河野美砂子の「モーツァルト練習日記」+短歌+京都の日々の暮らし

11/23(土)13時30分 NHK文化センター京都「マズルカ⑫最終回」Op.67、Op.68全曲 

ワルトシュタインとトリプルコンチェルトの類似と相違

2009-06-27 00:53:06 | ベートーヴェン
28日本番の
ベートーヴェン・トリプルコンチェルト(ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲)。

私のかねてからの見解ですが、
ベートーヴェンは、必ず新しい曲を書くときに何か実験をした。

たとえば、
ある曲では「スラーとスタッカートの明確な違いをもう一度確かめる」とか
別の曲では「属七和音と減七和音の違いをしつこく確認する」(実はこの二つの和音は、4つの構成音のうちたった1音が半音違うだけなのですが)とか
あるいは
「上行形の音型は、エネルギーがあり、下行形は情緒的、と一般に感じられているが、その逆は可能か」とか・・・・。
さらに、「いかに、或る拍子をトリッキーに(何拍子かわからないように)するか」など・・・。

・・・で、このトリプルコンチェルトに関していうと・・・。

まず気づくのは、
ピアノソナタ「ワルトシュタイン」との類似。
同じハ長調。
しかも、冒頭「ド」の音がずーっとが続くところなど。

後で調べてわかったのですが、
この「トリプルコンチェルトop.56」や
ピアノソナタ「ワルトシュタインop.53」、同「op.54ヘ長調」、同「熱情op.57」は
同じ時期、すなわち1804年頃に書かれていて

ベートーヴェンはこれらの曲を
まとめて出版社に売ろうとしていた、ということ。

トリプルコンチェルトの第3楽章のピアノの最初の部分「レドシドミソ」など
同じ音型が「ピアノソナタop.54」の中に出てきます。

・・・・
ベートーヴェンの実験のことを書き始めるとキリがないので
まとめてしまうと、

この頃のベートーヴェンは
曲の冒頭の調から、いきなり他の調へ転調することをしつこく試していました。

ワルトシュタイン=ハ長調からいきなりト長調へ。
トリプルコンチェルト=同上以外に、ハ長調からヘ長調へ。あるいは、ホ長調(!・・・これは第3楽章・・・これは後に、ピアノコンチェルト第4番の冒頭の転調に生かされています・・・ト長調からロ長調へ。)
熱情=ヘ短調から変ト長調(!!)へ。

そのほかに、このトリプルコンチェルトでは、
たぶん一度(同音連打)、二度、三度の音型をしつこく試しているのだと思われます。

それと、アーティキュレーション。
16分音符のアーティキュレーションが、けっこういろいろと細かく書き分けてある。
特にピアノのパートに、時々ものすんごく長いスラーがあったり。

・・・・
もう時間ないので
いろいろと書くべきことをすっとばして書いてしまうと

ワルトシュタインとの共通項はいっぱいありながら
このトリプルコンチェルトとワルトシュタインとの一番の違いは
「ユーモア」ということ・・・だと思います。

ワルトシュタインは、すごく立派な、或る意味巨大な音の建造物。
演奏しても、聞いていても、ハ~っ(偉大なものに対する尊敬みたいなもの)となる。
冗談はどこにもない。

それに対してトリプルコンチェルトは
同じくでっかい曲なんだけど、
なんだかちょっとユーモラス。

ジャカジャカやかましく騒いでみたり、
いきなり軽くなってみたり。
ヘンな所にアクセントつけてみたり・・・。

・・・・
また明日につづきます。



 
コメント
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