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「簡単に要約すると、つまらないおしゃべり」グレタさん、COP26を酷評

2021年11月15日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」2021年11月15日 

 【グラスゴー=藤沢有哉】13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)について、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が「簡単に要約すると、何とかかんとかというつまらないおしゃべり」と酷評した。同日にツイッターに投稿し、「本当の仕事はこれらの会議場の外で続く。私たちは決して諦めない」とも述べた。

 グレタさんは翌14日の投稿では、各国政府が提出した温室効果ガス排出削減目標は「不備のある数値に基づいている」などと指摘。各首脳が削減に向けた誓約を履行することに懐疑的な見方も示した。

 グレタさんはCOP26期間中に開催地の英グラスゴーに入り、大規模デモに参加。演説では「派手な目標を発表するPRイベントと化した」などとCOP26を批判していた。

【関連記事】石炭火力「廃止」が「削減」に…COP26、中国とインドの抵抗で採択直前に文言が変更に


 午前中は7℃くらいあったのですが昼から急激に気温が下がり、小雨模様で3℃。まだ防寒着も着てないので寒い。
 家の窓を雪から守る雪囲い。もう今までのように太い木材を並べて板を張るようなことはできそうもない。木材を立てかけるのが辛いし下手をすると腰を痛めたり、肩を痛めたりの可能性が大きい。無理をしてはいかん。そんなことでモルタル用のネジとドリル刃を買いに行ってきた。工事はいつからかはまだ?

まだ凍らずにあった。

今どきのいちごはゆっくりと赤くなるので美味しいのだ。


若者は本当に右傾化しているのか?

2021年11月14日 | 社会・経済

若者は本当に右傾化しているのか?

 
古谷経衡作家/文筆家/評論家
<picture><source srcset="https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-yn/rpr/furuyatsunehira/00267802/title-1636744973343.jpeg?pri=l&w=800&h=450&order=c2r&cx=0&cy=0&cw=1920&ch=1080&exp=10800&fmt=webp" type="image/webp" /><source srcset="https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-yn/rpr/furuyatsunehira/00267802/title-1636744973343.jpeg?pri=l&w=800&h=450&order=c2r&cx=0&cy=0&cw=1920&ch=1080&exp=10800" type="image/jpeg" /></picture>
今次衆院選における10代投票率は、約43%であった。(写真:イメージマート)

・若者の自民党への投票率が突出?

 2021年衆院選が終わり、11月2日に総務省が10代有権者(18歳・19歳)の投票率の速報値を発表した。それによると、10代有権者の投票率は43.01%であった。

 近年、毎度の国政選挙で言われることであるが、若者(10代・20代)有権者が自民党に投票する傾向が顕著である、とされる。自民党に投票する=右傾化とは即断できないものの、自民党や政権党に批判的な有権者の一部は、これを以て「若者は右傾化している」と結論付けている事実が散見されるのである。

 当然、実際の投票行動は無記名なので、どの世代に於いてどの政党への投票傾向が強いのであるか、を知る手掛かりは報道各社の出口調査に頼って推測するほかない。今次衆院選挙では、テレビ朝日の報道ステーションが投開票日から迅速に、世代別の投票行動の比例代表における推計を出した。それによると、今次衆院選挙における世代別投票行動の推計は以下のとおりである。

図1*筆者制作以下同】

報道ステーションの推計に基づく各世代の投票行動
報道ステーションの推計に基づく各世代の投票行動

 この推計を信用するなら、明らかに若者(10代・20代)の有権者における自民党への投票率は有意に他の世代よりも突出している。自民党への投票行動は10代が頂点で40代・50代・60代でボトムを描き、70代以上でやや増す。しかし40%以上の自民党への投票率を有するのは10代・20代以外にない。なるほど仮に自民党への投票=右傾化を真とするなら、「若者は右傾化している」という毎度の結論もうなづける。

 しかし通常、或る世代の投票行動の特徴は〇〇である、とするには棄権者を含めた100%の母数を基準にしなければならないことは自明である。上記の数字は、あくまで投票所に行った人々の内訳であり、棄権者を含んだ100%の母数でなければ、世代別の投票行動の傾向を断定することはできない。そこで筆者は、現在速報値で示されている10代の世代別投票率、およびまだ速報値が出ていない20代以上の世代別投票率(直近の国政選挙である2019年参議院選挙に基づく)から、このグラフを以下のように棄権者を含めた100%値に改めた。

・自民党への投票率は中高年が圧倒的に高い

図2】

図1に基づいて母数を100%にしたもの(推計)
図1に基づいて母数を100%にしたもの(推計)

 計算方法は実に単純であり、10代の投票率が43%であるから、まずグラフの右側に57%の棄権者を配置する。次に投票を行った有権者のうち、43.5%が自民党に入れたのであれば、その率は43×0.435=18.7となる。これをすべての世代で繰り返す(*10代のみ21衆速報、そのほかは速報値が出ていないので19参,小数点以下を四捨五入した関係上、合計値は100丁度にならない場合がある)。

 すると、図2のように自民党への世代別投票率はがらりと変わる。若者の投票率が極めて低いため、全体的に自民党への投票率が押し下げられ、見事に50代以上の中・高年のそれが高くなる。この図2の仮定が正しければ、或る世代への自民党投票率は、明らかに若者ではなく50代以上の中・高年層が高くなる。もちろん、50代以上の中・高年有権者の中における非自民への投票率も高くなるが、自民党への投票行動に限ると、「若者は右傾化している」とはまったく断定できないということになる。

    さらにこの推計を発展させて、有権者の絶対数での比較はどうか。以下の図3は、各世代の人口の絶対数を横棒で示し、そのうち自民党に入れた有権者の数を絶対値で示したものである。10代人口(18歳・19歳)人口は平成28年度の数値を引用し、20代以上のそれは令和3年10月度の推計を引用した。

・70代以上の自民党投票数(絶対数,推計)は、10代の「約14.7倍」

図3】

各世代における総人口と、そのうち自民党への投票者数
各世代における総人口と、そのうち自民党への投票者数

 この図3の計算式も実に単純なものである。10代有権者人口は246万人であり、そのうち図2に基づき18.7%が自民党に投じたとすれば、246×0.187=46である。これをすべての世代で繰り返す(小数点以下四捨五入)。

 すると、70代以上の有権者にあっては、676万人が自民党に票を投じたと推測される。これは、10代の実に「約14.7倍」である。20代に比すれば「約3.9倍」となる。もし、自民党に投票すること=右傾化という図式を設定したとして、10代・20代の有権者が自民党を熱心に支持しているボリュームであれば、自民党は若者に対しきわめて優遇的な政策を打ち出して良いように思われるが、必ずしもそうとは言えないという批判もある。その理由は図3で示した通り、有権者のうち自民党への絶対投票数が、50代以上の中・高年に偏重しているからに他ならない(50代以上で1300万人超)。

 ちなみに、これらの図3は、すべて今次衆院選における報道ステーションの世代別政党投票率の推計(図1)を基礎としている。ただし、そこから発展して推測した筆者の図3について、大きく間違っているとは思われない。なぜなら、図3にある自民党への絶対投票数を合計すると、「約2212万人」となる。翻って今次衆議院選挙における自民党の比例代表(比例ブロック)の得票総数は「約1991万5000票」であり、この数字と近似するからである。*参照

・”若者”は常に時代のリトマス試験紙?

 つまり本稿で提示した第一義的な推計であるところの報道ステーションの数値(図1)は、あながち間違っていないと言えよう。当然この推計では、自民と非自民を大まかに二分している。非自民の中でも保守的傾向を持つとされる、公明・維新・国民民主等もひとくくりに「非自民」に鑑別しているので、やや雑駁な類推ではあろう。ただしトレンドとしては、筆者による推計はほぼ間違いのない事実であり、自民党への投票=右傾化、という批判的図式を鵜呑みにすれば、「若者は右傾化していない」と結論するに相当であろう。

 というよりも、若者(10代・20代)は投票率が低すぎ、すなわち棄権率が多すぎて、この世代が何党を支持しているのか正直判別がつかない、と言い換えても間違いではない。若者は、常に世のトレンドの趨勢を把握するリトマス試験紙にされてきた。例えばファッション分野での流行に機敏な若者の動向を探ることが、アパレル業界における消費者の鋭敏な触角の前衛を担う最前線とされてきた。つまり若者の興味のあるものは、”時代のトレース”と同じなのである、という解釈である。

 この図式を政治分野に援用することで、つまり若者が何党に投票するかによって、政治的なトレンドの方向性が決定される―。つまり、いま勢いがあり、民意に即しているのは何党である、という分析の為に常に若者が使用されてきた。それは若者が、既存の政治的イデオロギーや色眼鏡に毒されていない、無垢の存在であるという前提に立っているからこそ、政党への真の訴求力と同義に扱われてきたからである。この文脈の中で若者は、「王様は裸だ」と平然と言ってのける無垢の幼児的観客であり、であるからこそ若者から支持を受ける政党こそが、最も説得力があり、迫真性があり、正当性があると解釈されてきた。

 ところがその実態は、縷々示したように、投票率が低すぎて測定できない―、という身もふたもない結論に到達している。繰り返すように、自民党への投票=右傾化とは言えないものの、そういった批判があるのであれば、現実の投票行動はそのイメージからは乖離しているのである。よって若者は右傾化していないのである。(了)

作家/文筆家/評論家

1982年北海道札幌市生まれ。作家/文筆家/評論家。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。テレビ・ラジオ出演など多数。主な著書に『愛国商売』(小学館)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)、『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む極論の正体』(新潮社)、『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったのか』(コアマガジン)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』(イースト・プレス)、『ネット右翼の終わり』(晶文社)、『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)等多数。


なるほど、ですね。

日一日と冬へ向かっていることが実感させられるこの頃です。
もう10日もすれば雪が舞い始めます。
雪が積もる前にしなければならないことがたくさんあって、氣は焦るのですが体がなかなか動かないのです。日も短くなり、寒さもこたえます。


10万円給付は本当に「有効」なのか? 海外の「学生支援」との比較から考える

2021年11月13日 | 生活

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

 「成長と分配」を掲げて衆院選に勝利し、発足した岸田政権による各種給付金が話題になっている。

 その中に、「就学継続資金」として大学生や専門学校生への10万円給付が経済対策に盛り込まれる見通しだ。対象は修学支援制度の利用者とされ、20万人超が対象者と見込まれている。

 今回給付の基準となる「修学支援制度」は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯が対象で、4人世帯で年収380万円までと、かなり厳しい低所得に限定されている。今年度の大学(学部)・短大・高等専門学校・専門学校の学生数は339万2000人であり、給付金の対象者は全体の学生数の5.9%とごく一部にしぼらてしまう。

 これでは、コロナで厳しい状況に立たされている学生にとって十分な支援にはならないだろう。

 今回は、学生が置かれた経済状況を概観しながら、岸田政権による給付金の「有効性」について検討していきたい。

親依存の教育費負担

 まず押さえておきたいのは、学生の経済状況は親の経済状況に依存しているということだ。

 これは当たり前のことのように思われるかもしれないが、世界的にはそうとは言えない。日本が高等教育費負担において、親への依存度が世界有数の高さだからこそ、起こりうる現象なのである。

図1 高等教育費の支出割合 OECD「Education at a Glance 2021」より作成
図1 高等教育費の支出割合 OECD「Education at a Glance 2021」より作成

 図1を見てわかるように、日本は主要先進国の中でも高等教育費の親依存が最も高い部類に入ってくる。家計支出が52.7%と、上に挙げた国の中で最も高い数値だ。アングロサクソン諸国は親依存度が高く、北欧・大陸ヨーロッパは親依存度が低い傾向にあるが、OECDの平均では公的支出69.9%、家計支出21.6%と、教育が公的に保障されている国が多いことがわかる。北欧のスウェーデンに至っては公的支出88.4%、家計支出1.1%と、日本と全く真逆の状況になっている。

 このように教育費負担が親に依存している状況だと、子どもが教育を受けられるかどうかが親の経済状況に左右されざるを得ない。では、親の経済状況はどうなっているのかというと、年々世帯収入は減少の一途をたどっている(ただし、子供をもつ親世帯の年収に限れば増加傾向にあり、そもそも低所得世帯は子育てが不可能になっているという事情もうかがえる)。

図2 世帯収入の推移 国民生活基礎調査より作成
図2 世帯収入の推移 国民生活基礎調査より作成

 ピーク時の1994年の664.2万円から減少傾向を続け、最新2018年には552.3万円と、100万円以上も下がってしまっている。

 しかも、世帯年収が減少傾向にあるにもかかわらず、教育費は高騰を続けている。特に学費については、国立大学において、1975年には授業料が36000円、入学料が50000円だったが、2005年以降現在に至るまでに授業料は53万5800円、入学料は28万2000円(現在は国立大学法人、いずれも標準額)と、授業料は14.8倍、入学料は5.6倍も高騰しているのである。私立大学においては、これ以上の負担を強いられていることは言うまでもない。

図3 国立大学及び国立大学法人授業料と入学料の推移 出典:文部科学省「国立大学と私立大学の授業料推移」
図3 国立大学及び国立大学法人授業料と入学料の推移 出典:文部科学省「国立大学と私立大学の授業料推移」

 文科省は授業料の標準額から2割増の64万2960円までの増額を認めており、実際に、2019年度からは東京工業大と東京芸術大が、2020年度からは千葉大、一橋大、東京医科歯科大が授業料の増額を行っている。東京工業大を除く4大学で上限いっぱいの2割増の金額となっている。増額の理由としては、外国人教員の招聘、語学教育の充実など教育と研究における国際化の推進が多く挙げられている。

 さらに、文科省は国立大学法人の授業料「自由化」を検討しており、大学の裁量でさらなる授業料の値上げが可能になるかもしれない。

 世帯年収の減少に対して教育費が高騰していれば、当然子どもへの仕送りや小遣いの額も減少していく。図4の全国大学生協連の「学生生活実態調査」によれば、仕送り10万円以上の層が激減し、仕送り5万円未満と0円の層が増加傾向にあることがわかる。

図4 下宿生の仕送り額分布 出典:全国大学生協連「第56回学生生活実態調査」
図4 下宿生の仕送り額分布 出典:全国大学生協連「第56回学生生活実態調査」

 以上見てきたように、日本の教育費負担は親に依存しているものの、親が負担しきれなくなっている。そのため、奨学金やアルバイトによって埋め合わせているのが現状だ。

奨学金利用数の減少とその背景

 ところが、その奨学金の利用も近年減少している。その原因は、奨学金制度の「借金」としての過酷さが世間に広がり、借り控えが起きているとみられる。実際に、学生の74.4%が返済に不安を感じているという。

 奨学金利用者数の推移を見ると、奨学金の貸与人員は2013年度をピークに低下傾向にある。1998年の50万人から、2013年の144万人に至るまで急速に拡大してきたが、2018年には127万人まで減少している。

 実際に、奨学金を返済できず自己破産する若者が相次ぎ、保証人も返済できずに破産する「破産連鎖」も生じて社会問題化した。そうした中で、2020年度からは修学支援制度が創設され、授業料無償化と給付型奨学金が実現したが、対象となる世帯は年収270~380万円とかなり限定的だ。

 結局、奨学金を借りることをあきらめて、学生はますますアルバイトを増やす方向に傾いている。

コロナ禍でアルバイト収入も減少

 この10年で学生のアルバイト依存度は高まってきた。学生のアルバイト収入額は、2010年には自宅生29690円、下宿生21900円だったのに対し、2019年にはそれぞれ41230円、33600円と1万円以上増加している。

図5 学生のアルバイト収入の推移 出典:全国大学生協連「第56回学生生活実態調査」
図5 学生のアルバイト収入の推移 出典:全国大学生協連「第56回学生生活実態調査」

 しかしながら、2020年はコロナの影響により減収を余儀なくされている。自宅生37680円、下宿生26360円といずれも大きく減少している。コロナ禍を理由にしたアルバイト先の休業や解雇、シフトの減少などが原因とみられる。

 本来、会社に責任のある理由で労働者を休業させた場合、会社は、労働者の最低限の生活の保障を図るため、少なくとも平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならない(労働基準法26条)。新型コロナによる営業自粛は、原則的にこの規定の範囲内だと考えられる。

 一方、政府は雇用調整助成金の特例措置を拡充しており、大企業の場合、労働者に支払った休業手当の最大75%が助成される。さらに、緊急事態宣言への対応特例として、一定の場合に大企業に対する助成率が最大100%になる。これらの措置は学生のアルバイトにも適用されることが政府によってアナウンスされている。

 だが、こうした特例措置が取られているにもかかわらず、休業手当不払いが横行しているのだ。

 実際に、筆者が代表を務めるNPO法人POSSEや、学生たちが作る労働組合「ブラックバイトユニオン」には、多数の学生からの相談が寄せられている。例えば、都内の私立大学に通っていた学生は、昨年4月初めからシフトがなくなり、補償も全くなされなかった。7月に会社から電話があり、8月以降の仕事はないので解雇だと言われた。4月から8月の休業手当については日々雇用だから支払義務はないと会社に言われたという。この学生は実家暮らしで家賃などはかからなかったが、バイト代を自分の生活費に充てており、バイト代なしには大学生活を送れないと訴えていた。

海外のコロナ禍の学生支援

 それでは、海外におけるコロナ禍の学生支援はどうなっているのだろうか。

 まず、日本と似て学費が比較的高額で、学生ローンの規模が大きいアングロサクソン諸国を見ていこう。アメリカとカナダでは、学生ローンの返済を一時的に停止し、新たな利子は発生しないという措置をとっている。なお、日本の日本学生支援機構の奨学金について、返済停止の措置はとられていない。

 また、学生に対する給付も行われている。カナダでは、大学生や大学・高校の卒業者のうちコロナで職を得られていない者に対し、2020年5月から8月にかけて月1250カナダドル(9万9000円)を給付するとともに、従来の給付型奨学金の年額上限を2倍に引き上げた。オーストラリアでは、従来から家族構成や居住状況に応じて学生に支給される給付金の対象者に対し、2020年3月に750豪ドル(5万6000円)、4月から12月までの間に550豪ドル(4万1000円)を支給した。

 次に、大陸ヨーロッパのドイツやフランスでは、そもそも学費が無償であり、一定の給付型奨学金が整備されているため、コロナによる経済的影響は日本と比べていくらか軽減されていると思われる。その上でさらなる給付が行われている。

 ドイツでは、2020年6月から9月まで月最大500ユーロ(61500円)が支給された。実際の支給額は申請日前日の銀行口座残高によって決定される。フランスでは、大学食堂の閉鎖中に食事を保証するための食料購入券の配布、オンライン授業のための情報機器などの整備への補助に加え、収入が減少した者に対し200ユーロ(24600円)が1回限りで支給された。

 各国の状況もそれぞれに異なっているため比較は難しいが、あえて単純化するなら、ヨーロッパの福祉国家のように平時から学費が無償で給付型奨学金も整備されるなどの保障がしっかりとなされていれば、危機の際のダメージとそれに対する手当も比較的少なくて済む。他方で、教育保障が十分になされていなければ、より多くの金銭給付が必要になるということになるだろう。

 (なお、以上の記述は、国立国会図書館「新型コロナウイルス感染症と学生支援 主要国の状況と取組」を参照おり、2020年10月時点の情報である)。

一時的なバラマキではなく、教育保障を

 世界的にみれば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)をはじめとした産業構造の転換に伴い、若者の高等教育の拡大が続いている。日本のように、借金とアルバイト漬けの不安定な環境で「自己責任」に任せていても、社会の知的水準は劣化していくばかりだ。教育権の保障は、日本社会を再生することに直結していくきわめて重要な政策であるはずだ。

 しかし、今回の岸田政権による学生への10万円給付は、2~3か月分のアルバイト収入に過ぎず、長期化するコロナ禍における学生の苦境に十分対応できるものだとは言い難い。せめて、上記のカナダやオーストラリア程度の支援を行わなければならないのではないか。

 また、コロナ禍で浮き彫りになったのは、日本の教育保障の脆弱性である。世帯の所得に関係なく教育を受けられるよう、公的に保障していくこと=教育の脱商品化が重要だ。具体的には、学費の無償化と奨学金の債務帳消し、給付型奨学金の拡大などが必要だろう。

 さらに、教育の脱商品化のためには、若者たち自身による社会運動が必要だ。日本以上に学生ローンの債務に苦しむ若者が多いアメリカでも、バイデン大統領が債務帳消しと大学教育の無償化に言及し、大統領選の際には1人当たり少なくとも1万ドルを帳消しにすると公言している。

 アメリカには多くの学生ローン債務の当事者たちが参加するThe Debt Collectiveなどの社会運動があり、彼らは学生ローンの債務帳消しと高等教育無償化を求めて債務ストライキ(=返済拒否運動)を展開している。こうした草の根の運動の力を受けて、民主党予備選ではサンダース氏などが学生ローンの債務帳消しと高等教育無償化を公約に掲げ、バイデン氏はサンダース支持者を取り込むために上記のような発言をせざるを得なかったのである。

 一方日本では、先月の選挙戦でも、「若者の貧困」や「学費問題」はほとんど争点にはならなかった。選挙権は18歳以上に拡大されたが、「人数」で劣る若者は、「票数の格差」で不利であり、その利害は政治・社会に反映されにくい。だからこそ、憲法上の「表現の自由」を活用した社会運動が欧米以上に重要になるように思う(なお、アメリカでは若年有権者人口が増え続けており、そのことも若者の教育権の要求を無視できない状況を生んでいる)。

 放っておいても政治が教育の脱商品化を行うことはないだろう。教育に「自己責任」を押し付ける過酷な状況がつづけば、ますます日本は「先進国」から転げ落ちていく。そうした意味では、若者以外の人々も教育権に関心を持ち、若者の権利主張を支えていくべきだろう。

奨学金返済相談窓口

NPO法人POSSE

03-6693-5156
soudan@npoposse.jp

※現在、相談が増加しており、面談の対応等により電話に出られないことがあります。電話がつながらなかった場合、メールでのご相談の方が確実に対応できますので、可能であれば、上記アドレスにご相談内容をお送りください。

学生アルバイトに関する相談窓口

ブラックバイトユニオン

03-6804-7245
info@blackarbeit-union.com

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。11月に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』を青土社より刊行予定。その他の著書に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。


まさしく、目先の「給付」より構造的改革が必要なのだと思う。
「チェンジ」を!
しかし、「給付」を待つ命に関わる、人生に関わる人がたくさんいる。

 先の選挙、自民党も必死だったのだろう。「政権交代」など起きればモリカケ桜それ以外にも全てに真相解明の機運が高まり、おそらく「解党」まで至ること必至。
選挙違反も明らかになりつつある。
あきらめない!

 神戸にいる息子からお好み焼き用のじゃがいもを送ってほしいとLINEが来た。1人1回200gほどで済むのでレターパック520で充分。週明けにならないと手に入らないと思っていたら丁度ゆうパックを届けに来たので持ち歩きはないかと聞いたところ、ないが、持ってきてあげるとのことで、こんな僻地まで持ってきてくれた。助かりました。
 小麦粉を使わないお好み焼きです。みんな集まるときはいつもこれだった。またみんなで食べたいな!

 


女性自○者の急増を隠蔽する自公政権の姑息。80%超「増加」の真相

2021年11月12日 | 生活

MAG2NEWS 2021.11.11 by 『きっこのメルマガ』

    11月2日に厚労省により公表されるや、働く女性の自殺者数が15.4%もの増加を見たことが大々的に報じられた「令和3年版自殺対策白書」。しかしその発表時期と数字には、政権による「意図」が見え隠れしているようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、例年ならば3月下旬の同白書の発表がこの時期にずれ込んだ理由を暴くとともに、女性自殺者の「本来」の増加率を挙げ自民党政権の詐欺的体質を強く批判。さらに新型コロナの影響による女性の自殺者の急増という社会現象は現在も進行中であり、「国民の命と生活など二の次」の現政権下では彼女らが救われることはないと指摘しています。

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女性の自殺者急増を完全スルーの自公政権

 11月2日に発表された政府(厚生労働省)の「自殺対策白書」によって、2020年の女性の自殺者数が大幅に増えたこと、特に働く女性の自殺者数が急増したことが分かったと、新聞各紙やテレビ各局の報道番組などが報じました。

 ザックリと要点を挙げると、昨年2020年の自殺者数は2万1,081人となり、10年連続で減少していた自殺者数が11年ぶりに増加に転じた、という1点。そして、男性の自殺者数は前年より23人減の1万4,055人で「0.2%減」だが、女性の自殺者数は前年より935人増の7,026人で「15.4%増」、つまり、女性の自殺者の急増によって、全体の自殺者数が増加に転じてしまった、という1点。

 そして、女性の自殺者の個々の環境や状況を見ると、「働く女性」「若い女性」「シングルマザー」などの増加が顕著であり、厚労省は「新型コロナ感染拡大による失職や収入減が背景にある」と指摘しています。新聞各紙やテレビ各局は、これらの点を大きく報じたわけですが、あたしは「はぁ?」と首を傾げてしまいました。つーか「今さら何を言う、早見優」と村上ショージさんの往年のギャグまで口にしそうになってしまいました。

 だって、厚労省の自殺対策推進室は、毎月の全国の自殺者数と詳しい内容を、翌月に発表しているのですよ。つまり、2020年の女性の自殺者数の急増は、今年1月には分かっていたことなのです。今回、各メディアは、2020年の1年間のトータルとして「女性の自殺者は前年より935人増え、15.4%増となった」と報じました。でも、この「15.4%」という増加率って、1月から12月まで平均的に増加した場合の数字ですよね。ここに「落とし穴」というか、公文書の改竄など朝飯前の自民党政権による「印象操作」があるのです。

 2020年の自殺者数の月毎のデータを見てみると、1月から6月までは前年同月とほとんど変わりません。しかし、新型コロナによる非正規労働者の解雇や雇い止めが増加し始めた7月から、自殺者数が急増しているのです。日本の自殺者数は、新型コロナの前までは、ここ数年、毎月1,500人から1,800人の間を推移して来ました。そして、新型コロナが始まった2020年2月以降も、6月までは1,400人から1,500人台を推移していて、過去5年間の水準を下回っていました。

 しかし、当時の安倍晋三首相が「GoToトラベル」を前倒しで強行して行動制限を緩和した7月から1,800人超へと増加が始まり、次の菅義偉岸首相が「GoToイート」を強行した10月には、ついに2,000人を突破してしまったのです。2020年10月の自殺者数は2,153人ですが、2019年10月は1,539人だったので、前年同月比は「40%増」です。そして、この増加分の大半は女性なので、女性の自殺者数だけを前年同月と比較すると、なんと「80%超の増加」なのです。「80%超の増加」って、ちょっと盛れば、もはや「2倍」です。

 政府は「7月~12月の自殺者数の増加分」を「1年分」として計算し、女性の自殺者の増加率を「15.4%増」などと示しましたが、このように10月だけを比較すれば「80%超の増加」ですし、7月~12月という下半期を比較すれば「40%増」なのです。前年より減少している上半期もまとめて計算することで、増加率を水で薄めてアベ政治の失敗を小さく見せようとする姑息な「印象操作」、さすがは改竄と捏造がお家芸の詐欺政権です。

 それなのに、2020年当時の日本のメディアは自民党政権に忖度していたのか、連日のように「GoToトラベル」や「GoToイート」の成果を誇大報道するばかりで、新型コロナによる女性の自殺者の増加は、ほとんど報じませんでした。しかし、常に国民の側に立つ海外メディアは違います。アメリカの「CBS News」は、2020年11月13日付で「Suicide claimed more Japanese lives in October than 10 months of COVID」(新型コロナによる10カ月間の死者数よりも、10月1カ月の自殺のほうが多くの日本人の命を奪った)と報じました。以下、その記事の和訳です。

 新型コロナそのものよりも、新型コロナの影響による経済的悪化が、遥かに多くの日本人の命を奪っている。

 日本は新型コロナの流行を他の国よりもうまく管理しており、現在の死者数は全国で約2,000人ほどだ。しかし、政府の発表によると、新型コロナが原因と思われる自殺者は10月だけで2,153人に達し、4カ月連続で増加し続けている。日本の自殺者は10月までに1万7,000人を超えており、10月の自殺者数は前年比で600人も増加した。特に女性の自殺者は80%以上も急増した。日本の女性はもともと家事や育児などの負担が大きいが、現在はさらに新型コロナによる失業と不安の矢面に立たされている。また、男性がテレワークで自宅にいる時間が長くなったため、既婚女性は家庭内暴力を受けるリスクが高まっている。

 あたしは、この「CBS News」の報道を受けて、ちょうど1年前、去年の11月25日配信の『きっこのメルマガ』第96号に「急増する新型コロナ自殺」というエントリーを掲載しました。そして、その中で「若い女性の自殺が急増している」ということを取り上げ、すぐに対策を行なわないと女性の自殺が増え続けるということを訴えました。バックナンバーを保存している人は、第96号の「前口上」を読み直してみてほしいのですが、今回、新聞各紙やテレビ各局が報じた内容は、あたしが1年前に、このメルマガで発表したエントリーとほぼ同じなのです。何なら、あたしのエントリーのほうが優れています。

【関連】自殺者が急増。新型コロナと菅政権の無策に殺される国民の悲劇

 だから、あたしは、今回の報道を見て「はぁ?」と首を傾げ、「今ごろ何を言っているのか」と思ったのです。しかし、政府が2020年の「自殺対策白書」を発表したのが11月2日なのですから、その発表を受けて各メディアが報じるというのは普通の流れですよね。でも、それなら、どうして政府の発表がこれほど遅くなったのでしょうか?

 先ほども書きましたが、厚労省の自殺対策推進室は、毎月の全国の自殺者数と詳しい内容を翌月に発表しています。ですから、2020年の1年間のデータは、今年1月末の時点で出揃っていました。これは厚労省のHPで誰でも閲覧できますので、当時、あたしも閲覧してデータをDLしましたし、貧困や自殺対策に取り組む複数の民間NGOなどが、このデータを元にして、今年の2月から3月にかけて「新型コロナの影響で女性の自殺が急増している」という問題をHP等で取り上げました。

 そして、2020年11月にこの問題を取り上げたあたしは、政府が「自殺対策白書」を発表した時点で、もう一度、この問題を『きっこのメルマガ』で取り上げるつもりでした。しかし、今年は、例年「自殺対策白書」が発表される3月下旬の年度末を迎えても、いっこうに発表されないのです。そして、春が過ぎ、夏が過ぎ、秋を迎え、10月31日にバタバタと衆院選が行なわれ、大方の予想に反して自民党が安定多数を守り切ると、その2日後にシレッと「自殺対策白書」が発表されたのです。

 あたしは「はは~ん」と思いました。厚労省の「自殺対策白書」は、毎年、3月下旬の年度末に前年分が発表されており、たとえば、昨年2020年は、3月17日に前年2019年分が発表されています。これが通例です。しかし、その前年の2019年だけは違ったのです。この年は、3月が過ぎても発表されず、4月が過ぎても発表されず、5月が過ぎても発表されず、7月21日に参院選が行なわれ、自公が過半数の議席を確保すると、その翌日の7月22日にシレッと「自殺対策白書」が発表されたのです。

 もはや説明の必要もないと思いますが、自民党政権下では、衆院選や参院選などの国政選挙が行なわれる年は、例年は3月下旬に発表する前年の「自殺対策白書」を先送りし、選挙が終わってから発表しているのです。第2次安倍政権が始まってからの約10年を見てみると、全体の自殺者数は少しずつ減少していた一方で、若年層の自殺は増加し続けて来ました。また、自殺者の自殺理由は様々ですが、この10年は、生活困窮者の自殺が増加し続けて来ました。これは、竹中平蔵の言いなりで進めた安倍政権の雇用政策によって、非正規雇用者や日雇い労働者が急増してしまったことが最大の原因です。

 このように、毎年3月下旬に発表される厚労省の「自殺対策白書」は、現政権の「通信簿」の役割も果しているのです。特に今回の「自殺対策白書」には「10年連続で減少していた自殺者数が11年ぶりに増加に転じてしまった」「女性の自殺者が急増した」など、現政権にとって極めて都合の悪い内容でした。

 それも「働く女性の自殺者数の急増」です。それまで真面目に働いて来た女性たちの多くが、長引く新型コロナ禍によって生活に困窮し、自ら命を断たなければならない状況にまで追い詰めれたのです。厚労省も「新型コロナ感染拡大による失職や収入減が(女性の自殺者急増の)背景にある」と結論づけていますか、これは完全に政治の責任です。

 安倍晋三元首相も菅義偉岸前首相も口をひらけばバカのひとつ覚えのように「国民の命と生活を守るのが総理大臣としての責務」などと繰り返していましたが、当時の安倍政権と菅政権が国民の命など二の次、三の次で、自民党のスポンサー企業を優遇する利権まみれの政策ばかり続けて来た結果が、この「働く女性の自殺者数の急増」という悲しい現実なのです。

 それなのに、こうした現実を受けて自民党政権が何をしたのかというと、「反省」でも「謝罪」でも「対策」でもなく、「自殺対策白書」の発表を衆院選後へ先送りするという「隠蔽」だったのです。テストで0点を採ったのび太が、お母さんから叱られるのが恐くて、空き地のどこかに答案用紙を隠すようなレベルです。皆さん、これ、どう思いますか?

 ちなみに、今回発表されたのは2020年12月までの自殺者数ですが、今年になってからも、前年同月比で、1月は5%増、2月は15%増、3月は15%増、4月は23%増、5月は16%増、6月は16%増と増加が続いており、この増加分の大半が「女性の自殺者」なのです。そして、7月以降は、前年2020年も急増しているため、前年同月比で計算すると微増や微減になりますが、新型コロナ前の2019年の同月比で計算すると、1~6月までと同様に15~25%増が続いているのです。

 つまり、この「新型コロナの影響による女性の自殺者の急増」という社会現象は「すでに終わった去年の出来事」などではなく、現在も進行中なのです。自民党と連立を組む公明党は、今、2兆円もの予算を使って、18歳以下の子どもに一律1人10万円(5万円の現金と5万円のクーポン券)というバラ撒き政策を進めています。しかし、出産どころか結婚する余裕もなく、生きるために安い賃金でも必死に働き続けて来た非正規労働の若い女性たちは、どんなに生活が困窮しても、何の公助も受けられないのです。少なくとも「国民の命と生活など二の次」の今の自公政権下では…。

(『きっこのメルマガ』2021年11月10日号より一部抜粋・文中敬称略)


嘘と改ざんと隠蔽、「権力」と「金」。
こんな政治を退けようとした今回の総選挙だった。


マガジン9 この人に聞きたい 中島京子さんに聞いた:入管行政に奪われる家族の幸せ。小説を通じて、この国の「埋もれた声」を聞く

2021年11月11日 | 社会・経済
 

 マガジン9編集部 

    日本で働くスリランカ人男性クマラさんと、日本人でシングルマザーのミユキさん、そして娘のマヤちゃんが家族になっていく過程を描いた小説『やさしい猫』。作家の中島京子さんは、この作品を書くにあたって出入国在留管理(入管)問題に詳しい弁護士や支援者、収容経験のある人たちへの取材を重ねたといいます。新聞連載中に、名古屋出入国在留管理局で収容中だったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなる事件があり、入管問題に大きな注目が集まりました。中島さんにこの作品が生まれた経緯や思いを伺いました。
(タイトル写真提供:中央公論新社)

物語を通じて「自分だったら」と想像する

――小説『やさしい猫』のベースにある入管行政の問題に、中島さんが関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

中島 たしか最初のきっかけは、2017年に牛久の入管収容施設内でベトナム人男性が亡くなった事件(※)だったと思います。その男性と同室だった人が、「彼はずっと痛いと訴えていたのに、外の病院に連れて行ってもらえず死んでしまった。このことをみんなに知ってほしい」と切々と訴えているのを、知り合いの弁護士のSNSを通じて知りました。そのことにすごいショックを受けて。「この国でこんなことが起こっているんだ」ということが衝撃で、素朴にびっくりしたんですよね。とてもハードな話なので、このことを小説にしようとは思っていませんでしたが、ずっと頭に引っかかっていました。

 それから入管関係の話題に注意するようになって、在留資格がなく仮放免(※)で生活されている方のことも知るようになりました。仮放免だと移動が制限されるじゃないですか。具体的な話はもう覚えていないのですが、仮放免中の男性が日本人パートナーのケガか病気が理由で、やむを得ず県境を越えて入管法違反になったという記事を読んだんです。そのときに家族や恋愛の物語という形でなら、このことを小説にできるのではないかと考えるようになりました。

※ベトナム人男性が亡くなった事件:2017年3月、収容施設で40代のベトナム人男性が体調不良を訴えるも、外部の病院に運ばれることなく数日後に独房で死亡した

※仮放免:一時的に収容を解く措置。就労はできず、移動が制限されるなどの条件がある

――そこから、スリランカ人であるクマラさんと、日本人のミユキさん、マヤちゃんが家族になっていく物語が生まれたんですね。家族の目線で語られることで、日本に暮らす外国人の置かれた状況がより身近なことに感じられました。

中島 クマラさんのように、「家族と一緒にいたい」という本当にシンプルな理由で日本での在留資格を必要している人も少なくないんですよね。もし読者が外国の人を何か遠い存在のように感じていたとしても、マヤちゃんやミユキさんの話を通じて「自分がそうだったら」あるいは「友達がそうだったら」と想像が及ぶような物語にしたかったんです。恋愛して家族になっていくときに起こることって、国籍に関係なく共通しているものがあります。そういう出来事を通して、この物語に自分を投影させやすくなるのではないかという気持ちもありました。

裁判で争われる「結婚の真実性」

――作品中に、在日クルド人の男の子が「日本人は、あそこ(入管)でなにが起こっているか、ぜんぜん知らないよね」というくだりがあります。本当にその通りだと心苦しく思うのですが、この小説のなかでは在留資格や収容、仮放免など入管行政のことが、かなり詳しく説明されていますね。

中島 私も全然知らないことばかりだったんです。法律や制度のことが分からないと、読んでいても「なぜこの人は捕まっているの?」みたいになるじゃないですか。だから、結構説明が必要でした。それを説明っぽくさせずに読んでもらうというのは、少し工夫しなくてはならなかった点です。高校生のマヤちゃんを「語り手」に、彼女が弁護士さんから教えてもらったり、だれかに説明したりという形にすることで、うまく小説が転がり始めました。

 読者の方からは、連載中からクマラさんを応援する声や「(収容や仮放免などについて)知らなくてびっくりした」という反響が多かったです。なかには「全然知らなかったけど、自分に何かできることはないか」と言ってくださる方もいました。そういう心の動きは私のなかでも起こったことなので、すごくよく分かります。

――裁判でのやりとりが作品の山場になっていますが、中島さんの作品の中で法廷シーンが出てくるのはとても珍しいのでは?

中島 実は法廷シーンを書くのは初めてで、私にとっても挑戦でした。裁判の傍聴に行ったり、体験者や支援者にもお話を伺ったりしたのですが、この小説のなかに出てくるやりとりは現実の内容にかなり基づいています。

 日本人と結婚した外国の人が在留資格を認めてもらうために「この結婚は本物だ」ということを証明する裁判を行うことが実際にあるんですよね。まさか裁判所のなかで「愛を証明する」なんてことをやっているとは思わないし、それを誰かが「証明できました」と判断するのもどうなのかと思いますが、取材してみて裁判には本当にさまざまなドラマが詰まっていると思いました。

 日本人同士だったら、別居していようが、お金のために結婚しようが他人にとやかく言われることではないわけですが、相手が外国籍だと結婚の真実性を証明しなくちゃいけない。「結婚の真実性」を裁判で争うってすごく変ですが、それによって日本にいられるかどうかが決まってしまう本人たちにとっては切実です。

埋もれてしまった声を聞きたい

――マガジン9でも入管問題を取り上げることがありますが、プライバシーの配慮から個人的なことは書けない、あるいは、あえて書かないことも多くあります。その一方で、問題の背後につらい思いをしている生身の人間がいることが伝わりづらいのではないかと感じることもあります。この作品を読んで、「自分ごと」として感じさせてくれる小説の力をとても感じました。中島さんは、こうした社会問題に対する小説の役割について、どのように考えているのでしょうか。

中島 そうですね。一市民としては、国や行政に一票をもっている責任があるし、社会問題に関心をもつのはとても大事なことだと思っています。それに、物書きとして記者会見に出るとか新聞のコラムに書くなどの話をいただいたときには、その機会をなるべく生かしたいとも考えています。でも、小説そのものは主義主張を伝えるツールではないと思っているんです。むしろ、そういう風に使うべきではないとも考えています。

 小説家としてデビューした当時から、記録にも残らずに歴史のなかで「埋もれてしまった声」を聞きたいということが、私が作品を書くモチベーションのひとつになっています。歴史の教科書では習わなくても、それぞれの時代にいろいろな人がいて、そうした声は記録に残らないものじゃないですか。そういう聞かれていない声を聞きたい。それは小説の仕事のひとつかな、と思っているんです。

 歴史小説を書くことが多かったこともあり、これまでは昔のことばかりに意識がいっていたんですけど、入管問題について知るなかで「ここにも誰にも聞かれていない声がある」と感じました。それで、これを小説の題材にしたいと思ったんです。

――作品を書くにあたって、弁護士、元入管職員、外国人当事者の方たちなど、さまざまな方に取材されたそうですが、とくに印象に残っていること、意識して作品に入れたことはありますか?

中島 作品には取材したことが沢山入っているのですが、逆に入れられなかったものも結構あります。たとえば、収容中に突発的につらくなって洗剤を飲んで自殺未遂をした方と、その翌々日に面会したこともありましたし、長期収容に抗議するハンストで、ものすごく体調を崩してしまった方にもお会いしました。

 私が行った収容施設の面会室は本当に狭くて、人が横並びに2人座ったらいっぱいなんですよ。そんな刑務所のような場所で、面会できるのは30分だけ。牛久にある収容施設へは東京からは往復4時間かかります。それなのに、家族でもたった30分しか会えずに帰らなくてはいけないのかと想像すると本当にショックでした。

 収容によって体も心も壊されてしまう方もいて、本当にひどい話がいっぱいあります。こういう現実がある以上書かなくては……と思う一方で、とても全部は書けませんでした。

――この小説の新聞連載中に、入管問題への注目が集まる出来事が重なりました。

中島 ちょうど最終章が掲載されている頃、今年3月に名古屋入管で収容中だったスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなる事件(※)がありました。それといろいろな問題が指摘されていた入管法改正案(「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」)の審議が重なったこともあって、すごく大きな入管問題についてのムーブメントが起きました。

 入管法改正案は見送られましたが、入管収容施設では人が亡くなってしまうようなひどい状況がずっと続いています。ウィシュマさんの支援者や弁護士さんたちからは、「ウィシュマさんを助けられなかった」という痛恨の思いをすごく強く感じます。今回の件では多くの人が入管の状況に関心をもつようになったので、「本当に今度こそウィシュマさんを最後に」と、みなさんが思っていらっしゃいますし、私自身もそうあってほしいと強く思います。

※ウィシュマ・サンダマリさんの事件: 名古屋入管に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが今年1月から体調を崩し、支援者らが求めた治療も行われないまま3月6日に亡くなった

無知による偏見を修正するには

――作品のなかで、ミユキさんが外国人と付き合っていると聞いて、「騙されているんじゃないの」と友人たちが心配する話も出てきます。入管行政だけでなく私たちの日常にも差別や偏見はあって、しかもそこに無自覚であることに気づかされます。

中島 人って「知らないこと」が一番怖いと思うんですよね。偏見のもとには「無知」がある。自分自身を考えても知らないものに対しては怖さや遠ざけたい気持ちが働くし、誰かから悪い話を聞くと「そうなのかな」と思ってしまいます。だけど、その「知らないもの」がとても具体的な存在として目の前に立ち現れてきたときに、自分の偏見が修正されていく経験って誰にでもあると思うんです。そもそも、そういう風に偏見というのは修正されていくものじゃないでしょうか。

 ミユキさんに「外国人に騙されているんじゃないの」って言っている友人たちは、おそらく善意のつもりで言っているんですよね。自分では体験していないけど「ひどい話をいっぱい聞いたよ」と本気で心配している。そういう偏見や差別を修正していくには、違う現実があることをちゃんと見て、いろいろな人と出会っていくことが必要だと思います。

――「想像力のなさ」がさまざまな分断を生んでいると言われることがありますが、どう思われますか?

中島 現実は変わっているのに頭が追い付いていないみたいなことが、外国人の問題に限らず、いま日本全体を覆っている気がしています。たとえば選択的夫婦別姓が認められないこともそうだし、眞子さんの結婚についての反応を見てもちょっと驚きですよね。 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗さんの「女性は話が長い」とかいう発言も「えっ?!」みたいな。社会で活躍している女性はたくさんいるのに、そういう現実に頭が追い付いていません。

 でも、ここまで古臭いと、逆にオセロをひっくり返すように、どこかでバタバタっと社会が変わっていくんじゃないかという気もします。期待も込めてですけど。毎日、コンビニでもどこでも外国にルーツがある人に会わない日はないのに、小説やテレビを見ても、日常に外国の人がいないかのように描かれていることがほとんど。それって、すごくおかしいですよね。

現実はとっくに変わっているのに…

――『やさしい猫』の登場人物たちは一人ひとりがさまざまな背景を抱えていて「日本人と外国人」に留まらない物語です。「ふつうの家族って?」というやりとりも印象的でした。

中島 実際、いまの現実の社会には本当にいろいろな人がいるんですよね。それにもかかわらず、小説とかを読んでいると出てくるのは日本で生まれて日本で育ったんだろうなという日本人ばかり。セクシャリティとかも、あまり現実を映していないように感じられることがある。この作品では、それを多少意図的に描いたところもあります。

 この小説を書いたことで、入管問題に関する集会に参加する機会も増えたのですが、会場には大学生や高校生くらいの若い参加者が多いんですよ。これまで社会問題の集会では60~70代くらいの参加者が中心になることが多かったので、取材に来ていた新聞記者さんもすごく驚いていました。だけど、考えてみたら気候変動の問題に声をあげているのも若い人が多いですよね。そこは似ているような気がします。

 気候変動や多様性といった問題は、もう「待ったなし」の危機的な状況にあって、その現実に対応するように法律や意識をすぐに変えないといけません。そのことに若い人たちはちゃんと気付いているのだと思うんです。私たち大人は、大変かもしれませんが過去に培ってきた価値観を大きく転換する必要があります。「この考え方はもうダメなんだ」「これは偏見なんだ」ということに気づいて、意識的に変えなくてはいけません。だって、もう現実はとっくに変わっているんですから

――タイトルになっているスリランカ民話「やさしい猫」の解釈も心に残るものでした。それも含めて、ぜひ多くの方に読んでいただきたい作品です。今日はありがとうございました。(構成/中村未絵)

なかじま・きょうこ●1964年、東京生まれ。出版社勤務、フリーライターを経て、2003年に小説『FUTON』でデビュー。以後『イトウの恋』『ツアー1989』『冠・婚・葬・祭』など次々に作品を発表し、2010年『小さいおうち』で直木賞を受賞。14年に『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、15年に『かたづの!』で河合隼雄物語賞と柴田錬三郎賞、及び『長いお別れ』で中央公論文芸賞を、20年に『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞を受賞。その他の著書に『ゴースト』『キッドの運命』などがある。


死体遺棄罪に問われたベトナム人技能実習生

2021年11月10日 | 生活

双子の死産から1年、控訴審の争点

望月優大ライター
筆者撮影、以下の写真も同様

あの日から一年ベトナム人技能実習生のレー・ティ・トゥイ・リンさんが実習先の寮の部屋で双子を死産したのは昨年11月15日の午前のことだった。熊本県南部のみかん農園で働いていた当時21歳のリンさんは、強制帰国を恐れて妊娠のことを誰にも相談できず、孤立出産へと追い込まれていった。

 リンさんは多量の出血を含む肉体的な傷と我が子を喪った精神的な痛みの中にいた。だが、彼女は双子の遺体を血まみれの布団の上に裸で放置することなどできず、それらを丁寧にタオルにくるんで箱に収め、双子の名前と弔いの言葉などを記した手紙を添えて、すぐそばの小さな棚の上に安置した。

 しかし、まさにこの一連の行為がのちに死体遺棄罪に問われることになる。翌日に受診した病院から警察へと通報がなされ、数日の入院ののちに逮捕され、起訴をされ、メディアには報道をされ、SNSなどでは中傷にも晒され、そして「私は子どもの遺体を捨てても隠してもいない」と無罪主張をしたものの、7月20日、熊本地裁から有罪判決を言い渡されてしまう。懲役8月、執行猶予3年だった。

 そんな逆境の中にあってもなお、リンさんが無罪を求める意思は変わらなかった。この記事では、今週福岡高裁で開かれる予定の控訴審を目前に、先日行われた一周忌の集い、それから弁護団が福岡高裁に提出した控訴趣意書などについてお伝えする。なお、リンさんの来日から地裁判決までの経緯については以下の記事などで記した。

「国民の一般的な宗教的感情」を害したので有罪。孤立出産で死産したベトナム人技能実習生、地裁判決の中身(Yahoo個人、21年7月28日)

「これで有罪になれば大変なことになる」孤立出産で死産した技能実習生の起訴に対して医師が示した危機感(Yahoo個人、21年6月29日)

彼女がしたことは犯罪なのか。あるベトナム人技能実習生の妊娠と死産(ニッポン複雑紀行、21年6月16日)

一周忌の集いでリンさんが話したこと

 リンさんが双子を死産したあの日からベトナムの太陰暦で1年(およそ354日)が経ち、先週末の11月7日に双子のマン・コイ君とマン・クオン君の一周忌の祈りの集いが開かれた。

 場所は熊本市西区島崎にあるマリアの宣教者フランシスコ修道院の御堂。支援団体のコムスタカの方々や弁護士、保釈後に新しく受け入れ先となった農家の方々など数十名が集まった。

なお、リンさん自身は仏教徒だが、逮捕されて以降これまでずっと、修道院のシスターからの親身な支援を受け、深い信頼関係が築かれてきた。数日前には故郷のベトナムでも、家族によって一周忌が行なわれたという。

 会が始まって少し経ったころ、リンさんがシスターと共にお祈りと追悼の言葉を述べる番になった。二人は椅子からそっと立ち上がり、黒い服を着たリンさんは、何度も言葉に詰まりながら、肩を震わせながら、用意していたベトナム語の文章を必死に読み上げた。その一部を紹介させていただく。

「あなたたちが無事に生まれるまで、あなたを守れなかったことを、許してください。」

「私は、帰国して子どもを産める日を待っていました。しかし、それは起こりませんでした。子どもたちが死産していたのを見たとき、私はとても悲しかったです。私たちは、この世で一緒にいることはできませんでしたが、将来、天国で再び会うことを願っています。」

「私はあなたたちを決して忘れません。裁判所が『私があなたたちを遺棄した』と判決したとしても、あなたたちは、母である私があなたたちを遺棄することを考えたことは一度もないことを知っています。私はいつもあなたたちのために最高に愛し、祈っています。」

「いつくしみ深い神様、私の名前はレー・ティ・トゥイ・リンです。(中略)私、私の家族、そして私を助けてくれたすべての恩人に常に健康で平和で幸せになれるように守ってください。また、この日本での生活の中で困難や課題に直面している技能実習生たちが、常に安全で力強く、あらゆる困難を乗り越えられるように祈っています。私の祈りを聞き入れてください。」

 会場からはすすり泣くような声も聞こえた。リンさんとシスターが座ったあと、参列者の一人ひとりが列を成し、順番にゆっくりと花を手向けていった。

 修道院のすぐそばにはリンさんの支援にも関わってきた慈恵病院が隣接している。産婦人科医の蓮田健院長は、熊本地裁に対して、「この行為が罪に問われるとなれば、孤立出産に伴う死産ケースのほとんどが犯罪と見なされてしまいかねない」とする意見書を提出していた。

 死産後わずか1日あまり、丁寧に双子の遺体を安置し、その場を離れることもなく共に時間を過ごした。そのことのみをもって母親を重い罪に問うたこの裁判で有罪判決が出されてしまえば、技能実習生であるリンさんだけでなく、これから日本で孤立出産に直面する女性たちすべてを過剰なリスクへと晒すことになってしまいかねない。本当にそんな判決を下してしまって良いのか。

 だが、熊本地裁はその後蓮田医師が危惧した通りの判決を示すことになる。

弁護団の控訴趣意書

 今週始まる控訴審に向けて、リンさんの弁護団が事前に福岡高裁に提出した控訴趣意書が手元にある。熊本地裁での有罪判決(原判決)を不服とする理由が述べられたものだ。

 これに加えて、弁護団は、死体遺棄罪の当てはめなどに関する刑法学者2名からの意見書、ベトナムでの習慣や文化、法律などに関する専門家ら3名からの意見書、そしてリンさんの支援団体であり技能実習生など外国人の支援に長く携わるコムスタカの中島代表からの意見書なども合わせて提出している。

 熊本地裁の杉原崇夫裁判官は、①被告人の行為が刑法190条の遺棄にあたるか、②被告人に死体遺棄の故意はあったか、③被告人に葬祭義務を果たす期待可能性はあったか、という3つの争点を示し、そのすべてを認めることで、リンさんを有罪と判決した(3つのうち1つでも否定されれば無罪だった)。

 控訴趣意書では、杉原裁判官が読み上げた(極めて短い)判決文を構成する様々な要素の一つひとつに関する問題が複数(控訴趣意第1〜第8)指摘され、詳細な反論が展開されている。中でも重要だと思われるのが、控訴趣意第1に挙げられている「刑法190条の遺棄概念に関する法令適用の誤り」だ。熊本地裁がリンさんのしたことを死体遺棄罪の「遺棄」にあたると認定したことについて、そこにある様々な問題を指摘している。

 控訴趣意書は表紙と目次を除いて全体で44ページあるのだが、8つある控訴趣意のうちこの1つの部分だけで17ページを占めている。地裁で示された3つの争点のうち①に関わるところであり、リンさん自身による「私は子どもの遺体を捨てたり隠したりしていません」という無罪の訴えの根幹をなすポイントだと言える。

これ以降の話の前提として、地裁判決の該当箇所(争点①に直接関わる部分)をそのまま引用しておく。

1 被告人の行為が刑法190条の遺棄にあたるか。

 刑法190条は、国民の一般的な宗教的感情を社会秩序として保護する。したがって、同条の遺棄とは、一般的な宗教的感情を害するような態様で、死体を隠したり、放置したりすることをいう。

 被告人は、死産を隠すために、えい児を段ボール箱に二重に入れ、外から分からないようにした。そして、回復したら誰にも伝えず自分で埋葬しようなどと考え、1日以上にわたり、それを自室に置きつづけた。これらの行為は、被告人に埋葬の意思があっても、死産をまわりに隠したまま、私的に埋葬するための準備であり、正常な埋葬のための準備ではないから、国民の一般的な宗教的感情を害することが明らかである。したがって、被告人がえい児を段ボール箱に入れて保管し、自室に置きつづけた行為は、刑法190条の遺棄にあたる。

加えて、刑法190条の条文も記しておく。「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。」

上記判決文にある通り、地裁判決はリンさんが「えい児を段ボール箱に入れて保管し、自室に置きつづけた行為」が「私的に埋葬するための準備」であるから刑法190条の「遺棄」にあたるという論理を展開している。

これに対して控訴趣意書では、刑法190条・死体遺棄罪の保護法益は「死者に対する追悼・敬虔の感情」であり、これを害する態様で行われた死体等の放棄・隠匿が遺棄であるという前提を確認しつつ、地裁判決の問題点を複数指摘している。

(なお控訴趣意書は、死体遺棄罪の保護法益について、日本社会の構成員である在留外国人の存在や多文化共生が目指されている現状に照らして、「国民の」という限定を付すべきではないとしている。)

指摘されているのは、(1)「不作為」をもって遺棄とみなすことに関する問題、(2)「私的埋葬」イコール遺棄とみなすことに関する問題、(3)未だなされていない私的埋葬の「準備」を遺棄とみなすことに関する問題などだ。それぞれ私が理解した限りでの要点として紹介したい。

(*)ここでの(1)〜(3)の番号は控訴趣意書内のそれとは関係がなく本記事限りのもの。

(1)「不作為」をもって遺棄とみなすことに関する問題

 リンさんのしたことは、死体をどこか山中に埋めるといったことではなく、その意味で「作為(何かをしたこと)」として理解される典型的な遺棄とは言えない。そこで、地裁判決では遺体を入れた箱を「置きつづけたこと」という形で、「不作為(何かをしなかったこと)」をもって遺棄とみなしている。

 確かに過去の判例には、葬祭義務者による葬祭義務(=作為義務、何かをすべきであるということ)を前提とし、それをしなかったこと(=不作為)をもって遺棄と認定しているものが存在する。だが、それらのほとんどは死体をどこかに放置して立ち去るという「場所的離隔」があった場合であり、双子の遺体と同じ部屋にいたリンさんの場合とは異なる。

 ただし、過去には「場所的離隔」の要件なしで死体遺棄が認められた事件もある。だがそれは実母に支給されていた年金等を継続して受給するために、1年8ヶ月にわたって死体をベッドに置いたままの状態で共に生活を続けていたという事案であり、控訴趣意書ではこれを「異質とも呼べる判決」としている(金沢年金詐欺事件)。

 リンさんは遺体のそばを離れておらず、葬祭義務の不作為があったとはみなせない。また、罪に問われている期間もわずか1日あまりであり、金沢年金詐欺事件の1年8ヶ月とは大きく異なる。そのため、控訴趣意書は、リンさんが双子の遺体の葬祭義務を果たさなかったという形で死体遺棄罪の成立を認めることはできないとしている。

(2)「私的埋葬」イコール遺棄とみなすことに関する問題

 控訴趣意書は、原判決が「私的な埋葬」や「正常でない埋葬」一般が死体遺棄にあたると考えているように取れる点についても疑問を呈している。

 そもそも「私的な埋葬」とは何かが判決文で詳しく論じられているわけではないが、墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)4条及び5条は「墓地以外の区域」への埋葬や「市町村長の許可を受けな」い埋葬を禁じているため、そうした埋葬行為は「正常な埋葬」ではないと考えられる。

 だが、墓埋法違反による罰則は「千円以下――罰金等臨時措置法により2万円以下――の罰金又は拘留若しくは科料」と定められており、死体遺棄罪の「三年以下の懲役」に比べてはるかに軽く設定されている。

 つまり、墓埋法違反の埋葬行為であっても、そのすべてが死体遺棄罪にも同時に該当するわけではなく、それらの中には墓埋法違反単独の場合と、墓埋法違反に加えてさらに死体遺棄罪にも該当する場合とがありうる。そのため、控訴趣意書は、私的埋葬だから遺棄にあたるのだという原判決の背後にある考えには誤りがあるとする。

(3)未だなされていない私的埋葬の「準備」を遺棄とすることに関する問題

(2)では、墓埋法からするところの「正常でない埋葬」のすべてが死体遺棄罪の遺棄となるわけではないことが指摘されていたが、リンさんの埋葬が私的か私的でないか、あるいは正常か正常でないかという話以前に、そもそもリンさんは当時まだ埋葬をしておらず、あくまで部屋の中で安置していただけだということを忘れてはならない。

 また、(1)では葬祭義務の不履行という「不作為」が問題になったが(そしてリンさんの場合にはその当てはめができないことが指摘されたが)、もし仮に「死者に対する追悼・敬虔の感情」を害する形で実際に遺体を埋めるということになれば(リンさんの場合にはそんなことは起きておらず、その事実についての争いも存在しないのだが)、それは「作為」としての遺棄にあたることになるだろう。

 だが、判決文は未だなされていない私的埋葬の「準備」行為のみをもってリンさんの行為を死体遺棄だとしている。これについて、控訴趣意書は憲法が定める罪刑法定主義に反するものだとして率直に強く批判をしている。

 「原判決の被告人の行為が、『私的埋葬の準備行為』として死体遺棄にあたるというロジックはまさに行為としては中立的であっても、その後の行為計画によっては予備罪として処罰される犯罪類型(殺人予備罪等)同様、死体遺棄予備罪として処罰するに等しく、罪刑法定主義(憲法31条)に明らかに反した判断と言わざるを得ない。」

双子の骨壷
双子の骨壷

おわりに

 マン・コイ君とマン・クオン君のための一周忌の集いを振り返り、弁護団が福岡高裁に提出した控訴趣意書のごく一部について紹介してきた。

 私のような素人目に見ても、熊本地裁による有罪判決にはかなり無理があると思える。リンさんは双子の遺体をどこにも埋めていなければ傷付けてもいない。むしろできるだけ丁寧に扱い、その気持ちを手紙にも残している。

 控訴趣意書が指摘する通りであれば、過去の判例から見ても、リンさんの行為に死体遺棄罪を当てはめることは本来的に難しいのではないか。そんな中で検察官から何度も持ち出され、地裁判決にも反映されることになったのが、「リンさんが死産を周りに隠そうとした」ということだった。

 孤立出産も、死産であったことも、それらを誰にも伝えなかったこと、安心して伝えられる相手が周りに誰もいなかったことも、それ自体には何の罪もない。にもかかわらず、技能実習生であるリンさんが陥った深い孤立、そして彼女が抱いた双子を大切に思う気持ちは、検察官や裁判官によって、彼女が遺体を遺棄しようとしたしるしや背景として読み替えられていった。

 死産をすぐに伝えなかったのは隠そうとしたから。遺体を箱に収めたのも隠そうとしたから。隠すために箱に入れたわけではないと本人が言っているのに、いつの間にかそう解釈されてしまう。そこでは単に行為に対して罪があてはめられているというよりも、むしろリンさんがどんな人間であり、どんな風に行動しようとしていたはずだという一方的な見立てのほうが一人歩きしていく。

 控訴趣意書で説明されているが、リンさんが暮らしていた寮には農家の雇い主も立ち入ることができ、それにもかかわらず、彼女の血痕は、布団や自室内だけでなく、部屋の前や廊下、居間や洗面台、トイレなどで拭き取られることもなくそのままになっていた。尋常でない状況は見ればすぐにわかる状態のまま残されていたのだ。

 今となっては取り返しのつかないことであるが、1年前に通報を受けて現場検証をした警察も、当然それら複数の血痕には気づいたはずである。遺体がどこかに埋められているわけでもなく、どこか外に放置されているわけでもなく、押し入れの中に見えないように隠されているわけでもなく、部屋にある小さな棚の上に安置されていたことも、わかったはずである。

 ならばどうして、何のために、リンさんを逮捕し、起訴し、裁判にかけることにまでなってしまったのだろうか。そして、有罪判決にまで至ってしまったのだろうか。せめてそのどこかのタイミングで立ち止まることができていたら。本当にそう思うし、そう考えればこそ、今週始まる福岡高裁での控訴審判決の重大さを感じずにはいられない。

 リンさんの無罪判決を求める署名は現時点ですでに4万筆を超え、今週福岡高裁へと手渡されるそうだ。「私は子どもの遺体を捨てても隠してもいない」。その切実な主張が認められることはあるのだろうか。公判を傍聴し、また報告ができればと思う。

(*)前回の記事で問題の所在を示したリンさんの在留資格の現状についても記しておく。以前の在留資格(技能実習2号)の期限は8月半ば過ぎだったため、7月の熊本地裁判決ののち、支援者と共に入管庁に対して技能実習から特定技能への移行について相談した。

 すると、逮捕後に勾留されていた期間などに技能実習が停止していたことにより、特定技能への移行に必要な技能実習の期間が足りないことがわかった。そこで、まずは技能実習を数ヶ月延長して必要な期間を修了する形で申請をし、実際にそのようにして在留資格が付与されているという。

 そのため、リンさんは現在も今年1月の保釈後に転籍した先の農家で技能実習生として働くことができている。転籍先の農家の方々は仕事の面でも裁判の面でもリンさんを熱心にサポートされている。

「国民の一般的な宗教的感情」を害したので有罪。孤立出産で死産したベトナム人技能実習生、地裁判決の中身(Yahoo個人、21年7月28日)

「これで有罪になれば大変なことになる」孤立出産で死産した技能実習生の起訴に対して医師が示した危機感(Yahoo個人、21年6月29日)

彼女がしたことは犯罪なのか。あるベトナム人技能実習生の妊娠と死産(ニッポン複雑紀行、21年6月16日)

ライター

1985年生まれ。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)。株式会社コモンセンス代表として非営利団体等への支援にも携わっている。


すっかり冬の準備。
銀杏も全ての葉を落とし・・・

バラは最後のひと花。

散歩道。


若者に投票を呼びかける一方で、社会運動への参加は叩く日本の風潮

2021年11月09日 | 生活

yahoo!ニュース 11/9

室橋祐貴日本若者協議会代表理事(写真:ロイター/アフロ)

学校や会社、家庭などで政治の話をすると怪訝な顔をされるのに、一方で、投票には行こうという。

義務教育で本格的な政治教育をせずに、校則見直しや学校運営などについて子どもの意見を尊重しないのに、18歳になった途端、投票に行こうという。

日本では、そんな不思議な光景、矛盾した態度が見られる。

そして、よくある光景の一つが、若者に投票を呼びかける一方で、若者が社会運動に参加すると叩かれるというものだ。(必ずしも同じ人物かは不明だが、社会全体の傾向として)

現在イギリスで開かれている気候変動に関する国際会議「COP26」に関連して、世界中で多くの若者が抗議デモを行なっている。

日本も例外ではなく、東京など、様々な都市でスピーチなどが行われた。

日本の若者ら「石炭火力早期廃止」訴え COP26合わせ

Yahoo!ニュースのコメント欄や、SNS上では、様々な批判コメントが飛び交い、今後のキャリアにも影響するんじゃないかという指摘もされている。

あるツイッター記事

 

なぜ「煽動」という言葉が出てくるのかは謎だが、バックに「大人」がいるわけではなく、若者たちは自ら主体的に声を上げている。

もちろん、スピーチの全ての主張が正しいとも思わないし、若者の総意だとも思わない。衆院選の出口調査を見ても、気候変動対策はむしろ高齢世代の方が重視している傾向が見られる。

が、それでも声を上げること自体に対して、若者を叩く風潮、それをもって就職活動で不利になる現状には違和感しか感じない。

実際は、気候変動対策についてよく勉強をしているし、むしろ勉強しているからこそ、危機感を感じて、声を上げているわけだが、勝手に「無知」だと決めつけて、そんなことをしても無駄だと叩く。

こうした、投票は求めるのに、社会運動は叩く、この風潮はどこから来ているのだろうか。

海外では若者が社会運動に参加することを推奨

それを考えるために、まずは、海外でどうなっているのかを考えたい。

結論的には、海外では、若者が社会運動に参加することは、投票と同様に、推奨(当然視)されている。

それは、問題解決の手段として、子ども・若者の意見表明権確保の手段として、「投票行動」や「陳情」、「メディアへのリリース」と同列で、「社会運動(デモ)」が語られているからである。

実際、主権者教育の中で、「投票行動」「陳情」「メディアへのリリース」「社会運動(デモ)」のやり方を教わり、小学生がデモに参加することも珍しくない。

 

 

もちろん、デモに参加することが、就職活動に大きな影響を与えることもない(過激な活動は別だろうが)。

一方、日本は投票率も低いが、他の政治参加の手段においても、低水準にある。

上図一番右のスウェーデンは、投票率も高いように、投票率と他の政治参加手段への参加は、基本的には相関関係にある。

選挙は数年に一回しかないが、デモや陳情などは、いつでも行うことができ、時に投票以上に、効果的である。

であれば、むしろわざわざ投票行動だけに絞る理由も見つからない。

大人が決めたレールに乗らないと気が済まない大人たち

では、なぜ日本では、若者の社会運動への参加は推奨されていないのか。

それは、「社会運動」自体への理解不足が日本社会全体にあるのと同時に(後述するように運動を行なっている側にもある)、投票活動が、若者の意見表明権として重視されているのではなく、あくまで有権者であれば投票に行くべき、という規範的な行為として、重視されているからではないか。

その根底にあるのは、あくまで若者は、大人が用意した選択肢に従うべきである、というパターナリスティックな思考なのではないか。

大人が決めたルールに従うことを強要する一方で、大人が用意していない手段を取ろうとすると批判される。

わかりやすく言えば、大人が決めたレールに乗っていればよくて、余計なことはするな、空気を乱すな、ということである。

結局、大人たちの方に「正しさ」が埋め込まれており、そこから外れる場合は、「正しくない」と叩かれる。

これは、子どもの「主体性」を求める一方で、校則など、学校のルール自体を変えようとすると無視される風潮と、構造的には同じである。

関連記事:「学校のことに関して意見を表明する場がない」校則見直しに生徒が関わる機会を求める児童生徒の声(室橋祐貴)

こうした型にはまった行動、過去の踏襲しかできなかったからこそ、世界の変化に対応できず、ここ30年程度の日本社会の停滞がある、と言っても過言ではないだろう。

そして、本当の意味で、子どもや若者の意見表明権を重視するのであれば(日本は1994年に子どもの権利条約を批准しており重視する義務が大人にはあるのだが...)、投票行動と同様に、他の政治参加の手段も尊重すべきである。

日本のデモ行為自体にも改善の余地は大きい

ただ、シノドス国際社会動向研究所が実施した「生活と意識に関する調査」(2019年)によると、若年層ほどデモに否定的な意見が見られるように、日本のデモにも問題はあると考えている。

それは、「反対」という抗議部分が強く、問題解決の手段としての機能が弱い面である。

実際、上記の調査によると、若年層ほどデモを「迷惑」「社会的に偏っている」「過激である」と見ている。

上記で紹介した、ノルウェーの小学生の事例がまさにそうであるが、海外のデモ活動は、デモと同時に、政策決定者(政府関係者や与党関係者)に対する要求、対話(ロビイング)も行なっており、あくまで世論喚起、問題解決の手段としてデモを戦略的に行なっている。

たとえば、気候変動対策分野においても、2018年にフランスで起きた黄色いベスト運動では、デモの後に参加者が政策決定者と対話を重ね、その結果として、大統領直轄の「気候市民会議」が結成され、その後市民の提言を受けて、政府の取り組みが進められている。

関連記事:なぜいま欧州各国で「気候市民会議」が開かれているのか?ー日本では気候若者会議の取り組みも(室橋祐貴)

しかし日本では、デモと並行して、政策決定者(政府関係者や与党関係者)と対話する機会が極めて乏しい。(若い世代では徐々に意識が変わってきているが)

これは、政策決定者側の姿勢の問題もあるが、デモをしている側にも、問題があるように思える。

政権与党との対決色が強く、与党議員と対話しようものなら、むしろ身内から叩かれる。

そうした場面は珍しくない。

ただこれでは成果を出すことも難しく、デモが問題解決の手段として有効だと社会的に認識されることも難しい。(現状は、「対決色」が強いからこそ高齢世代の方がデモを肯定的に見ている)

今回の衆院選においても、50代以下が、対決色の強い野党(立憲民主党、日本共産党)ではなく、是々非々で政府と向き合う野党(日本維新の会、国民民主党)に票を投じた(議席を伸ばした)ように、社会全体として、問題解決のプレイヤー、手段を求めるようになってきており、日本のデモ自体も変わる必要はある。

それでも、もっとも重要なのは、声を上げる主体を尊重することであり、ルールをおかしいという人がいなければ、社会も変わっていかない。

もちろん、声の中身を問う声も必要であるが、声を上げる行為自体にリスペクトがなければ、どんどん声を上げる人は減っていくだろう。(同様に、対話をする上では現在政策を進めている意思決定者側へのリスペクトも重要だが)

今後、日本社会が変化に対応していくためには、むしろ現状を疑い、「おかしい」と言える人が増える必要があるのでないか。

であれば、社会運動への参加を叩く日本の風潮も変わっていかなければならない。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」代表理事。専門・関心領域は政策決定過程、社会保障、財政、労働政策、若者の政治参画など。yukimurohashi0@gmail.com


 困窮者支援「給付金」がほぼ決まりそうだが、18歳以下の子を対象にするとのことらしい。でも、どうも腑に落ちない。コロナ禍で生活が困難になった人たちが対象にならなければならない。「命に係わる」「人生にかかわる」緊急な救済という側面があると思うのだが…・大学の卒業を目の前にして学校を去る若者がいるという。

 介護保険料の滞納によって預貯金などの財産を差し押さえられた65歳以上の人が、2019年度は2万1578人で過去最多を更新したという。

もっと広範囲の人々が対象になるべきと思う。
「金がない」「若い世代にツケを回すな」
「ツケ」の前に若者の人生を狂わさないで欲しいものだ。
老後の人生設計を狂わせないでほしいものだ。


現実となった気候危機に日本はどう対応すべきか

2021年11月08日 | 自然・農業・環境問題

ゴールドマン環境賞を受賞した平田仁子さんに聞く

平田仁子(「気候ネットワーク」国際ディレクター・理事)

(構成・文/志葉玲)

Imidasオピニオン2021/11/05

 草の根の環境運動活動家に贈られ、「環境分野のノーベル賞」とも言われるゴールドマン環境賞の2021年の受賞者に選ばれた平田仁子(ひらた・きみこ)さん。日本人の受賞としては3回目で23年ぶり、日本人女性としては初の快挙だ。平田さんは、気候変動に取り組むNGO「気候ネットワーク」で長年活動を続け、現在は同団体の国際ディレクターである。今年8月にIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書の一部が先行して公表され、世界的に温暖化への危機感が高まっている。ところが日本は、火力発電の中でもCO2排出が多い石炭火力への依存が高く、国際社会から批判されてきた。平田さんに、温暖化対策をめぐる日本の課題について聞いた。

平田仁子さん

――このたびはゴールドマン環境賞受賞おめでとうございます。授賞理由は、平田さんたちの活動により日本国内の13基の石炭火力発電所の計画が中止となり、16億トン以上の二酸化炭素(CO2)排出を食い止めたことでした。まずは、受賞のご感想を伺えますでしょうか。

 日本では2012年以降計画された50基の石炭火力発電所の計画・建設のうち、ゴールドマン環境賞受賞が決定した2020年12月時点で13基、その後4基追加され、計17基が計画中止になりました。しかし、すでに20基以上は、完成して稼働しており、環境的には大変深刻な状況が続いています。福島第一原発事故以降、特にここ数年、猛烈な勢いで石炭火力発電所の建設が推し進められてきました。石炭火力の建設計画中止を求める活動は、私たち「気候ネットワーク」だけではなく、地域団体や住民の皆さん、サポートしてくださる国内外の法律家や専門家、NGOなどの力が合わさって大きくなってきました。ところが、今まで日本では、17基が止まったことについて、私たちNGOや市民の活動によるものだとは、あまり認められてきませんでした。今回の受賞で「脱石炭」の市民の動きがあることに光をあててもらったことは大変有り難く思います。賞をいただいたことで、大手メディアも私たち市民の動きに目を向けてくれるようになりました。今回の受賞は、一緒に粘り強く取り組んできた皆に与えられた賞にほかなりません。

――今年8月にIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書のうち、第1作業部会の報告が先行して公表されました。この報告書では、温室効果ガスの排出抑制に応じた5つのシナリオごとに世界の平均気温上昇を評価しています。10年ごとの酷暑の発生率は、現在から1.5度上昇で4.1倍、2度上昇で5.6倍、4度上昇で9.4倍となるなど、かなり具体的に書かれていることが話題となりました。平田さんは今回の報告書をどう受け止めましたか?

 第6次報告書では、気温の上昇によって熱波や大雨、洪水が増えていると、温暖化と異常気象の関係を強調しています。そのことは過去の研究の蓄積によって証明されているからです。さらに、この報告書には、地域ごとに顕著な温暖化の影響が見られ、これらは自然現象だけではまったく説明がつかないと精緻に検証されているのです

 温暖化の進行は、ここ数年でステージが上がっています。グリーンランドの氷床や南極の氷などが、想定を超える規模で解け始めており、科学者たちからは、ティッピング・ポイント(それを超えると不可逆的な変化が起きる臨界点)を超えてしまったのではないか、と強い危機感が示されています。人類のお尻に火がついている状況という厳しい現実に、恐ろしさを感じます。

 2014年にNHKが制作し、2019年に環境省がその新作版を制作した「2100年 未来の天気予報」という動画があります。動画では、温暖化が進行した2100年の天気予報を想定して気象がどうなるかを示しており、日本各地で気温が40度超えになるとされていました。しかし、すでに近年、日本各地で40度超えが記録されていて、この動画は80年後のニュースどころか今の状況をそのまま表しているような内容です。もう私たちは危機に突入しているのですから、単純に「温暖化」というのではなく「気候危機」という言葉を使っていくべきでしょう。

 気象庁も深刻な豪雨被害と温暖化との関連性を指摘するようになってきました。報道においても、今起きている現実の被害として、気候危機の影響についてもっと報じるべきだと思います。

――そもそも、日本ではメディアも温暖化に対する危機感が希薄だと感じます。気候危機に対する認識を改めないといけないということですね。

 その通りです。日本ではこれまで、「温暖化」という問題に対して、「途上国の人々だとか、ホッキョクグマだとか、未来の世代だとかが困るから、対策をやらないといけないね」というイメージが一般的でした。一部のインテリが聞こえのいいことを言ったり、生活に余裕のある層がマイボトルを持ったりするというような、一部の人だけが関心を持つ問題である状況は、1990年代からさほど変わっていません。大人も子どもも、温暖化問題はすでに学校で教えられたりすることで、昔から言われていることだと思っていて新鮮味を感じていないし、知っているつもりになってしまっています。「対策としてこれ以上できることはないんじゃないの」という認識で止まってしまっている。だから、まずは今、世界が置かれている状況がどれほど危険なのか、その危機に対応するためには、何をすべきなのかを根本的に“知り直す”ことが必要です。米国では、今夏のカリフォルニア州での大規模森林火災や、ニューヨークでの大水害に際し、バイデン大統領が「(気候危機に対し)我々は行動を起こさなくてはならない」と、気候危機と災害をはっきりとつなげて対策を呼びかけています。災害が起きても、避難と復興だけをやり、気候変動対策と結び付けない日本とは、認識が大きく異なりますね。

――対策という点では、LED電球への付け替えとか、お風呂等の節水とか、個人レベルの努力も無駄とは言いませんが、エネルギー政策自体を根本的に見直す必要がありますよね。

 はい、そう思います。日本が排出する温室効果ガスの排出源を多い順に見ていくと、石炭火力、運輸(主に自動車)、LNG(天然ガス)火力、製鉄産業、化学産業となります。

 燃料の燃焼などによる「エネルギー起源」の排出が全体の8割以上を占めています。一般家庭で石炭やLNGを燃やしているわけではないので、電気をつくるための火力発電所からの排出が多いということです。発電の中でも石炭火力が最大の排出源なので、真っ先に石炭火力をやめるという方向性が重要になります。

――日本では、昨年10月に菅政権が「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」と宣言し、今年10月に政府の新たなエネルギー基本計画(以下、エネ基)が閣議決定されましたが、これはいかがでしょうか?

 世界平均気温の上昇を1.5度までに抑え込み、気候危機の破局的な影響を食い止めるためには、2030年までに世界全体の温室効果ガスを半減させなくてはなりません。それを実現するには、先進国は2030年までに50%以上の削減が必要です。
 ところが、今回のエネ基では、2030年に日本の温室効果ガス排出を46%削減するという目標にとどまっていて、目標設定が不十分です。さらに真っ先に停止するべき石炭火力が2030年時点でも、電源構成の中で19%も占めることになっており、石炭・LNG・石油などの化石燃料を用いた火力発電の割合は、41%程度とされています。しかも、2019年時点で6%にすぎない原発の割合を2030年では20~22%程度にするとしています。これは、すでに老朽化したものを含めて現在ある原発をすべて再稼働し、それぞれ福島第一原発事故以前を上回る稼働率でフル稼働させるという非現実的な計画なのです。原発でまかなえなかった電力は火力で補うことにもなりかねません。「2030年に46%削減」という目標すら実現できないかもしれません。
 同様にエネ基では、太陽光や風力といった再生可能エネルギー(以下、再エネ)は、2030年に36~38%程度とされていますが、その割合はもっと引き上げるべきだと思います。世界的に見ると、再エネは、新規導入のスピードが速い。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)の発表によれば、昨年1年間に世界全体で新規導入された再エネは、発電容量で261基の原発分(=261ギガワット)です。導入コストから考えても、再エネは、すでに多くの国々で最も安価なエネルギー源として競争力を持つようになってきているので、日本でももっと活用していくべきでしょう。

――昨年10月に菅政権が温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年に実現するとの目標を打ち出しましたが、実際は、化石燃料と原発への依存から抜け切れていないのですね。

 私が特に問題だと思うのは、エネ基案では、石炭火力やLNG火力関連事業のイノベーションとしての水素やアンモニア利用や、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じた石炭・LNG資源開発事業に資金面から支援を行うとしていることですね。
 ここ数年、気候危機の観点から、石炭やLNG、石油といった化石燃料関連の事業から資金を引き上げる「ダイベストメント」という動きが世界の金融の中で広がってきています。IEA(国際エネルギー機関)も、世界平均気温の上昇を1.5度以内に抑え込む目標の実現のためには、今後、化石燃料への投資は行うべきではないとしています。日本政府は税金を投入してまで、ビジネスとして成り立たず民間が手を引き始めている化石燃料関連事業を継続しようとしているのです。納税者である私たちは、もっと怒った方がいいのではないでしょうか。

――経済合理性すらない化石燃料依存を日本はやめられない。深刻ですね。

 化石燃料からの脱却という世界的な潮流の中で、経営戦略を見直せない日本企業にも問題があります。

 とあるエネルギー関連企業では、商社などが石炭事業から撤退し、国内でも石炭火力利用が疑問視され始めている中、本来であれば、閉鎖するべき老朽石炭火力発電施設を、政府と足並みをそろえて、維持し続けようとしています。政府は、石炭や天然ガスから水素やアンモニアを製造し、新たなエネルギー源として活用する政策を推進しているのですが、水素やアンモニアをつくる過程でCO2が出てしまいます。そのため、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)といって、CO2を回収して地中に貯留したり再利用したりしようとしています。それには莫大なコストがかかるのです。国内には、CO2を貯留する場所はほとんどないと考えられますので、海外に運んで貯留してもらうのか、またどのようにCO2を利用することができるのか、などについてはまったく答えが出ていません。結局、無駄にお金がかかるだけでしょう。水素やアンモニアの活用も、石炭やLNGなど化石燃料からではなく、再エネを使ってつくる「グリーン水素」「グリーンアンモニア」ならまだ良いのですが……。

――なぜ、政府も企業も発想を変えられないのでしょう?

 鉄、電力、自動車、プラントメーカーといった、いわゆる「重厚長大」の産業が日本経済を支える基幹産業だという前提があり、これらの企業の一心同体の連合体の利益を守ることを優先しているからなのでしょう。再エネを事業の中心にすると、利益構造は変わり、個々の企業はそれで利益を上げるかもしれませんが、これまで自分たちが守ってきた企業連合体としての利益は失うことになる。そのことに抵抗しているのだと思います。

 政府の審議会などでも、利益団体やそれに同調する専門家、官僚、政治家たちの毎度同じようなメンバーが、これまでの路線を改めないでエネルギー戦略を議論しているのです。そうこうしている間に、再エネ技術では中国や欧州に負け、電気自動車の普及でも大幅に遅れてしまっている。

 エネ基は経産省のものですが、環境省の地球温暖化対策計画案(温対計画)も、「産業界の自主的な取組」「ライフスタイルの転換」という、この間ずっと使われてきた言葉が並んでいて、本来最優先でやるべきエネルギーの転換は、政策の柱の中でも最後の扱い。この構図は1990年代の京都議定書の頃から変わっていません。

 米国のバイデン大統領も、元々はそれほど気候危機への対策に熱心ではありませんでした。でも、米国の若者たちが声を上げ、対策を強く求めるようになり、若者たちの声を背景に、バーニー・サンダース上院議員ら気候危機対策に熱心な議員たちの政策を受け入れていった経緯があります。

 日本でもやはり、市民が声を上げることが重要だと思います。日本の若者たちは米国や欧州に及ぶほどのスケールで活動しているわけではありませんが、それでも各地で声を上げている若者たちが増えてきています。点と点を結ぶようなかたちで連帯していくことで、大きな力になるのかもしれません。もちろん、大人たちの責任も大きい。これからの10年が本当に大切なので、諦めないで頑張っていきたいと思います。


 頭が「化石」の人には退場していただかなければなりません。先の選挙がいい機会でしたが力及ばずでした。でもここであきらめるわけにはいきません。地球の未来と若者の未来がかかっているのです。事は緊急を要するのです。

園内のようす。

 


政治考 野党共闘

2021年11月07日 | 社会・経済

立民議員“本気かどうかが分岐”

「しんぶん赤旗」2021年11月7日

自民議員「安心していられない」

 日本共産党や立憲民主党など野党が共通政策、政権協力、選挙協力の「3点セット」で政権交代を迫った総選挙(10月31日投開票)。自民党が絶対安定多数を維持し、自公政権を継続させる結果となったものの、最初のチャレンジとして大きな歴史的意義を残しました。

 ところが、一部メディアなどからは「共闘不発」「共闘は失敗」などの“共闘つぶし”ともいえる報道や発言が相次いでいます。

 これに対し野党共闘と対峙(たいじ)した当の自民党議員はどうみているのか。当選した一人は「結果は絶対安定多数だが、最終盤の情勢は、調査の数字も含め非常に厳しかった。陣営は引き締まり乾いた雑巾を振り絞るような活動をやって競り勝った」と指摘。「100近い激戦区は僅差で、どちらが勝ってもおかしくなかった。苦戦を勝ち切ってよかったが、野党候補の一本化は一定の効果があったし苦しめられた。選挙のルール上は勝ちだが、実際の数字で言えば安心していられない。万歳というより疲れた」と語ります。

 別の議員も「野党候補一本化の効果は間違いなく出た。来年の参院選に向け、共闘で激戦になったところは今回の共闘を生かして向かってくる。自民党はかなり受け身になる」と表情を硬くします。

やり切ったか

 「共闘があったからこそここまで(62小選挙区)勝てた。『共闘失敗』など、冗談もいいかげんにしてほしい」

 こう語るのは、東京5区で野党共闘候補として自民党の若宮健嗣万博相に競り勝った手塚仁雄立憲民主党東京都連幹事長です。手塚氏は「共闘がなければ、立民は惨敗、自民党は300という結果になっていた」と指摘。「全体は十分とは言えないが、東京での小選挙区での勝利は17年の4から8に前進した。そのうち七つはしっかりした共闘体制が力を発揮した。比例復活の4人もすべてしっかり共闘し、惜敗率で上位に入ったひとたちだ」と語ります。

 自民前職との競り合いを制し、東京9区で統一候補として初当選を果たした山岸一生氏(立民)は「野党共闘には大きな成果があった。勝負の分かれ目は、共闘の良しあしではなく『本気の共闘』をやり切ったかどうかではないか」と指摘。「東京9区では、多くの市民の方がともに声を上げてくれた。特に最終盤、野党の本気の共闘のエネルギーが、有権者に響いたと感じている。もし、周囲に配慮するあまり『半身の共闘』だったら、途中で足が止まったのではないか」と語ります。

新しい財産に

 日本共産党の志位和夫委員長は、選挙結果を受けての1日の記者会見で、共闘の歴史的意義、地域で広がった連帯の絆という新しい財産にふれつつ、「野党が力をあわせて、共通政策、政権協力の合意という共闘の大義・共闘の魅力をさまざまな攻撃を打ち破って、広い国民に伝えきるという点で、十分とは言えなかった」「共闘の大義、魅力を伝えきれなかったことが、維新の会という自公の補完勢力の伸長という事態を招いた一因にもなりました」とのべました。

 共闘の成果と課題を刻んで来年の参院選に向けて、歩みだすときです。

違いも一致点も、しっかり語る

誠意が共闘を育てる

 「ずっと見ていた」―選挙中、市民からこう話しかけられたという東京8区の吉田晴美氏(立民)。石原伸晃元自民党幹事長を破り注目されました。

 「6年間の市民の皆さんの共闘の積み上げの中で期待をいただいた。市民の皆さんの力が発揮されたし、共産党の皆さんとも人と人とのつながりを大切に、しっかり連携できた。私も野党統一候補としてたたかい抜いた」と振り返ります。

 東京8区の投票率は61%で東京ではトップ。理不尽な安倍・菅自公政治を変えようと、吉田氏は「杉並区から永田町にメッセージを発しよう」と訴え。「有権者が行動を起こした」と語ります。

 総選挙では全国62の小選挙区で野党統一候補が自公候補を打ち破りました。野党共闘により、甘利明幹事長が現職幹事長として初めて小選挙区で敗退したほか、石原伸晃元幹事長が落選するなど与党有力者を相次いで打ち破りました。

 野党共闘が接戦に持ち込んだ選挙区も多数。惜敗率でみると90%以上の選挙区は33、80%以上は54選挙区にのぼります。「激戦報道」を裏付ける結果です。

 他方、これら接戦区で、無党派層が各地で自民党の補完勢力である日本維新の会に流れたことも、各地の出口調査などから明らかになっています。

競り合いで…

 野党共闘が、多くの選挙区で自公候補を追い詰めながら、最後の競り合いに勝ちきれなかったのはどうしてなのか。

 立民関係者の一人は「これだけの接戦を生み出し、追い詰めたことは一つの成果だし確信にするべきだ」とする一方、「執行部は、共闘について説明することから逃げた。これでは有権者には伝わらない」と振り返ります。

 別の立民議員の一人は「共闘したから維新に票が逃げたというのはない、逆だ。共闘に十分共感を得られなかったところで、維新に票をさらわれている」と語ります。

 自民党議員の一人は「一本化構造をつくったところまではよかったが、共闘の中身が伝わっていなかった。自民党はそこをバンバン“野合だ”と批判した」とします。

 「安保関連法に反対するママの会」の高岡直子さんは、「共産党は選挙中、繰り返し共通政策や政権合意の話をしていたけれど、共産党が語っているだけでは無党派層には響かない。例えば動画で参院選に向けて、党首同士で共通政策について一つ一つ説明する」と提案。「違いもきちんと見せながら、互いに尊重しあって、一致点の中身をしっかり示すというのは、とてもいいと思う」と語ります。

 あるメディア関係者は「党首同士で、『ここは共通だが、ここは立場が違うんです』と並んで話せばよかった。そうすれば保守派もリベラルも納得する。これが共闘の強みのはずだ」と強調します。

「信頼を実感」

 東京で比例復活の一人、鈴木庸介氏(東京10区、立民)は「野党共闘が失敗だという人たちは、共闘をやめさせたい人たちだ」と指摘。「共闘の浸透が課題だ」と話します。「選挙中、街頭で『頼まれているから』という人とたくさん出会った。共産党の地元区議の方たちが電話かけしてくれているとわかり、その誠意に感動した。ブレずに、駆け引きでなく誠意をもって共闘に取り組む、信頼できるパートナーだと実感した瞬間だった」と振り返ります。

 東京8区で吉田晴美氏を押し上げた「8区の会」事務局の安彦隆さんは「市民一人一人が自主性を持ち、独自の共通政策をれいわ、共産、立民の各候補と合意するなど、独自の勉強会も重ねてきた」と強調します。

 そのうえで「共産党がさまざまな課題をのりこえて本気になってやってくれた。原田あきら都議の力も大きかった。市民個人として頑張っている人もいるけれど、共産党が本気になってやってくれなければ、接戦となって競り負けていたかもしれないと思うくらい、共産党の人たちは頑張ったと思う」と語りました。

 (田中智己、中祖寅一)


 いろんな意見があると思いますが、これは大事な点をついています。ご参考までにどうぞ…


グレタさん、COP26を痛烈批判

2021年11月06日 | 自然・農業・環境問題

「明白な失敗」

「北半球の豊かな国々による最も排他的な会議」

東京新聞 2021年11月6日 
5日、COP26が開かれている英グラスゴーで、デモ行進後に演説する環境活動家グレタ・トゥンベリさん(AP)

5日、COP26が開かれている英グラスゴーで、デモ行進後に演説する環境活動家グレタ・トゥンベリさん(AP)

 【グラスゴー=加藤美喜】国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催中の英グラスゴーで5日、地球温暖化対策を求める若者らのデモがあり、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が演説した。COP26について「明白な失敗だ。北半球の豊かな国々による、COP史上最も排他的な会議だ」と痛烈に批判した。
 グレタさんは「最も影響を受けている地域の人々の声が届いていない」として、COP26の参加地域の偏りを指摘。先進国は気候変動で損失を受けた国々への気候資金提供の約束を実行するよう訴えた。
 さらに「リーダーたちが美しいスピーチをし、派手な目標を発表するPRの場と化してしまった」とCOPの〝変質〟を強調。環境への配慮を示す発言は見せ掛けという意味の「グリーンウォッシュ」という言葉を繰り返し用い、温室効果ガスの大量排出を続ける国々の無責任ぶりを批判した。
 石炭依存の強いポーランド出身の大学生ベロニカさん(20)は「政治家は口ではすぐやると言いながら、空約束ばかり。汚職やお金にまみれて全く信用できない」と話し、COP26も「期待していない」と話した。
 デモはグレタさんに賛同する国際的な草の根運動「未来のための金曜日」が主催。国内外から学生や親子連れなど、市当局の予想の3倍を超える2万5000人が参加した。
 
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岸田首相8兆円バラマキの大恥外交 気候変動対策で“カネは出すがコミットせず”見透かされた

日刊ゲンダイDIGITAL
 
岸田首相の本格的な“外交デビュー”となった国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)。英グラスゴーで開催された首脳級会合で演説した岸田首相は満足げだったが、実際は札束に物を言わせたバラマキ外交だ。


 岸田首相は演説で、途上国などの気候変動対策支援に今後5年間で最大100億ドル(約1兆1000億円)を拠出すると表明。「日本の存在感をしっかり示すことができた」と胸を張ったが、国際NGOから温暖化対策に後ろ向きな国として日本は「化石賞」を贈られてしまった。

 この不名誉に松野官房長官は「コメントは控える」としつつも、岸田首相の演説を引き合いに「多くの参加国から高い評価と歓迎の意が示された」と強調。反論にもならない理屈を並べたが、しょせんはバラマキである。

 岸田首相が表明した今後5年間での100億ドル拠出は、欧米中心の先進38カ国が気候変動対策費として途上国に年間1000億ドルを目標に支援する合意に基づく。5年間で1カ国当たり平均131.5億ドルを出せば目標を達成できるが、日本は今年6月のG7サミットで600億ドルの支援をすでに発表。さらに今回の「岸田演説」と合わせ計700億ドル(約7兆7000億円)も拠出するのだ。他国に比べて大きなウエートを占めるのは間違いない。

■「化石賞」受賞は当然

 もちろん、途上国への支援自体は問題ない。ところが、米国など20カ国が国外での火力発電などの化石燃料事業への公的融資を来年末までに停止するとの合意に、日本は不参加。海外メディアに「化石燃料事業の2大国である中国と日本は無視」と名指しされ、カネは出すがコミットしない姿勢が見透かされた。これじゃあ、「化石賞」も当然だ。

「カネを積んで化石燃料を使い続けたいという下心すら透けます。日本政府には、湾岸戦争で味わった『カネだけ出しやがって』というトラウマがある。同じ轍を踏みたくないなら一層、温暖化という待ったなしの課題に率先して汗をかくべきです。国内の財界や産業界に配慮して気候変動対策に踏み込めないのに、国際貢献を声高に叫んでも、先進国とは言えません」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)

 18歳以下への10万円給付について、岸田政権は「バラマキ」との指摘を気にするクセに、海外には何とも気前がいい。本当に「国民の声」を聞いているのか。


「バラまき」をやめて、石炭火力発電をやめるべきだが!
子どもたちに金も環境も背負わせるのはやめてほしい。

今日の散歩道。

遠くの山は暑寒連峰。

シャコバサボテンが満開。


雨宮処凛 生きづらい女子たちへ なぜ、「妊娠させた男」の罪は問われないのか〜新生児〇〇・〇〇遺棄事件から浮かび上がるジェンダーギャップ

2021年11月05日 | 社会・経済

Imidas連載コラム 2021/11/02

 突然だが、男性に問いたい。

 ある日警察が来て、「22年前、あなたが性交渉した相手があなたとの子どもを妊娠していた、しかもその女性は孤立出産して子どもを殺してしまったことが判明した。ついては事情を聞きたい」と言われたら、一体どうするだろうか?

 急にこんなことを書いたのは、2021年2月に報道されたあるニュースを知ったからだ。

 それは、46歳の女性が保護責任者遺棄致死で書類送検されたというニュース。

 なぜ書類送検されたのかと言えば、22年前の1999年、赤ちゃんを出産していたからだ。女性は生まれたばかりの赤ちゃんを東京都足立区の寺の境内に遺棄、赤ちゃんは亡くなった。以降、この事件の「犯人」であるかもしれない母親が誰かは闇の中だったのだが、最近、乳児のへその緒などから採取したDNAが最新技術で再鑑定されたのだ。その結果、別の事件で立件された女性と一致したというわけである。女性は任意の聴取に対して、「トイレで産んだかもしれない」と認めているという。

 ちなみに保護責任者遺棄致死の事件については時効が成立しているので、不起訴となる見通しと報道は伝えている。

 この一報を耳にした時、なんとも言えないもやもやが突き上げてきた。

 生まれたばかりの赤ちゃんが捨てられるのはなんとも痛ましいことだし、小さな命が奪われた罪は当然、償わなければならない。

 しかし、20年以上が経ち、時効も成立しているのに突然書類送検となり、大々的に報道される意味や意義は、果たしてどこにあるのだろうか。

 私たちは、毎年のように妊娠を誰にも言い出せず、自宅などでひっそりと出産し、どうしていいかわからず手をかけてしまったという事件を見聞きしている。

 2021年9月末にも、自宅で出産した高校生が逮捕されている。

 高校生は8月なかば、自宅敷地内の屋外トイレで女児を出産。赤ちゃんをポリ袋に入れて放置。逮捕された高校生は出産前、通院しておらず、家族にも妊娠のことを相談していなかったという。

 

 その少し前には、就職活動で上京した際、空港のトイレで出産した女児を殺害した23歳女性の裁判が注目を浴びた。女性は19年11月、多目的トイレで出産後、女児を殺害。妊娠については家族に告げておらず、殺害の理由については「予期せぬ出産でパニックになり、気がついたらトイレットペーパーを口につめて首に手をかけていた」と語っている。

 遡る7月には、あるベトナム人技能実習生に科せられた「実刑」が大きな話題となっていた。この女性は20年11月、双子の赤ちゃんを死産し放置したとして死体遺棄の罪に問われていたのだが、懲役8カ月、執行猶予3年の有罪判決となったのだ。

 これに対して、外国人技能実習生問題弁護士連絡会は、「妊娠、出産すると強制帰国させられるという技能実習生のおかれた状況を無視し、孤立出産した女性を広範に犯罪者と扱うおそれがある」として強く抗議している。

 このような事件が起きるたびに、「身勝手な母親」「勝手に妊娠・出産して困ったら殺すなんて無責任すぎる」などと女性に対する非難が嵐のようにわき起こる。もちろん、小さな命が奪われてしまったことは痛ましいし、裁かれるべき罪であることは間違いない。

 それでもこの手の事件が起きるたびに思うのは、「なぜ、妊娠させた男のほうは影も形もないのだろう?」ということだ。

 女性ばかりが責められ、実名と顔を晒され「犯罪者」として全国に知れ渡る。その一方で、妊娠させたほうは存在自体が最初から忘れ去られているようだ。その様子は、まるでこの女性たちが全員「処女懐胎」という奇跡を起こしているかのようである。日本国内だけでそんなにしょっちゅうキリスト教界を揺るがす事態が起きるはずはない。

 20年の年明けにも、そんな悲しいニュースを耳にした。年末にたった一人、自宅で出産した31歳の女性が年明けすぐに逮捕されたのだ。女性は出産後、赤ちゃんを家に置いてパチンコ店や飲食店の仕事に行っていたという。その間に赤ちゃんは亡くなってしまったのだ。女性は「病院に連れて行くお金がなかった。相談する人もいなかった」と供述したという。

 もし自分だったら、と思う。

 妊娠がわかり、大きくなっていくお腹を抱え、それでも誰にも相談できない日々はどれほど心細いだろうと。

 そんな中、女性はたった一人で出産した。そのことを誰にも言えず、しかもすぐに働きに出ているのだ。それがどれほど過酷なことか、出産経験のない私にもわかる。

 この事件の女性もやはり、苛烈なバッシングに晒された。しかし、「自分が妊娠させた女性を放置して父親はどうした?」という声は私が知る限り、どこからも上がらなかった。

 もちろん、彼らは保護責任者遺棄致死などの法に触れるようなことはしていない。しかし、法には触れないものの、多くの罪を犯している男性はいる。妊娠にビビって逃げ出す男性もいれば、合意のないまま避妊しなかった男性もいるだろう。しかし、悩み苦しみ、命の危険を冒してたった一人で出産した女性だけがバッシングに晒される。

「福祉とか、公的支援に頼ればよかったのに」

 このような事件が起きるたび、そんな意見も耳にする。

 が、彼女たちは自分の身に起きていることを誰かに知られると「怒られる」と思っていたのではないだろうか。なぜ妊娠などしたのか、自業自得ではないのかと罵倒され、軽蔑され、全人格を否定されると思っていたのではないだろうか。

 今回、書類送検された女性と私は同じ年である。今から22年前と言えば、24歳。当時の私はキャバクラ嬢で、もし、この頃に妊娠したとしたら、親だけでなく、親族一同、激怒したと思う。もう立ち直れないくらいにひどいことを言われて存在そのものを否定され、呆れ果てた親族たちに「一族の恥」という扱いを受けただろうという確信がある。だからこそ、もしそんなことがあっても「助けて」なんて絶対に言えないと思っていた。隠すしかないと思ってた。「助けて」と言って助けてくれるような関係性を、私はあの頃、一つも持っていなかった。若く無知で貧しい頃こそそれは必要なのに、そんな私に親族も世間もびっくりするほど冷たかった。フリーターで「若い女」だった私は、それだけで「お荷物」のような扱いを受けていた。

 悲しい事件が起きるたびに、想像する。

 もし、相手の男がDNA鑑定で特定されて名前や顔が出るという法律ができたら、と。そうなれば、報道の扱いも随分変わるだろう。

「このような悲しい事態になってしまいましたが、おそらく男性側にも事情が……」などとまず「男の事情」が慮られて、そのついでに「女性の事情」にもやっと想像が及ぶはずだ。そうして今のように全国に顔や名前を晒されることもなくなるのではないか。

 さて、ここで書いておきたいのは、このような悲劇をなくす方法はいくらでもあるということだ。

 まずは緊急避妊薬。

 性交渉から72時間以内に飲めば、高い確率で妊娠を防げる緊急避妊薬だが、日本では現在、病院を受診するかオンラインで診察を受け、処方箋がないと手に入らない。が、年末年始などで病院が休みだったり、近くに病院がない場合もあるだろう。使い勝手の悪さに非常に問題があるのだが、この緊急避妊薬、世界90カ国では薬局で手軽に買うことができるのだ。

「もしかして、妊娠したかも」

 そう思った時、薬局で薬が手に入れば、まずは「望まない妊娠」を回避できる。

 例えば高校生だったら、保険証を使って病院に行くことに「親バレするかも」と抵抗があるかもしれない。一方、困窮状態にある女性が妊娠した場合、保険証もお金もないというケースは少なくない。そうなると中絶費用も用意できず、結果的に新生児殺害が起きてしまうこともある。そのような悲劇も、緊急避妊薬が手軽に安く手に入ればあらかじめ防げるのだ。

 が、お金があっても中絶にたどり着けない場合もある。20年6月、20歳の専門学校生が出産したばかりの赤ちゃんを遺棄したとして起訴されたのだが、この女性は相手の男性から中絶の同意書にサインがもらえず、複数の医療機関で中絶手術を断られた末に出産していた。法的には、相手の同意は必要ないという。それなのにいくつもの医療機関からそれを求められたら、手術できる病院を探しているうちに中絶可能な期間を過ぎてしまうことだってあるだろう。

 ちなみに中絶の際、「配偶者の同意」が必要とされているのは、日本やインドネシア、サウジアラビアなど11カ国しかないという(NHK NEWS WEB特集「“戦後まもなくから変わらない”日本の中絶」)。

 さて、その「中絶」にしても問題だらけだ。

 日本では「掻爬(そうは)法」という「かき出す中絶」が主流で、現在、他の方法との併用も合わせて6割以上が掻爬法だというが、この方法は危険とされて多くの国ですでに消え、WHO(世界保健機関)も「時代遅れでやめるべき」としている。

 産婦人科医の遠見才希子(えんみさきこ)氏は、タイで開催された国際会議で海外の参加者たちから言われた言葉を紹介している。

〈「日本は先進国なのになぜ、中絶が合法なのになぜ、女性に懲罰的な掻爬法を罰金のような高額でいまだに行っているんだ。なぜ安全な経口中絶薬を認めていないんだ」〉(PRESIDENT Online「未だに『かき出す中絶』が行われている日本の謎」)。

 この言葉を初めて見た時の衝撃は忘れない。日本で「当たり前」とされてきた中絶方法は、世界基準でみると「懲罰的」なのだ。また、緊急避妊薬が薬局で買えないだけでなく、経口中絶薬は日本でそもそも認可すらされていない。手術をするのではなく、薬を飲むだけで中絶ができる経口中絶薬は世界70カ国で承認され、WHOも安全な方法として推奨しているのに、である。現在、日本で中絶手術をすると10万〜20万円かかるが、海外での経口中絶薬は430〜1300円。これでどれほどの悲劇が防げるだろう(NHK NEWS WEB「経口中絶薬 年内めど承認申請へ “治験で有効性 安全性確認”」)。

 緊急避妊薬が薬局で買えないことも、経口中絶薬が認可されないことも、私には地続きの問題に見える。それはやはり、この国の意思決定の場に圧倒的に多いのが男性ということだろう。どちらも選択肢にある国々の姿勢からは「女性の心と身体を守ろう」という意識が見えるのに対して、懲罰的な手術が温存されているこの国のスタンスからは、「女の安易な中絶を防ごう」みたいな思惑ばかりちらつくのだ。

 それだけではない。常に背後に「女の身体」を支配し、時に罰するのを当然視する家父長制もちらつく。

 現在、緊急避妊薬の市販薬化については、厚生労働省でやっと本格的な議論が始まった。

 一方、経口中絶薬も年内をめどに承認申請がなされる見通しだという。

「女の身体」のことを決めるのは、他でもない、女性たち自身だ。

 そんな当たり前が、一刻も早く実現してほしい。

* * *

*避妊や中絶の現状について詳しく知りたいかたは、遠見才希子医師に取材した記事をご覧ください(編集部)

・「避妊の基礎知識を知ろう」

・「中絶の基礎知識を知ろう~日本と海外でこんなに違う!『安全な中絶』は女性の権利」


「禁止語句」があるということで○〇にしました。
わかりますよね?

自分の体は自分が守る!
ワクチンも摂取するかしないか、自分が決めることだ。


雨宮処凛がゆく! 第574回:衆院選、終わる。

2021年11月04日 | 社会・経済
 

 衆院選が終わった。

 蓋を開けてみれば、維新が4倍近く議席を増やし、自民党は議席を減らしたものの、「絶対安定多数」を確保。

 一方、野党共闘はどうなったかと言えば、多くの候補者が涙を飲んで実現した一本化だったにもかかわらず、立憲民主党も、そして共闘に多大な協力をしてきた共産党も議席を減らす結果となった。

 無残、としか言いようがない気持ちである。そうして込み上げてくるのは、今回の衆院選を通して、ずっと抱いていた立憲民主党執行部への違和感だ。

 多くの候補者と政党が調整のために日々汗を流しているというのに、「野党共闘とはみなさんが言ってるだけで使ったことはない」などとわざわざ口にする枝野氏。

 そうして候補者の調整を巡ってゴタゴタが起きた東京8区の件。山本太郎氏の出馬表明を受けて地元が反発、3日後に8区からの立候補を取り下げたというアレだ。

 もちろん、地元で地道に準備してきた人は尊重されるべきだが、今回の総選挙、山本太郎氏がどこから出るにしても、その抜群の知名度と発信力を生かし、野党共闘のアイコンとしてガンガン衆院選を盛り上げるという手があったはずだ。そうしてメディアにどんどん取り上げさせれば、野党共闘全体に旋風が吹き、大逆転が起きる可能性だってあったのに、なぜ、山本氏に対して徹底した冷遇を続けたのか。

 多くの人が指摘していることだが、私自身もまったく同じ思いだ。なぜ、この絶好のチャンスを最大限に生かそうとしなかったのか、甚だ疑問である。

 さて、そんな選挙結果を受け、投開票日から2日後、枝野氏は辞任を表明。言いたいことは山ほどあるが、これだけのチャンスを生かせず、野党共闘に期待する人々のやる気を削いだ罪は大きいと思う。

 もうひとつ残念だったのは、女性議員が47人から45人に減ったこと。特に、辻元清美氏の落選は痛い。また、候補者として、ジェンダー問題に取り組む池内さおり氏や、無戸籍問題に詳しい井戸まさえ氏が当選できなかったことも残念でならない。多様性と言うのであれば、女性の数が1割なんてありえない話なのだ。

 そんな中、唯一と言っていいくらいの希望は、れいわ新選組の躍進だ。

 東京8区のゴタゴタの末、山本太郎氏は選挙区ではなく比例で出ることになったため、投票用紙に「山本太郎」と書くと無効、「れいわ」と書かないと一票にならない厳しい選挙となった。山本太郎氏が国会に戻れるかどうか。そんな不安でいっぱいだったものの、なんと3議席を獲得。「れいわ旋風」と言われた19年夏の参院選228万と並ぶ221万票を獲得した。

 今、私は、れいわ新選組の議員が2人から5人に増えたことに、心からほっとしている。

 なぜなら2019年の参院選の際、山本太郎氏とともに、現参院議員で難病・ALSの舩後靖彦氏を口説きに行ったという経緯があるからだ。

 人工呼吸器の音が響く舩後氏のベッドの横で、「国会で一緒に闘いませんか」と熱心に語りかける太郎氏を見て、「この人、ホントに空気読まないんだな……」とちょっと引き気味だったものの、それ以前にも立候補経験があった舩後氏は数日後には覚悟を決めた。それからすぐ、重度障害があり、車椅子の木村英子氏の立候補も決定。障害がある二人は「特定枠」で優先的に当選するというルールを聞いた時、「もし、舩後さんと木村さんだけ当選したら……」と不安が込み上げたのを忘れない。

 「もしそんなことが起きたら、『障害者国会置き去り事件だね』」なんて木村英子さんと冗談で話したこともある。

 しかし、19年の参院選、蓋を開けてみれば、山本太郎氏は、その年の参院選比例代表に立候補したすべての候補者で最高となる97万票を獲得したものの、落選。重度障害がある二人だけが国会に、という展開となった。

 一体、どうなるんだろう?

 どう考えても、到底不可能なチャレンジに思えた。

 しかし、2人の議員が生まれたことによって、国会はバリバリと音を立てて、具体的にバリアフリー化されていった。そうして有能な秘書やヘルパーの助けを借りて、2人はこの2年以上、多くの仕事を成し遂げた。

 文教科学委員会に所属する舩後さんは多くの国会質問をし、インクルーシブ教育の重要性を訴えている。コロナ禍では、自らも世界でただ一人の「全身麻痺ギタリスト」であることから、アーティストへの支援を巡り、重要な答弁も引き出した。

 木村英子さんは国土交通委員会に所属し、新幹線や多機能トイレなどの質問をしたことで、現実を変えている。木村さんの質問をきっかけとして、新幹線の車椅子スペースが見直され、現在、すでに車椅子スペースが増設された新幹線が走っている。それだけではない。多機能トイレや車椅子専用駐車場の設計基準も改正されたのだ。

 失礼を承知で言うと、私は二人の議員が国会で、ここまで重要な仕事をどんどん成し遂げていくなんて想像していなかった。しかし今、2人は自らの障害を強みとして議員活動を続けている。その姿は、「水を得た魚」のようだ。そういう意味では、れいわ新選組は、超高学歴エリート男性がほとんどの国会議員が最近こぞって口にする「多様性」という言葉を体現する存在だ。

 なんといっても党首は中卒。ALSの舩後さんは全身麻痺で人工呼吸器をつけていて、木村さんは車椅子で24時間介護が必要な身。そうして今回当選したたがや亮氏は飲食店経営者。大石あきこ氏は大阪府の元職員で、知事時代の橋下徹氏に抗議の声を上げた女性である。

 こんな形で、どんどんいろんな当事者が国会に増えていったら、少しはこの国も風通しが良くなるかもしれない。

 なんてことを考えていたら、次の参院選がもう楽しみになってきた。ここからまた、ワクワクする戦いが始まる。

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COP26に専用機など400機 首脳、企業家ら 偽善との批判も

2021/11/03 17:41毎日新聞

 「グラスゴー上空には偽善と熱気が漂っている」(英紙デーリー・テレグラフ)――。英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席した各国首脳や企業家らは、専用機や自家用機を利用。その数は計約400機に上り、英メディアなどで批判的に取り上げられている。

 英紙ガーディアンによると、英国のジョンソン首相は、グラスゴーからロンドンに戻る際に4時間半かかる電車ではなく、専用機を使う。

 英首相官邸は、専用機の燃料の一部は環境配慮型だとしているが、ジョンソン首相は1日の首脳級会合のあいさつで「気候変動対策に取り組む時に、行動を伴わない言葉は無意味だ」と息巻いた。だが「説得力に欠ける」との非難を受けそうだ。

 航空機は乗客1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が鉄道より多くなることから、欧州では短距離の移動に鉄道の利用を促す機運が高まっている。

 また、同じ航空機でもたくさんの乗客を運ぶ民間機と比べ、専用機は乗客1人当たりの排出量がさらに増える。このため輸送に関する英国の環境活動家、マット・フィンチ氏は英メディアに対し「プライベートジェット機は輸送手段の中でもっとも汚染度が高い。気候変動会議の行き来に使うのは、完全に間違ったメッセージの発信になる」と訴えた。

 デーリー・テレグラフは「その最たるものがバイデン米大統領だ」とする。大統領専用機「エアフォースワン」と、それに同行する4機の大型ジェット機が米欧間を往復すると、約1000トンのCO2が発生すると指摘した。

 さらに、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長も専用機で現地入りしたとし「彼女はブリュッセルからパリやロンドンといった短距離を含め、海外出張の半分以上に『エアタクシー』を使っている」と批判した。

 英紙インディペンデントは2日のCOP26の会合で、自然の回復などに20億ドル(約2280億円)の拠出を発表した米インターネット通販大手アマゾン・コム創業者、ジェフ・ベゾス氏がプライベートジェット機でやって来たことを紹介。ただ、ベゾス氏が気候変動対策のために設立した基金の担当者は、同紙に対し「環境配慮型の燃料を使い、排出されるCO2も全て相殺している」と答えた。【ロンドン横山三加子】


やっと取り上げて呉れるメデイアが現れました。
まさか会議を祝って煙曝ジェットは飛ばなかったでしょう。

また「金」ですか?
矛盾を感じないのでしょうか?

この矛盾に満ちた「システム」を変えようと若者は叫んでいるのです。


「世界のリーダーたちへ」グレタ・トゥーンベリさんら緊急アピール。COP26に合わせて署名を呼びかける

2021年11月03日 | 生活

ハフポスト 2021年11月02日 

日本時間11月2日午前11時の時点で、世界中から127万超の署名が寄せられています。

田口雅士

AFP=時事鉄道でイギリス北部グラスゴーに着いたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん=2021年10月30日、イギリス・グラスゴー

10月31日にイギリスで開幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に絡み、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんらによるインターネット上の緊急アピールが反響を呼んでいる。

日本時間11月2日午前11時の時点で世界中から127万超の署名が寄せられており、当面の目標数である150万も達成しそうな勢いだ。

署名募集サイト「AVAAZ」(Avaaz - 気候アクションを求める緊急アピールに署名する!)で、トゥーンベリさんら4人の若い市民運動家が「世界のリーダーたちへ」と題し、以下の点を求めている。

  • これまで世界に類をみない勢いと速さで温室効果ガスの年間排出量を削減し、大切な5℃目標を維持してください。
  • 化石燃料への全ての投資、助成金、新規プロジェクトを直ちに打ち切り、新たな採掘やそのための調査を中止してください。
  • 全ての消費指数、サプライチェーン、国際航空、国際海運、バイオマス燃焼から出される排出量を公表することによる巧妙な炭素会計をやめてください。
  • 気候災害への追加資金と共に、最も脆弱な国々に1000億ドル(約11兆4000億円)を拠出する約束を果たしてください。
  • 労働者や最も脆弱な人々を守る気候政策を策定し、あらゆる不平等を減らしてください。

トゥーンベリさんらはサイトで「今ならばまだ間に合います。変化を起こす意思があるのならば、最悪の結果を回避することは、まだできるのです」と指摘。「必要なのは、決断力とビジョンをもったリーダーシップ。それには、とてつもなく大きな勇気が必要です。でも、あなたが立ち上がる時、すぐ後ろには数十億の人々がいることを、どうか知ってください」と世界のリーダーたちに呼びかけている。


 またまた「化石賞」を受賞いたしました。日本国民が受賞したと考えねばなりませんね。

 先月30日、氷点下2.8度まで下がったのですが、その後はプラスに戻っています。
久しぶりに園地のようすでも・・・


霜で葉が落ちてしまった桐。


菅原文太が危惧した落第国家 古賀茂明

2021年11月02日 | 生活

政官財の罪と罰 古賀茂明

AERAdot 2021/11/02 

 衆議院総選挙が終わった。今回の選挙の特徴の一つは、ほぼすべての政党が、公約の中で、国民への直接給付を強調していた点だ。格差是正や成長か分配かについての議論も盛んだった。先進国の中で日本だけが労働者の給料が上がっていないという事実が、かなりの時間差を伴って、ようやく国民に知れ渡るようになったことで、与党と言えども、国民の所得の引き上げについて強く意識せざるを得なくなったのだろう。

 ここまで議論が盛り上がったのだから、一人当たり○○万円給付という政策は実施される可能性が高い。しかし、事態は、そんな限定的な支援ではとても済ませられないくらい深刻化している。

 テレビや新聞では、貧困にあえぐ人々のニュースを目にしない日はないと言っても良いくらいだ。例えば、あるテレビの報道番組で、フードバンクに食料をもらいに来たシングルマザーに連れられた小さな女の子にインタビューしている場面が流れた。正確ではないが、こんな趣旨のやり取りだ。

「お母さんのこと、好き?」「うん、大好き!」。

「どうして?」「優しいから!」。

「どんなふうにやさしいの?」「おかあさん、ご飯食べないの。食べると私の分がなくなるから」。

 小さな子供がこんな言葉を口にする。思わず涙が出て来た。

 これは、ほんの一例でしかない。ネットで検索すれば、親が食事を1日1食にしているとか、パンと水で飢えをしのいでいるというような話が、全国あちこちで報じられている。これが日本の現実なのかと、暗澹たる気持ちになるのと同時に、どうしてこんな事態が放置されているのだろうと不思議になり、そして憤りの気持ちが高まる。

 今、私は、7年前の2011年11月28日に肝がんで亡くなった俳優の菅原文太さんのことを思い出している。もうすぐ命日だ。菅原さんは死の直前の11月1日、沖縄で演説を行った。文字通り、命を削りながらの訴えだ。

「政治の役割は二つあります。一つは、国民を飢えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと!」という冒頭の名文句は時代を超えて語り継がれるだろう。

ただ、沖縄での演説ということもあり、当時の私は、「戦争をしないこと」という言葉にばかり関心が向かい、正直なところ、「国民を飢えさせないこと」という言葉には、あまり注意が行かなかった。

 しかし、菅原さんは、当時から経済大国日本にも満足に食べられない人がいることに深く心を痛め、危機感を抱いていたのだ。だから、国家の役割として、演説冒頭でこの義務に言及した。

 そして、今日、私たちは、無数の人々が、飢えに苦しむ姿を見ている。それを放置する国家とは何か。菅原さんなら、最低限の役割を果たさない落第国家という烙印を押すだろう。

 私たちはのんびり選挙を行い、どんな給付が必要かを議論していた。その間も、日々、命をつなぐのに必死の人々がいるというのに。

何たる危機感のなさ。

 選挙は終わった、もう議論などしている余裕はない。満足に食べることができない全ての人々に食料を届ける。政府には、全てに優先して、それを直ちに実現する義務がある。

■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など。

※週刊朝日  2021年11月12日号

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そしてこんなニュースが・・・・・

女性の自殺15%増で7000人 新型コロナで労働環境変化が一因か

自殺に関するSNS相談を利用したのも、女性が多かった。

女性の自殺15%増、7千人 非正規拡大が一因 全体は11年ぶり増

 2020年の女性の自殺者数は前年より935人(15・4%)増え、7026人だった。男性が微減だった一方で女性が大きく増え、全国の自殺者数が11年ぶりに増加に転じることにつながった。政府が2日閣議決定した21年版の自殺対策白書はコロナ禍の状況を分析し、特に働く女性らが追い詰められている実態も明らかになった。

 20年の自殺者数は、2万1081人。このうち男性は1万4055人で、前年より23人(0・2%)減った。女性が前年より増えるのは2年ぶりだった。

 白書では、20年と過去5年(15~19年)の平均値とを比較して、コロナ禍の女性たちへの影響を調べた。データを比べると、働く女性の自殺が増えていた。職業別で最も増えたのは「被雇用者・勤め人」で、381人増。次いで「学生・生徒」は140人増だった。

 逆に「そのほか無職者」は98人、「主婦」は70人それぞれ減少。原因別でみても、「勤務問題」が過去5年平均より34・8%増えていた。

 コロナ禍で雇用環境が悪化し、非正規雇用で働く女性の割合が拡大した。厚生労働省は「新型コロナの感染拡大による労働環境の変化が、自殺者の増加につながる要因の一つと考えられる」としている。

 自殺に関するSNS相談を利用したのも、女性が多かった。二つの特定NPO法人が新たに設置した新型コロナに特化した相談窓口には20年度、延べ8262件の相談があった。このうち性別が把握できた7558件の8割にあたる6180件が女性からの相談だったという。(久永隆一)

(朝日新聞デジタル 2021年11月02日 )


「連合」に物申す。
政治に口出しする前に、「仲間」を守れ!
戦え!
「内部留保」削って賃金にまわせ!
戦う相手、わかるかな?
違う、違う、そちらは仲間だ。


マスメデイアの劣化を憂う。

2021年11月01日 | 社会・経済

 選挙結果を受け驚いている。
赤木さんに申し訳ない。
北方領土旧島民にも、沖縄の住民にも、リニアの犠牲になる住人にも。
コロナで自宅待機させられている方、営業ができない、仕事を追われた方。
こんなにたくさんの方が困った状況で・・・・
なぜ?

わたしが氣になるのはメデイアの「劣化」である。
「本質」を国民に知らせない、隠すのだ。

まだ一部のメデアでは頑張っているところもある。

広島での総理の読み飛ばし問題。
原稿にノリが付着していた。
優秀な「官僚」がそんなバカを犯すはずがない。
下手をすれば、また自○ものではないか?
政権の発表を何も検証せずに垂れ流す。

TVでは、ウソ、デマを流し、ベロを出しながら頭を下げる。
「良識者」がやるとたちまち「降板」。

「維新」の躍進も、吉村大阪府知事「追っかけ」現象が起きていることからも、その報道姿勢が問われるのではないだろうか?

読売新聞体質。
こんな記事を見つけた。
長いので、サワリだけ。

「NHKより早くテレビへ進出」日本テレビ読売新聞を作った正力松太郎のすごい眼力

昭和という時代を代表する人物

 PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

福田 和也

正力松太郎――。彼は、一体、いくつの人生を生きたのだろうか……。

治安維持に奔走し、社会主義者を容赦なく弾圧した内務官僚。

倒産寸前の新聞社を、日本一にした経営者。

日本にベースボールを定着させた興行師。

戦犯に指定されながら、見事、カムバックした、したたかな世渡り上手。

街頭にテレビを設置したアイデアマン。

原子力の父。