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放送局型123号受信機(戦時型)#3号機 修理記録 その2(令和5年05月21日)

2023年05月21日 07時59分53秒 | 05真空管式ラジオ

放送局型123号受信機(戦時型)#3号機 修理記録 その2(令和5年05月21日) 
その2(令和5年05月21日) 部品交換などの修理及び動作確認等について

今回の放送局型123号受信機(戦時型)の製造会社は早川金属工業株式会社です。
ケースに貼付されている回路図を見ると、一般の放送局型123号受信機(戦時型)の配線図が異なる箇所が2ヵ所あります。
一つは、ヒーター配線の順番が戦時型の真空管配置に伴い変更になっているはずなのですが、早川金属工業の真空管配置は戦時型に変更しているにも拘わらず、ヒーター配線は初期型のままとなっています。
もう一つは、検波段の再生発振回路に2KΩの負荷抵抗が早川金属工のみ挿入されています。

なお、修理前のシャーシ内の確認作業としてヒーター配線を調査すると、配線図のヒーター配線は、配線図に示すものと異なり、戦時規格の配線方法となっており、資料と作業実態が異なっていることが判明しました。
真空管配置を変更したら、それに伴いヒーターの配線方法も最適化して変更するのが当然なことですが、何故か配線図だけは修正されていないようです。

具体的な修理のために、シャーシ内部を観察すると、部品である抵抗器とコンデンサーがぎっしり配置されて、真空管のソケットの配線が見えません。
しかも、抵抗器やコンデンサーは劣化も激しく、再生バリコンは空回りする不良品、10KΩのボリュームも接点の接触不良です。
ただし、マグネチックスピーカーは断線もなく、クリック音もあり良好であるのが唯一の救いでした。

これでは、修理する意慾が減退するばかりですが、頑張って修理するしかありません。

修復方針ですが、ペーパーコンデンサーは全て交換しますが、マイカ型コンデンサーと抵抗器については不良品のみ交換とします。
シャーシ内部の配線は絶縁良好と判断したものはそのままとしますが、シャーシ外の電源ケーブルやスピーカーや電源スイッチ等の配線には、全て新品ケーブルと交換して漏電事故への対策をします。
一方、部品や配線類を全て撤去して、新品の部品と配線で作り直しする手法もありますが、少しでも当時の部品を活かしつつ修復するほうが個人的には好みです。
真空管ソケットの配線が見えないので、不良品ではペーパーコンデンサーの片方の足を切断して、配線を確認します。
同時に、再生バリコンと10KΩのボリュームを新品なのものと交換しておきます。

なお、放送局型122号及び123号の設計の最大の誤りはトランスレス方式の中で両波倍電圧整流方式を採用した点が唯一の欠点であり、また最大の欠点でもあります。
この方式では交流の極性をどちらにしてもシャーシは100%と感電するこことなります。
このため、本来は両波倍電圧整流のトランスレス方式ですが、あえて半波倍電圧整流方式に変更しています。
最初に改修後の配線図を以下に示します。

修理手順を下記に示します。


(修理上のチェックリストとして活用しています)
1.AC100Vの下方端子(12Y-V1のヒーターの端子)をシャーシに直接半田付けする。
2.AC100Vの上方端子と整流菅K2(カソード)の接続線を切断する。
更に、切断したAC100Vの上方端子と整流菅K2(カソード)間にC16(22μF)極性は+側をK2の向きで接続する。
3.R13平滑抵抗器(2KΩ)の両端をC15とC17(22μF)を交換し、-側はアース処理する。
4.R13平滑抵抗器(2KΩと12Y-V1のG2間のR4(30KΩ)にC14(4μF)を古いものと交換する。
5.12Y-R1と12Z-P1間のC11(0.05μF)とC10(100pF)を交換する。
6.12Z-P1のカソードのC13(10μF50V)を交換する。
7.12Y-V1と12Y-R1のC6、C7、C9(0.05μF)を交換する。
8.C12(12Z-P1のPとG2間)、アンテナのC1については、適宜不良と判断すれば交換とする。

交換対象部品

修理後の裏面の状況

交換用の部品

試験用の環境整備
試験用スピーカーと電源コード(SWなし)を追加します。

真空管の事前確認
本体部の改修が完了したので、ここで使用する真空管のチェックに入ります。
本機の使用真空管は日本独自規格のため、米軍のTV-7では測定データがありません。
ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオのホームページに、追補データと整理されていますので、これら真空管のテストが可能です。
TV-7/U* Supplemented Data/追補データ参照のこと
12Y-R1 12.6 FR0-2340 21 0 B 3 31
12Y-V1 12.6 FR0-2340 21 0 B 3 36
12Z-P1 12.6 GR4-2350 39 – B 3 40
24Z-K2 #1 25 GR0-5040 0 30 A 7 56
#2 25 GR0-2030 0 30 A 7 56

各真空管はTV-7により棄却値以上であることを確認します。

この状態で試験環境にて受信確認をして問題がないことを確認します。
3m程度の室内用ワイヤー・アンテナを接続し、再生バリコンを調整しながら安定した受信点を求めます。
高感度で多数の放送波をとらえることが確認できました。

特に問題が見られないことから、試験環境から本番環境にシステム変更します。
ここでいう本番環境とは、故障修理などのメインテナンスのため本体ケースに収容されている電源スイッチとスピーカーの接続を結合コネクター接続してメインテナンスの時には簡単に本体を脱着・分離するようにしたものです。

本番環境で受信試験すると、全く無音となりました。
問題は、試験と本番の環境の相違のようですが、調査すると本番環境のマグネチックスピカーが断線となっておりました。
断線の原因は、マグネチックスピカーのトランスにB電圧をかけてたことで、トランスの巻線が静的には導通状態だったのが、B電圧という高圧をかけたことで瞬時に断線状態を引き起こしたように思われます。
早めにスピーカーの故障が判明しましたので、手元にある安物のダイナミックスピカ―と交換します。
マグネチックスピーカーの高・低音が通らない独得な音域を楽しむことはできなくなったのが残念です。

ダイナミックスピーカーのままででは芸がないので、故障しているマグネチックスピーカーをかぶせて修復箇所を隠蔽しておきます。
なお、出力トランスは隠蔽できませんのでケースに直付けしておきます。

更に、パイロットランプが点灯していないことに気付き断線かどうかランプを確認しましたが、ランプ自体は断線ではありません。
因みに、ランプの端子間をACレンジで測定すると、約10Vを示しています。
これは、ランプに並列して挿入されている60Ωの抵抗器だけの値(150mA×60Ω)です。
原因はランプとランプソケットの接触不良のようでが、力一杯つっ込んでも導通しません。
しかたないので、手持ちのランプソケットと交換することで問題解消です。
なお、60Ωの抵抗器はパイロットランプが断線しても、この抵抗器が保護作用としてトランスレスのヒーター系の全体を保護する機能です。

【コメント】
早川金属工業株式会社は、真空管を除きほとんどの部品である抵抗器や蓄電器を自社生産している。
部品の装着方法にしても、他社は機能的配置のため抵抗器や蓄電器が斜めでも最短距離での配線に注力しているが、早川金属工業株式会社では部品を水平、垂直方向に意識的に配置しており、すっきりとした部品配置が行われている。
しかし、自社製品にこだわり過ぎたのか、抵抗器の容量が必要規模より大き目なもの例えば、0.5Wでいいものを1W程度の抵抗器を用いているため必要配置面積を採り過ぎ、このため真空管のソケット配線が全く見えずらい結果を引き起こしている。
これでは、ラジオが故障したら、修理に当たる人は大変であろう。

なお、私的なことですが、本機である放送局型123号受信機が民生品のラジオ修理としては最後の作業となりました。
やはり、高齢化に伴い視力低下が原因で細かな修理作業はもはや限界のようです。


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参考文献


広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/

 


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