里の家ファーム

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「保育園落ちたの私です」

2016年03月07日 | 社会・経済

毎日新聞2016年3月1日 東京夕刊

「何なんだよ日本」で始まるブログが注目を浴びている。認可保育所に入所できない、と連絡があった母親が胸の内をぶちまけたブログだ。タイトルは「保育園落ちた日本死ね!!!」と過激だが、乱暴な表現に怒りが表れ、共感する人も多い。
 保育所に入れない待機児童の問題が顕在化したのは20年ほど前からだが、問題自体はもっと前から存在した。30年以上前、ゼロ歳児保育について取材し、東京のある区の区長が「3歳までは母親が育てるべきだ。区の保育行政は、父親がいないなど、どうしても母親が働かなければならない場合の支援、福祉としてやっている」と論じるのを聞いた。少子化が問題になった現在も保育所が足りない状況は変わっていない。「一億総活躍社会じゃねーのかよ」と言いたくなるのはわかる。

 ブログに「オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ」という一文があった。そして「エンブレムとかどうでもいいから」「有名なデザイナーに払う金あるなら」保育園を作れ、とたたみかける。

 五輪・パラリンピックと保育行政は、本来なら二者択一の話ではない。なぜブログに登場したのか、というと、新国立競技場案の白紙撤回や、いったん決まったエンブレムの取り下げといったトラブルで、まさに無駄な出費が相次いだからだろう。さらに、五輪という大義名分があれば、予算オーバーは当然だ、といった言動を取る人がいるのも、腹に据えかねたのだろう。

 ブログが書かれた後だが、自民党が新国立競技場の6万8000席のイスを木製にするよう決議した。林業発展につながるから、という。予算は20億円ぐらいらしい。当初見込んだ新国立の建設費は1300億円。2倍に膨らむ、などという話になり、すったもんだの末に1490億円に「収まった」のだが、それでも当初予算よりは190億円ほど増えている。そこに20億円加えるだけ、ということか。

 確かに20億円では保育士の待遇改善には全く足りないし、保育士が増えないと、保育所不足は解決できない。でも、保育所不足で会社を辞めざるを得ないかもしれない、と悩む母親は「20億円程度ならどうにでもなる」という態度に、怒りが沸騰するのだ。(専門編集委員)

 安倍首相は2月29日の衆院予算委員会で、野党議員が紹介した匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」に対し「(匿名なので)実際本当に起こっているかどうか、確認しようがない」と答弁。ネットでは批判の声が上がり、ツイッターでは「保育園落ちたのわたしだ」と多くの人が名乗り出ています。4日夜、国会正門前で行われた抗議のスタンディングには「私が当事者です」「保育園落ちたの私です」とのプラカードがかかげられた。