えます。ただし残業代なら4・5倍の約17万円です。さらに時間外労働が80時間になれば残業代は30万円近くに増えますが、教職調整額なら3万8千円のままです。

 残業代不支給制度の継続は、国際的に見ても低い日本の公的教育予算を増やさず、教職調整額のわずかな増額と引き換えに「定額働かせ放題」を温存するものです。

 全国知事会などは、教職員の配置基準を定めた「義務教育標準法」の見直しによる定数改善を求めていました。審議まとめは、標準法見直しで増えるのは活用目的を限定しない基礎定数なので、教員の負担軽減につながらない可能性があると主張。政府の政策目的に沿って教員を配置する加配定数の改善を優先するとしました。

 教員が受け持つ授業時数に上限を設けることで長時間労働を抑止する案も、管理職の裁量を縛るとして採用しませんでした。

 

命と健康守る仕組みこそ

三坂彰彦弁護士に聞く

 日本弁護士連合会は2021年の意見書で、教員に労働基準法の労働時間規制を適用するよう求めています。意見書作成に関わった三坂彰彦弁護士に聞きました。

 労基法は憲法27条に基づき労働条件の最低基準を定めた法律です。時間外労働に割増賃金の支払いや罰則を科すのは労働者の生命と健康を守るためです。多くの教員が過労死や精神疾患に追い込まれるもとで、労基法の労働時間規制の適用は不可欠になっています。

 教員は高度な専門性があり裁量が大きく残業代支給になじまないとの指摘があります。しかし、そもそも労働時間が過労死ラインに達しているような職場で高度な専門性の発揮は困難です。私立や国立学校の教員には労基法が適用されていますし、医師のうち勤務医も労基法の残業規制の適用対象です。

    残業承認で管理職の負担が増えるとの指摘もありますが、これは現在の管理職数を前提とした場合の話です。また、民間企業でも定型的な業務は包括的な承認で対応しています。

 残業代支払いを義務化しても労働時間抑制の効果は期待できないとの指摘もありますが、県教委は教職員の人事権を持つなど市町村教委と緊密な連携関係にあり、市町村が県の給与負担を考慮しないことは考えられません。

 残業代は賃金の25~50%が割り増しされるので教員を増やす強い動機になります。一方で基本給の一定割合で定められる教職調整額には労働時間抑制の効果はありません。

 教員の時間外労働の最大の原因は1人当たりの業務量が多すぎることです。業務量削減には持ち授業時数の削減と少人数学級の推進、そしてそのための教員の抜本的増員が必要です。労働時間規制の適用は、その方向を動機付ける最も効果的な手段と言えます。


スケスケで向こうまで丸見えだった景色も緑が多くなりました。


「お金じゃない、長時間労働に歯止めを」現場の声届かず…教員の働き方改革案は「定額働かせ放題」のまま

2024年04月23日 | 教育・学校

これから札幌です。
叔父の1周忌法要、夜は延び延びだった孫の合格と入学のお祝い。
帰りが遅くなりますので今のうちにアップしておきます。
札幌で桜が見れるでしょう。

「東京新聞」2024年4月20日

  こちら特報部

 教員の働き方改革を検討している中教審の特別部会は19日、公立学校教員に残業代を出さない代わりに支給する月給4%相当の教職調整額を、10%以上に引き上げることを柱とした素案を示した。調整額を定めた教員給与特別措置法(給特法)を巡っては、「定額働かせ放題」の温床で長時間労働につながるとして、廃止を求める声が現職教員らから出ている。案では、制度を維持した上で処遇改善を図るとした。(榎本哲也)

◆残業手当変わりの「調整額」引き上げ、ポスト増設で対応

 部会は5月にも議論をまとめる。文部科学省は答申を受け法改正を検討する。

 現行の教職調整額4%は残業時間が月平均8時間程度だった1966年度の調査が根拠。文科省の2022年度の調査では、月45時間超の教員は小学校で64.5%、中学校は77.1%だった。

 長時間労働に歯止めをかけるために残業手当を支給すべきだ、との意見が教員の労働組合などから出ているが、素案は「教師の職務の特殊性を踏まえると(残業手当は)なじまない」と指摘した。教職調整額の増額とともに、学級担任を持つ教員の手当を他の教員より増額することも提言した。

 ほぼ全ての教科を教える小学校教員の負担を減らすため、教科担任制を拡大する。現行の5、6年生に加え、3、4年生でも教科担任をつけられるようにする。

 現在は新卒1年目の教員が担任を持つことも少なくないが、これを避け、副担任などから始められるよう教員定数の改善を目指す。

 若手教員を支援するため、校長、教頭・副校長、主幹教諭に加え、中堅教員が就く新たなポストを設ける。東京都が独自に設けている「主任教諭」などを想定している。

   ◇

◆現職「最悪の結末」、大学生「教師は魅力低い職業に…」

 「お金じゃない、残業に歯止めをかけて」。中教審部会が示した教員働き方改革の素案について、調整額を定める給特法の廃止を求め続けている現職教員らは訴えた。

「給特法の抜本改善は命の問題」などと訴える(左から)岐阜県立高教諭の西村祐二さん、東京都公立中主任教諭の五十嵐夕介さん、教員志望大学生の宇惠野珠美さん=19日、東京・霞が関の文部科学省で

「給特法の抜本改善は命の問題」などと訴える(左から)岐阜県立高教諭の西村祐二さん、東京都公立中主任教諭の五十嵐夕介さん、教員志望大学生の宇惠野珠美さん=19日、東京・霞が関の文部科学省で

 「調整額の増額は最悪の結末。残業が自発的ボランティアと見なされ、それを期待される。この給特法の枠組みが教師を苦しめ、死に追いやってきた」。岐阜県立高教員の西村祐二さん(45)は声を荒らげた。給特法の実態は「定額働かせ放題」だとして、実名で廃止を訴え、署名活動などを続けている。この日、給特法を考える「有志の会」メンバーと共に文部科学省内で会見。「お金が欲しいわけではない。残業を減らして」と繰り返した。

 都内の公立中学校主任教諭、五十嵐夕介さん(40)は、連日夜10時まで働き翌朝8時に出勤する働き方を続けた結果、適応障害の診断を受け、家庭が崩壊した苦い経験がある。「最近は、部活動などは改善したが、生徒指導や保護者対応などの忙しさは変わらない。声を上げなければ絶望のままだ」と訴えた。

 公立校教員を目指す大学4年生の宇恵野珠美さん(22)は、「私の学部には教職課程を履修している学生が100人以上いたが、教育実習に行ったのは20人、教員採用試験を受けるのは2人だけ。他は私立校などを目指している」と現状を話し、「今の就活生はワークライフバランスを非常に気にしている。教師という職業は魅力の低いものになっている。安心して教職を目指せる世の中になってほしい」と話した。


「学校を子どもファーストに」

2024年04月01日 | 教育・学校

岐阜 映画「夢みる校長先生」上映会

「しんぶん赤旗」2024年4月1日

 通知表や宿題、校則をなくし「子どもファースト」の学校をつくった公立小中学校長6人を紹介する映画「夢みる校長先生」上映会が29日に岐阜市で開かれ、2回の上映で計142人が視聴しました。主催はNPOなじみのふるさと。

 映画では、1956年に通知表を廃止し「通知表がない学校」として地域に受け入れられている長野県の伊那小学校を紹介。赴任した教師らは当初違和感をもっても「学校は子どもたちにとってこころゆく生活の場、詩境でなければならない」という学校理念の下、やりたいことに生き生きと取り組む子どもたちの姿に「価値観が変わり納得する」と語ります。

 各地で「子どもファーストの学校」へと変えた校長らは、口々に「校長になってみんなが元気になる学校、子どもが中心になれる学校をつくりたかった」と語り、ナレーションは「夢見る教師を支える保護者が必要」と語っています。

 映画の後の感想交流では「学校で毎日、生き生きした教師の姿を子どもたちに見せることの意味を感じた」「校長が学校を変えるというのは良し悪しがある。職員が話し合って決めたことを校長が中心になってやっていくのが本来ではないか」「校長会でこの映画を見てほしい」などの声がありました。


このような学校が増えていってほしいです。
夢見る教師を潰してしまう現行の「学校」では子どもたちが犠牲になってしまいます。
子どもも教師も「夢」を食べて生き、成長し続けるのです。

今日も雪が舞う一日。
一時は半端ない量でした。
でも気温はプラスだったので積もりはしなかったです。

経木(きょうぎ)に包まれたぱんじゅう、いただきました。
とてもなつかしかった。
木の香りがたまらない。
おいしかった。


教員長時間労働正せ 署名18万人

2024年03月21日 | 教育・学校

呼びかけ人・日本大学教授 広田照幸さん

「しんぶん赤旗」2024年3月21日

仕事増えても人員増えず

 深刻化する教員の長時間過密労働と「教員不足」。「このままでは学校がもたない」と教育研究者有志20人が呼びかけた「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな教育の実現を求める」署名は18万2000人分を超えて集まりました。呼びかけ人の一人、日本大学の広田照幸教授(元日本教育学会会長)に聞きました。(高間史人)

 ―「学校がもたない」という状況がなぜ生まれたのでしょうか。

 文部科学省調査では小中学校の教員は平均1日3時間以上の時間外労働を強いられています。それだけ働かないと学校がまわらない状況なのです。

 教員の長時間労働はずっと問題になってきました。1960年代には人事院が労働基準法にもとづいて超勤手当を支給するべきだとし、文部省(当時)もいったんは残業代を予算につけました。ところが自民党から横やりが入って、71年の教員給与特別措置法(給特法)で公立学校の教員には残業代は支給せず、代わりに一律に給与の4%の「教職調整手当」を支給する仕組みになりました。

 4%というのは週2時間程度の残業があるという当時の調査を根拠にしたものでした。その後、学校の仕事はどんどん増えていきました。にもかかわらずこの50年、4%の固定した手当しか支給されず、残業に応じた支給がなされてこなかったわけです。

 教員の仕事が増えた理由は三つほどあると思います。

 80年代半ばぐらいから、「個性重視」がいわれ、個別の子どもにきちんと対応することや一人ひとりに考えさせたり、調べさせたりする指導など、生徒指導も学習指導もより高度化が求められました。一人ひとり丁寧に指導することは大切ですが、時間がかかります。それが教員の仕事の増加につながりました。

 二つ目に92年から段階的に学校5日制が導入され、2002年から完全に土曜日が休みになりました。そのため週6日間でやっていた仕事を5日間でやるようになった。忙しくなるのは当然です。

 三つ目は2000年代以降、プログラミング教育や小学校英語などが追加されたり、学校教育のICT化推進など、新しい指導内容が求められるようになり、学校がますます対応に追われることになりました。

 新しい指導法など子どもたちの学習を変えていくこと自体は、すべて悪いわけではありません。しかし、それをやるための条件整備、具体的には教員の数を増やすということが行われなかった。条件整備が進まない中で学校にたいする要求がふくらみ、教員が多忙になっていきました。

 その結果、個別の子どもに応じた指導が強調されてもできない。考えさせる授業をしたくてもできない。教育論は立派ですが、それに見合った余裕が教員にないから、改革も進まないのが現状です。

教員増 若い人が夢持てる目標を

 ―そうしたなかで教員のなり手がいないという事態も起こっていますね。

 学校は長時間勤務が慢性化している職場だということが知られるようになって、教育に夢を持って教員になりたいと思っていた若い人たちが避けるようになりました。これからの人生のことを考えると厳しいと思うようになりました。大学の教員養成課程や教育学部の学生が、学べば学ぶほど教員になる夢がしぼんでいく状況です。

 ―研究者有志で署名を呼びかけた思いは。

 学者がいくら教育論を語っても、よい教育を実現するためには学校の先生に余裕がなければなりません。この今一番の問題について研究者からものをいうべきだろうと考えました。これまであまり社会的な発信をしてこなかった研究者も含めて今回は呼びかけ人になりました。みなさん共通に強い危機感をもっていると思います。

 私たちの署名に大きな反響があったのは、それだけ現場が疲弊し、深刻になっているということだと思います。だから多くの人が協力してくれたのです。

 ―長時間労働や「教員不足」の解決策は。

 給特法の抜本的改正または廃止で教員に残業代を払うようにすることと、教員定数の基準を定めた義務標準法の改正で教員の数を増やすことです。

 教員を増やすことについては、研究者の間で議論する中で、1人当たりの授業の持ちコマ数を減らすことが論点として浮かんできました。筑波大学の浜田博文教授は、小学校の教員が平均週24コマ持っているのを17コマに減らす、中学校の教員は平均週18コマを15コマに減らすことで長時間勤務を解消する提案をしています。

 私がその提案にそって試算したところ、教員は約22万人増やさなければならず、年間約1兆5280億円かかります。かなりの額ですが、これからの日本の社会のためによい教育をするにはこれぐらいのお金の支出は必要ではないでしょうか。国民の中で財源も含めて議論して、合意を形成していく必要があると思います。

 自民党は教職調整手当を4%から10%に引き上げる提案をしていますが、それでは現場の忙しさは何も変わりません。教員に時間の余裕ができるようにすることが必要です。教員を増やさないとあらゆることが解決しません。

 文科省は、少しずつ積み上げて教員の数を増やそうとしていますが、それではいつまでたっても大幅な増加になりません。長時間勤務の問題を抜本的に解決するためにこれだけ必要だと目標を明確にして、段階的に増やしていく。いまはゴールが見えないから教員のなり手がいない。ゴールが見えれば若い人たちももう一度、教員になることに目を向けてくれるはずです。

 ひろた・てるゆき 1959年生まれ。専門は教育社会学。2015~21年、日本教育学会会長を務める。著書に『教育は何をなすべきか―能力・職業・市民』『教育改革のやめ方』など。


これからの国を創るのは子どもたち。
しっかりと予算をつけてほしいものだ。


尾木ママ尾木直樹さん「学校をブラック職場にしてはなりません」

2023年12月24日 | 教育・学校

 精神疾患で休職の教員が過去最多 「お金も人ももっともっと投入すべきでは?」

2023.12.23 © 中日スポーツ 提供

 教育評論家の「尾木ママ」こと尾木直樹さんが22日、自身のブログを更新。2022年度に精神疾患で休職した教員数が過去最多となったことについて、「学校をブラック職場にしてはなりません」と思いをつづった。

 文部科学省の人事行政状況調査によると、昨年度、公立の小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は6539人で過去最多だった。

 「先生を救え!先生に余裕を――」のタイトルで投稿した尾木さんは「6539人、初の6千人を突破。1ヶ月以上の病気休職者は、12192人。やはり過去最多です」と指摘。さらに「中でも20代の先生が1番多いのも重大な問題です。先生不足が2500人以上。これじゃ、子どもたちの不登校が30万人にもなるのもわかります。子どもたちを直撃しているのです――」と嘆いた。

 そして「学校をブラック職場にしてはなりません」といい、「お金も人ももっともっと投入すべきではないでしょうか?」と提言した。


もうとっくに「ブラック」です。
今の自公政権では実現しません。
政権交代が必要です。

クリスマスですね。
一日も早い「停戦」を贈りたいですね。


STOP!学校の長時間労働

2023年12月20日 | 教育・学校

全日本退職教職員連絡協議会事務局長 白瀬美弘さん

2023年「しんぶん赤旗」2023年12月19日

悲鳴聞き 退職教員立つ

 全日本退職教職員連絡協議会(全退教)は、全教、新日本婦人の会、教組共闘連絡会とともに13日、「学校に希望を!長時間労働に歯止めを!ネットワーク」を結成しました。▽教育研究者有志が呼びかける全国署名を広げる▽X(旧ツイッター)などで長時間労働解消について拡散▽各地のイベントや経験の交流―を進めます。

現場で進む分断

 なぜ、退職教職員がここに参加したのか。今の教員の働き方では学校がもたず、子どもの声を受け止めた豊かな教育ができなくなると考えたからです。

 再任用や非常勤職員として働く退職教員がたくさんいます。65歳まで年金が支給されないという事情もありますが、最大の理由は深刻な教員不足です。

 70歳を超える人にも「現場を助けてほしい」と声がかかります。産休や育休、病休の代替教員を探して、副校長が1日100本も電話をかけている、という話も聞きました。過酷な働き方で体を壊して休み、希望を失って教員を辞め、そこを補う教員を配置できずにますます現場は大変になり、志望者も減る…。まさに悪循環です。

 加えて、現場に戻った退職教員が最近強く感じているのは、教員や保護者の分断です。過重な業務による長時間労働もつらいのですが、関係性を断ち切るような管理・統制もつらい。バラバラにされる苦しみも、教員不足を招いているのです。

 教員の魅力は、子どもとかかわることで子どもが成長し、私たちも子どもから学んで成長できるという醍醐味(だいごみ)です。教育観の違いはあっても、子どものことを話していけばどこかで一致点が見えてきて、教員もつながることができます。

 不登校が増えているように、子どもが悲鳴をあげています。こうした声をしっかり受け止めるためには、教職員の働かされ方を早急に改善しなければなりません。何よりも、こうした大変さを知りながらもなお、教員を目指す若者たちの希望を奪ってはなりません。

「戦場に送るな」

 全退教は「岸田大軍拡反対、改憲ストップ 全国退職教職員ボイスアクション」に取り組んでいます。「教え子を再び戦場に送るな!」という不朽のスローガンから、72年がたちました。岸田政権になって最大の平和の危機に直面するいま、大軍拡ではなく教育・福祉を豊かにとの願いを、1枚のはがきに込める取り組みです。

 すでに千枚以上が私たちの手元に届いています。「子どもたちがのびのびと学習し、生活できているのが最高の幸せですね。争いごとや戦争に子どもたちを巻き込みたくないです」「こんな低い教育予算である一方、アメリカの武器を爆買いし、軍事大国化する岸田政権は今すぐやめてもらいたい」「子どもたちに豊かな学びを保障するために『教員不足の解消』『業務量に見合った教員の配置』をしてください」―。平和への思い、教育・労働環境改善の願いが切々とつづられています。

 宣伝行動で若者が飛び入りでスピーチするなど、共感が広がっています。こうした声を国民の中に広げます。

 子どもが安心して過ごせる学校へ。私たちも力を尽くします。(堤由紀子)


やらねばならんことはたくさんあります。
軍事費を削って、また戦争が起きないように努力することこそ憲法に合致する態度です。

久しぶりに晴れました。
今月初めに散髪に行ったのですが、あまりにも待ち人多くてあきらめ、きょう再挑戦です。
こちらは雪が降っていました。


子どもだけで公園遊びも「虐待」に。

2023年10月07日 | 教育・学校

埼玉県議会の条例案が委員会で可決。「順番違う」と子育て当事者

「子どもだけで公園に遊びに行かせる」「子どもだけでおつかいに行かせる」「小学3年生以下だけで登下校する」といったことも、条例案が禁止する行為に含まれる。
 
ハフポスト2023年10月06日 

罰則規定はないものの、対象となる行為の幅が広く、働きながら子育てをする保護者らにとって負担の大きいものだからだ。

埼玉県議会では10月6日、この条例案が福祉保健医療委員会で原案通り可決された。

改正案、どんな内容?

改正案は、小学3年生以下の子どもを養護する保護者らに対し、「児童を住居その他の場所に残したまま外出する」などの「放置」をしてはならない、と定める

さらに県民に対し、条例が禁止している行為を発見した場合は、「速やかに通告または通報をしなければならない」と義務を課している

一方、小学4〜6年生については「努力義務」とした。

「子どもだけで公園に遊びに行かせる」「子どもだけでおつかいに行かせる」「小学3年生以下だけで登下校する」といったことも禁止行為に含まれる。

提案理由について、自民党県議団は「児童が放置されることにより危険な状況に置かれることを防止するため」と説明している

7〜15歳の子ども3人を育てる、みらい子育て全国ネットワーク代表の天野妙さんは、改正案について「何より順番が違うのでは」と疑問を呈する。

「多くの親は、生活のために毎日時間もお金も必死にやりくりをしています。保護者がフルタイム勤務であっても公立の学童には入れず、民間の学童もない地域もある。子どもを預ける場所を探すのが難しい現状があります」

天野さんは、チャイルドシッターなどのサービスを利用したくても経済的な負担が大きいことや、信頼できるシッターを見つけることの難しさを課題に挙げる。

厚生労働省の統計によると、放課後児童クラブ(学童保育)を利用できなかった児童数は2022年に1万5180人に上った。都道府県別では、東京都(3465人)に次いで埼玉県は全国で2番目に多く1554人だった。

仕事に出る間に子どもを預けたくても、受け皿が十分ではない実態がある。

「すでに学童の預け先の確保が追いついていない状況で条例案が成立してしまった場合、どれだけの自治体が対応できるのでしょうか。まずは制度を充実させるのが先であるべきです」(天野さん)

低学年の児童のみでの登下校が禁止となった場合、保護者にとって毎日の付き添いは大きな負担となる。

「親が働いていて登下校に付いていくことが難しいとなると、PTAなどからボランティアで人を出してもらうことになります。ですが人手不足でそれにも限界がある。結局、専業主婦(主夫)や自営業者にしわ寄せが行くことになるのではないでしょうか」(天野さん)

ニュージーランドやオーストラリアの一部の州など、子どもの留守番を禁止し、違反した場合に罰則を科す国・地域もある

海外でのこうした事例について、天野さんはチャイルドシッターの普及率や利用料金、行政によるサポート体制などが日本とは異なると指摘する。

10月6日の委員会での原案可決を受け、改正案の見直しを求めるネットの署名キャンペーンも開始した

改正案は定例会最終日の13日に採決される予定。可決されれば、2024年4月に施行される。


これもひどい条例案だ。
わたしも先ほど反対の署名した。

しっかりと現状を把握して考えてもらいたいものだ。
なんか裏に例の「宗教団体」が関係しているのではないかと思ってしまうのだ。

今朝のハウス内氣温7℃。
梨が食いちぎられて4.5個落ちている。
なんだろう?
アライグマかな?
てなわけで今日すべて収穫してきた。

さて、今日も落葉キノコ。

大根おろしで食べたいが今年の大根は全滅。


「東京新聞」社説 信じられる大人がそばに

2023年08月21日 | 教育・学校

「東京新聞」<社説>週のはじめに考える 2023年8月20日 

 夏になると、読み返したくなる。「スタンド・バイ・ミー」は、そんな小説です。一九八〇年代に映画化もされ、大ヒットしました。同じタイトルの主題歌を記憶している読者の方々も、多いのではないでしょうか。

 物語の舞台は、六〇年の米国の田舎町。夏休み最後の週末に、十二歳の少年四人が冒険に出ます。四十キロほども離れた森への、一泊二日の旅です。

 満ちあふれる好奇心。真っすぐな勇気。そして友情。少年たちのみずみずしい生命力に、深い感動を覚えます。

 しかし、作者スティーブン・キングが描いた別の一面に気が付かないわけにはいきません。それは、子どもたちの「敵」としての大人の姿です。

◆生きづらさから暴力に

 戦争で心を病んだり、貧困の中で酒に溺れたりして、息子に暴力をふるう父親たちが登場します。長男を偏愛するあまり、次男に無関心な両親がいます。

 幼いから簡単にだませるだろうと商品の代金を過大請求する店主や、現金を横領する教師…。著名な青春文学も、見方を変えれば大人に対する告発文のようです。

 私たちはこれを、ひと昔前の小説の中の、米国での話と、片付けることはできません。

 体や心を傷つける不適切な子育ては、英語で「マルトリートメント」と呼ばれます。「虐待」より広い意味で使われ、体罰や暴言、無視、親の不和や不在、ゲーム機やスマートフォンの安易な買い与えなども含みます。

 そうした家庭や社会の歪(ひず)みは今の日本で、子どもの不調に表れているのではないでしょうか。

 その一例が、校内暴力の激増です。二〇二一年度に暴力をふるった小学生は約三万六千人と、十年前の約五倍。低年齢化が著しく、小学一年生では約二十倍です。

 こうした暴力は、いじめや不登校などに結び付くだけではありません。

 臨床教育学を専門とする白梅学園大学の増田修治教授(65)によると、暴言や教室からの離席などと合わせて、授業を正常に行えない「学級崩壊」が各地で広がっています。それは、クラス全員の学びを阻害しています。

 「子どもたちの発達の危機だ。自分の価値観だけで動き、他人の気持ちを推し量ることのできない子どもが増えている」

 こう懸念する増田氏は、かつて小学校教師を二十八年間務め、崩壊学級を多く担当してきました。多様な親子と向き合ってきた経験から「問題行動を起こす子どもの多くが、家庭に困難さを抱えている」と指摘します。

 子どもたちの「生きづらさ」の原因は、貧困や家族の介護などさまざまです。増田氏は大学の授業で、教職を目指す学生らにこう説き続けています。

 「子どもたちはランドセルと一緒に、生活の重みを背負って学校に来ます。教師の役割は悲しみや苦しみについて共に考え、それを軽くしてあげることです」

 「クラス全員が『私は先生に一番愛されている』とそれぞれに感じた時、学級づくりが成功したと言えるんですよ」

◆人のぬくもり届けねば

 国は、子育て支援の充実を掲げて、デジタル化による学校改革も進めています。

 ただ、家庭の金銭負担を軽減したり、パソコン教材で興味を引くだけでは、子どもの不調は解消しないでしょう。

 SOSを受け止める、ぬくもりを持った人間が不可欠です。地域の人々の力を借りて、機能不全に陥る家庭や学校に質の高い支援の人材を送り届け、手厚くする。そして、生きづらさを社会全体が減らすことが必要です。

 人間への信頼を実感させ、生きる意欲を持たせてあげたい。それらを欠いたまま大人になる子が増えれば、未来の社会の根幹が揺らぐと言わざるを得ません。

 「スタンド・バイ・ミー」の作者キングの生い立ちをご存じでしょうか。二歳の時、父親が借金を残して失踪し、貧しい母子家庭で文章を書き始めました。

 この小説の中で、ある少年が言います。「子どもってのは、誰かが見守っててやらないと、なんでも失ってしまうもんだ」。キングの心からの叫びでしょう。

 スタンド・バイ・ミー、つまり「そばにいて」。子どもがなかなか言えない言葉の重みを受け止めたい。そして、身近なところに信頼できる大人がいるよ、と言える社会を築いていきたいのです。

 

⁂     ⁂     ⁂

トー横キッズの背景(上)

居場所を求めて

「しんぶん赤旗」2023年8月21日

 東京都新宿区の繁華街、歌舞伎町シネシティ広場かいわい、通称「トー横」(新宿東宝ビルの横)に居場所を求めて集まる未成年たち。彼らは「トー横キッズ」と呼ばれ、トー横が売買春や薬物乱用の入り口になっているなどと報道するメディアもあります。背景には何があるのか。行政や支援団体はどう向き合っているのか。新宿で活動する支援団体の一つ、公益社団法人「日本駆け込み寺」の活動や、地方議員の取り組みから考えました。(横田和治)

 8月上旬、映画館脇の広場。観光客や通行人が行き交う中、10~20代とみられる男女6~7人ずつのグループがいくつか、壁際などに座り込んでいました。段ボールを敷いて寝転がる人も。すぐ隣にはホームレスとみられる男性の一団が、やはり段ボールを敷いて座っていました。

 歌舞伎町で20年にわたりDV相談や性売買から、金銭問題、心の相談までさまざまな問題について当事者から無料で相談を受け、解決に導いてきた公益社団法人「日本駆け込み寺」創設者の玄秀盛(げん・ひでもり)代表理事は現状についてこう話します。

生きていくため

 「居場所のない子たちが生きていくにはお金が必要です。少女はSNSを利用して性売買などせざるを得ず、それにおとなが群がります。また、少年たちはそれらのあっせんや万引き、詐欺まがいの違法行為などをして生活の糧にしています。現実逃避や多幸感を目的にオーバードーズをし、自傷行為や自殺未遂など命にも関わる事案が頻繁に起きています」

 駆け込み寺の活動に同行しました。

 日中の炎天下。駆け込み寺スタッフと地元ボランティアのパトロール兼清掃活動です。40リットルのごみ袋を何枚も台車に配備し、清掃活動をしながら町を歩きます。

 スタッフが少女にティッシュを渡しながら、「事務所に無料のギョーザ弁当あるよ」。するとトーンの高い声で「わかった、行くよー」と返し、心もとないフワフワした足取りで事務所の方に向かいます。

 18歳だという青年が、ボランティアの肩にもたれかかりながら事務所に向かう姿も。事務所の食堂ではスタッフと子どもたちが談笑する姿もありました。

 「家出した子どもたちが『トー横』に集まり始めたのは2018年ごろからと言われています」と玄代表理事が説明します。

 その後、コロナ禍を背景に家族が自宅で過ごす時間が増え虐待などが増加。家にいられない子が居場所を求めて集まるようになりました。「ここにいる」という情報が若者同士のSNSでも共有され、拍車がかかったといいます。

まずはつながり

 日本駆け込み寺が「トー横」の問題に取り組んだのはコロナ禍の22年から。行き場をなくした子たちは無償でサポートしようとするおとなを警戒しており、会話をするのにも時間がかかりました。

 「まずは彼らの居場所をきれいにするため清掃活動を始めました。そして無料で配るティッシュや水に事務所住所を記載して渡す。私たちは子ども食堂もやっているので、まずはつながって、足を運んでもらう。一緒にご飯を食べて、会話が生まれる。その中で信頼関係が生まれるんです」 (つづく)


 氣になる子がいたら声掛けしてみてください。
うるさいジジババと想われてもそこからしか「関係性」はできません。
でも、「直球」はダメですよ。
まずは天気の話などから…

 


止まらぬ科学力低下 技術立国の旗、降ろすのか

2023年08月15日 | 教育・学校

終戦記念日である。
今日の「全国戦没者追悼式」においてもキシダの2枚舌が健在であった。
この記念すべき日に、これからの日本の在り方など考えていただけたらと、少し角度の違った方面から考えてみた。

 

中国新聞 社説 2023/8/13

 科学者の研究力低下に歯止めがかからない。

 研究内容が注目され、同じ分野の科学者に数多く引用される「注目論文」の数で、日本はイランに抜かれ、過去最低の13位にまで落ち込んだ。

 はなから低迷していたのではない。30~40年前は米国や英国に次ぐ世界3位だった。その後も20年ほど前までは4位を維持していた。

 おととし10位に下がって学術界に衝撃を与え、さらに昨年は韓国とスペインに追い抜かれて12位に落ちた。一体どこまで下がるのだろう。抜本的な対策が求められる。

 最新の順位は、2019~21年の平均発表数などを基に文部科学省の科学技術・学術政策研究所がまとめた。

 見過ごせないのは、政府の危機感の乏しさだ。「順位のみで議論する際には注意が必要」という。今後の状況で大きく変動する可能性があるとして、順位は気にしていないようだ。年々、深刻さを増している科学力低下をあまりにも軽んじてはいないか。

 そもそも低下を招いたのは科学技術政策の失敗だ。2004年度に政府が強行した国立大の法人化である。その研究・教育の土台を支えていた運営費交付金を最初の10年で1割以上も減らした。

 金集めに苦労する地方大学などを揺るがし、研究者の裾野を狭めてしまった。そうなれば、山の頂は低くなることは予想しなかったのか。

 同政策研究所も指摘している。注目度の高い論文を増やすには、トップクラスの大学だけでなく、「群としての研究力の向上が必要だ」と。にもかかわらず、逆のことを政府は今なお続けている。

 運営費交付金の減少を受け、多くの大学は人件費を抑え込んだ。あおりで、任期付きという非正規のポストが増え、腰を据えた研究の見通しが立てられず若手が苦しんでいる。長期にわたる基礎研究を断念せざるを得なくなったり、よりよい環境を求めて海外に出て行ったり…。

 これでは、国内の大学院博士課程への進学者が減るのも当然だ。科学技術立国を支える人材の育成基盤を政府が掘り崩したと言えよう。

 東京大学長を務めた有馬朗人・元文相は生前、自ら道を付けた国立大の独法化を失敗だったと認めていた。最近相次いだ国産ロケットの打ち上げ失敗などにも、何か影響を与えているのではないか。

 岸田文雄首相は21年秋の自民党総裁選の時から、10兆円規模の大学ファンド設立を掲げるなど科学技術に力を入れる姿勢を見せている。政権初の骨太の方針でも、科学技術立国「再興」を打ち出した。

 科学力は衰える一方だと認識しているのだろう。ただ、対応は不十分だ。10兆円ファンドにしても、資金提供先は3大学に絞られ、幅広い大学を支援して研究を底上げするには程遠い。

 鉱物資源に乏しく、食料さえ自国では調達できない。そんな日本が未来に向けて選んだのが科学技術立国だった。その旗を掲げ続けるのなら、まずは科学技術政策の検証こそが急がれる。

 

⁂     ⁂     ⁂

 

もし資金集めがコケていたら…国立科学博物館、5億円集まったけど 残るモヤモヤ感の正体

「東京新聞」2023年8月11日

 国立科学博物館(科博)が7日、インターネットを通じて寄付を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。光熱費の高騰で標本や資料を保存する資金に窮しているためだという。短時間で目標額の1億円を突破。既に5億円超が集まり、金額的には成功といえる。しかし、CFがコケていたらどうなったのだろう。学術研究に対する国の支援の在り方に問題はないのか。(木原育子、安藤恭子)

◆#地球の宝を守れ と呼びかけ

 10日、東京・上野公園(台東区)内にある国立科学博物館を見に来た。入り口でデゴイチの愛称で人気の「D51」型の蒸気機関車(SL)が出迎えてくれた。

 2つの施設のうち「日本館」は国の重要文化財に指定されている。昭和初期に造られたネオルネサンス様式の建物が、近代建築の歩みを感じさせる。中をのぞくと夏休み中だからか、親子連れでごった返していた。

 そんな科博のCF。来場者はどう思っているのか。辺りで聞いた。

 小3の長女(9つ)と年長の男児(6つ)とともに訪れた東京都八王子市の鷹見裕子さん(36)は「大賛成! ぜひ続けてほしい」と身を乗り出した。「子どもたちが恐竜の模型が大好きでよく来るが、こんなに充実した施設はない。子どもたちのためにもぜひ」と続けた。

 科博は、地球の成り立ちや自然に関する動植物の標本や恐竜の化石、鉱物の資料など500万点以上を保管する国立で唯一の総合科学博物館だ。保管には厳格な温度や湿度の管理が必要だが、光熱費が高騰。コロナ禍に伴う来館者の減少も重なり、資金繰りが苦しくなったとして、7日、CFを開始した。知名度の高さもあってか、約9時間で目標額の1億円を突破した。

 同日の会見で、科博の篠田謙一館長は「標本は未来の日本人全体の宝。こんなにも早く達成できたことに驚くとともに感謝している」と喜んだ。支援額は伸び続け、10日夕現在、5億5000万円が集まっている。

◆「国は国民に甘えてる」本来なら税金では

 しかし、金融機関をリタイアしたばかりという男性(60)は首をひねる。「資金が集まってよかったが、本来は国が税金を使ってやること。国は国民に甘えてる」と訴えた。「そもそも博物館は日本人全員の財産だが、入場料も高めで皆に等しく開かれているといえるのか」とヒートアップ。夫と一緒に来た博物館好きの女性(37)も「これで国が味を占めないといいのですが…」と冷ややかだった。

 科博周辺には外国人観光客の姿も多かったが、海外ではどうか。観光旅行中のフランス人のダフネさん(30)は「フランスでも博物館の資金が足りず、寄付を募ることはある。どこも同じね」と口角を上げた。同じく観光中の米国人のダニエルさん(47)は「父親が軍人で全博物館の入場料は生涯無料だった。満足度に応じて観覧者が入場料の額を決められる美術館もあった。運営の在り方は国によってそれぞれだ」と続けた。

◆「英国の博物館はほとんど入場無料」ここは有料

 一方、イギリスから都内の大学に留学中のエスメさん(24)は「ナンセンス!」と肩をすくめた。「英国の博物館はほとんど入場無料。資金をなぜ国民が出すのか信じられない。国の責任だ」ときっぱり話した。

 国内では最近、科博以外の博物館でもCFが導入されている。例えば国立歴史民俗博物館(千葉県)の「正倉院文書」複製制作プロジェクト。奈良国立博物館の庭園内茶室「八窓庵はっそうあん」の保存活動でも実施された。

 永岡桂子文部科学相は8日の会見で、科博のCFが目標額を達成したことについて、「文科省も鋭意予算措置を行っている」としつつ「博物館による自主的な予算獲得の努力だ」と評価。CFが博物館運営の一端になることを期待した。

◆クラウドファンディングに関係者「異例で衝撃」

 「過去の知見を集め、人々の好奇心を刺激し、未来につなげる結節点となるのが博物館。博物館にある標本は人類共通の財産だ。科博がCFで多くの国民の支持を集めたことは喜ばしいが、博物館員の1人としては複雑な思い」。こう話すのは、保全生態学を専門とする兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく)の橋本佳延主任研究員だ。

 橋本さんが気にかけるのは、今回のCFが博物館業務の根幹を支えるものであることだ。ひとはくでも移動博物館車などの企画でふるさと納税を通じた寄付を募ったという。だが「博物館の命といえる標本の保存整理という業務を、CFで賄おうというのは異例で、衝撃だった」と述べる。「『このままでは国民の財産を守れない。窮状を知ってほしい』という科博からのSOSとも受け止めた」

◆「自助努力を求められても…」

 ひとはくも約60万点の植物標本のほか、昆虫や鳥類の剥製、恐竜の化石などを集めているが、1992年の設立から30年以上たち、老朽化に伴い旧収蔵庫の湿度などの空調に支障が出ている。光熱費の高騰に対応するため、この夏も午後5時の閉館後は人がいるエリアの空調を止めるなどして、節電にも取り組んでいる。

 こうした施設の老朽化に伴う資金難は、各博物館に共通の課題という。「自助努力を求められても、入館料は博物館法の定めもあって高額にはできない。寄付を募るとしても、学芸員が1人しかいないような小規模館では、CFを企画するのも困難で、科博のようなことは地方の博物館ではできない。科博のCFも本来は国が工面すべき費用だった」と話す。

◆勝ち組と負け組に分かれるかも

 日本の研究力を巡る問題に詳しい「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表理事は、科博などの独立行政法人(独法)に競争的資金枠を設ける国の方針を懸念する。ふるさと納税の返礼品競争と重ね合わせ、「科博のような人気館はいいが、博物館の間にCFが広がり、人気投票による資金獲得競争となったら、勝ち組と負け組に分かれ、生き残れなくなる館も出てくるのではないか。魅力的な展示や情報発信といった館の機能を競い合うのが、本来の形だ」と主張する。

 独法の科博は、収入の多くを国からの運営費交付金で賄っている。だが自助努力を重視する国の姿勢のもと、科博のような独法や国立大学への運営費交付金は、減少傾向にある。

 サイエンスライターの竹内薫さんは「欧米の博物館は、個人の寄付が日本より多い。今回のCFにより、個人寄付者の掘り起こしができたことは良い」とみる。

 一方で「博物館だけでなく、国立大でも交付金の減少は悪い結果として出ていて、影響力のある論文数の世界ランキングが落ち続けている。科学技術を含む文化芸術活動は未来への投資。交付金削減政策はすぐにでも見直すべきだ」と指摘した

◆クラファン、当たり前なら「この国は終わり」

 「文科省が『お金がないならクラファンすればいいじゃん』と思うようだったら、この国は終わりだな。これは博物館行政に対する痛烈な批判だと受け取るべき」と、X(旧ツイッター)に投稿したのは東大公共政策大学院の鈴木一人教授(国際政治)。「貴重な自然史資料を守り、研究の場を守り続けてほしい」と、科博のCFに協力した1人でもある。

 学術研究に冷たい日本の現在地をこう憂える。「明治以来、先進国に追いつけ追い越せの一点張りで、ハコモノは造っても専門家に任せたまま。国としての哲学がないことが今回のCFが社会現象になって露呈した。日本における知の蓄積を生かしていくのか、それとも後世に残さない国でいいのか。国の在り方そのものが問われている」

◆デスクメモ

 防衛省は2024年度予算の概算要求で過去最大の7兆円台の防衛費を計上する方向だという。財源や使途の適正さが不明確でも増額に突き進む。一方で、運営に不可欠な電気代の支払いに苦しむ国立の施設がある。武器に金を使うが、学術にはケチる。それでは文化的な国と言えまい。(北)


「軍事費」集めに必死のキシダ自公政権。
恥も外聞もなく「軍拡」にまい進だ。
倒すしかない聞く耳持たぬ政権。 

台風の進路が変わってきた。昼頃の情報では北海道直撃だったが西にそれた。
風予報も下がったが雨予報もなくなってしまった。

 


若者のミカタ〜今の政策では「教員不足」は解消できない!

2023年06月28日 | 教育・学校

~社会問題化した背景から振り返る

大内裕和(武蔵大学人文学部教授)

Imidas連載コラム2023/06/27

 学校の先生が足りない――そんな悲鳴が全国から聞こえるほど、日本では教員不足が依然として深刻です。2023年5月、この問題の解決を政府に求める緊急集会が国会内で開かれ、教員増員や処遇改善を求める提言が発表されました。

 遡ること22年1月、文部科学省は「『教師不足』に関する実態調査」の結果を公表しました。この調査は67の都道府県・指定都市教育委員会と大阪府豊能地区教職員人事協議会の計68機関を対象としており、全国を網羅しています。21年度の公立学校の始業日時点と5月1日時点について調査が行われました。

 その結果、始業日時点における教師の不足数は小・中学校2086人、高等学校217人、特別支援学校255人の計2558人となっています。そして5月1日時点では小・中学校1701人、高等学校159人、特別支援学校205人の計2065人でした。

 23年5月、教員や研究者らによる「#教員不足をなくそう緊急アクション」が、全国公立学校教頭会の協力を得て、教員不足についての調査結果を発表しました。小学校1243校と中学校542校から回答を得たこの調査では、小学校の20.5%、中学校の25.4%で教員が不足しているとの結果が出ました。各地の副校長、教頭が任意で回答した調査なので、教員不足で困っている学校ほど積極的に声を上げたことは想像にやすく、実際より高めの数字が出ている可能性はあります。それにしても、かなりの数の小・中学校が回答していますから、教員不足が深刻な状況になっていることは明らかです。

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 それでは教員不足に困っている現場は、どのように対応しているのでしょうか?

 教育現場での対応で、まず目立つのは「臨時免許状」の活用です。臨時免許状とは教員免許の一つで、普通免許状を持つ人を採用できない場合に限り、各都道府県の教育委員会が教職員検定合格者に3年間の期限付きで交付できる助教諭免許です。この臨時免許状の交付数が増加しています。NHK WEB特集「教員確保の“切り札”  『臨時免許』増加のワケは?」(2023年5月)の取材調査によれば、22年度の臨時免許状の交付数は1万572件に達し、正確な記録が残っている12年以降、最も多くなったことが分かりました。

 次に、教員免許を持っていない社会人にも、教員採用試験の受験を認める動きが広がっています。埼玉県は24年度の公立学校教員採用試験において、民間企業等で5年間の本採用勤務経験がある人を対象とした「セカンドキャリア特別選考」を新設しました。これによれば、教員免許がなくても教員採用試験を受けることが可能となります。また、東京都では40歳以上を対象に、教員免許なしで教員採用試験を受けることができる「社会人特例選考」を22年度から導入しました。さらに23年度からは、この年齢要件を大幅に引き下げて25歳以上とし、対象を拡大しています。

 並行して教員採用試験の前倒しも進められています。東京都では23年度から1次試験の教職教養と専門教養を、大学3年次等から受験できるようにしました。富山県でも24年度から小学校教員採用試験(一般選考)の1次検査が大学3年次に受験可能となりました。川崎市では23年度から、大学の推薦を得た3年生を対象に小学校教員採用試験の特別選考を新設し、事実上の内定が決まる2次試験の結果を同年の10月中旬に発表予定としています。

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 この臨時免許状の活用、教員免許なしでの採用試験受験の容認、採用試験の前倒しは、いずれも教員不足を解消するために進められている政策と見ることができます。しかし、これらの政策は教育現場にとって、望ましいものと言えるでしょうか?

 臨時免許状の活用は、教育の質を引き下げる危険性が高いと思われます。例えば先のNHK WEB 特集では、小学校の教員不足に対し、中学校や高校の教員免許取得者に臨時免許状を交付するケースが多いとありました。しかし中学校や高校の教員免許取得者はほとんどの場合、特定の教科を教える免許だけを持っています。そんな人が小学校の先生となって、さまざまな教科を十分指導するのは容易ではないでしょう。また、中学校や高校の教員に採用されたとしても、本来教えられる教科以外を教えるのは、専門性の点から疑問符が付きます。

 教員免許なしでの採用試験受験の容認も、問題が大きいと言えるでしょう。社会人経験があるだけでは、教員として必要な知識や能力などの条件を満たすことにはなりません。本制度では埼玉県、東京都ともに、合格後2年以内に教員免許を取得することが条件になってはいます。その2年間で、大学の教職課程と同レベルの育成ができるかどうかには大きな疑問を感じます。

 教員採用試験の前倒しはおそらく、教員採用の決定が一般企業の内定時期よりも遅いことから、試験日程を少しでも早めることで教員志望者を確保することが狙いでしょう。しかし、この政策も弊害が予想されます。4年制大学での教職課程は、2年次から本格的にスタートすることが多いのです。1年次には一般教養課程として語学や各学部ごとの必修科目を中心に履修するため、教職課程の科目を多く履修することはカリキュラム上困難です。もしも3年生で教員採用試験を受けるつもりなら、教職課程の履修が始まったばかりの2年次から試験対策を始めるというスケジュールになりかねません。それでは採用試験の準備に追われて、本来学ぶべきさまざまな科目をじっくり学ぶことができなくなるおそれがあります。

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 こうした私の意見について、「教員不足がこれだけ深刻なのだから、人数を揃えるためにはやむを得ない政策だ」と考える人もいるでしょう。確かに、学校で学ぶ子どもたちにとって「先生がいない」というのは「あってはならない」深刻な事態ですから、教員を確保するための緊急措置が一定程度求められることは間違いないでしょう。

 しかし、臨時免許状の活用、教員免許なしでの採用試験受験の容認、採用試験の前倒しなどの政策は、すでに述べたように教育現場に悪影響を与える危険性こそあれ、教員不足を根本的に解決する術にはなり得ません。なぜなら、これらの政策は教職課程や教員免許の価値を引き下げるものに他ならないからです。

 現在の教員不足に至った要因は、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)による不当な待遇や、部活動の過熱等による労働環境の過酷化、政治や社会からのバッシングがもたらした「教員という存在」「教育という仕事」に対する価値の低下にありました。09年に導入され短期間で廃止となった「教員免許更新制」という愚策も、教員に対するバッシングを原動力として成立したことは記憶に新しいところです。

 将来の社会の担い手を育てる必要性は感じていても、「教員」や「教職」の価値がないがしろでは、意欲を持ってこの仕事に就こうという人が増えることはないでしょう。これまで述べてきた、教員の人数を揃えるためだけに教職課程や教員免許の価値を引き下げるような政策に依存することは、長期的にはますます教員志望者を減らし、教員の質の低下や教員不足を深刻化させる危険性が高いと思います。

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 この問題を考えるうえで、最近とても参考になる本に出会いました。朝日新聞の編集委員をつとめる氏岡真弓さんの著書『先生が足りない』(岩波書店、2023年4月)です。本著ではこの問題を長期にわたって取材してきた著者によって、教員不足が生み出された社会的背景が丁寧に考察されています。

 私が注目したのは、11年1月10日付の朝日新聞記事「先生欠員 埋まらない」に対する反響です。この記事は1面トップに掲載されたにもかかわらず、読者からの反応はほとんどなかったそうです。この反響のなさについて氏岡さんは、当時不足していたのが正規教員ではなく非正規教員だったからではないか、と推測しています。正規教員が病気や出産で休んでも、その穴埋めをする非正規教員がいないことが問題点であったため、教員不足の社会問題化が遅れたと論じます。

 また教員不足が社会問題となるのが遅れた別の理由として、教員の労働問題ばかりがクローズアップされて、子どもが学ぶ権利の問題として捉える視点が弱かったことも挙げています。子どもにすれば「先生がいない」ということは、学ぶ時間、育つ時間そのものが奪われていることを意味します。そのことの重大さを、周囲の大人たちが十分に認識してこなかったことが社会問題化を遅らせ、事態を一層深刻化させたと氏岡さんは考察しています。

 同書を読むことで、教員不足問題の構造的要因を多面的に考えることができました。非正規教員の不足を報じた記事への反響のなさは、日本社会に深く浸透している非正規雇用労働者への差別意識を示しているようにも思えます。

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 2000年以降、公教育予算を削減する新自由主義政策として、当時の政府与党や財界支配層が進めた義務教育費国庫負担制度の改悪や国立大学の法人化は、正規教員を減らして非正規教員に依存する状況を生み出しました。それが今日、教育の不平等を促進したばかりでなく、教員の不足をももたらしたとなれば、強く批判されなければなりません。加えて、非正規教員の増加に対し、社会的抵抗が十分に行われたかどうかも検証する必要があると思います。コスト削減という名目の下、社会の側に非正規教員への依存を「やむを得ない」と受け入れてしまった面があったなら、そのことも問い直さなければなりません。

 誤解しないでいただきたいのですが、私は非正規教員そのものを否定的に捉えているのではありません。さまざまな事情で非正規職を選んでいる人もいますし、正規教員と全く遜色ない教育実践をされている人が多数いらっしゃることもよく知っています。ここで言いたいのは教育予算削減のために正規教員採用を抑制し、非正規教員依存の状況をつくり出してきた教育政策の瑕疵(かし)と、それを受け入れてきた社会意識への批判です。

 氏岡さんがおっしゃるように、教員不足を「子どもが学ぶ権利の問題」として捉えることも重要です。公教育、特に義務教育では、すべての子どもの「学ぶ権利」を守ることが必要ですから、教員不足という現在の状況は教育の危機――そして将来の担い手を育成する条件に欠落が生まれているという点では、日本社会の重大な危機を示していると思います。

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 教員不足に対する今の政策は、前述したように単に不足人数を揃えるための「数合わせ」であり、教育現場に悪影響を与える危険性があるばかりでなく、教員不足を引き起こしたこれまでの政策への反省を欠いています。この「数合わせ」政策は、「低コストで人数を揃える」という点では、非正規教員を増やしてきたコスト削減政策とよく似ています。

 コスト削減によって非正規教員依存の構造をつくり出し、正規・非正規を問わず教員の労働環境の過酷化に歯止めをかけてこなかったことが、教員免許取得者における採用試験受験者数の減少、教員免許そのものの取得者数減少といった事態を引き起こし、ついには「子どもの教育を受ける権利」を保障できない事態にまで至っている現実を、政府や地方公共団体はもっと真剣に受け止めるべきです。

 教員不足を解消する「数合わせ」のために、教職課程や教員免許の価値を引き下げることは間違いです。教職課程で学び、教員免許を取得した学生たちが希望を持って教員を志望できる労働環境の整備を早急に行い、「教員という存在」や「教育という仕事」の価値を引き上げる努力を開始することが、日本社会に強く求められています。


日付が変わるころから☂の予報だったが寝る前にはまだ降りそうもなかった。
朝、目が覚めて雨の音も聞かなかったなあと思いながら外を見るとアスファルトがかすかに濡れていた。
霧雨が空中を漂ったレベルである。
少し離れた畑も同じようなレベルであった。
午後からの☂マークもなくなってしまったが、時折黒い雲が近づいてきて期待させるのだが、無残にも打ち砕かれるのである。
明日も昼から☂マークがついているが、どうだろう?
明日は札幌に行ってきます。


内田樹「間違った教育行政には『それは違う』と立ち上がる勇気が必要」

2023年04月12日 | 教育・学校

AERAdot 2023/04/12

 小学校の先生たちが来訪して、教育現場について生々しい話を伺った。「教育崩壊」の一歩手前まで来ているということだった。教員不足が深刻な事態になっている。仕事は増え続け、自由裁量の幅は狭められ、管理職に細かく査定され、保護者からのクレームには頭を下げ……という現状では教員志望者が減少して当然ですと言われた。そうだろうと思う。

 今はどこでも教員たちは「組織マネジメント」によって統制されている。この組織マネジメントなるものは「どうやったら教員たちは毎日上機嫌で働くようになるか」ではなく、「どうやったら生産性の低い教員、上位者の命令に従わない教員に罰を与えるか」を優先しているように私には見える。しかし、市民たちはこの「教員いじめ」に特段の関心を寄せていない。この種の統制は教育活動を質的に向上させる上では有害無益なことだと私は思う。現にそのせいで「教員のなり手がいない」という事態を迎えることになっているのである。

 教員数はぎりぎりで、70歳過ぎの退職者にまで出講を依頼しているが、それでも誰かがバーンアウトして離職すると、もう補充がきかない。「1人の教師が2クラス、3クラスをオンラインで教える」という事態が到来するのも時間の問題だという。「子どもたちと顔を合わせることができないなら、それはもう教育とは言えません」と教員が訴えても、「だったら、教え上手の先生のビデオ授業を配信して、子どもたちにはそれを見せておけばいい」と言い放つ教育関係者もいると聞いた。もはや末期的光景である。

「どうしたらいいでしょう」と問われたので、「戦いなさい」と答えた。今の教育行政は間違っている。いくら教員の心身を痛めつけても、子どもたちの市民的成熟に資するところはない。

 上からの命令でも筋の通らないことについてはきっぱり「ノー」を告げるべきだ。そのために必要なのは「勇気」だと申し上げた。マジョリティーが一方向に向かっている時、ただ一人で「それは違う」と立ち上がるためには勇気が要る。そして、日本の学校教育が久しく子どもたちに教えようとしなかったのは「勇気を持つこと」だった。

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

※AERA 2023年4月17日号


 教員いじめがまかり通る学校で児童のいじめ・不登校・じさつを減らすことはできない。加害者に寄り添う学校「管理者」を排除しなければならない。多くの先生が精神を病むような「学校」であってはならない。「個性」のない子どもたちを「作る」学校であってはならない。クレームも必要だろうが励ましももっと必要だ。


「裁判所の見解で本当に学校の教育が成り立つのか」と原告の公立小教員。最高裁が上告棄却、残業代支払い認めず

2023年03月12日 | 教育・学校

「教員の業務は増える一方だ。担任がクラスの子ども1人1人のことを考える余裕すら奪われている」(原告)

金春喜

ハフポスト 2023年03月12日 

「突然の知らせに唖然とした。裁判所には、教員が長時間労働を強いられる現状を厳しい目で見てほしかった」

3月8日夕、埼玉県の公立小学校に勤める男性教員(64)は、弁護士から届いたメールに肩を落とした。

教員の時間外労働に残業代が支払われないのは違法だとして約240万円の賃金を支払うよう、男性が埼玉県に求めた訴訟について、最高裁判所が上告を棄却したとする資料が添付されていたという。

1審・さいたま地裁判決に続いて男性の請求を退けた東京高裁の判決が確定し、男性の敗訴が決まった。

「裁判所の見解で本当に学校の教育が成り立つのか」

公立校の教員の月給に4%(「教職調整額」)を一律に上乗せして支給する代わりに、残業代は支払わないーー。1971年に制定された「給特法」は、教員の給与についてそう定めている。

ただ、同法では、▽実習▽学校行事 ▽職員会議▽非常災害などに必要な業務ーーからなる「超勤4項目」以外の残業を命じてはならないとしている。

男性は、超勤4項目に当てはまらない業務による時間外労働の分の残業代を、労働基準法に基づいて支払うよう訴えた。こうした時間外労働が2017年9月~2018年7月の期間、月平均60時間分の残業に上ったと主張していた。

東京高裁は2022年8月に下した判決で、教員の職務や勤務形態の「特殊性」に触れ、「教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と、校長の指揮命令に基づく業務が日常的に渾然一体となり、正確な峻別は困難」と指摘。

その上で、教職調整額が支給されていることや、「厳密な時間管理を前提にできない」とする教員に労働基準法の賃金制度は「なじまない」ことを理由に、残業代の請求を退けた。

男性は上告。最高裁第2小法廷は2023年3月8日付の決定で、「裁判官全員一致の意見」として、男性側の主張は上告するための理由に当たらないとの見解を示し、棄却した。

男性はハフポスト日本版の取材に、「学校現場の教員の業務は管理職に適切に管理されないまま、増える一方だ。今や担任がクラスの子ども1人1人のことを考える余裕すら奪われている」と説明。

さいたま地裁の判決では、時間外勤務の労働時間に保護者への対応や児童のノートの添削が含れず、翌日の授業準備についても「1コマ5分」しか認定されなかった。こうした点を踏まえ、「裁判所の見解に則ることで本当に学校の教育が成り立つのか疑問。国が現状を改善する必要がある」と話した。

給特法をめぐり、文部科学省は2022年に有識者会議を設置。今後、教員の勤務実態の調査結果をまとめた上で、給特法の見直しについて議論する方針だ。


最近の裁判所は時代に取り残されている感を否めない。
明日「袴田事件」の再審決定されるか注視。

今日は融雪剤(薪ストーブの灰)をまいた。
上下ヤッケを着てマスクして、時たま風が逆になりもろに被ることも。
1回目終わり。
もう降らないでほしい。