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ETV特集『“ノンポリのオタク”が日本を変える時 ~怒れる批評家・宇野常寛~』

2013-02-11 20:18:35 | ドキュメンタリーのお噂
ETV特集『“ノンポリのオタク”が日本を変える時 ~怒れる批評家・宇野常寛~』
初回放送=2月10日(日)午後10時~10時59分

仮面ライダーやAKB48が好きだという、1978年生まれの批評家・宇野常寛さん。
アイドルから政治・社会問題までを、ポップカルチャーを軸に批評していく活動を幅広く展開し、若い世代から圧倒的な支持を受けている批評家です。仲間たちと創刊した雑誌『PLANETS』は、批評誌としては異例の1万部を突破する勢いだといいます。
番組は、多忙な批評活動をしながら雑誌を制作していく宇野さんを密着取材、彼の「怒り」の裏にあるものに迫ろうとしていきます。

しかし、その取材はしょっぱなから手ごわい展開に。取材を申し込むディレクターに向かって宇野さんは「僕、テレビって嫌いなんですよ」と、自分の発言を都合よく切り貼りして使うようなテレビの姿勢に、警戒感をあらわにするのです。ことに、文章を綴っているときのパソコン画面を映されることを過剰なまでに嫌がるのでした。
それでも宇野さんは、ディレクター1人のみの密着取材が続いていく中で、少しずつ「世の中を変えたい」という思いと、その背景にあるものを語っていきます。
宇野さんは、多くの若者たちが、その才能を開花させることもなく潰えていく反面、その半分も才能がない人間が既得権益に守られながら「昔は良かった」的ノスタルジーを口にすることへの怒りを語り、こう続けました。
「わくわくしない世の中はつまらない。わくわくするために僕らに賭けてください」
また、自らがやっていることを“学生カルチャー”などと呼ばれることを肯定した上で、こうも言いました。
「学生に夢を見せられないで何をやるんだ、っていう」

実のところ、宇野さんのことは名前しか知らなかったわたくし。しかし、番組を観ていくうちに、既得権益に安住しようとする者たちへの怒りと若い世代への優しさ、そして繊細さと熱さとを併せ持つ宇野さんの人物像に興味が湧いてきました。
さるイベントの中で、秋葉原連続通り魔事件やオウム真理教について語っていた宇野さん。それらを自分に引き寄せながらの語り口には思いのほか浮ついたところがなく、地に足がついているという印象を受けました。聴衆の1人の「うさん臭いと思っていたが、説得力があった」との感想が大いに頷けました。

圧巻だったのは、書店で行われたトークイベントでの場面。
本と雑誌と書店のこれからを考えるというテーマにも関わらず、既得権益と過去の成功体験へのノスタルジーに浸る雑誌・出版業界を全否定したあげく、「雑誌は滅びる」とまで言い切って、聞きに来ていた出版関係者から反論を受けてしまうというありさま。
それはなんぼなんでも身も蓋もない言い方じゃないのかなあ、と若干の反発を覚えながらも、心のどこかで「なるほど」と思っている自分がいました。
制度疲労を起こし硬直したシステムが、大きく変わることもなく続く出版業界。そんな状況を末端で歯がゆく感じていることが、そういう気持ちを起こさせたのでありましょうか。

宇野さんの「怒り」は、若い人たちに夢や希望を示すことができず、自らもわくわくする気持ちを忘れてしまっているような大人たちに向けられているのかもしれないな、というように思えました。

宇野常寛さん。わたくしにとって気になる存在の1人となりました。これから、その著作や雑誌『PLANETS』を読んでみようかなと思ったりしております。•••AKBのことはほとんどわからないのですが。仮面ライダーならいくらかはわかるんだけどなあ。

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