Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Tim Harrison

2008-03-15 | SSW
■Tim Harrison / Train Going East■

 うだつのあがらない表情を浮かべるジャケットとは裏腹に素晴らしい内容のアルバム。 カナダを代表するシンガーソングライターの 1 人である Tim Harrison のデビューアルバムです。 Stan RogersDave Essig といったカナディアン・ミュージックシーンの重鎮のサポートを受け、世に送り出されたのが今から 30 年前の 1978 年のこと。 その後、目だったリリース活動は無かったのですが、1995 年からコンスタントに CD を制作し、最新作「Grey County」は 2005 年にリリースされています。

 1970 年代後半のカナダからは珠玉の SSW アルバムが数多く発表されていますが、この「Train Going East」もその中の 1 枚と言えるでしょう。 レコーディングとミックスのエンジニアは、後に U2 や Bob Dylan をプロデュースし、ミュージシャンとしてソロ・アルバムを発表する Daniel Lanois というところも見逃せないポイントでしょう。

 アルバムはタイトル・トラックの「Train Going East」でスタート。 スロウなワルツに暖かいコーラスが重なるオーソドックスな展開ですが、ピアノやギターのさりげないサポートが染みこんで来ます。 さらに地味なワルツ「All The Goodbyes」そして「One Woman」とアルバムは淡々と進行していきます。 「Dead John Howard」でようやくアップな展開を迎えますが、「Nothing To Show」で元に戻ります。 この「Nothing To Show」には Tim Harrison の最大の持ち味であるシンプルで飾ることのない世界が凝縮されていています。 

  B 面は相対的にポップに聴こえる「Boys In The Backroom」でスタート。 典型的な Tim Harrison 節のワルツ「Turnaround」につづき、バラードの「Thickness Of The Nights」へ。 この曲は頼りなさげな Tim Harrison のボーカルにも迫力と重みが感じられる名曲でアルバムの聴き所です。 地味な「Pleasure In Ruin」を挟んで、カントリー色の強いワルツの「Not Done Yet」でアルバムは幕を閉じます。  このアルバム、三拍子の曲が半数を占めているかもしれません。

 アルバムを久しぶりに聴きましたが、このような良心的な音楽はネットやモバイルで音楽を聴く世代にはどれだけ受け入れられるのだろうかと考えてしまいます。 すべてがコンピューターで製作された音楽、マスターテープではなくマスターがハードディスクという時代には、このような音楽の居場所が無くなってきつつあります。 「Train Going East」のようなワルツ主体のゆったりした音楽は、今の時代のスピード感にはそぐわないことは十分理解できますが、10 年 20 年という時間軸で聴き手を失っていくのは悲しいことです。

 そんなさなか、先日、USB 端子が装備され、PCにダイレクトで接続できるというアナログ・プレイヤーが発売されるという記事をみました。 個人的にはアナログ・レコードをデジタルに取り込むことには興味は無いのですが、公式の CD 化が見込めないアルバムに関しては、こうした機能も便利なのかもしれません。 
 ひとまず「Train Going East」に関しては、CD 化されることを気長に待つこととしましょう。



■Tim Harrison / Train Going East■

Side-1
Train Going East
All The Goodbyes
One Woman
Dead John Howard
Nothing To Show

Side-2
Boys In The Backroom
Turnaround
Thickness Of The Nights
Pleasure In Ruin
Not Done Yet

Produced by Stan Rogers for Second Avenues Songs
Recorded and mixed at Grant Avenue Studios, Hamilton, Ontario
Recorded and mix engineer : Dan Lanois

Words and music by Tim Harrison except ‘Turnaround’ by Stan Rogers

Tim Harrison : acoustic guitar and vocals
Kevin Dandeno : bass
Bill garrett : electric and acoustic guitar, mandolins
Ross Gibbons : drums and percussion
Ron Sellwood : piano, accordion

Kim Deschamps : dobro
Dave Essig : acoustic guitar
Dan Lanois : electric guitar
Jude Johnson : backup vocals
Garnet Rogers : violin , backup vocals
Stan Rogers : 12 string guitar , percussion , backup vocals

Second Avenue Songs SAS 1001


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