■Dennis Doyle / Chanticleer■
オレゴン州ポートランド産の音楽となれば、爽やかで引き締まった空気感とそこで暮らす人々の素朴で人間味のある佇まいが見事に調和した良質なサウンドをイメージしてしまいます。 妄想癖が強すぎると失笑されそうですが、そんな先入観を持ちながら、アルバムと向き合うのもレコード鑑賞の醍醐味だと思います。
今日取り上げた Dennis Doyle のアルバムはそんな予想がほぼ的中した魅力的な作品。 乾いたギターの音色、頼りなげなボーカル、彩色するようなハーモニーを随所に堪能することができる傑作と言えるでしょう。
個々の楽曲は大きく 3 つの傾向に分けることができます。 一つ目はウェストコースト風のプリ AOR 系サウンド、二つ目はシンプルで実直なアコースティック系サウンド、そして最後はカントリー・フレイバーを感じさせるサウンドです。 逆の順序で紹介してみましょう。 カントリー系にカテゴライズされるのは、「(There Ain’t No More Whiskey On) Whiskey Hill」、「The Test Of Love」、「It’s Not Me Up Here」の 3 曲。 いずれもバンジョーやペダル・スティールが名わき役を演じていますが、カントリー色が過度に強くないところがアルバムの全体性を保っており、重要なポイントだと思います。
シンプルなアコースティック系としては、ギターと風情のあるハーモニーがセピア色の風景を描き出すようなバラード「Jiffy Janie JigⅡ」、政治的なメッセージが含まれていると思われ、いつになくボーカルが強く感じるミディアム「If Ethiopia Only Knew」が挙げられます。 ギターが参加していないピアノとボーカルだけのバラード「Help Me Talk To My Woman」は悲哀あふれる出来。 「Angels On Horseback / Wooden Heart」は Dennis Doyle のギターソロで唯一のインストナンバーです。
最後のカテゴリーは、アルバムのなかで最も好みの楽曲が並んでいます。 オープニングを飾る「Home In Love」はイントロのギターから爽やかなプリ AOR サウンドを聴かせる名曲。 この乾いた感じは深まる秋にぴったりで、アルバムの顔とも言えるナンバーです。 B 面の「The Dawntreader」はウェストコースト風味の強い名曲。 いつもの編成に加え、ピアノやサックスがメジャー感あふれる演奏を繰り広げ、洗練されたアレンジもあり、この曲もアルバムを代表する曲に仕上がっています。 「Sometimes You’ve Got Be Hard」は Eagles の影響を強く受けていると思われるナンバー。 ゆったりしたリズムを背景にした漣のようなサウンドは、その繊細さもあって、Timothy Schmit に歌わせたくなります。 後半で聴けるさりげないツインギターも Eagles へのオマージュでしょうか。 ラストの「The Razor Edge」は軽やかなタッチに叙情的なバイオリン、そして絶妙なハーモニーが融合した名曲となっています。
このようにアルバムはアルバムの全体感を損なうことなく、個々の楽曲が個性を発揮しています。 全ての曲は、Dennis Doyle のオリジナルですので、彼の音楽的なセンスは侮れないものと言えるでしょう。 しかし、禁断の品番 1001 を与えられた運命でしょうか。 彼のアルバムはこの作品以外、見当たらないのです。
■Dennis Doyle / Chanticleer■
Side 1
Home In Love
(There Ain’t No More Whiskey On) Whiskey Hill
Jiffy Janie JigⅡ
The Test Of Love
Angels On Horseback / Wooden Heart
Side 2
The Dawntreader
Help Me Talk To My Woman
Sometimes You’ve Got Be Hard
It’s Not Me Up Here
If Ethiopia Only Knew
The Razor Edge
Produced by Dennis Doyle
Al Songs written by Dennis Dolye
Recorded in Portland, Oregon at Recording Associates
Dennis Doyle : guitars, vocals, recorder
Jim Britton : guitar
John Antle : vocals, harmony and background vocals
Ken Swanson : bass, vocals, banjos
Dave Hood : drums
Dean Rankin : dobro, pedal steel guitar
Edd English : piano, organ, saxophone
Gary Keiske : violin
Charles Schroeder : bass, vocals
Reynard Records RS 1001
オレゴン州ポートランド産の音楽となれば、爽やかで引き締まった空気感とそこで暮らす人々の素朴で人間味のある佇まいが見事に調和した良質なサウンドをイメージしてしまいます。 妄想癖が強すぎると失笑されそうですが、そんな先入観を持ちながら、アルバムと向き合うのもレコード鑑賞の醍醐味だと思います。
今日取り上げた Dennis Doyle のアルバムはそんな予想がほぼ的中した魅力的な作品。 乾いたギターの音色、頼りなげなボーカル、彩色するようなハーモニーを随所に堪能することができる傑作と言えるでしょう。
個々の楽曲は大きく 3 つの傾向に分けることができます。 一つ目はウェストコースト風のプリ AOR 系サウンド、二つ目はシンプルで実直なアコースティック系サウンド、そして最後はカントリー・フレイバーを感じさせるサウンドです。 逆の順序で紹介してみましょう。 カントリー系にカテゴライズされるのは、「(There Ain’t No More Whiskey On) Whiskey Hill」、「The Test Of Love」、「It’s Not Me Up Here」の 3 曲。 いずれもバンジョーやペダル・スティールが名わき役を演じていますが、カントリー色が過度に強くないところがアルバムの全体性を保っており、重要なポイントだと思います。
シンプルなアコースティック系としては、ギターと風情のあるハーモニーがセピア色の風景を描き出すようなバラード「Jiffy Janie JigⅡ」、政治的なメッセージが含まれていると思われ、いつになくボーカルが強く感じるミディアム「If Ethiopia Only Knew」が挙げられます。 ギターが参加していないピアノとボーカルだけのバラード「Help Me Talk To My Woman」は悲哀あふれる出来。 「Angels On Horseback / Wooden Heart」は Dennis Doyle のギターソロで唯一のインストナンバーです。
最後のカテゴリーは、アルバムのなかで最も好みの楽曲が並んでいます。 オープニングを飾る「Home In Love」はイントロのギターから爽やかなプリ AOR サウンドを聴かせる名曲。 この乾いた感じは深まる秋にぴったりで、アルバムの顔とも言えるナンバーです。 B 面の「The Dawntreader」はウェストコースト風味の強い名曲。 いつもの編成に加え、ピアノやサックスがメジャー感あふれる演奏を繰り広げ、洗練されたアレンジもあり、この曲もアルバムを代表する曲に仕上がっています。 「Sometimes You’ve Got Be Hard」は Eagles の影響を強く受けていると思われるナンバー。 ゆったりしたリズムを背景にした漣のようなサウンドは、その繊細さもあって、Timothy Schmit に歌わせたくなります。 後半で聴けるさりげないツインギターも Eagles へのオマージュでしょうか。 ラストの「The Razor Edge」は軽やかなタッチに叙情的なバイオリン、そして絶妙なハーモニーが融合した名曲となっています。
このようにアルバムはアルバムの全体感を損なうことなく、個々の楽曲が個性を発揮しています。 全ての曲は、Dennis Doyle のオリジナルですので、彼の音楽的なセンスは侮れないものと言えるでしょう。 しかし、禁断の品番 1001 を与えられた運命でしょうか。 彼のアルバムはこの作品以外、見当たらないのです。
■Dennis Doyle / Chanticleer■
Side 1
Home In Love
(There Ain’t No More Whiskey On) Whiskey Hill
Jiffy Janie JigⅡ
The Test Of Love
Angels On Horseback / Wooden Heart
Side 2
The Dawntreader
Help Me Talk To My Woman
Sometimes You’ve Got Be Hard
It’s Not Me Up Here
If Ethiopia Only Knew
The Razor Edge
Produced by Dennis Doyle
Al Songs written by Dennis Dolye
Recorded in Portland, Oregon at Recording Associates
Dennis Doyle : guitars, vocals, recorder
Jim Britton : guitar
John Antle : vocals, harmony and background vocals
Ken Swanson : bass, vocals, banjos
Dave Hood : drums
Dean Rankin : dobro, pedal steel guitar
Edd English : piano, organ, saxophone
Gary Keiske : violin
Charles Schroeder : bass, vocals
Reynard Records RS 1001
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