朝日新聞朝刊 朝日歌壇 9月分 (9/4 9/11 9/18 9/25)☆印は共選作です。
<佐佐木幸綱選>
塹壕(ざんごう)に洗濯物を干してある兵士の靴下ウクライナ軍(横浜市)徳元てつお
軍国少年時代と似た風を近頃老いた肌に感じる(大阪市)由良英俊
キーウ発の特派員メモ打つ夫の鼻すする音キッチンに聞こゆ(交野市)中野セツ子
★日本はどうなってゆくのか。戦争の気配が身近に感じられる昨今である。
竹山広の戦後の歌に「混葬(コンソウ)」という詞(コトバ)ありたりウクライナ、今(川越市)吉川清子
★長崎で被爆した歌人・竹山広の歌集『とこしへの川』に「人に語ることならねども混葬の火中にひらきゆきしてのひら」がある。
竹山広⇒こちら
<高野公彦選>
輸出合意後(あと)すぐ港を攻撃す息するように嘘つくロシア(山梨県)石原学
戦争を知る祖父だから玄関で「行って帰り」と送ってくれた(鈴鹿市)樋口麻紀子
白球が飛ぶ夏空も砲弾が飛ぶ夏空もこの地球(ほし)の空(相模原市)石井裕乃
★甲子園の球児たちの空も、ウクライナの空も同じ夏空。
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
スパシーバ私がわかる唯一のロシア語なのに使いたいのに(京田辺市)藤田佳予子
★スパシーバ(ありがとう)と言いたくてもプーチンの顔が浮かんで、言えない
戦没者三百十万人の死のどの死にもある生のはじまり(神戸市)松本淳一
オンラインでは運べない小麦積み海の道ゆく船のおおきさ(仙台市)佐藤牧子
★やっと動き出したウクライナの輸送船。
<永田和宏選>
ウクライナのニュースに馴れてゆく炎暑 ベトナム戦争の頃のようだね(名古屋市)水岩瞳
☆インパールで死んだ息子の年金を私の学資の足しにした祖母(東京都)松本秀男
広島の朝の石段座りて須臾(しゅゆ)「死の人影」となりしひとの名は(京都市)森谷弘志
須臾(しゅゆ)=わずかな時間
★森谷さん、原爆を浴び、影としてのみ残った人。その名は特定されていない。
「マジっすか」「ヤバイっすね」では済まぬのよ若き人らよ戦争とうは(水戸市)中原千絵子
原爆忌われらふたつを負うており広島は夏長崎は秋(八尾市)水野一也
★戦争の歌。戦争は決して過去のものではないが、それが軍備拡張へ繋(つな)がる懸念の歌も多かった。
薊(あざみ)咲く画面一瞬振動しキーウ街道戦車通過す(佐渡市)小林俊之
☆「生き延びる事ができたらまた会おう」テレビ取材に微笑む兵士(五所川原市)戸沢大二郎
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
<馬場あき子選>
久米島の山暗さ増す八月や忘るべからず日本のソンミ(横浜市)一石浩司
★敗戦前後の久米島でおきた島民虐殺事件。
ソンミ虐殺50年、消えぬ記憶:朝日新聞デジタル (asahi.com)こちら
経を読むことが役に立てたとふ戦地へ征きし山寺の祖父(さいたま市)齋藤紀子
われ母と戦死の父の骨なき壺埋めて五歳より「住持」なりにし(東根市)庄司天明
疎開船沈む悪石島(あくせきじま)の闇沖縄航路は消灯を告ぐ(川越市)吉川清子
★船は対馬丸。哀悼!
顔知らぬ父もつ夫の存在の重さを今年も知る終戦日(浜松市)桜井雅子
★夫君は戦死した義父の遺児だった
戦争で分ったことが一つある国国に大量の武器のあること(川崎市)宇藤順子
日本地図の赤く塗られた土地に住み占領下と知る十歳の夏(東京都)内田三和子
★占領下の沖縄にあった十歳の少女期の自覚。
☆「生き延びる事ができたらまた会おう」テレビ取材に微笑む兵士(五所川原市)戸沢大二郎
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
☆インパールで死んだ息子の年金を私の学資の足しにした祖母(東京都)松本秀男
山添さん親子
HP回復のため子の髪の匂いを吸わせてもらう「ただいま」(奈良市)山添 聖子
★日々のHP(ヒットポイント。負けない体力)が欲しいと子の帰りを待つ。
夏休みの宿題のように子は指を鳴らす練習今日もしており(奈良市)山添聖子
雪女の気分になって食べているはく息冷たくなるかき氷(奈良市)山添 葵
人間ものせたらいいのかもしれないきけんゆうどく生物図かん(奈良市)山添聡介
★確かに「きけんゆうどく」ですね。
山添親子⇒こちら
👆家族、日常、つむぐ歌 「朝日歌壇」への入選常連、親子が歌集:朝日新聞デジタル (asahi.com)
朝日新聞2022年9月13日火曜日夕刊一面
《顔知らぬ父もつ夫の存在の重さを今年も知る終戦日(浜松市)桜井雅子》
👆の短歌に寄せて
こちら
<佐佐木幸綱選>
塹壕(ざんごう)に洗濯物を干してある兵士の靴下ウクライナ軍(横浜市)徳元てつお
軍国少年時代と似た風を近頃老いた肌に感じる(大阪市)由良英俊
キーウ発の特派員メモ打つ夫の鼻すする音キッチンに聞こゆ(交野市)中野セツ子
★日本はどうなってゆくのか。戦争の気配が身近に感じられる昨今である。
竹山広の戦後の歌に「混葬(コンソウ)」という詞(コトバ)ありたりウクライナ、今(川越市)吉川清子
★長崎で被爆した歌人・竹山広の歌集『とこしへの川』に「人に語ることならねども混葬の火中にひらきゆきしてのひら」がある。
竹山広⇒こちら
<高野公彦選>
輸出合意後(あと)すぐ港を攻撃す息するように嘘つくロシア(山梨県)石原学
戦争を知る祖父だから玄関で「行って帰り」と送ってくれた(鈴鹿市)樋口麻紀子
白球が飛ぶ夏空も砲弾が飛ぶ夏空もこの地球(ほし)の空(相模原市)石井裕乃
★甲子園の球児たちの空も、ウクライナの空も同じ夏空。
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
スパシーバ私がわかる唯一のロシア語なのに使いたいのに(京田辺市)藤田佳予子
★スパシーバ(ありがとう)と言いたくてもプーチンの顔が浮かんで、言えない
戦没者三百十万人の死のどの死にもある生のはじまり(神戸市)松本淳一
オンラインでは運べない小麦積み海の道ゆく船のおおきさ(仙台市)佐藤牧子
★やっと動き出したウクライナの輸送船。
<永田和宏選>
ウクライナのニュースに馴れてゆく炎暑 ベトナム戦争の頃のようだね(名古屋市)水岩瞳
☆インパールで死んだ息子の年金を私の学資の足しにした祖母(東京都)松本秀男
広島の朝の石段座りて須臾(しゅゆ)「死の人影」となりしひとの名は(京都市)森谷弘志
須臾(しゅゆ)=わずかな時間
★森谷さん、原爆を浴び、影としてのみ残った人。その名は特定されていない。
「マジっすか」「ヤバイっすね」では済まぬのよ若き人らよ戦争とうは(水戸市)中原千絵子
原爆忌われらふたつを負うており広島は夏長崎は秋(八尾市)水野一也
★戦争の歌。戦争は決して過去のものではないが、それが軍備拡張へ繋(つな)がる懸念の歌も多かった。
薊(あざみ)咲く画面一瞬振動しキーウ街道戦車通過す(佐渡市)小林俊之
☆「生き延びる事ができたらまた会おう」テレビ取材に微笑む兵士(五所川原市)戸沢大二郎
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
<馬場あき子選>
久米島の山暗さ増す八月や忘るべからず日本のソンミ(横浜市)一石浩司
★敗戦前後の久米島でおきた島民虐殺事件。
ソンミ虐殺50年、消えぬ記憶:朝日新聞デジタル (asahi.com)こちら
経を読むことが役に立てたとふ戦地へ征きし山寺の祖父(さいたま市)齋藤紀子
われ母と戦死の父の骨なき壺埋めて五歳より「住持」なりにし(東根市)庄司天明
疎開船沈む悪石島(あくせきじま)の闇沖縄航路は消灯を告ぐ(川越市)吉川清子
★船は対馬丸。哀悼!
顔知らぬ父もつ夫の存在の重さを今年も知る終戦日(浜松市)桜井雅子
★夫君は戦死した義父の遺児だった
戦争で分ったことが一つある国国に大量の武器のあること(川崎市)宇藤順子
日本地図の赤く塗られた土地に住み占領下と知る十歳の夏(東京都)内田三和子
★占領下の沖縄にあった十歳の少女期の自覚。
☆「生き延びる事ができたらまた会おう」テレビ取材に微笑む兵士(五所川原市)戸沢大二郎
☆戦争は祈りだけでは止まらない 陽に灼(や)かれつつデモに加わる(東京都)十亀弘史
☆インパールで死んだ息子の年金を私の学資の足しにした祖母(東京都)松本秀男
山添さん親子
HP回復のため子の髪の匂いを吸わせてもらう「ただいま」(奈良市)山添 聖子
★日々のHP(ヒットポイント。負けない体力)が欲しいと子の帰りを待つ。
夏休みの宿題のように子は指を鳴らす練習今日もしており(奈良市)山添聖子
雪女の気分になって食べているはく息冷たくなるかき氷(奈良市)山添 葵
人間ものせたらいいのかもしれないきけんゆうどく生物図かん(奈良市)山添聡介
★確かに「きけんゆうどく」ですね。
山添親子⇒こちら
👆家族、日常、つむぐ歌 「朝日歌壇」への入選常連、親子が歌集:朝日新聞デジタル (asahi.com)
朝日新聞2022年9月13日火曜日夕刊一面
《顔知らぬ父もつ夫の存在の重さを今年も知る終戦日(浜松市)桜井雅子》
👆の短歌に寄せて
こちら
どんな状況がホンマもんの平和なんでしょうか?
山添親子さんの歌は、ほんわかとしててダイスキです。
和歌は、平安時代には、貴族などの特定の人々にとって、重要なコミュニケーション手段・道具であったが、今や小学生もスマホやパソコンを操る世の中です。
今回の歌壇では、ソンミ虐殺、インパール、対馬丸、久米島の虐殺など戦争の残酷さと悲哀を詠んでいる歌や、奈良の山添親子の「人間も、きけんゆうどく生物図鑑にのせたら」や、父親の肩車などの人間味のある歌もあるようです。
戦争は和歌を詠むだけでは終わらない、人権と自由を守ることが平和への近道だと思います。平和でない国は、人権と自由が守られないからです。私は今回のノーベル平和賞が、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ3国の人権活動家や団体に授与されることは、戦争を詠む、平和への強いメッセージとなることに、強く期待しています。