Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jon Wilcox

2010-06-08 | Folk
■Jon Wilcox / Close To Home■

  Jon Wilcox は、Folk-Legacy から 1973 年のアルバムでデビューしたミュージシャン。 この「Close To Home」は 1978 年に発表されたセカンド・アルバムです。 春の温かな日差しのなか、Jon Wilcox と愛犬とが映りこんだ緑基調のジャケットを見れば、リスナーの期待は否応なしに高まるでしょう。

  さっそくそんなアルバムに針を落としてみましょう。 オープニングから意表をつく楽器が登場します。 それは、日本語では口琴(こうきん)と呼ぶらしい Jew’s Harp の音色です。  口琴はゴムを弾くように演奏するもので、その音色は終始ビヨ~ンと鳴り続けるややもすると耳障りなものです。 そんな楽器を敢えて使った「Old Bill Jones」は、Jon Wilcox のルーツ指向の強さを感じるオープニングでした。 アコギとバンジョーが主役のオーソドックスな「Close To Home」に続いては、ジェントルな SSW テイストあふれる「Old Dog」へ。 繊細なアコギの音色もマッチしたA面のお薦め曲です。 Dusty Owens 作曲の「Once More」もルーラルでいなたいナンバー。 曲のほとんどがハーモニーを伴って歌われます。 つづく「Recessional Hymn」もカントリー系のワルツなので、西海岸のアルバムなのにウッドストック周辺のアルバムを聴いているかのような気分になってきます。  A 面ラストはトラッドの「Sir Patrick Spens」です。 アイリッシュ・トラッドなのでしょうか、アカペラの独唱で 4 分弱というのはやや長すぎという印象です。

  オリジナルが 3 曲含まれていた A 面とは打って変わって、B 面にはオリジナル楽曲は 1 曲もありません。 まずは、軽快なフィドルをバックにした「I’m Gonna Live In The Highwoods」、Hank Williamsの「Lonesome Whistle」とカントリー色の強い曲が並びます。 つづくトラッドの「Jock O’hazeldean」はしみじみとしたボーカルナンバーで、アルバムもここで落ち着きを見せてきます。 「Hot Dog Stand」では再びバンジョーがテケテケ響き渡り、カントリーへと舞い戻ります。 フィドルに導かれて西部劇を観ているかのような「The Mem’ry Of Your Smile」がつづき、ラストの「Mississippi, Youre On My Mind」へと移っていきます。 この曲は Jesse Winchester の 3 枚目「Learn To Love It」に収録されているナンバー。 長かった一日の終わりを川辺で過ごすようなイメージのバラードはラストにふさわしい選曲です。 この曲は疑う余地のない B 面のハイライトでしょう。

  さて、このようにアルバムを振り返ってみましたが、カントリー色が濃すぎる点が個人的な好みからは外れてしまうという印象は拭えません。 騒々しさや能天気なテンションの高さはないのが救いですが、やはりオリジナル楽曲を軸に据えて、もう少し自身の個性を前面に出してほしかったと思います。

 Jon Wilcox は今も現役で活動しているようで、公式ページには多くの CD が掲載されていました。 ビジネス的には成功しなかった彼がこれほどのアルバムを発表できた理由は謎ですが、地道なライブ活動と豊富なレパートリーが強みだったのでしょう。 好きなことを続けることがいちばん幸せな人生だということを、彼は実感しているに違いありません。

■Jon Wilcox / Close To Home■

Side 1
Old Bill Jones
Close To Home
Old Dog
Once More
Recessional Hymn
Sir Patrick Spens

Side 2
I’m Gonna Live In The Highwoods
Lonesome Whistle
Jock O’hazeldean
Hot Dog Stand
The Mem’ry Of Your Smile
Mississippi, Youre On My Mind

Produced by Hurley Davis for No Budget Productions
Recorded by Peter Feldman (May 1977 - Jan1978)

Lead vocals : Jon Wilcox
Harmony vocals : Kate Brislin, David West, Tony Marcus, Jon Wilcox
Guitars : Eric Thompson, Jon Wiolcox, A.J.soares, Doug Wilcox, David West, Jimmy Borsdorf
Fiddles : Susan Rothfield, Jimmy Borsdorf, Tony Marcus
Mandolins : Peter Feldmann, Jon wilcox
Jew’s Harp & Harmonica : Rick Epping
Bass : Stan Tysell
Concertina : Wendy Grossman
Banjo : Peter Feldmann
Cello : Alita Wilcox Rhodes

Briar Records SBR-4210